語られし真実
「クルス…」
「……ッ!大丈夫だよ、フェイト。大丈夫だから…」
顔色が悪いクルスを心配してフェイトはそっと抱き寄せる。
背中を撫でて落ち着かせるフェイトにクルスは一度息を吐いて心を落ち着かせゆっくり離れる。
その時フェイトが残念そうにしていたのは全くの余談である。
「ごめんなクルス君。辛い事を思い出させるような事を私は…」
「はやてが謝る事じゃないさ。遅かれ早かれ話さなきゃいけなかったからな。それで他に聞きたい事は?」
顔色が悪いがそれでも話を続けるクルスをクロノは悲し気に見つめていた。
クルスは一人で全てを背負い込んでいたんだな。
ロンド・ラグナで死ぬ時、アイツは安心したように笑っていた。
その笑みの理由も今ならわかる。
アイツはこの事実を僕だけじゃない、ショウやフェイト達に知られないまま一人で地獄に持っていけると思って安心していたんだ。
アイツはクルスは本当に一人で何もかも背負い込んで。
「クルス…」
「クロノ?」
「お前にとって僕達はそんなに頼りにならないか?」
悲し気で寂しそうにクロノは問い掛けた。
一緒に戦う仲間であり、フェイトを守れる存在としてクロノはクルスを頼りにしていた。
でもそれは自分の一方通行だったのか?
クルスはフェイトだけじゃない、僕もショウも誰も頼りには―――
「そんな事はないよ。もし頼りにならなかったら、今この場に少なくとも僕はいなかった。最悪一人でラファスと戦う選択肢も考えていたぐらいだし」
だが今の僕ではラファスに絶対に勝てない。
フューチャーを強くする必要がある。
僕とショウのフューチャーを全盛期の時のように強くしなければラファスとは戦えない。
「なら誓ってくれクルス」
「…………」
「もう何でも一人で背負い込まないと。もし背負えないなら僕じゃなくてもいい。フェイトやショウや皆を頼ってくれ。僕達は…………仲間なんだぞ」
「僕はもう管理局の中では犯罪者なんだよ?それなのに仲間なんて言っていいのか?」
「ここにいる皆は少なくともお前を犯罪者なんて思っていない。ここにいるのは一人で全てを抱え込んだどうしようもない男で僕達にとって大切な仲間。
クルス・アサヅキだ」
クロノの言葉に会議室にいるクルス以外のメンバーは小さく頷いていた。
本当に皆お人好しと言うか、優しすぎるよ。
こんな僕をまだ仲間なんて言ってくれるなんて。
「クルス」
「何だいシグナム?」
「確かにお前はロンド・ラグナで主はやてだけじゃなく私達と戦った。だがそれも全てテスタロッサを守るため。大切な者を守るために戦ったお前の気持ちを私達は理解しているさ」
かつて自分達も主はやてを助ける為に戦った。
騎士の誇りを捨ててでも主はやてを助けたかった。
止まれないと涙を流してひたすら戦い続けた。
その時に傷つけた者達がいたのを自分達は忘れない。
その罪はヴォルケンリッターの罪で背負い続けている。
だからこそクルスの気持ちも痛いほど理解している。
同じように罪を背負う者を自分達は拒絶なんかしない。
「シグナムの言う通りだぜクルス」
「私達は…」
「共に戦う仲間だ」
シグナムだけじゃないヴィータもシャマルもザフィーラまでそんな事を言うなんてね。
「さてクルス君とも和解した事だし、私からもクルス君に聞きたいことがあるわ」
「どうぞリンディさん」
「今の戦力でラファスに勝てるかしら?」
「………ジョーカーズと聖騎士団だけなら勝てるでしょうね。だけど今の僕とショウが一緒に戦ってもラファスには勝てません」
一度ユリナ・ミドカルドがラファスとユニゾンした状態で戦ったが、傷一つつける事ができなかった。
だからこそ―――
「ショウ…」
「クルス、お前の事だから何か考えてんだろ?」
「勿論だよ。少し休んだら僕と一緒にとある場所に行ってもらう。そこでフューチャーを進化させる」
フローラとレンの深層世界に封印されている力を解放させる為にも。
フローラとレンの先代マスターにショウと僕で会わなければならない。
「だからクロノ」
「何だ?」
「少しだけ休ませてもらうけどいいかい?」
クロノはチラリとフェイトに視線を向けると、『…そうだな』と呟き小さく頷いた。
「ショウを連れていくタイミングはお前に任せるから。だから………フェイト!」
「はっ、はい!」
