次なる戦いへ
あの旧大阪を舞台とした梅田屋襲撃から数日が過ぎて、チカは皆の力になりたいとリナに頼み込んでリナ指導のもと治療や医術について教えてもらっていた。
あの日怪我をした家族を治療したのはリナ一人であり、その間自分はリナの手伝いをしていたが歯痒い気持ちでいっぱいだった。
ライバルさんやリナさんやかふぇいんさんは気にするなとフォローしついたが、その言葉を素直に受け取ることが出来なかったのだ。
「BOTUさんにハヤトさん、調子はどうですか?」
「だいぶよくなったかな。少し腹が痛いけど」
「僕は全然平気だけどね。少なくともこんな所で寝る必要なんてないぐらい」
梅田屋での戦いで守護派に思い切り殴られ内臓を損傷したBOTUと銃弾を受けて血の海に倒れていたハヤトは、旧京都の屋敷に戻ってきてからずっと寝たきりでその二人をずっと看病していたのはチカだった。
最初はリナが看病しようと言ってたが、チカが自分でやるとリナやライバルに言って二人はチカに任せることにしたのだ。
(あんなにボロボロだったのに二人ともよくなってる)
チカの脳裏によぎるのは梅田屋で苦しんでいたBOTUと青白い顔をして笑っていたハヤトの姿。
二人のそんな姿にチカは泣きそうだったのを今でも覚えている。
でも今は二人ともこうして話すほど回復していた。
「お二人とも本当によかっです」
嬉しそうに笑うチカにBOTUは頬をポリポリと掻いて、ハヤトは苦笑して手元に置いてあるお茶を口にしていた。
すると、
「二人とも怪我の具合はどうだ?」
三人のいる部屋の扉が開いて中に入ってきたのは私服姿のライバルであり、ライバルの姿にチカとBOTUはキョトンとしハヤトは申し訳なさそうに顔を俯かせていた。
「俺はいつでも動けるぜライバル!この程度へっちゃらだしな」
「それは頼もしいな。……けど今は大人しくしているんだ。見てる限りまだ完全じゃないだろうしな」
「ちぇ~」
不満そうに項垂れるBOTUにライバルやチカは苦笑している。
ライバルに見抜かれるようじゃまだまだかとBOTUは項垂れたまま頭を掻く。
まぁBOTU自身も全力では戦えないし仕方ないかと内心自覚しているためそれ以上何も言わないようにした。
「ハヤト、お前はどうだ?あれだけ血を流したんだ。まだ自由に身体が動かないんじゃないのか?」
「僕は全然大丈夫ですよ師匠。僕はBOTUと違ってそこまでダメージはありませんでしたし」
「よく言うぜ。リナさんがハヤトに血を輸血しなかったらヤバかったのによ」
「……」
BOTUの言葉にハヤトはギュッと布団を掴む。
そうBOTUの言う通りハヤトはリナの血がなかったら今現在も寝たきりになっていたのだ。
梅田屋で応急処置をしてなんとか一命はとりとめたが、血があまりにも足りなくハヤトの顔色は青白いままだった。
そこでリナが己の血をハヤトに輸血してハヤトの身体は回復したのだ。
リナにも迷惑をかけたとハヤト自身申し訳なかったようで、リナが薬を持ってきた時は謝っていたりする。
「ハヤト」
「僕は今すぐにでも戦えます。血のストックだってある。師匠が言ってくれるなら今ここで……ゴホッ!ゴホッ!」
「ハヤトさん!」
笑いながらライバルの心配を消そうと思ったハヤトだったが、その努力も無駄に終わりハヤトは苦しそうに咳をしてします。
そんなハヤトにチカは水と薬を渡してハヤトはそれを口にして息を整えた。
額から汗が流れ顔も青白くなっている。
「ハヤト。今のお前を見て俺が納得すると思うか?」
「それは…」
「今は身体を休めるんだ。これは師からの言葉と同時に革命派のリーダーとしての言葉だ。いいな?」
「……はい」
ギュッと拳を握り締め唇を噛むハヤトにライバルは小さく「すまん」と呟くとチカの方に目を向けた。
「チカちゃん。二人の事は頼んだ。もし無理をしようとしたら気絶させてでも止めていいからな」
