世界が驚愕する日(ポケモン)

ポケットモンスター。

縮めてポケモン。

この世界には様々な力を使う生物が多く生存しており、その生物と人間は共に生活していた。

そしてここマサラタウンでは数人の男女が一つのTVを前に真剣な表情で、ソファーに座ったり床に座ったりしてTVを眺めている。

TVには桃色の髪をした可愛らしい女の子が実況席と書かれた場所に座って、一人の少年と一つのバトルを実況していた。


『ついに決着がつきました。世界ランカー四位の【竜騎】ひこさんVS世界ランカー三位の【レールガン】光さんによる戦いは、光さんの勝利で終わりましたね』


カメラが切り替わりTVに映るのは、灰色の髪をポニーテールして眼鏡をかけた少年の姿。

その少年の肩にはピカチュウが乗って少年に引っ付いていた。


『ひこさんのドラゴンタイプを光さんはピカチュウとフシギバナの二体で倒しましたが、これについてどう思われますかハヤトさん?』


桃色の髪をした少女が柔らかな笑みを浮かべて問い掛ると、茶髪に赤色の瞳をした少年は微かに笑みを浮かべて返していた。


『まぁ、光さんのピカチュウは普通のピカチュウじゃないからね。俺だってエーフィじゃなきゃ勝てないし』


TVではピカチュウがカイリューを雷でKOしている映像が映り、さらにひこのガブリアスをフシギバナのつるのむちが弾き飛ばした映像に変わる。


『それにしてもタイプなんて関係なしとはね』

『ハヤトさんがそれを言うんですか?ランカー二位で七変化のアナタが…』


実況者二人がのんびりコントをしている間に、ひこと光のバトルシーンの映像が終わり二人は本題に入ろうかとホワイトボードを持ってくる。


『それじゃ、本題にはいりますね。ハヤトさん、お願いいたします』

『はいよ。そんじゃTVの前の方々はよく聞いとけよ。今回世界ポケモン協会と俺達世界ランカーの話し合いで一つの大会を開く事になった。その名も――

【ワールド・チャンピオンシップ】だ!』


「ワールド…」

「チャンピオンシップだって!?」


TVを前に驚きの声を上げるているタケシとサトシの二人。

他にもこの場にいる者達は驚いてTVを見つめていた。


『ワールド・チャンピオンシップですか。それはどういった大会なんですか?』

『簡単に説明すると。各国の代表達によるポケモンバトルだ』

『それはまた規模が凄いですね。という事は、世界ランカーの方々も?』

『…当然だね。俺達世界ランカー六人も出場する為に、代表決定戦に参加するし』


めんどくさそうにため息を吐くハヤトに少女は呆れたように苦笑する。

どこまでも自由な世界ランカーの一人でもあるハヤト。

次は次はと進行を潰している。


『代表決定戦に参加したいトレーナーは、近隣のポケモンセンターで受付するからそこに行くように』

『ちなみにハヤトさんは、どの代表決定戦に参加を?』


少女の問い掛けに世界各国のTVを見ている人間が息を呑む。

世界ランカーがいればそれだけで優勝候補になるのだ。

それだけにランカーの一人でもある、ハヤトがどの代表決定戦に参加するか気になるのだ。


『確か…フランス代表決定戦だったかな。ランカー一位のライバルさんが、ダーツでランカー達の国を決めてたから』

『あはは…』


苦笑している少女にハヤトはやれやれと肩をすくめる。

世界ランカー一位。
【闘王】ことライバル。


いまだに連勝記録更新中で、彼のポケモンを倒したトレーナーは一人もいない。


『あとこの代表決定戦で伝説のポケモンは使用禁止だから。仮にも代表になるんだから決定戦から使うトレーナーはいないだろうけど…』

『伝説のポケモン。ハヤトさんはお持ちなんですか?』

『それは秘密かな』


一応世界ランカーなんだからTVで言える訳がないでしょ。

それもそうですね。


少女と青年はアイコンタクトでそんな会話をしつつも、ちゃんと重要な事はホワイトボードに書いていく。


『それでは最後に代表決定戦は国によって日付はバラバラですが、早くても日本代表決定戦が一ヶ月後に行われるので参加のトレーナーさん達は早くポケモンセンターへ行ってくださいね』