「クルスを休める場所に連れていってくれないか?」
クロノの言葉にフェイトは頷くと、クルスの手を優しく握りアースラの会議室から出ていく。
その二人を見送ると同時に今まで黙っていたヴェロッサが壁から離れショウ達を見回しながら口を開いた。
「クルスがいなくなっちゃったからここからは僕とユーノ君の二人で話を続けていくよ」
「話って他に何があるんだヴェロッサ?」
ショウの言葉にロッサは頬をかき苦笑する。
どうやらユリナ・ミドカルドと安藤誠の件で皆が忘れているようだね。
まだ皆が知らない事はまだまだあるのに。
「……あっ!」
「気づいたようだねなのは」
なのはが思い出したように顔を上げると、ユーノが微かに笑みを浮かべる。
今なのはが思い出した事はおそらく彼女の事だろう。
そしてクルスもきっとフェイトに話しているに違いない。
P・T事件で消えたはずの彼女――
アリシア・テスタロッサが何故生きていたのかを。
「アリシアちゃんがどうして生きていたのか、ユーノ君やヴェロッサさんは知っているんですか?」
「まぁね。これに関してはクルスから聞かされてね」
「つまりクルスも知っていたんだな。アリシアが生きていた事を」
そしてヴェロッサがアリシア・テスタロッサの事を話していく。
彼女はかつてP・T事件でプレシア・テスタロッサと共に虚数空間に落ちて助からなかった。
しかしその時あの場にいた誰もが気づかなかったのだ。
あの瞬間に、アリシアとプレシアを助けた者がいたなど。
そうあの時二人を助けた存在がいた。
「魔法が使えない虚数空間で二人を助けたのは、聖騎士団メンバーだったのさ。おそらく彼らはユリナ・ミドカルドの命令で二人を助けたんだろうね」
「何の為にや?」
「これは僕とユーノ君の考えだけど、アリシア・テスタロッサを助ける事を条件にプレシア・テスタロッサの頭脳と力を利用するつもりだったんじゃないかな?あの兵器をより完璧にする為にもね」
そしてあのベルエスが完成したと考えればプレシア・テスタロッサは手を貸したのだろう。
たとえ自分の命が残り僅かだとしても最愛の娘に会えるなら何だってする覚悟で。
「アリシア・テスタロッサがラファスとユリナさんと戦った理由だけど…」
「知っているのかユーノ?」
クロノの疑問にユーノは一つのデータをモニターに映し出す。
それはかつて起きた悲劇の事件。
【ヒュードラ事件】の全てのデータだった。
あの事件は駆動炉の爆発を引き起こし、爆発そのものは結界によって防がれたがその時に発生したエネルギーは大気中の酸素を奪いつくしていた。
そしてアリシア・テスタロッサはそのヒュードラ事件で命を落とし、プレシア・テスタロッサは心を壊してしまった。
しかしこの話には続きがある。
「ベルエスには大量のエネルギーが必要なのはもう全員知っているよね?つまり――」
「ヒュードラ事件はベルエスのエネルギー確保の為に起きた実験だったのか!」
「そういう事だよクロノ君。そして、アリシア・テスタロッサはそれを知ってしまった」
だからラファスとユリナの二人と戦ったのだろう。
でも最後はたった一人の妹を、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを助ける為に戦った。
勝てないと分かっていたとしても。
「これがアリシア・テスタロッサの全てだ」
「……そういう事だったんだな」
凶王ラファスとユリナ・ミドカルド。
二人のせいで様々な人の人生が壊れてしまった。
二人のこんな計画の為にだ。
「フェイトちゃん…」
△▼△▼△▼△▼
「これがアリシア・テスタロッサが生きていた理由だよ」
二人はフェイトの部屋に入りベッドに並び、ヴェロッサが話していた内容をクルスがフェイトに話していた。
その話を聞きフェイトは顔を俯かせている。
大好きな母親が変わったのはあの二人のせいだった?
あの二人のこんな計画の為にアリシアが母さんが。
あんな目に合ったって言うの?
「……フェイト」
フェイトの脳裏によぎる、プレシアのかつて優しかった笑顔とアリシアが最後に見せた笑顔。
その二つの笑顔を思い出しフェイトの目に涙が浮かぶが、
「大丈夫だよクルス。私は泣かないって決めたから」
クルスの前でも泣かないって決めた。
クルスの隣に並ぶには強くならなくちゃいけないから。
だから!
