旧大阪へ突入
【旧大阪】
かつては大勢の人で賑わい溢れかえっていたこの場所も、今ではその面影を感じられず寂れた街へと変わっていた。
ここで住んでいる人達の顔に笑顔は感じられず強張ったような表情や生気を感じさせない人達がちらほらと見かける。
「やはり清水一派の警戒心は変わらないままか」
「清水一派がこうならハヤト達が潜入した宮崎一派が本命かもな。烈架、あっちの様子はわかるか?」
「今はまだ何も」
清水一派の隙をついてライバル・烈架・かふぇいん・リナ・チカ達五人は古びた店の中で話し合いをしていた。
ここに来るまでに清水一派の様子を見ていたが、武装や警戒をしている者達はあまりいなかった。
守護派が襲撃してくる可能性があるのにここまで警戒していないとなると逆に怪しいとライバルは感じていた。
「チカちゃん大丈夫か?」
「はい。でもどうして皆さん隠れているんですか?清水一派っていう人達も仲間なんですよね?」
ライバルの言葉に小さく頷いてチカはふと疑問を口にする。
チカはこの場所に来るまでにライバル達が身を潜めていた事や、極力バレないように動いていた事に対して不思議に思っていた。
ここの人達も革命派なら普通に会わないのだろうか?と内心思う。
「ちょっとここの奴らとは複雑な関係なんだよ」
「複雑な関係?」
不思議そうな表情をしていたチカにかふぇいんが複雑な表情をしながら口を開く。
「旧京都にいる俺達とこの旧大阪を根城にしている宮崎・清水一派で一度会ったことはあるが、そん時にハヤトとBOTUの二人が旧大阪の奴らを数人殺してんだよ」
「ハヤトさんとBOTUさんが?」
「あぁ。宮崎と清水の二人がライバルさんとリナを侮辱してな。BOTUはおそらくハヤトに便乗したんだろうが、ハヤトは本気でキレてその場にいた宮崎と清水の仲間を殺したんだよ。リナだけじゃなくライバルさんまで侮辱したからな。あの師匠バカがキレない訳ないさ」
あの時の惨劇を思いだし苦笑するかふぇいん。
あの時自分もその場にいたがハヤトの血を避けるのと、他の人達を逃がすので精一杯だった。
ハヤトを止めたのはライバルさんとリナさんだったがあの時のハヤトは本当に恐ろしかったのを今でも覚えている。
(本当にハヤトさんは二人が大切なんだ…)
かふぇいんの話を聞いてチカはただそう思う。
「この話はもういいだろ。それより外の様子が気になる」
ふと今まで黙っていた烈架が立ち上がり、窓を開けて外の様子を確認する。
自分達がいる店の周りには人っ子一人いないが今現在どうなっているか気になるようだ。
宮崎一派の動きが分からない以上自分の目で確かめる必要があるのか、烈架は己の武器をポケットに入れ腕や脚に装着してライバルに目を向ける。
「一人で大丈夫か?」
「はい。ただもしもの時の為にリナさんかチカのどちらかを連れて行きたいのですが……」
「デートの誘いならもう少し分かりやすく言えよ烈架」
「勘違いするな。俺はそんな事に全く興味はない」
あくまでも伝令役の為に二人の名を言った烈架に対しかふぇいんはニヤニヤ笑い茶化すように口を開く。
かふぇいん的にはここで少しは狼狽える烈架の姿を見たかったが、烈架は表情を崩す事なく返しギラリとした目付きでかふぇいんを見ていた。
「冗談だっつうの。それでどうすんだライバルさん」
「……」
腕を組みライバルは目を閉じながら考える。
チカちゃんもリナも戦える力はない。
烈架の戦い方なら守れる可能性はあるしその武器の音で自分達が動ける。
しかしどちらを連れて行かせればいいだろうか?
「あの~ライバルさん」
「どうしたチカちゃん?」
「私が烈架さんについて行きます」
「いいのか?」
「はい。私も皆さんの力になりたくてここにいますから」
ライバルの真正面に座るチカの表情は怯えよりも笑顔を浮かべていた。
ここに来る前は少し怯えていたが、今は安心したように和らいでいる。
リナも何も言わないところを見るとチカちゃんの意思を理解しているのだろう。
「ならチカちゃんは烈架についていってくれ。かふぇいん、お前もリナを連れて街の様子を見てきてくれないか?」
「あいよ。その間ライバルさんはどうすんだ?」
「俺は俺なりに動くさ」
「分かった。じゃあ行くかリナ」
「はいはい」
烈架とチカのペアとかふぇいんとリナのペアがこの部屋から去り、ライバルは座ったまま目を閉じる。
この旧大阪を舞台に守護派がどう動くのか?
