VSサカキ(前編)

Aブロック決勝戦――

サトシVSサカキの戦いはリザードンとニドキングのぶつかり合いから始まった。

リザードンとニドキングは開始と同時に相手に突っ込み額をぶつけ合い力試しをしている。


「そのリザードン。よく育てているな」

「当たり前だ。オレのリザードンがお前のポケモンなんかに負けるもんか」


サトシの声に答えるようにリザードンはニドキングに至近距離からドラゴンクローを振るいニドキングはリザードンから離れていく。


「リザードン!かえんほうしゃだ」

「ならばこちらもかえんほうしゃだ」


リザードンのかえんほうしゃとニドキングのかえんほうしゃによりフィールドで爆発が起こり、リザードンとニドキングはその衝撃でトレーナーの近くまで吹き飛んでいった。


「サトシ、お前は確かに強いトレーナーだ。だが何故それだけの力があるのに今まで大会で優勝できなかったと思う?」

「何が言いたい!」

「お前には足りないものがある」


それはなと、サカキは小さく呟きながら指を鳴らした瞬間ニドキングは唸り声を上げてリザードンに突っ込んでいった。

サトシがリザードンに指示を出す前にニドキングはリザードンの懐に入り込むと、


「ニドキング!ギガインパクト!」


ニドキングのギガインパクトをもろに喰らい、リザードンは勢いよく吹き飛び地面に倒れてしまう。

直撃とも言える一撃を喰らったリザードンは必死に立ち上がろうとするが、ダメージが大きかったせいで苦しそうな声を出しながらそのまま戦闘不能になってしまう。


「リザードン!」

「リザードン戦闘不能!ニドキングの勝ち!」


あのリザードンが一撃で負けてしまった。

サトシのエースとも言えるリザードンが負けた事にセレナ達は目を丸くし、対戦相手であるサカキはフッと笑みを浮かべていた。


「サトシ、お前に足りないもの。それは――勝利に対する執着だ!お前は強いトレーナーと戦い熱いバトルをする事にしか頭が回っていない。その想いは素晴らしいがそれは勝利の世界では通用しない!」

「なにっ!」

「現に世界ランカー達を見てみろ。彼らは勝利の為に戦い今の地位にいる。彼らほど勝利に執着しているトレーナーはいない」


サカキの言葉にサトシは言葉を失う。

そんなはずはない。

ポケモンバトルはただ勝つためだけにするものじゃない。

ポケモンとの絆やトレーナー達との友情の為のはずだ。

現にオレはポケモン達を信じて戦ってきた。

負けたりもしたがそれでも後悔なんかなかったし、最後まで諦めたりもしなかったんだから。

それなのに―――


「サトシ選手、次のポケモンを」

「クッ!次はお前だカビゴン!」


サトシの持つ重量級ポケモンの一体カビゴンがフィールドに現れる。

このカビゴンは重量級のポケモンなのだが、実は機敏に動いてサトシのピンチを何回も救ってくれているポケモンだったりする。


「お前はこの代表決定戦の為に修行し強くなったのだろう?ならば私に見せてくれ。お前の力をな!ニドキング、かえんほうしゃだ」

「カビゴン!かえんほうしゃに耐えながらニドキングに突っ込め!」


カビゴンはその巨体でかえんほうしゃを受け止めつつ勢いよくニドキングに体当たりを喰らわせ、ニドキングは地面に倒れて立ち上がろうとするがカビゴンのメガトンパンチを喰らいニドキングは戦闘不能になってしまう。


「ニドキング戦闘不能!カビゴンの勝ち!」

「よくやった、ニドキング」


これでお互い残り二体。

次にサカキが繰り出すポケモンとは?


