自己紹介
少女の名前『チカ』という事だけでも分かり、少しだけ前進し会議室に漂っていた緊迫した雰囲気が消えていく。
ライバルはそのまま話を進めていく形で椅子に座り直し、いまだに立っているリナとチカの二人を空席に座らせ口を開く。
「これでキミは俺達革命派の一員で家族だ。最初は不自由させるけどそこは我慢してくれ。極力リナと一緒にいてもらうから」
「はい…」
「大丈夫だよチカちゃん。どこかの怖い二人と違って私は優しいから」
ニコニコ笑いながらチカの頭を撫でリナの席から離れた約二名に対し皮肉を言うリナに、それを聞いていた烈架とハヤトは互いの顔を見合わせ、
「俺達の事か?」
「違うでしょ?きっと光さんやBOTUの事だよ」
「だよな~」
「「あっははははは!!」」
全く笑っていない顔つきで会話をし笑っており、たまたまその近くにいたオレンジ色の髪をした女の子は顔色を青くさせながらガタガタ震えていた。
なんとも不憫である。
「あの二人は後で拳骨だな。それで何か聞きたい事とかあるか?」
呆れたように溜め息を吐くライバルにリナは苦笑して、チカはやはりびくりと怯えた反応を見せる。
ライバルが優しい口調で話し掛けているのはチカも分かってはいるのだが、どうしても身体が反応してびくびくと震えてしまうようだ。
チカはライバルの問いに恐る恐る口を開く。
「あの~」
「んっ?」
「革命派って何ですか?」
「あ~そこからなのか」
スキンヘッドに手を当てて困ったように視線をリナに向けるライバル。
それもそのはず。
よくよく考えたらこの女の子は記憶がなく自分が誰なのかすら分からなかったのだ。
自分がこれから過ごす場所を聞くのは当たり前の事である。
「チカちゃん、革命派っていうのは楽しくて賑やかな場所って思ってくれればいいよ」
「楽しい?」
(リナ!ナイスだ!)
「そう。ここにいる人達は皆本当に優しい人達ばかりだから安心して」
「うん」
リナのフォローによりとりあえず納得してくれたチカを見ながら、内心ガッツポーズをするライバル。
まだこの女の子に自分達がやっている事を話す訳にはいかないからだ。
革命派が本当は何をしているのかなんてまだ話せない。
そんな二人のやり取りを見ながら、呆れたり溜め息を吐いたり馬鹿にしたように鼻で笑うメンバーがいた。
いつかは嫌でも知る事になるのにそれを隠す意味があるのだろうか?
革命派は確かに賑やかな場所ではあるが、この女の子が革命派と守護派の争いを見て果たしてどう思うか。
「何か言いたそうだなBOTU」
「別に~」
雪のように白い髪にクマの髪留めをしている女性の言葉にBOTUはヘラヘラ笑いながら返す。
おそらく先程のやり取りを鼻で笑っていたのはBOTU。
その態度に近くに座っていた女の子が声を掛けたが、BOTUはヘラヘラと返しただけでそれ以上は何も口にしなかった。
女性もそれ以上BOTUに追求はせず視線をチカの方に向ける。
リナと話ながら微かに笑っている女の子。
見た目や雰囲気から女の子に怪しいところはない。
小動物のような反応を見るとどうしても自分は和んでしまう。
「革命派についてはリナの言った通りだ。あとはここにいるメンバーの自己紹介くらいか?」
「お兄ちゃん、自己紹介って小学生じゃないんだから…」
苦笑しながら話すリナにライバルは、いやいやと首を横に振り背中に炎を出現させ熱く語り始める。
「いいかリナ!仲良しになる為にはまず相手の名前を知らなきゃいけない!そこからお互いのコミュニケーションが始まり、親睦を深めていくんだ!ましてチカちゃんは今日から家族になるんだから、俺達二人だけでなく皆の名前を知らなきゃいけない訳なんだよ。自己紹介を甘くみたらダメだ!最初のインパクトが何より大事なんだぞ」
「そっ、そうなんだ」
「妹に引かれてますよ師匠」
「何故!?」
ライバルの言葉にリナはひきつったような顔になり、その反応を見ながらハヤトは苦笑してライバルに伝える。
妹の反応がライバルには不思議でたまらないようだ。
こんなに熱く語ったのに妹が何故引いたのかなどライバルがこれからも知ることはないだろう。
「それで誰からするの自己紹介?」
「そだな、俺とリナは最後にするとしてハヤトから自己紹介でいいだろ?」