『バトルに自信があるトレーナーや、世界中のトレーナーとバトルしたい人達はどしどし参加をお待ちしてます。それでは…』

『実況のモモ・ベリア・デビルークと…』

『ランカー二位のハヤトでした』


そう二人が言い終えると再びひこVS光のバトルが流れ、しばらくするとエンディングに変わり番組は終わっていく。

まるで嵐のような番組に世界中では興奮が巻き起こり、マサラタウンにいるサトシもまた興奮して立ち上がっていた。

「よしっ!早速ポケモンセンターに行くぞ、ピカチュウ!」

「ピッ、ピカ?」


やはりと言うか流石と言うか、バトル大好きサトシは早速準備を始めていた。

目にも止まらぬ速さで準備しているサトシに、ピカチュウは呆れているのか目をぱちぱちさせてサトシを見つめている。


「サトシ、さすがに今からじゃ遅くないか。ポケモンセンターに行くなら、明日でもいいだろ?」


こうなってしまったら、サトシが止まらないのは分かっていながらも声を掛けるタケシ。

今から近隣のポケモンセンターに行けば、到着するのは夜中になるんだがとタケシは時間を確認しているが、サトシはすでにセレナを巻き込んでいた。


「セレナと一緒に行ってくるから大丈夫だって」

「…ッ!!そっ、そうね!やっぱり行くなら早めがいいもんね(サトシと二人っきり!)」


正確にはピカチュウもいるが、サトシに恋しているセレナはすでに妄想タイムに入っていた。

カロス地方での旅でサトシと別れてからも、ただ一途にサトシを想い続けてパフォーマーとして頑張っていたセレナ。

今回カントー地方にやって来て、サトシと再会してからずっとドキドキしていた少女。

恋する少女は止まらないらしい。


「やれやれ。どうすればいいと思うイチカ?」

「こうなっちまったら、サトシは止まらないからな」


タケシの言葉に楽しそうに笑いながら答えたのは、ジョウト地方チャンピオンの【オリムラ・イチカ】だった。

かつてサトシとジョウトリーグで戦い友となった男。

昔はそこまで強くなかったが、姉によるとても優しいトレーニングによって今ではチャンピオンの座を守り続けるまで強くなった男。

そして鈍感でフラグ体質である。


「相変わらずサトシはバトルになると、元気ですねハナコさん」

「そこがあの子のいいところなのよ」


少し離れた場所でサトシとセレナの二人を見ている一人の少女と女性。

少女は長い黒髪をポニーテールにしてその手には、旅の準備に必要なものを持っていた。

少女の名は――

【シノノノ・ホウキ】

イチカの幼馴染みであり、ジョウト地方の四天王の一人である。

サトシの実力を認めている一人でライバルの一人。

そして、セレナ同様に恋する少女でその相手はイチカだったりする。


「…って事でお前も行くだろ、シン?」

「だよな。ステラはどうする?」

「一緒にいく…」


イチカの問い掛けにため息を吐いて立ち上がる少年と少女。

少年の名は――

【シン・アスカ】という名前でホウエン地方の四天王の一人。

サトシとはイチカ同様とある大会で出会って、結果は引き分けだったがそれからかなり強くなった少年。

その実力はジムリーダー相手なら圧勝できるほどの強さを持つ。


そして、そのシンの腕に引っ付いている少女の名は【ステラ・ルーシェ】。

シンと同じホウエン地方の四天王の一人。

普段はぽわんとしていて過去にサトシのピカチュウと一緒に誘拐されて、サトシとシンに助けられた過去がある。

ちなみにバトルとなると人が変わったように豹変して、かなり恐ろしいバトルをするため数人がトラウマを植え付けられている。


「リトは行かないの?」

「どうしよう…」


すでにポケモンセンターに行く気であるサトシと違い迷っている少年がいた。

その少年の名は――

【ユウキ・リト】という名前でタケシの親友でありカントーのジムリーダーでもある。

少年は妹のミカンの言葉に頭を悩ませていた。

まさか世界大会が開くなんて思わないし、でも代表になればハルナちゃんが応援に来てくれるかもしれないし。

リトはわりと真面目に悩んでいた。


「タケシはどうするんだ?」

「オレとしてはそこまで、バトルに燃えちゃいないからな。ただ…世界中のお姉さんには会いたいと思ってっ…ててて!!ミカンちゃん!耳を引っ張らないで!」

「はいはい。リトには早いですよ、タケシさん」


手慣れたようにタケシの耳をつかみ引きずるミカンに、リトは相変わらずだなと苦笑している。


「セレナ!準備はできたか!」

「うん!大丈夫だよ、サトシ!」


遠い目をしているリトなどお構い無しに、サトシとセレナは準備を終えていた。

ハッキリ言って早すぎである。

まだイチカ達は準備をしているのにだ。


「く~!楽しみだぜ、ワールド・チャンピオンシップ!!どんな強い奴がいるんだろうな、ピカチュウ!」


バトルに燃える少年サトシ。

世界を相手に少年を待ち受けているものとは――

サトシ達の戦いはこうして始まるのであった。
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