清水一派なのか?
それとも宮崎一派なのか?
少しでも情報があれば動けるのだが今はあの四人を待ちながら自分は考えるしかない。
旧大阪の街を警戒しながら歩く烈架とチカの二人。
二人が今歩いている場所はかつては商店街だった場所で今はその全てがシャッターをして閉じられていた。
活気も感じられず寂れた街を歩きながらチカはキョロキョロと辺りを見回す。
「何をキョロキョロしている?」
「皆さんが住んでいる場所と違ってここはいろんなお店があるんですね」
「かつてここは商店街だったらしい。この場所を清水一派がそのままにしているのは昔の思い出を残したかったからだと言っていた。人で賑わっていたこの場所や俺達が住んでいる場所も笑顔で溢れていた」
旧大阪も旧京都も今ではゴーストタウン。
それでも旧大阪も旧京都も原型を残しているのは、その街を心の底から大切にしているからだ。
その気持ちだけは烈架自身理解しているが、旧大阪の宮崎一派や清水一派を味方とは見ない烈架である。
「そろそろ戻るぞ。やはり何も情報らしいものはなかったか」
「はい」
辺りを見回し自分達が隠れていた場所に戻ろうとした烈架とチカだったが、物影から鎧を着た複数の者達が現れ烈架はチカを守るように背に隠す。
「さっきからこそこそしていたのはお前達だな」
「貴様何者だ?清水一派の人間にしては警戒心がありすぎる。それに我々を見ても動じる事はない」
「貴様らに名乗るつもりはない。しかし貴様ら守護派がここにいるという事はやはり襲撃は清水一派か?それとも宮崎一派にも貴様らのような人間がいるのか。どちらにせよいい土産ができた」
烈架はチラリと背に隠したチカに目を向け離れるように合図し、チカはそれに小さく頷くと不安気な表情で離れて烈架を見守るように見つめる。
「悪いがすぐに終わらせてもらう」
「なめたマネを!!」
「たかが一人で何が出来る!」
「殺す!」
鎧を着た者達が剣を抜き構える。
自分に向けられる殺気に烈架は息を吐いて落ち着いたように目を向ける。
この者達はあくまでも生け捕りであり殺してはならない。
あまり武器を使えないがやるしかないようだ。
「いくぞ!」
駆け出すように脚を出して鎧を着た者達に接近する。
一人一人の武器は手にしている剣のみ。
降り下ろす動作が烈架には遅く見え剣が降り下ろされた時には、烈架の武器が鎧を着た者の腕の部分に引っ付いており気づいたときには爆発していた。
失った腕の部分から大量の血が流れ鎧を着た者は悲鳴を上げながら膝をつく。
その間に鎧を着た者が烈架を凪ぎ払うように剣を横振りで振るうが、烈架は靴の底の部分をわざと剣にぶつけると、底に仕込んでいた爆薬が爆発して剣をバラバラに破壊する。
さらに烈架は唖然としていたその者に接近して鎧の唯一守られていない関節部分にダイナマイトを仕掛けすぐに爆破させると鎧を着た者は跡形もなくバラバラになる。
片腕を失い悲鳴を上げる一人といまだに呆然としている一人は一目散に逃げようとしたが、烈架が回り込み鎧の胸部に腕を当て棒状の爆薬で鎧を破壊し、無防備になった二人の首に手刀を喰らわせ気絶させた。
「威力が低いものを使ったつもりがやはりうまくいかないか」
辺りを見回しやれやれとため息を吐く。
烈架と守護派の戦闘で辺りは焼け焦げ、いくつかの店は跡形もなく吹き飛び惨劇だけが広がっていた。
「烈架さん!」
「怪我はなかったか?」
「はい。でも烈架さん脚を……」
「この程度かすり傷だ。それよりも早くこの二人を連れて戻るぞ」
離れた場所に隠れていたチカは烈架に近付いてすぐに気づく。
烈架の脚からは血が流れ、それは処置しないと止まらない勢いで流れていた。
チカから見たら大怪我なのだが、烈架はそれを痛がる素振りを見せず気絶した二人の脚を引きずりながら歩いていく。
(痛くないのかな…)
まるで痛みなどないように歩く烈架にチカは首を傾げる。
先程の戦いで烈架は脚だけでなく腕も少しだけ怪我をしているように見えていたのにそんな事を口にはしない。
無理をしているのか?
我慢しているのか?
