お出かけの日
「ねぇ、総也」
「どうしたの京ちゃん?」
「今日って登校初日だったよね。本当に休んでよかったの?」
「大丈夫だよ京ちゃん。後で近藤さんには謝っておくし…」
何より、と呟いて総也はニッコリ笑いながら優しく京の頭を撫でる。
まるで大切なものを扱うようにそっと優しく。
「京ちゃんとの時間の方が僕には大事だから」
「総也、好き。大好き」
沖田総也。
新選組一番組組長で元天神館の生徒。
本当なら今日から川神学園に転校なのに朝から変態橋で川神百代のお客をボコボコにして、川神百代に喧嘩を吹っ掛けられてそれをあしらい京と再会してからそのままサボったのである。
ちなみに総也の携帯が先程からぶるぶる震えているが、総也はその相手が土方円と気付きながらも無視をしていた。
「それにしても川神は賑わってるね。あっちとは大違いだ」
さっきの和菓子専門店は特によかった。
今度からあそこをお気に入りの店にしとこ。
「総也は…」
「ん~?」
「どうして東西交流戦にいなかったの?さっきの総也の動きからして実力はあると思ったんだけど…」
京はあのモモ先輩との一瞬のやり取りを目にしていた。
武神の拳を交わして後ろに回り込んでいた。
あれは並大抵の武道家ではできないレベルである。
そう考えると総也の実力はかなりのものだ。
「土方さんからちょっと頼み事を任されたからね。それに――」
総也の脳裏によぎる一人の男の姿。
初めて会ったはずなのに心の底から、負けられないと感じてしまった男。
アイツは一体何者だったんだ――?
「どうしたの総也?」
「何でもないよ。それより京ちゃんさ…」
「どうかした?」
「本当に綺麗になったね。僕が最後に会ったのは小学生の時だったから、河原で会った時は見惚れちゃったよ」
首を傾げていた京は総也の言葉に頬をうっすらと赤く染める。
しかも内なる京が、
(いける!久しぶりに再会した男と女!これは大人の階段を登るはず!もらった!真剣で武士に恋しなさい!完結!)
何やら物凄いヒートアップをしてガッツポーズまでやっていたようだ。
「あっ、土方さんから聞いたんだけど川神学園には武士道プランの人がいるんだよね?どんな人達なのかな?」
『武士道プラン』
世界最大の財閥で技術レベルもトップクラスの九鬼が掲げた計画。
過去の英雄である源義経をはじめとし、他にも数人の英雄をクローンという形でこの世に転生させた。
目的は生徒達の刺激とし競争相手として作られたらしい。
(土方さんが言うには九鬼は他に過去の英雄をクローンしようとしてたらしいけど…)
嫌な予感しかしない。
九鬼はどうでもいいけど新撰組の、近藤さんの敵となるクローンが現れたらその時は―――
「総也には私がいるから気にしなくていい。他の女は見ちゃダメだよ」
「……あれ?違うよ京ちゃん。僕が聞きたいのはそのクローンが強いかどうかで…」
気のせいかな?
京ちゃんの瞳から光が消えちゃったような。
それにこれは天神館にいた時の燕ちゃんとよく似ている気がする。
「総也、妻の前で他の女の事を考えてない?」
「考えてないよ。僕が今考えているのは京ちゃんだけだよ」
総也の言葉に京は笑っているが何故かその笑みが黒い気がする。
本当に燕ちゃんみたいだよ京ちゃん。
「…何か甘いもの食べたいかな。オススメとかないかな京ちゃん」
「だったらちょうどいい所がある」
そう口にして京が指差した場所には、ソフトクリーム屋があり総也は早速行こうとしたのだが、
「総也には私のオススメを買ってきてあげる。楽しみに待ってて」
「じゃあお願いしようかな」
京は嬉しそうにソフトクリーム屋に向かう中で、総也はふとある事を思いだしポツリと口を開く。
「燕ちゃんみたいに、ソフトクリームにトッピングしないよね?」
過去にやられた松永納豆アイスクリームスペシャル。
バニラアイスなのにバニラが全く見えなかった。
納豆がバニラを隠してバニラがとても可哀想だったなぁ。
「総也~!」
納豆アイスの事を考えていた総也の耳に入ってきた京の呼ぶ声。