「やっぱりそうなりますよね~」
ライバルの横に座っていたハヤトは髪をかき立ち上がる。
ハヤトが立ち上がり、横ではライバルが「インパクトだぞハヤト!」と、熱い視線が送られるがそんな事など気づかないと言わんばかりに自己紹介をする。
「僕の名前はハヤト。革命派のリーダーでもあるライバルさんの弟子だよ。師匠とリナさんがキミを家族として迎えるなら僕から言うことはないかな。ただ……師匠の迷惑になったら許さないけど」
ニッコリ笑うハヤトだがそこから溢れる殺気に似た雰囲気にチカはびくびく震えながら頷く。
ハヤト本人は優しく言ったようだが、チカにとっては怖い人と捉えられたようで確かにインパクトは与えたようだ。
これからこんな自己紹介があるのかと、チカだけでなくリナとライバルまで不安になる。
自分が思っている自己紹介と違う!とライバルは内心ツッコム。
「次は俺だな」
ハヤトの横に座っていた青色の髪をした青年がゆっくり立ち上がる。
「俺の名前は烈架だ。さっき自己紹介したハヤトの相棒みたいな感じだ。これからよろしくな」
「はっ、はい」
先程のハヤトと違って紳士的に自己紹介する烈架に、チカは頷きながら返事をする。
また一言なにか言われるんじゃないかと内心思っていたチカにとって、どうやら烈架は好印象だったようだ。
そんなチカの反応を見てライバルとリナは安心したように息を吐く。
「お兄ちゃん、この調子なら」
「大丈夫だな。さすがは烈架だ」
烈架の自己紹介から次々とチカに自分の名前を伝えていくメンバー達。
金髪の髪にドクロのピアスをしている男性【BOTU】
赤い髪にコーヒーを飲みながら笑う男性【かふぇいん】
水色の髪に手には革のグローブをつけている男性【冷】
灰色の髪をポニーテールにして眼鏡を光らせている男性【光】
チカを見ながらニコニコ笑っているオレンジ色の髪をした女性【ちゃり娘】
雪のように白い髪をして微笑んでいる女性【フユキ】
薄緑色の髪にボブカットをした女性【ひこ】
ライバルとリナ以外のメンバーは自己紹介を終えて、残るは二人となった。
リナは自分の隣に座っているチカの方に身体を向け優しく微笑みながら自分の名前は改めて口にする。
「私はリナ。この革命派のリーダーの妹で主に皆の胃袋を任されてます!基本的にチカちゃんと一緒にいるからよろしくね」
「よろしくお願いします」
リナの自己紹介に、顔はまだ若干ひきつっているようだがチカは笑みを浮かべて返す。
そんな姿にリナを含む女性陣は和んでいるのか笑顔でチカを見ていた。
それに比べて男性陣はライバルとかふぇいん以外は、ちゃんと聞いているのかと言いたくなるほど無関心である。
そんな男性陣は当然リナに罰をくらうことになる。
「お兄ちゃんとかふぇいんさん以外は一日ご飯抜き決定ね」
「ちょっ!?」
「待ってくれリナさん!俺は烈架やハヤトと違ってちゃんと聞いてたぞ!」
「俺は無実だ!」
冷とBOTUと光の三人が慌てて弁明するがリナは聞く耳もたずで知らんぷりをしている。
慌てる三人に対し烈架とハヤトは余裕そうな表情を浮かべていた。
その理由は――
(たまたま早く起きてつまみ食いしたなんて言えないな)
(僕と烈架が昨日回収した戦利品を食料にして隠してるなんて言えないね)
冷や汗を流しながら二人は我関せずを通し続ける。
バレたらそれこそ二・三日はご飯をもらえなくなる。
絶対に喋ってなるものか。
「お前らもいい加減自業自得を知るべきだぞ。さて最後は俺だな。俺の名はさっきも言った通りライバルだ。革命派のリーダーでリナの兄貴だ。チカちゃんの事はリナに任せるけど、もしかしたら他のメンバーとも一緒になることがあるかもしれないけどいいか?」
「がっ、頑張ります」
「いい返事だ。じゃあ今日からよろしくな!俺達革命派はチカちゃんを歓迎する!」
チカに向けて差し出されたライバルの手。
自分よりも大きく、どこか安心させてくれそうな暖かさを持った手を見ながらチカは首を傾げる。
握手というのを知らないのだろうか、とリナは察したのかチカにライバルの手を握ればいいんだよと、チカに優しく伝える。
リナに言われ首を傾げたままチカはライバルの手をおずおずと握り握手をするのであった。
