現れた最凶の存在

【氷帝ボルキアが守る柱】

【風帝スパーダが守る柱】

【裕理が守る柱】

【土帝エグザが守る柱】


この四柱にある動力部に到着した突入組は、コアを破壊してベルエスを守っていた四柱が爆発して破壊されていく。

その光景をナデシコのモニターで見ていたルリは一息ついてひと安心と呟く。

無事に四柱は破壊できたようですね。

次はどうするつもりでしょうか?

ひとまずアースラとナデシコに皆さんを転移させた方がいいでしょうか?


「艦長!アースラから通信です」

「繋いでください」


はい!と元気よくハーリーは返事をして、アースラとの通信を繋ぐとモニターにはリンディの姿が映る。


「第一段階は終わりましたね」

『えぇ。ショウ君やはやてさん達がやってくれたわ』

「次はどうしますか?ベルエスに突入…」


ルリがリンディに次の行動を尋ねようとした時だった、アースラ内で何かをキャッチしたのかアースラにいるエイミィの声がルリに届く。


『艦長!四柱内部から魔力反応です!』

『何ですって!』

『これは……間違いありません。四柱から強制転移魔法が発動しているようです』


強制転移魔法と言う事は四柱に仕掛けられていた?

動力部を破壊した瞬間にどこかに転移するように誰かが――

でも一体誰がそんな事を。


「どう思いますか?」

『分からないわ。けど皆を転移したとなると場所はおそらく…』

「ベルエスですね」


リンディとルリの二人はただジッとベルエスを見つめる。

いまだに動きもなく浮いているベルエス。

ただ不気味に存在する巨大兵器にルリはただ目を細めるだけ。


「今は皆さんを信じましょうリンディさん」

『……そうね』


ナデシコとアースラにいる全クルーがただ突入組の無事を祈る事しか出来ない。

自分達は信じて待つしかないのだから。


「……クルスさん」


アナタがいればもう少し違う方法があったんじゃないですか?

アナタは本当に―――






~ベルエス・内部~


四柱からの強制転移によりベルエス内部に突入組全員が集まる。

動力部破壊の戦いで怪我をした者達もいれば、疲れはてている者も数人はいるがそれでも誰一人欠けていない事に気付き、ショウやはやて達は安心したように息を吐いていた。


「フェイトちゃん、ほんまに無事でよかった」

「心配かけてごめんね。あとなのはから私がいない間に起きた事は全部教えてもらったよ」


悲し気に笑うフェイトにはやては申し訳なさそうに顔を俯かせる。

フェイトちゃんの目元が少し赤い。

きっとなのはちゃんから聞いて泣いてしまったんやろ。


「ごめんなぁ、フェイトちゃん。私が私らがちゃんとしてればクルス君は助けてあげられたのに…っ!」


はやての瞳から大粒の涙がこぼれる。

もう何回も泣いてしまってフェイトちゃんの前では流れないと思うてたのに。

フェイトちゃんの顔を見たらまた涙が―――


「……泣かないではやて。それに私は信じてるの」

「フェ…イ…ト…ちゃ…ん…?」

「クルスは必ず生きてるって。私の中にクルスの魔力がある限り、私はクルスを信じているの」


胸に手を当てて微笑むフェイトにはやては微かに笑みを浮かべる。

ほんまにフェイトちゃんは強いなぁ。

きっとなのはちゃんもそう思って泣くのは止めたはずや。

フェイトちゃんが信じとるのに、私らが泣いてたらあかんもんな。


「ところでよここはどこなんだ?」


フェイトとはやての会話を区切るように話し始めたのは将輝だった。

将輝は辺りを見回し不思議そうな顔をする。


「俺達も分からねぇよ。多分俺達全員が同時にここに転移したんだからな」


将輝の言葉に答えながら悠季はふと前方の玉座のような椅子に目を向ける。

その玉座の周りにはいくつもの球体が浮かび一つ一つが色づいていた。

まるでデータで見たマテリアルコアに似ているようだが。


「ショウ、もしかしてこの球体は……」


球体を見つめていた悠季がショウに声を掛けた時だった、


『まさか全員生きてるなんてね。これは嬉しい誤算だったかしら?』


突如全員の耳に誰かの声が聞こえてきて全員が周りを見渡すと、その声の持ち主はまるで最初からいたように玉座に座り足を組んだ状態で全員の方を向いていた。

仮面をして素顔は分からない。

声も機械的で誰かは分からないが、ショウに支えてもらいながら立つクロノは目付きを鋭くしていた。

ここまで考える時間はあったし、ユーノやヴェロッサの言葉通りなら目の前の人物はあの人しかいない。

自分達と対峙しているのはあの人しかありえない。


「もう正体を隠してもムダですよ」

『………』

「今本局ではアナタが行方不明で混乱していますよ」

『………』


目の前の人物はゆっくりと仮面に手を伸ばして、素顔を晒すように仮面を外していく。


「何故こんな事をしたんですか……っ!!」


仮面をほいっと投げ捨てて素顔を晒した人物に、ある者は驚いてある者は怒りある者は唇を噛んでいた。


「ユリナ・ミドカルド元帥!!」


仮面をポイッと捨てて髪を靡かせ不敵に笑うユリナ。

その素顔にクロノはデュランダルを起動させその先端をユリナに向けるが、ユリナは玉座から動くことなくただ不敵に笑うのみ。


「何故ねぇ…」


ユリナの視線が玉座に浮かぶ球体に向く。

まるで宝石を眺めるコレクターのような顔をしたままユリナはただ答える。


「ある人の野望の為かしらね」

「ある人?」

「えぇ…。この世で誰よりも強く誰よりも恐ろしい人。そして…私を変えてくれた大切な人よ」


うっとりと、まるで恋をする乙女のような顔をして語り出すユリナ。

その人が全てでありその人が正しく世界そのものなのだ、と告げるユリナにクロノはゾクリと背筋を凍らせる。

目の前にいる人は誰だ?