その声に笑みを浮かべ総也は京の方に目を向けて固まってしまう。
何故なら――
京が持ってきたアイスクリームはとても真っ赤で不気味なオーラを放出していたのだから。
「…これはまた美味しそうなストロベリーだね」
「残念。これは私特製のソースをふんだんにトッピングしたデスソースアイスです」
「わあぉ…」
アハハと笑いながらアイスクリームを受けとる総也。
やっぱり京ちゃんと燕ちゃんは似てるね。
納豆アイスも凄かったけどこれもこれで凄い。
でも何でかな――
「ククク、私の愛を味わってね総也」
語尾にハートマークでもついてそうな甘い声で笑う京に対し、総也はフッと笑みを浮かべて真っ赤に染まるアイスを平然と口にしていた。
「総也?」
「やっぱり少し辛いかな。けど初めて京ちゃんが僕にくれたものだから。美味しいよ京ちゃん」
「総也は優しいね。昔から本当に…」
昔総也と遊んでいた時の事を思い浮かべる。
まだ私が小学生で総也も小学生だった時、私は学校で淫売だの椎名菌だのいじめられていた。
誰も私を助けてくれなくて一人で泣いていた。
そんな時河原で寝そべっていた総也と出会って、最初は声を掛けられなかったけど次第に仲良くなった。
私が泣いていた時にいつも傍にいてくれて、土方さんや風間ファミリーと一緒にいじめから助けてくれた優しい人。
総也が川神から離れて京都に行くと知った時は本当に悲しくてワガママ言っちゃったんだよね。
そんな私を総也は優しく抱き締めてくれた。
「京ちゃん、アイス溶けちゃうよ」
「……食べる?」
「ん~食べさせてくれる?」
「これが公開プレイか!」
総也の前だとこんなに自然でいられる。
風間ファミリー前でも私は私でいられるけど、やっぱり私は総也といるとぽかぽかする。
「総也!」
「どうしたの京ちゃん?」
「お帰りなさい」
「……ただいま京ちゃん」
これから総也は川神にいる。
それだけで嬉しい。
私が総也の隣にいる為にも、
(この長年育てた総也への愛を総也に教えなくちゃいけない!今日が出陣の日だ!)
京は一人燃えていた。
メラメラと背中から炎を出しながら。
「どうしたの京ちゃん?」
「今日って登校初日だったよね。本当に休んでよかったの?」
「大丈夫だよ京ちゃん。後で近藤さんには謝っておくし…」
何より、と呟いて総也はニッコリ笑いながら優しく京の頭を撫でる。
まるで大切なものを扱うようにそっと優しく。
「京ちゃんとの時間の方が僕には大事だから」
「総也、好き。大好き」
沖田総也。
新選組一番組組長で元天神館の生徒。
本当なら今日から川神学園に転校なのに朝から変態橋で川神百代のお客をボコボコにして、川神百代に喧嘩を吹っ掛けられてそれをあしらい京と再会してからそのままサボったのである。
ちなみに総也の携帯が先程からぶるぶる震えているが、総也はその相手が土方円と気付きながらも無視をしていた。
「それにしても川神は賑わってるね。あっちとは大違いだ」
さっきの和菓子専門店は特によかった。
今度からあそこをお気に入りの店にしとこ。
「総也は…」
「ん~?」
「どうして東西交流戦にいなかったの?さっきの総也の動きからして実力はあると思ったんだけど…」
京はあのモモ先輩との一瞬のやり取りを目にしていた。
武神の拳を交わして後ろに回り込んでいた。
あれは並大抵の武道家ではできないレベルである。
そう考えると総也の実力はかなりのものだ。
「土方さんからちょっと頼み事を任されたからね。それに――」
総也の脳裏によぎる一人の男の姿。
初めて会ったはずなのに心の底から、負けられないと感じてしまった男。
アイツは一体何者だったんだ――?
「どうしたの総也?」
「何でもないよ。それより京ちゃんさ…」
「どうかした?」
「本当に綺麗になったね。僕が最後に会ったのは小学生の時だったから、河原で会った時は見惚れちゃったよ」
首を傾げていた京は総也の言葉に頬をうっすらと赤く染める。
しかも内なる京が、
(いける!久しぶりに再会した男と女!これは大人の階段を登るはず!もらった!真剣で武士に恋しなさい!完結!)