「……フェイト」
優しくまるで包み込むようにクルスはフェイトの頭を撫でる。
もう我慢しなくていいんだよ。
今ここに僕はいる。
キミの涙も思いも全部受け止めてあげる。
「泣いていいんだよ」
「……ッ!!」
「泣きたい時に泣かないと辛いだけだよ」
その言葉に耐えきれなくなったのかフェイトは肩を震わせ次第に嗚咽を漏らしていく。
「うぅ…っ!!」
フェイトの目から白い頬を伝って涙がまるで決壊寸前のダムのようにぽろぽろ溢れていく。
「クルス…」
クルスとフェイトの目が重なりあう。
そして―――
「うぁぁぁぁぁぁ!」
決壊して叫ぶようにフェイトは泣き始める。
クルスの胸に顔を埋めてひたすら泣く。
誰かに聞かれるかもしれないがそれでもフェイトの涙は止まらない。
「クルス…!お姉ちゃんが……!わ、私を…助ける為に……っ!私…!何も言えなかった……!せっかく会えたのに……!」
「フェイト…」
「どうして!どうして…母さんやお姉ちゃんが…っ!二人は何も悪くないのに…!こんな目に!」
二人の人生を変えてしまったラファスとユリナが許せない。
二人の事を考えると涙が止まらない。
「ユリナさんは…二人だけじゃない……。クルスも利用して……私を人質にして…ッ!皆と戦わせて……死なせようとした!どうして……ッ!どうしてこんな酷い事が出来るの……ッ!」
フェイトの言葉にクルスはただ頭を優しく撫でるだけ。
「大丈夫だよフェイト。今僕はここにいてキミの傍にいるから」
「クルス……!……うぅ…っ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
フェイトはただ愛しい人の胸で泣く。
ギュッと強く抱きつきその涙は止まる事はなかった。
次回予告
はやて
「フューチャーを進化させる為にショウ君とクルス君はとある場所にやって来た。
そこはどこかの研究所やったんやけど…
なんとそこにいたのは!
何でこんな研究所にいるんや二人とも!?
次回S.H.D.C.第五十話!
【まさかの再会】に!
ドライブイグニッションや!!」
「……ッ!大丈夫だよ、フェイト。大丈夫だから…」
顔色が悪いクルスを心配してフェイトはそっと抱き寄せる。
背中を撫でて落ち着かせるフェイトにクルスは一度息を吐いて心を落ち着かせゆっくり離れる。
その時フェイトが残念そうにしていたのは全くの余談である。
「ごめんなクルス君。辛い事を思い出させるような事を私は…」
「はやてが謝る事じゃないさ。遅かれ早かれ話さなきゃいけなかったからな。それで他に聞きたい事は?」
顔色が悪いがそれでも話を続けるクルスをクロノは悲し気に見つめていた。
クルスは一人で全てを背負い込んでいたんだな。
ロンド・ラグナで死ぬ時、アイツは安心したように笑っていた。
その笑みの理由も今ならわかる。
アイツはこの事実を僕だけじゃない、ショウやフェイト達に知られないまま一人で地獄に持っていけると思って安心していたんだ。
アイツはクルスは本当に一人で何もかも背負い込んで。
「クルス…」
「クロノ?」
「お前にとって僕達はそんなに頼りにならないか?」
悲し気で寂しそうにクロノは問い掛けた。
一緒に戦う仲間であり、フェイトを守れる存在としてクロノはクルスを頼りにしていた。
でもそれは自分の一方通行だったのか?