「次はお前だリングマ」


サカキが次にフィールドに出したのはリングマ。

ニドキングに続いて次はリングマ。

サカキのポケモンは重量級メインのようでフィールドに現れたリングマは、ヤル気満々でカビゴンと対峙していた。


「さて第2ラウンドを始めよう」

「……クッ!」


ただ嬉しそうに笑うサカキ。

彼がサトシを見つめるその瞳に隠した感情とは――

サトシとサカキの戦いを観客席で不安気に見つめているハナコはただ一言だけ呟いていた。


「サトシ。……アナタ」






~観客席~


「サトシのやつ苦戦しているな」

「サトシだけじゃない。イチカもシンもシゲルも苦戦している。やっぱり決勝戦ともなると今までとは違うか」


Aブロックのサトシ戦やBブロック・Cブロック・Dブロックのバトルを目にしながらタケシとリトはポツリと口を開いていた。

BブロックのイチカVSシンジ戦はイチカのエースポケモンを、シンジは二体目のポケモンで撃破してそのままイチカの二体目のポケモンも撃破していた。

CブロックのシンVSキラ戦はすでに残り一対一の状態で、シンもキラもエースポケモンをフィールドに出してラストバトルを繰り広げている。

DブロックのシゲルVSアラン戦はシゲルが残り一体でかなりヤバい状況。

シゲルはそれでも諦めていないのか、エースポケモンを出してアランとバトルをしている。


「それにしてもリベリオンコンツェルの会長さんってあんなに強いんだ」


セレナは知らない。

サトシとバトルをしているサカキが、実はポケモンマフィアの組織ロケット団のボスで裏の世界で活躍しているなんて。


「う~ん」

「どうかしたかタバネ?」

「なんと言うか、こう似ているような~」

「何がだ?」

「さっくんとサカキって似てると思わない?」

「………はっ?」


タバネの言葉にチフユは間抜けな声を出してしまう。

あの純粋バトル少年とリベリオンコンツェルの会長が似ている?

そんなバカみたいな話があるか。

どう考えても似ていないだろう。


「さっくんの父親は確か今も行方不明。でもそれがあのサカキだったら?」

「タバネ、いくらお前でも憶測で言うのは…」


そう口にしながらタバネに呆れていたチフユの横に金髪のオールバックでサングラスをし、アメリカンドッグを手に持つ青年が現れて席に座り口を開いた。


「相変わらず勘が鋭いな~タバネ」

「ムッ!誰かなタバネさんを呼ぶのはって……お前まさか…!」


タバネとチフユの前に現れた一人の青年。

その青年はすでに日本代表が決定して控え室にいたはずの世界ランカー第一位の青年。


「「ライバル!?」」

「よっ!」


世界ランカー第一位。

闘王ことライバルは楽しそうに笑いながらアメリカンドッグを頬張っていた。





「リングマ!きあいだま!」


リングマは気合いを高めて渾身の力を放出し、その力はカビゴンの体をまるで風船のように飛ばすとカビゴンは勢いよく地面に落下する。


「カビゴン!」


リングマの渾身の力を喰らい倒れてしまったカビゴンだが、その巨体をゆっくり起こしまだ戦えると言わんばかりにサトシの方に顔を向けていた。

ニドキングと戦いリングマのきあいだまを喰らって、もうカビゴンはギリギリのはずなのにカビゴンは踏ん張ってリングマと対峙している。

そのカビゴンにサトシは拳を握り締め力強く指示を飛ばした。


「カビゴン!最後の力を振り絞ってはかいこうせんだ!」


サトシの言葉にカビゴンは全ての力をはかいこうせんに込めてリングマに放つと、リングマはそれを体で受け止め必死に耐えていく。

まるで通用しないとリングマはニヤリと笑っていたが、


「カビゴーーーン!」


トレーナーであるサトシの想いにカビゴンははかいこうせんの威力を高めて、リングマは驚いたままフィールドの岩にぶつかり壁に叩き付けられて地面に倒れてしまう。

そのままリングマは戦闘不能になり、カビゴンもまた力を使い果たし倒れてしまった。


「カビゴン、リングマ共に戦闘不能!サトシ選手とサカキ選手は最後の一体を出してください!」


これでお互い最後の一体となる。

サトシは自分の最も信頼するポケモンのピカチュウを繰り出し、サカキは最後の一体が入っているボールを手にしただ笑うのみ。


「よくぞこの私をここまで追い詰めたなサトシ。やはりお前は素晴らしい」


だがらこそこの大会に出場した意味がある。

お前の成長した姿を目にして私は嬉しいぞ。

今から私のエースポケモンを見せてやろう。

覚悟するんだな息子よ。


「最後はお前だ。スピアー!」


サカキが初めてゲットして大切に育てたスピアー。

重量級を操るサカキが唯一手持ちに入れているポケモン。

その強さは本物でサカキのスピアーは、ワタルのカイリューやダイゴのメタグロスを倒しているのだから。


「ラストバトルだ!サトシ!」

「オレは絶対に負けない。ピカチュウ!10万ボルト!」

「スピアー!」


Aブロックラストバトル。

ピカチュウVSスピアーの戦いが始まる。

サカキはサトシの相手をしながらただ嬉しそうに笑うのみ。

そして――

サカキはポケットに手を入れ一枚の写真を握り締めていた。

その写真は自分とハナコとサトシが笑い合いながら映っていてサカキの一番の宝物の写真だった。


(父を越えてみせろサトシ!)
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