気絶した二人を引きずる烈架の背中を見つめながらチカは考える。
自分にも少しは他に何か出来ないのだろうかと。
フレンド第六話
END
かつては大勢の人で賑わい溢れかえっていたこの場所も、今ではその面影を感じられず寂れた街へと変わっていた。
ここで住んでいる人達の顔に笑顔は感じられず強張ったような表情や生気を感じさせない人達がちらほらと見かける。
「やはり清水一派の警戒心は変わらないままか」
「清水一派がこうならハヤト達が潜入した宮崎一派が本命かもな。烈架、あっちの様子はわかるか?」
「今はまだ何も」
清水一派の隙をついてライバル・烈架・かふぇいん・リナ・チカ達五人は古びた店の中で話し合いをしていた。
ここに来るまでに清水一派の様子を見ていたが、武装や警戒をしている者達はあまりいなかった。
守護派が襲撃してくる可能性があるのにここまで警戒していないとなると逆に怪しいとライバルは感じていた。
「チカちゃん大丈夫か?」
「はい。でもどうして皆さん隠れているんですか?清水一派っていう人達も仲間なんですよね?」
ライバルの言葉に小さく頷いてチカはふと疑問を口にする。
チカはこの場所に来るまでにライバル達が身を潜めていた事や、極力バレないように動いていた事に対して不思議に思っていた。
ここの人達も革命派なら普通に会わないのだろうか?と内心思う。
「ちょっとここの奴らとは複雑な関係なんだよ」
「複雑な関係?」
不思議そうな表情をしていたチカにかふぇいんが複雑な表情をしながら口を開く。
「旧京都にいる俺達とこの旧大阪を根城にしている宮崎・清水一派で一度会ったことはあるが、そん時にハヤトとBOTUの二人が旧大阪の奴らを数人殺してんだよ」
「ハヤトさんとBOTUさんが?」
「あぁ。宮崎と清水の二人がライバルさんとリナを侮辱してな。BOTUはおそらくハヤトに便乗したんだろうが、ハヤトは本気でキレてその場にいた宮崎と清水の仲間を殺したんだよ。リナだけじゃなくライバルさんまで侮辱したからな。あの師匠バカがキレない訳ないさ」
あの時の惨劇を思いだし苦笑するかふぇいん。
あの時自分もその場にいたがハヤトの血を避けるのと、他の人達を逃がすので精一杯だった。
ハヤトを止めたのはライバルさんとリナさんだったがあの時のハヤトは本当に恐ろしかったのを今でも覚えている。
(本当にハヤトさんは二人が大切なんだ…)
かふぇいんの話を聞いてチカはただそう思う。
「この話はもういいだろ。それより外の様子が気になる」
ふと今まで黙っていた烈架が立ち上がり、窓を開けて外の様子を確認する。
自分達がいる店の周りには人っ子一人いないが今現在どうなっているか気になるようだ。
宮崎一派の動きが分からない以上自分の目で確かめる必要があるのか、烈架は己の武器をポケットに入れ腕や脚に装着してライバルに目を向ける。
「一人で大丈夫か?」
「はい。ただもしもの時の為にリナさんかチカのどちらかを連れて行きたいのですが……」
「デートの誘いならもう少し分かりやすく言えよ烈架」
「勘違いするな。俺はそんな事に全く興味はない」
あくまでも伝令役の為に二人の名を言った烈架に対しかふぇいんはニヤニヤ笑い茶化すように口を開く。
かふぇいん的にはここで少しは狼狽える烈架の姿を見たかったが、烈架は表情を崩す事なく返しギラリとした目付きでかふぇいんを見ていた。
「冗談だっつうの。それでどうすんだライバルさん」
「……」
腕を組みライバルは目を閉じながら考える。
チカちゃんもリナも戦える力はない。
烈架の戦い方なら守れる可能性はあるしその武器の音で自分達が動ける。
しかしどちらを連れて行かせればいいだろうか?
「あの~ライバルさん」
「どうしたチカちゃん?」
「私が烈架さんについて行きます」
「いいのか?」
「はい。私も皆さんの力になりたくてここにいますから」
ライバルの真正面に座るチカの表情は怯えよりも笑顔を浮かべていた。
ここに来る前は少し怯えていたが、今は安心したように和らいでいる。
リナも何も言わないところを見るとチカちゃんの意思を理解しているのだろう。
「ならチカちゃんは烈架についていってくれ。かふぇいん、お前もリナを連れて街の様子を見てきてくれないか?」
「あいよ。その間ライバルさんはどうすんだ?」
「俺は俺なりに動くさ」
「分かった。じゃあ行くかリナ」
「はいはい」
烈架とチカのペアとかふぇいんとリナのペアがこの部屋から去り、ライバルは座ったまま目を閉じる。
この旧大阪を舞台に守護派がどう動くのか?