クルスはフェイトだけじゃない、僕もショウも誰も頼りには―――
「そんな事はないよ。もし頼りにならなかったら、今この場に少なくとも僕はいなかった。最悪一人でラファスと戦う選択肢も考えていたぐらいだし」
だが今の僕ではラファスに絶対に勝てない。
フューチャーを強くする必要がある。
僕とショウのフューチャーを全盛期の時のように強くしなければラファスとは戦えない。
「なら誓ってくれクルス」
「…………」
「もう何でも一人で背負い込まないと。もし背負えないなら僕じゃなくてもいい。フェイトやショウや皆を頼ってくれ。僕達は…………仲間なんだぞ」
「僕はもう管理局の中では犯罪者なんだよ?それなのに仲間なんて言っていいのか?」
「ここにいる皆は少なくともお前を犯罪者なんて思っていない。ここにいるのは一人で全てを抱え込んだどうしようもない男で僕達にとって大切な仲間。
クルス・アサヅキだ」
クロノの言葉に会議室にいるクルス以外のメンバーは小さく頷いていた。
本当に皆お人好しと言うか、優しすぎるよ。
こんな僕をまだ仲間なんて言ってくれるなんて。
「クルス」
「何だいシグナム?」
「確かにお前はロンド・ラグナで主はやてだけじゃなく私達と戦った。だがそれも全てテスタロッサを守るため。大切な者を守るために戦ったお前の気持ちを私達は理解しているさ」
かつて自分達も主はやてを助ける為に戦った。
騎士の誇りを捨ててでも主はやてを助けたかった。
止まれないと涙を流してひたすら戦い続けた。
その時に傷つけた者達がいたのを自分達は忘れない。
その罪はヴォルケンリッターの罪で背負い続けている。
だからこそクルスの気持ちも痛いほど理解している。
同じように罪を背負う者を自分達は拒絶なんかしない。
「シグナムの言う通りだぜクルス」
「私達は…」
「共に戦う仲間だ」
シグナムだけじゃないヴィータもシャマルもザフィーラまでそんな事を言うなんてね。
「さてクルス君とも和解した事だし、私からもクルス君に聞きたいことがあるわ」
「どうぞリンディさん」
「今の戦力でラファスに勝てるかしら?」
「………ジョーカーズと聖騎士団だけなら勝てるでしょうね。だけど今の僕とショウが一緒に戦ってもラファスには勝てません」
一度ユリナ・ミドカルドがラファスとユニゾンした状態で戦ったが、傷一つつける事ができなかった。
だからこそ―――
「ショウ…」
「クルス、お前の事だから何か考えてんだろ?」
「勿論だよ。少し休んだら僕と一緒にとある場所に行ってもらう。そこでフューチャーを進化させる」
フローラとレンの深層世界に封印されている力を解放させる為にも。
フローラとレンの先代マスターにショウと僕で会わなければならない。
「だからクロノ」
「何だ?」
「少しだけ休ませてもらうけどいいかい?」
クロノはチラリとフェイトに視線を向けると、『…そうだな』と呟き小さく頷いた。
「ショウを連れていくタイミングはお前に任せるから。だから………フェイト!」
「はっ、はい!」
「クルスを休める場所に連れていってくれないか?」
クロノの言葉にフェイトは頷くと、クルスの手を優しく握りアースラの会議室から出ていく。
その二人を見送ると同時に今まで黙っていたヴェロッサが壁から離れショウ達を見回しながら口を開いた。
「クルスがいなくなっちゃったからここからは僕とユーノ君の二人で話を続けていくよ」
「話って他に何があるんだヴェロッサ?」
ショウの言葉にロッサは頬をかき苦笑する。
どうやらユリナ・ミドカルドと安藤誠の件で皆が忘れているようだね。
まだ皆が知らない事はまだまだあるのに。
「……あっ!」
「気づいたようだねなのは」
なのはが思い出したように顔を上げると、ユーノが微かに笑みを浮かべる。
今なのはが思い出した事はおそらく彼女の事だろう。
そしてクルスもきっとフェイトに話しているに違いない。
P・T事件で消えたはずの彼女――
アリシア・テスタロッサが何故生きていたのかを。
「アリシアちゃんがどうして生きていたのか、ユーノ君やヴェロッサさんは知っているんですか?」
「まぁね。これに関してはクルスから聞かされてね」
「つまりクルスも知っていたんだな。アリシアが生きていた事を」
そしてヴェロッサがアリシア・テスタロッサの事を話していく。
彼女はかつてP・T事件でプレシア・テスタロッサと共に虚数空間に落ちて助からなかった。
しかしその時あの場にいた誰もが気づかなかったのだ。
あの瞬間に、アリシアとプレシアを助けた者がいたなど。
そうあの時二人を助けた存在がいた。
「魔法が使えない虚数空間で二人を助けたのは、聖騎士団メンバーだったのさ。おそらく彼らはユリナ・ミドカルドの命令で二人を助けたんだろうね」