「へっ?えっと……はい」
ライバルはフッと笑って部屋から出ようとしたのだが、ピタリと足を止めて三人に背を向けた状態で口を開いた。
「近々、旧名古屋の革命派の代表とその仲間達がここに来るそうだ。何が狙いかわからねぇがお前達も覚えておいてくれ」
それだけ伝えて部屋から出ていったライバルの後ろ姿をBOTUとチカは真剣に見つめていたが、ハヤトだけは顔を俯かせ拳を握り締めたままだった。
三人のいる部屋をあとにしたライバルは他のメンバーが集まっている部屋へとやって来た。
ライバルが部屋に入ってきたのに気づいたメンバーは静かに席に座りライバルの言葉を待つ。
「あの二人の様子を見てきたが、まだ二人とも戦える状態じゃねぇ。特にハヤトのやつ何かを俺に隠してやがる」
「あのハヤトがライバルさんに隠し事?」
ライバルの言葉に信じられない表情をするフユキ。
あの師匠主義が隠し事をするなどあり得ないからだ。
絶対にライバルは全てを伝えていたハヤトが隠し事をするなどただ事ではない。
「まさか…」
他にも動揺しているメンバーがいるなかでリナはふとある事が頭に浮かびポツリと呟く。
ハヤトの治療をしたのは自分であり、ハヤトの身体から摘出した弾丸やハヤトが口にした言葉を知っているのも自分だけだった。
治療をしていた時にハヤトは、『血を使おうとして苦しくなった』とリナに話していた。
もしかするとハヤトは――
「だとしたら次の戦いに二人を参加させる事は出来ませんね」
部屋の中に静かに響く烈架の声に皆の視線が烈架の方に向けられる。
烈架が口にした次の戦いとは、旧名古屋のリーダーから頼まれた事でありライバルはその事で旧名古屋の革命派と会うのである。
そしてそれをハヤトやBOTUに伝えなかったのは、あの二人がそれを知ったらついて行くと言い出しかねないからだ。
まともに戦える状態じゃない二人をライバルは連れていこうとはしない。
「もちろんあの二人を戦いに参加させるつもりはねぇ。あと…」
「お兄ちゃん」
「んっ?どうしたリナ」
ライバルが他にも待機させる人間を口にしようとしたが、リナが真剣な表情でライバルを見つめ口を開くとライバルは首を傾げた。
「私も今回は待機でいいかな?ちょっと調べたいことがあるの」
「それは構わないが、チカちゃんはどうする?今回は治療の意味も込めてリナと一緒に連れていくつもりだったんだが」
「それなら大丈夫だよ。チカちゃんの事はお兄ちゃんに守ってもらうから」
「なっ!」
まさかのリナの言葉にライバルは驚き目を丸くする。
ここでリナなら烈架やかふぇいん辺りに頼むと思ったのに、まさか自分を指名してくるなど予想出来なかったからだ。
大切な妹に頼まれて自分が断れないことをよく知っている。
「大丈夫でしょお兄ちゃん?」
「…わかった。チカちゃんは出来るだけ俺の傍にいてもらうようにする」
「さっすがお兄ちゃん!」
妹にこう言われてライバルは呆れたようにため息を吐くが、その表情はかなり嬉しそうでありその兄と妹のやり取りを見ているメンバーもまた和んだようにお茶を飲んでいた。
「そういえばライバルさん」
「どうしたかふぇいん?」
「旧名古屋の革命派ってどんなやつらなんだ?そいつらは旧大阪のやつらより強いのか?」
かふぇいんの問いにライバルはスキンヘッドをポリポリと掻き少し困ったような表情を浮かべる。
何故そんな反応なのかと言うと、ライバル自身もそこまで旧名古屋の革命派を知らないからである。
「悪いなかふぇいん。俺もそこまで知らねぇんだ。俺が知ってんのは旧名古屋を纏めているリーダーの名前だけだ」
「そいつの名は?」
「吉岡って名だったな。あの旧名古屋を纏め守護派の襲撃を食い止めていたらしい」
こうしてライバル達旧京都の革命派の次なる戦いは静かに始まりを告げていく。
旧京都との革命派と旧名古屋の革命派の邂逅は何をもたらすのか?