清水一派なのか?
それとも宮崎一派なのか?
少しでも情報があれば動けるのだが今はあの四人を待ちながら自分は考えるしかない。
旧大阪の街を警戒しながら歩く烈架とチカの二人。
二人が今歩いている場所はかつては商店街だった場所で今はその全てがシャッターをして閉じられていた。
活気も感じられず寂れた街を歩きながらチカはキョロキョロと辺りを見回す。
「何をキョロキョロしている?」
「皆さんが住んでいる場所と違ってここはいろんなお店があるんですね」
「かつてここは商店街だったらしい。この場所を清水一派がそのままにしているのは昔の思い出を残したかったからだと言っていた。人で賑わっていたこの場所や俺達が住んでいる場所も笑顔で溢れていた」
旧大阪も旧京都も今ではゴーストタウン。
それでも旧大阪も旧京都も原型を残しているのは、その街を心の底から大切にしているからだ。
その気持ちだけは烈架自身理解しているが、旧大阪の宮崎一派や清水一派を味方とは見ない烈架である。
「そろそろ戻るぞ。やはり何も情報らしいものはなかったか」
「はい」
辺りを見回し自分達が隠れていた場所に戻ろうとした烈架とチカだったが、物影から鎧を着た複数の者達が現れ烈架はチカを守るように背に隠す。
「さっきからこそこそしていたのはお前達だな」
「貴様何者だ?清水一派の人間にしては警戒心がありすぎる。それに我々を見ても動じる事はない」
「貴様らに名乗るつもりはない。しかし貴様ら守護派がここにいるという事はやはり襲撃は清水一派か?それとも宮崎一派にも貴様らのような人間がいるのか。どちらにせよいい土産ができた」
烈架はチラリと背に隠したチカに目を向け離れるように合図し、チカはそれに小さく頷くと不安気な表情で離れて烈架を見守るように見つめる。
「悪いがすぐに終わらせてもらう」
「なめたマネを!!」
「たかが一人で何が出来る!」
「殺す!」
鎧を着た者達が剣を抜き構える。
自分に向けられる殺気に烈架は息を吐いて落ち着いたように目を向ける。
この者達はあくまでも生け捕りであり殺してはならない。
あまり武器を使えないがやるしかないようだ。
「いくぞ!」
駆け出すように脚を出して鎧を着た者達に接近する。
一人一人の武器は手にしている剣のみ。
降り下ろす動作が烈架には遅く見え剣が降り下ろされた時には、烈架の武器が鎧を着た者の腕の部分に引っ付いており気づいたときには爆発していた。
失った腕の部分から大量の血が流れ鎧を着た者は悲鳴を上げながら膝をつく。
その間に鎧を着た者が烈架を凪ぎ払うように剣を横振りで振るうが、烈架は靴の底の部分をわざと剣にぶつけると、底に仕込んでいた爆薬が爆発して剣をバラバラに破壊する。
さらに烈架は唖然としていたその者に接近して鎧の唯一守られていない関節部分にダイナマイトを仕掛けすぐに爆破させると鎧を着た者は跡形もなくバラバラになる。
片腕を失い悲鳴を上げる一人といまだに呆然としている一人は一目散に逃げようとしたが、烈架が回り込み鎧の胸部に腕を当て棒状の爆薬で鎧を破壊し、無防備になった二人の首に手刀を喰らわせ気絶させた。
「威力が低いものを使ったつもりがやはりうまくいかないか」
辺りを見回しやれやれとため息を吐く。
烈架と守護派の戦闘で辺りは焼け焦げ、いくつかの店は跡形もなく吹き飛び惨劇だけが広がっていた。
「烈架さん!」
「怪我はなかったか?」
「はい。でも烈架さん脚を……」
「この程度かすり傷だ。それよりも早くこの二人を連れて戻るぞ」
離れた場所に隠れていたチカは烈架に近付いてすぐに気づく。
烈架の脚からは血が流れ、それは処置しないと止まらない勢いで流れていた。
チカから見たら大怪我なのだが、烈架はそれを痛がる素振りを見せず気絶した二人の脚を引きずりながら歩いていく。
(痛くないのかな…)
まるで痛みなどないように歩く烈架にチカは首を傾げる。
先程の戦いで烈架は脚だけでなく腕も少しだけ怪我をしているように見えていたのにそんな事を口にはしない。
無理をしているのか?
我慢しているのか?
気絶した二人を引きずる烈架の背中を見つめながらチカは考える。
自分にも少しは他に何か出来ないのだろうかと。
フレンド第六話
END