新しい一日がこうして始まる。
フレンド三話
END
ライバルはそのまま話を進めていく形で椅子に座り直し、いまだに立っているリナとチカの二人を空席に座らせ口を開く。
「これでキミは俺達革命派の一員で家族だ。最初は不自由させるけどそこは我慢してくれ。極力リナと一緒にいてもらうから」
「はい…」
「大丈夫だよチカちゃん。どこかの怖い二人と違って私は優しいから」
ニコニコ笑いながらチカの頭を撫でリナの席から離れた約二名に対し皮肉を言うリナに、それを聞いていた烈架とハヤトは互いの顔を見合わせ、
「俺達の事か?」
「違うでしょ?きっと光さんやBOTUの事だよ」
「だよな~」
「「あっははははは!!」」
全く笑っていない顔つきで会話をし笑っており、たまたまその近くにいたオレンジ色の髪をした女の子は顔色を青くさせながらガタガタ震えていた。
なんとも不憫である。
「あの二人は後で拳骨だな。それで何か聞きたい事とかあるか?」
呆れたように溜め息を吐くライバルにリナは苦笑して、チカはやはりびくりと怯えた反応を見せる。
ライバルが優しい口調で話し掛けているのはチカも分かってはいるのだが、どうしても身体が反応してびくびくと震えてしまうようだ。
チカはライバルの問いに恐る恐る口を開く。
「あの~」
「んっ?」
「革命派って何ですか?」
「あ~そこからなのか」
スキンヘッドに手を当てて困ったように視線をリナに向けるライバル。
それもそのはず。
よくよく考えたらこの女の子は記憶がなく自分が誰なのかすら分からなかったのだ。
自分がこれから過ごす場所を聞くのは当たり前の事である。
「チカちゃん、革命派っていうのは楽しくて賑やかな場所って思ってくれればいいよ」
「楽しい?」
(リナ!ナイスだ!)
「そう。ここにいる人達は皆本当に優しい人達ばかりだから安心して」
「うん」
リナのフォローによりとりあえず納得してくれたチカを見ながら、内心ガッツポーズをするライバル。
まだこの女の子に自分達がやっている事を話す訳にはいかないからだ。
革命派が本当は何をしているのかなんてまだ話せない。
そんな二人のやり取りを見ながら、呆れたり溜め息を吐いたり馬鹿にしたように鼻で笑うメンバーがいた。
いつかは嫌でも知る事になるのにそれを隠す意味があるのだろうか?
革命派は確かに賑やかな場所ではあるが、この女の子が革命派と守護派の争いを見て果たしてどう思うか。
「何か言いたそうだなBOTU」
「別に~」
雪のように白い髪にクマの髪留めをしている女性の言葉にBOTUはヘラヘラ笑いながら返す。
おそらく先程のやり取りを鼻で笑っていたのはBOTU。
その態度に近くに座っていた女の子が声を掛けたが、BOTUはヘラヘラと返しただけでそれ以上は何も口にしなかった。
女性もそれ以上BOTUに追求はせず視線をチカの方に向ける。
リナと話ながら微かに笑っている女の子。
見た目や雰囲気から女の子に怪しいところはない。
小動物のような反応を見るとどうしても自分は和んでしまう。
「革命派についてはリナの言った通りだ。あとはここにいるメンバーの自己紹介くらいか?」
「お兄ちゃん、自己紹介って小学生じゃないんだから…」
苦笑しながら話すリナにライバルは、いやいやと首を横に振り背中に炎を出現させ熱く語り始める。
「いいかリナ!仲良しになる為にはまず相手の名前を知らなきゃいけない!そこからお互いのコミュニケーションが始まり、親睦を深めていくんだ!ましてチカちゃんは今日から家族になるんだから、俺達二人だけでなく皆の名前を知らなきゃいけない訳なんだよ。自己紹介を甘くみたらダメだ!最初のインパクトが何より大事なんだぞ」
「そっ、そうなんだ」
「妹に引かれてますよ師匠」
「何故!?」
ライバルの言葉にリナはひきつったような顔になり、その反応を見ながらハヤトは苦笑してライバルに伝える。
妹の反応がライバルには不思議でたまらないようだ。
こんなに熱く語ったのに妹が何故引いたのかなどライバルがこれからも知ることはないだろう。
「それで誰からするの自己紹介?」
「そだな、俺とリナは最後にするとしてハヤトから自己紹介でいいだろ?」
「やっぱりそうなりますよね~」