何やら物凄いヒートアップをしてガッツポーズまでやっていたようだ。
「あっ、土方さんから聞いたんだけど川神学園には武士道プランの人がいるんだよね?どんな人達なのかな?」
『武士道プラン』
世界最大の財閥で技術レベルもトップクラスの九鬼が掲げた計画。
過去の英雄である源義経をはじめとし、他にも数人の英雄をクローンという形でこの世に転生させた。
目的は生徒達の刺激とし競争相手として作られたらしい。
(土方さんが言うには九鬼は他に過去の英雄をクローンしようとしてたらしいけど…)
嫌な予感しかしない。
九鬼はどうでもいいけど新撰組の、近藤さんの敵となるクローンが現れたらその時は―――
「総也には私がいるから気にしなくていい。他の女は見ちゃダメだよ」
「……あれ?違うよ京ちゃん。僕が聞きたいのはそのクローンが強いかどうかで…」
気のせいかな?
京ちゃんの瞳から光が消えちゃったような。
それにこれは天神館にいた時の燕ちゃんとよく似ている気がする。
「総也、妻の前で他の女の事を考えてない?」
「考えてないよ。僕が今考えているのは京ちゃんだけだよ」
総也の言葉に京は笑っているが何故かその笑みが黒い気がする。
本当に燕ちゃんみたいだよ京ちゃん。
「…何か甘いもの食べたいかな。オススメとかないかな京ちゃん」
「だったらちょうどいい所がある」
そう口にして京が指差した場所には、ソフトクリーム屋があり総也は早速行こうとしたのだが、
「総也には私のオススメを買ってきてあげる。楽しみに待ってて」
「じゃあお願いしようかな」
京は嬉しそうにソフトクリーム屋に向かう中で、総也はふとある事を思いだしポツリと口を開く。
「燕ちゃんみたいに、ソフトクリームにトッピングしないよね?」
過去にやられた松永納豆アイスクリームスペシャル。
バニラアイスなのにバニラが全く見えなかった。
納豆がバニラを隠してバニラがとても可哀想だったなぁ。
「総也~!」
納豆アイスの事を考えていた総也の耳に入ってきた京の呼ぶ声。
その声に笑みを浮かべ総也は京の方に目を向けて固まってしまう。
何故なら――
京が持ってきたアイスクリームはとても真っ赤で不気味なオーラを放出していたのだから。
「…これはまた美味しそうなストロベリーだね」
「残念。これは私特製のソースをふんだんにトッピングしたデスソースアイスです」
「わあぉ…」
アハハと笑いながらアイスクリームを受けとる総也。
やっぱり京ちゃんと燕ちゃんは似てるね。
納豆アイスも凄かったけどこれもこれで凄い。
でも何でかな――
「ククク、私の愛を味わってね総也」
語尾にハートマークでもついてそうな甘い声で笑う京に対し、総也はフッと笑みを浮かべて真っ赤に染まるアイスを平然と口にしていた。
「総也?」
「やっぱり少し辛いかな。けど初めて京ちゃんが僕にくれたものだから。美味しいよ京ちゃん」
「総也は優しいね。昔から本当に…」
昔総也と遊んでいた時の事を思い浮かべる。
まだ私が小学生で総也も小学生だった時、私は学校で淫売だの椎名菌だのいじめられていた。
誰も私を助けてくれなくて一人で泣いていた。
そんな時河原で寝そべっていた総也と出会って、最初は声を掛けられなかったけど次第に仲良くなった。
私が泣いていた時にいつも傍にいてくれて、土方さんや風間ファミリーと一緒にいじめから助けてくれた優しい人。
総也が川神から離れて京都に行くと知った時は本当に悲しくてワガママ言っちゃったんだよね。
そんな私を総也は優しく抱き締めてくれた。
「京ちゃん、アイス溶けちゃうよ」
「……食べる?」
「ん~食べさせてくれる?」
「これが公開プレイか!」
総也の前だとこんなに自然でいられる。
風間ファミリー前でも私は私でいられるけど、やっぱり私は総也といるとぽかぽかする。
「総也!」
「どうしたの京ちゃん?」
「お帰りなさい」
「……ただいま京ちゃん」
これから総也は川神にいる。
それだけで嬉しい。
私が総也の隣にいる為にも、
(この長年育てた総也への愛を総也に教えなくちゃいけない!今日が出陣の日だ!)
京は一人燃えていた。
メラメラと背中から炎を出しながら。