静かな夜に(オリジナル)

聖和200X年――

かつて日本と呼ばれた国でもあるこの場所も今では二分に別れて一つの国として機能していなかった。

片方の領土が【繁栄】とするならもう片方の領土は【衰退】というように【富豪】と【貧民】に人種差別さえ行われていた。

その差別化は進み、繁栄している領土を守る組織『守護派』が発足されると、衰退する領土を再び昔のように取り戻そうと動いている組織もまた発足される。

その組織名は『革命派』と呼ばれ、この守護派と革命派は国が二分したと同時に争いが始まり今現在もそれは終わる事なく命の奪い合いをしていた。



そんな情勢の中で今日も守護派と革命派の戦いは起こり、地面には鎧を身に纏っている屍が数え切れないほど転がっていた。

転がる屍を前に二人の青年は頬に付着した返り血を手で拭いながら話をしていた。


「ライバルさんの言った通り今日もあっちの幹部は動くことなく駒だけが来たみたいだなハヤト」

腰や腕に細い爆弾や手流弾を装着させ青色の髪をした青年はケラケラ笑いながら、目の前で赤い液体を飲み口から溢れる液体を服で拭き息を整える青年に声を掛ける。

声を掛けられた青年は液体の入っていた小瓶を投げ捨てると、転がっている屍に近付いて器用に鎧を外しながらその声に答えた。


「師匠の勘はよく当たるからね。まぁ、今回も戦利品は手に入れられたし闇市にでも売って金にすればいいさ」


守護派の人間の使う物は高いからね~、と八重歯を光らせる青年に青色の髪をした青年も同じように鎧や武器を屍から取っていく。

金になる物なら何でも奪っていく革命派の人間。

しかも相手が守護派なので躊躇などする必要がないのか二人の手は一切止まることはない。


「しかし守護派の人間は何を考えてるのやら?」

「ここ最近僕らのアジト周辺や他の革命派のアジト周辺をうろついてるみたいだよね。襲撃する訳でもなくただ探るだけ」

「ライバルさんは気にするなと言うが、俺やひこ達からしたら生きた心地がしねぇ」

「師匠を信じてれば大丈夫だよ」


ニコニコ笑うハヤトに対し青色の髪の青年、烈架は呆れたように溜め息を吐く。

この青年ハヤトはライバルの一番弟子であり、良い方にも悪い方にも成長している。

ライバルの言葉には素直に従うが他の者の言葉には聞くだけ聞いて従わないのだからタチが悪い。


「あらかた手に入れたし帰るか?」

「そうだね。早く帰ってリナさんとフユキのご飯が食べたいな」

「んっ、今日の当番ってBOTUとちゃり娘じゃなかったか?」

「げっ…」


顔色を青くさせるハヤトに烈架は苦笑しながら先を歩いていく。

今日も一日終わったな、と思いながら歩いていた烈架の足が止まりハヤトの足もまたピタリと止まる。


「ハヤト、気づいたか?」

「三人だね。どうも僕らが鎧とかを剥ぎ取る時から隠れてたみたいだけど。律儀だね」


二人は立ち止まったまま持っていた戦利品を地面に乱暴に落としそれぞれ戦闘態勢に入る。

烈架はいつでも導火線に火をつける準備を、ハヤトは烈架からナイフを借りて手のひらを切り血を流しながら相手の出方をうかがう。

二人の背後の木々からガサリと音が聞こえてそこから現れたのは、

「キヒヒヒヒ」

「カッカッカッ」

「クックックッ」


口元から涎を垂れ流し目は焦点があってないのか定まっておらず、三人の手には血に染まった剣が握られておりどう考えても普通の人間には見えなかった。

その者達が着ている服はボロボロでその服にはベットリと血がついている。

ここに来るまでに誰かを襲ったのは明白である。

精神が狂っている者達を見ながら、烈架とハヤトは視線をそらすことなく話をしていた。


「また研究所から捨てられたやつらか」

「守護派の人間が何をしているかわからないけどこれで三回目だね。しかも今回は殺し合いをさせて廃棄したんだろうけど」

「ちくしょうが!」


二人はこのような存在を目にしたのは三回目だった。

前回や前々回は一緒にいたメンバーが違うが同じように目にしていた。

革命派の頭脳こと光さんが言うには守護派のいる国から廃棄された者達のようで革命派の人間はこれらを倒していた。

それこそ大人から子供にいたるまでその手で葬っては埋葬しながら。


「早いとこ片付けるぞ。あまりここに長くいると守護派のやつらに見つかる」

「だね。じゃあ早速!」


そう口にして手のひらを亡者達に向けたハヤトの手のひらから血の球体が出現して、その球体は亡者に放たれると同時に破裂して血は雨のように亡者の一人に降り注ぎ、雨は亡者の体を穴だらけにし雨が止んだ頃には亡者の姿はどこにもなく消滅していた。


「その血は本当にえげつないよな。触れただけでも体を抉るんだから」

「そうかな?これってそう頻繁に使えないから困ってるんだけどね」

「守護派からしたら厄介だろうなそれはっ!」


地を蹴り烈架は残りの亡者達に近づき勢いよく降り下ろされた剣をなんなく回避し一体の亡者の体に爆弾を取り付け、さらに迫り来る亡者の剣をバックステップで交わすともう一体の亡者の口の中に小型爆弾を放り込みすぐに二体の亡者から離れていく。


「早いな~烈架は」

「ハヤトと違って俺の武器は分かりやすいからな。相手にいかに素早く近付いて爆弾を取り付けるかが……」


烈架の言葉と同時に迫り来る二体の亡者の体が爆破してその体はバラバラになり、辺り一面に肉片や血が飛び散り何かが焼けたような臭いが漂う。

二人はそれを気にすることなく爆破した場所に視線を向ける。


「カギだからな」


フッと笑う烈架にハヤトも納得したように笑みを浮かべた。

手のひらから流れる血を止めて、包帯を巻きながらハヤトは爆破した場所に足を進める。

跡形もなく吹き飛んだ場所を見ながら冗談混じりに口を開く。


「これで今日が肉料理なら僕も烈架もたまったもんじゃないね」

「変なフラグ立てるな。それより早く行くぞ、さっきの爆発で守護派が気づいたかもしれないからな」

「はいはい。…んっ?」

「どうかしたかハヤト?」


何かに気づいて亡者達が出てきた木々に近づくハヤト。

烈架もそれに続くように後を追いハヤトと烈架の二人はあるものを目にした。


「……」


この夜に溶け込むような黒髪に革命派では見たことがない衣服を着て頭を打ったのか気を失って横たわっている女の子がそこにはいた。


「どうしよっか?見られた可能性あるしそのままにしておく?」

「…とりあえず連れて行くぞ。アジトに戻ってライバルさん達に報告だ。今はこの場を早く離れたいからな。余計な時間を作るわけにはいかない」

「りょーかい」


気を失っている女の子を烈架が抱えて、ハヤトは戦利品を持ちながら二人はその場から去っていった。

一人の女の子との出会いから革命派の物語は始まっていく。

星空の下でゆっくりとゆっくりと。


フレンド
一話END
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