フレンド第十一話
END
あの日怪我をした家族を治療したのはリナ一人であり、その間自分はリナの手伝いをしていたが歯痒い気持ちでいっぱいだった。
ライバルさんやリナさんやかふぇいんさんは気にするなとフォローしついたが、その言葉を素直に受け取ることが出来なかったのだ。
「BOTUさんにハヤトさん、調子はどうですか?」
「だいぶよくなったかな。少し腹が痛いけど」
「僕は全然平気だけどね。少なくともこんな所で寝る必要なんてないぐらい」
梅田屋での戦いで守護派に思い切り殴られ内臓を損傷したBOTUと銃弾を受けて血の海に倒れていたハヤトは、旧京都の屋敷に戻ってきてからずっと寝たきりでその二人をずっと看病していたのはチカだった。
最初はリナが看病しようと言ってたが、チカが自分でやるとリナやライバルに言って二人はチカに任せることにしたのだ。
(あんなにボロボロだったのに二人ともよくなってる)
チカの脳裏によぎるのは梅田屋で苦しんでいたBOTUと青白い顔をして笑っていたハヤトの姿。
二人のそんな姿にチカは泣きそうだったのを今でも覚えている。
でも今は二人ともこうして話すほど回復していた。
「お二人とも本当によかっです」
嬉しそうに笑うチカにBOTUは頬をポリポリと掻いて、ハヤトは苦笑して手元に置いてあるお茶を口にしていた。
すると、
「二人とも怪我の具合はどうだ?」
三人のいる部屋の扉が開いて中に入ってきたのは私服姿のライバルであり、ライバルの姿にチカとBOTUはキョトンとしハヤトは申し訳なさそうに顔を俯かせていた。
「俺はいつでも動けるぜライバル!この程度へっちゃらだしな」
「それは頼もしいな。……けど今は大人しくしているんだ。見てる限りまだ完全じゃないだろうしな」
「ちぇ~」
不満そうに項垂れるBOTUにライバルやチカは苦笑している。
ライバルに見抜かれるようじゃまだまだかとBOTUは項垂れたまま頭を掻く。
まぁBOTU自身も全力では戦えないし仕方ないかと内心自覚しているためそれ以上何も言わないようにした。
「ハヤト、お前はどうだ?あれだけ血を流したんだ。まだ自由に身体が動かないんじゃないのか?」
「僕は全然大丈夫ですよ師匠。僕はBOTUと違ってそこまでダメージはありませんでしたし」
「よく言うぜ。リナさんがハヤトに血を輸血しなかったらヤバかったのによ」
「……」
BOTUの言葉にハヤトはギュッと布団を掴む。
そうBOTUの言う通りハヤトはリナの血がなかったら今現在も寝たきりになっていたのだ。
梅田屋で応急処置をしてなんとか一命はとりとめたが、血があまりにも足りなくハヤトの顔色は青白いままだった。
そこでリナが己の血をハヤトに輸血してハヤトの身体は回復したのだ。
リナにも迷惑をかけたとハヤト自身申し訳なかったようで、リナが薬を持ってきた時は謝っていたりする。
「ハヤト」
「僕は今すぐにでも戦えます。血のストックだってある。師匠が言ってくれるなら今ここで……ゴホッ!ゴホッ!」
「ハヤトさん!」
笑いながらライバルの心配を消そうと思ったハヤトだったが、その努力も無駄に終わりハヤトは苦しそうに咳をしてします。
そんなハヤトにチカは水と薬を渡してハヤトはそれを口にして息を整えた。
額から汗が流れ顔も青白くなっている。
「ハヤト。今のお前を見て俺が納得すると思うか?」
「それは…」
「今は身体を休めるんだ。これは師からの言葉と同時に革命派のリーダーとしての言葉だ。いいな?」
「……はい」
ギュッと拳を握り締め唇を噛むハヤトにライバルは小さく「すまん」と呟くとチカの方に目を向けた。
「チカちゃん。二人の事は頼んだ。もし無理をしようとしたら気絶させてでも止めていいからな」
「へっ?えっと……はい」
ライバルはフッと笑って部屋から出ようとしたのだが、ピタリと足を止めて三人に背を向けた状態で口を開いた。