「何の為にや?」
「これは僕とユーノ君の考えだけど、アリシア・テスタロッサを助ける事を条件にプレシア・テスタロッサの頭脳と力を利用するつもりだったんじゃないかな?あの兵器をより完璧にする為にもね」
そしてあのベルエスが完成したと考えればプレシア・テスタロッサは手を貸したのだろう。
たとえ自分の命が残り僅かだとしても最愛の娘に会えるなら何だってする覚悟で。
「アリシア・テスタロッサがラファスとユリナさんと戦った理由だけど…」
「知っているのかユーノ?」
クロノの疑問にユーノは一つのデータをモニターに映し出す。
それはかつて起きた悲劇の事件。
【ヒュードラ事件】の全てのデータだった。
あの事件は駆動炉の爆発を引き起こし、爆発そのものは結界によって防がれたがその時に発生したエネルギーは大気中の酸素を奪いつくしていた。
そしてアリシア・テスタロッサはそのヒュードラ事件で命を落とし、プレシア・テスタロッサは心を壊してしまった。
しかしこの話には続きがある。
「ベルエスには大量のエネルギーが必要なのはもう全員知っているよね?つまり――」
「ヒュードラ事件はベルエスのエネルギー確保の為に起きた実験だったのか!」
「そういう事だよクロノ君。そして、アリシア・テスタロッサはそれを知ってしまった」
だからラファスとユリナの二人と戦ったのだろう。
でも最後はたった一人の妹を、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを助ける為に戦った。
勝てないと分かっていたとしても。
「これがアリシア・テスタロッサの全てだ」
「……そういう事だったんだな」
凶王ラファスとユリナ・ミドカルド。
二人のせいで様々な人の人生が壊れてしまった。
二人のこんな計画の為にだ。
「フェイトちゃん…」
△▼△▼△▼△▼
「これがアリシア・テスタロッサが生きていた理由だよ」
二人はフェイトの部屋に入りベッドに並び、ヴェロッサが話していた内容をクルスがフェイトに話していた。
その話を聞きフェイトは顔を俯かせている。
大好きな母親が変わったのはあの二人のせいだった?
あの二人のこんな計画の為にアリシアが母さんが。
あんな目に合ったって言うの?
「……フェイト」
フェイトの脳裏によぎる、プレシアのかつて優しかった笑顔とアリシアが最後に見せた笑顔。
その二つの笑顔を思い出しフェイトの目に涙が浮かぶが、
「大丈夫だよクルス。私は泣かないって決めたから」
クルスの前でも泣かないって決めた。
クルスの隣に並ぶには強くならなくちゃいけないから。
だから!
「……フェイト」
優しくまるで包み込むようにクルスはフェイトの頭を撫でる。
もう我慢しなくていいんだよ。
今ここに僕はいる。
キミの涙も思いも全部受け止めてあげる。
「泣いていいんだよ」
「……ッ!!」
「泣きたい時に泣かないと辛いだけだよ」
その言葉に耐えきれなくなったのかフェイトは肩を震わせ次第に嗚咽を漏らしていく。
「うぅ…っ!!」
フェイトの目から白い頬を伝って涙がまるで決壊寸前のダムのようにぽろぽろ溢れていく。
「クルス…」
クルスとフェイトの目が重なりあう。
そして―――
「うぁぁぁぁぁぁ!」
決壊して叫ぶようにフェイトは泣き始める。
クルスの胸に顔を埋めてひたすら泣く。
誰かに聞かれるかもしれないがそれでもフェイトの涙は止まらない。
「クルス…!お姉ちゃんが……!わ、私を…助ける為に……っ!私…!何も言えなかった……!せっかく会えたのに……!」
「フェイト…」
「どうして!どうして…母さんやお姉ちゃんが…っ!二人は何も悪くないのに…!こんな目に!」
二人の人生を変えてしまったラファスとユリナが許せない。
二人の事を考えると涙が止まらない。
「ユリナさんは…二人だけじゃない……。クルスも利用して……私を人質にして…ッ!皆と戦わせて……死なせようとした!どうして……ッ!どうしてこんな酷い事が出来るの……ッ!」
フェイトの言葉にクルスはただ頭を優しく撫でるだけ。
「大丈夫だよフェイト。今僕はここにいてキミの傍にいるから」
「クルス……!……うぅ…っ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
フェイトはただ愛しい人の胸で泣く。
ギュッと強く抱きつきその涙は止まる事はなかった。
次回予告
はやて
「フューチャーを進化させる為にショウ君とクルス君はとある場所にやって来た。
そこはどこかの研究所やったんやけど…
なんとそこにいたのは!
何でこんな研究所にいるんや二人とも!?
次回S.H.D.C.第五十話!
【まさかの再会】に!
ドライブイグニッションや!!」