ライバルの横に座っていたハヤトは髪をかき立ち上がる。
ハヤトが立ち上がり、横ではライバルが「インパクトだぞハヤト!」と、熱い視線が送られるがそんな事など気づかないと言わんばかりに自己紹介をする。
「僕の名前はハヤト。革命派のリーダーでもあるライバルさんの弟子だよ。師匠とリナさんがキミを家族として迎えるなら僕から言うことはないかな。ただ……師匠の迷惑になったら許さないけど」
ニッコリ笑うハヤトだがそこから溢れる殺気に似た雰囲気にチカはびくびく震えながら頷く。
ハヤト本人は優しく言ったようだが、チカにとっては怖い人と捉えられたようで確かにインパクトは与えたようだ。
これからこんな自己紹介があるのかと、チカだけでなくリナとライバルまで不安になる。
自分が思っている自己紹介と違う!とライバルは内心ツッコム。
「次は俺だな」
ハヤトの横に座っていた青色の髪をした青年がゆっくり立ち上がる。
「俺の名前は烈架だ。さっき自己紹介したハヤトの相棒みたいな感じだ。これからよろしくな」
「はっ、はい」
先程のハヤトと違って紳士的に自己紹介する烈架に、チカは頷きながら返事をする。
また一言なにか言われるんじゃないかと内心思っていたチカにとって、どうやら烈架は好印象だったようだ。
そんなチカの反応を見てライバルとリナは安心したように息を吐く。
「お兄ちゃん、この調子なら」
「大丈夫だな。さすがは烈架だ」
烈架の自己紹介から次々とチカに自分の名前を伝えていくメンバー達。
金髪の髪にドクロのピアスをしている男性【BOTU】
赤い髪にコーヒーを飲みながら笑う男性【かふぇいん】
水色の髪に手には革のグローブをつけている男性【冷】
灰色の髪をポニーテールにして眼鏡を光らせている男性【光】
チカを見ながらニコニコ笑っているオレンジ色の髪をした女性【ちゃり娘】
雪のように白い髪をして微笑んでいる女性【フユキ】
薄緑色の髪にボブカットをした女性【ひこ】
ライバルとリナ以外のメンバーは自己紹介を終えて、残るは二人となった。
リナは自分の隣に座っているチカの方に身体を向け優しく微笑みながら自分の名前は改めて口にする。
「私はリナ。この革命派のリーダーの妹で主に皆の胃袋を任されてます!基本的にチカちゃんと一緒にいるからよろしくね」
「よろしくお願いします」
リナの自己紹介に、顔はまだ若干ひきつっているようだがチカは笑みを浮かべて返す。
そんな姿にリナを含む女性陣は和んでいるのか笑顔でチカを見ていた。
それに比べて男性陣はライバルとかふぇいん以外は、ちゃんと聞いているのかと言いたくなるほど無関心である。
そんな男性陣は当然リナに罰をくらうことになる。
「お兄ちゃんとかふぇいんさん以外は一日ご飯抜き決定ね」
「ちょっ!?」
「待ってくれリナさん!俺は烈架やハヤトと違ってちゃんと聞いてたぞ!」
「俺は無実だ!」
冷とBOTUと光の三人が慌てて弁明するがリナは聞く耳もたずで知らんぷりをしている。
慌てる三人に対し烈架とハヤトは余裕そうな表情を浮かべていた。
その理由は――
(たまたま早く起きてつまみ食いしたなんて言えないな)
(僕と烈架が昨日回収した戦利品を食料にして隠してるなんて言えないね)
冷や汗を流しながら二人は我関せずを通し続ける。
バレたらそれこそ二・三日はご飯をもらえなくなる。
絶対に喋ってなるものか。
「お前らもいい加減自業自得を知るべきだぞ。さて最後は俺だな。俺の名はさっきも言った通りライバルだ。革命派のリーダーでリナの兄貴だ。チカちゃんの事はリナに任せるけど、もしかしたら他のメンバーとも一緒になることがあるかもしれないけどいいか?」
「がっ、頑張ります」
「いい返事だ。じゃあ今日からよろしくな!俺達革命派はチカちゃんを歓迎する!」
チカに向けて差し出されたライバルの手。
自分よりも大きく、どこか安心させてくれそうな暖かさを持った手を見ながらチカは首を傾げる。
握手というのを知らないのだろうか、とリナは察したのかチカにライバルの手を握ればいいんだよと、チカに優しく伝える。
リナに言われ首を傾げたままチカはライバルの手をおずおずと握り握手をするのであった。
新しい一日がこうして始まる。
フレンド三話
END