「近々、旧名古屋の革命派の代表とその仲間達がここに来るそうだ。何が狙いかわからねぇがお前達も覚えておいてくれ」
それだけ伝えて部屋から出ていったライバルの後ろ姿をBOTUとチカは真剣に見つめていたが、ハヤトだけは顔を俯かせ拳を握り締めたままだった。
三人のいる部屋をあとにしたライバルは他のメンバーが集まっている部屋へとやって来た。
ライバルが部屋に入ってきたのに気づいたメンバーは静かに席に座りライバルの言葉を待つ。
「あの二人の様子を見てきたが、まだ二人とも戦える状態じゃねぇ。特にハヤトのやつ何かを俺に隠してやがる」
「あのハヤトがライバルさんに隠し事?」
ライバルの言葉に信じられない表情をするフユキ。
あの師匠主義が隠し事をするなどあり得ないからだ。
絶対にライバルは全てを伝えていたハヤトが隠し事をするなどただ事ではない。
「まさか…」
他にも動揺しているメンバーがいるなかでリナはふとある事が頭に浮かびポツリと呟く。
ハヤトの治療をしたのは自分であり、ハヤトの身体から摘出した弾丸やハヤトが口にした言葉を知っているのも自分だけだった。
治療をしていた時にハヤトは、『血を使おうとして苦しくなった』とリナに話していた。
もしかするとハヤトは――
「だとしたら次の戦いに二人を参加させる事は出来ませんね」
部屋の中に静かに響く烈架の声に皆の視線が烈架の方に向けられる。
烈架が口にした次の戦いとは、旧名古屋のリーダーから頼まれた事でありライバルはその事で旧名古屋の革命派と会うのである。
そしてそれをハヤトやBOTUに伝えなかったのは、あの二人がそれを知ったらついて行くと言い出しかねないからだ。
まともに戦える状態じゃない二人をライバルは連れていこうとはしない。
「もちろんあの二人を戦いに参加させるつもりはねぇ。あと…」
「お兄ちゃん」
「んっ?どうしたリナ」
ライバルが他にも待機させる人間を口にしようとしたが、リナが真剣な表情でライバルを見つめ口を開くとライバルは首を傾げた。
「私も今回は待機でいいかな?ちょっと調べたいことがあるの」
「それは構わないが、チカちゃんはどうする?今回は治療の意味も込めてリナと一緒に連れていくつもりだったんだが」
「それなら大丈夫だよ。チカちゃんの事はお兄ちゃんに守ってもらうから」
「なっ!」
まさかのリナの言葉にライバルは驚き目を丸くする。
ここでリナなら烈架やかふぇいん辺りに頼むと思ったのに、まさか自分を指名してくるなど予想出来なかったからだ。
大切な妹に頼まれて自分が断れないことをよく知っている。
「大丈夫でしょお兄ちゃん?」
「…わかった。チカちゃんは出来るだけ俺の傍にいてもらうようにする」
「さっすがお兄ちゃん!」
妹にこう言われてライバルは呆れたようにため息を吐くが、その表情はかなり嬉しそうでありその兄と妹のやり取りを見ているメンバーもまた和んだようにお茶を飲んでいた。
「そういえばライバルさん」
「どうしたかふぇいん?」
「旧名古屋の革命派ってどんなやつらなんだ?そいつらは旧大阪のやつらより強いのか?」
かふぇいんの問いにライバルはスキンヘッドをポリポリと掻き少し困ったような表情を浮かべる。
何故そんな反応なのかと言うと、ライバル自身もそこまで旧名古屋の革命派を知らないからである。
「悪いなかふぇいん。俺もそこまで知らねぇんだ。俺が知ってんのは旧名古屋を纏めているリーダーの名前だけだ」
「そいつの名は?」
「吉岡って名だったな。あの旧名古屋を纏め守護派の襲撃を食い止めていたらしい」
こうしてライバル達旧京都の革命派の次なる戦いは静かに始まりを告げていく。
旧京都との革命派と旧名古屋の革命派の邂逅は何をもたらすのか?
フレンド第十一話
END