あの人は本当に自分達が知るユリナ元帥なのか?

あの人があそこまで崇拝する人とは誰のことだ?


「教えてください……ユリナさん」

「何かしらはやて?」


シュベルトクロイツを握る手を無意識に強くする。

もしこの人が黒幕なら聞かなくちゃいけない。

今まで起きた事の全てをこの人から。


「アナタは最初からこのベルエスの為に動いてたんですか?ジョーカーズや神魔杯や私達に協力していた事。………クルス君を利用していた事も全て!」


ギュッとただシュベルトクロイツを握り締める。

親友であるフェイトちゃんの前で口にはしたくなかった。

だけど真実を知らなくちゃいけない。

この人が何を考えているのか。


「まぁ、ジョーカーズはマテリアルコアを手に入れる為に誠に生産させたものだしね。神魔杯は炎のエナジーを手に入れる為に許可したようなもの。アナタ達に協力したのは、弱いままだったら面白くないからよ。弱い連中に勝っても面白くないもの。ただ……」


ユリナの表情が般若のように恐ろしい形相になりその目に憎しみを込めて殺気だつ。

あの乙女の表情がまるで最初からなかったような雰囲気にただただショウ達は困惑している。


「クルスの動きだけは誤算だったわ!私と協力していたくせにアナタ達をロンド・ラグナで助けるわ、ユーノやヴェロッサ達に私の事を話すわでベルエスを早く起動させなくちゃいけなくなったものね!それだけじゃない!私に歯向かって、私の体に傷をつけやがったのよ!殺しても殺しても足りないわ!」


まるで全ての憎しみを込めたように髪をガリガリ掻いてヒステリックに声を荒げるユリナ。

髪のせいで顔が隠れてしまうがそれでも全員が今のユリナを見て気付いている。

ユリナ・ミドカルドは狂っているのだと。


「だけどアイツは死んだ。たかがFの人形を助ける為に。バカよねぇ…自分の命と人形の命を天秤にかけて人形の命を選ぶなんて。本当にバカすぎて笑えるわ。あれかしらね、あの男はそんなにアナタが大切だったのかしらね~」


クルスが死んだ事がよほど嬉しかったのか、ユリナはうっとりとした表情で頬に手を当ててチラリとフェイトに目を向ける。


「どう思うフェイト。アナタを助ける為に死んだあの男にどんな気持ちかしら?後悔?謝罪?感謝?」


私はね、と呟きユリナは髪を靡かせて子供のように笑いながら答えた。


「死んでくれて感謝してるわ。ありがとうフェイト、アナタが鎖になってくれたおかげでフューチャーを持つ人間が消えた。本当バカよねぇ。クルスって…」


その言葉にブチッと誰かがぶちギレた。

クルスをバカにして笑うユリナに三人の男達が一斉に動き出す。


「テメェ!!」

「ユリナ!」

「ミドカルドーー!!」


将輝と悠季と奏也がユリナに武器を手にして迫る。

殺さんとばかりに迫る三人にユリナはやれやれと、ため息を吐いて玉座から離れると禍々しい剣を手にしてそれを天に掲げる。


『そんなっ!?あれは!!』


ユリナが握る剣を目にしショウの傍にいたフローラは目を見開く。

その表情はまるで信じられないものを見たかのような表情に染まる。


「たかが三人で私に向かってくるなんて愚かよ。実力の違いを教えてあげるわ」


ユリナの持つ剣が黒く全てを呑み込む闇に染まり、ユリナはその剣をそのまま横に振るう。


「シャドウフレア」


振るわれた剣から黒い炎が放たれ三人はそれをもろに喰らってしまう。


『……ガハッ!!』


その威力にその炎に三人は口から血を吐き出し地面に転がったまま立ち上がれなくなっていた。


「将輝!」

「悠季!」

「奏也!」


倒れて動けない三人に稟とヴィータと湊が駆け寄るなか、フローラはキッと目付きを変えてユリナに問いかけていた。


『どうして!どうしてアナタがその力を使っているんですか!!』

「フローラ、お前何か知っているのか?ユリナさんが持っている剣の事を」


この場で誰よりも取り乱しているフローラ。

それもそのはずだ。

何故ならユリナ・ミドカルドが手にしている剣はあの人の――


『マスターに皆さんも聞いてください。あれは……ユリナ・ミドカルドが使っている力は私やレンと同じフューチャーデバイスです!』

「なっ!?」

「何だと!?」


フローラの言葉にショウやクロノ達は驚愕の表情を浮かべていた。

確かにフューチャーが三つあったのはアインスから聞いていたが、最後の一つをまさかユリナが持っているなんて思いもしなかったからだ。


『どうしてアナタがあの人の!ネメシスお姉さまの力を!!ネメシスお姉さまの力は先代と一緒に…』


フローラの記憶によみがえる姉の最期。

姉は先代と共に凶王と戦って相討ちで消滅したはずなのに。

それなのにどうして――


「ネメシスねぇ…。残念だけどそんな人格はこのフューチャーには存在しないわよ。もしあるとすれば…」


ユリナはそう口にして、小さく『ユニゾン』と呟くとユリナの体が黒く光る。


「さぁ…!見てなさい!あの人が現れるわよ!」


ユリナの背中から悪魔のような翼が生えて、髪が血のように赤く染まっていく。


「何かやばくねーか…」


純一がポツリと呟いてハヤテや樹が小さく頷いている。
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