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ディオキアで過ごした日

朝になってクリスはホテルのレストランへ来ていた。


「寝坊しなかったのか?」

「当たり前だ、昔の俺と今の俺は違うんだぞハイネ」

「そうか?時間に遅れる所は変わってないと思う」

「変なとこだけはしっかり覚えてんだから…オデコのハイネは」

「オデコは余計だ!!」


欠伸をしながらクリスはハイネの真正面の椅子に座った。




「…なぁクリス」


「どうしたハイネ?いつになく真剣な表情して」


「一言余計だ。それよりお前議長に不信感でもあんのか?」


ハイネは昨日の会食でクリスと議長のやり取りが頭から離れていなかった。


「あの人は俺を助けてくれた人だ。だから信じたいと思ってた。だけど………」


あの夜でのギルの不気味なほどの冷たい笑み。

それにもしラクスが狙われたとしたらその理由は一つしかない。

ラクスを消して自分にとって都合の良いラクス・クラインを表舞台で使うためだ。

さらにギルは姉さんと会った事も言わなかった。


「…………ッ!!」


クリスの表情が哀しみに変わっていく。


「あと聞く気はなかったんだが、たまたま聞こえたんだよ」


ハイネは真剣な表情でクリスの瞳を見つめている。


「クリスと議長がテラスで夜に話していたところ」


「……………そっか」


クリス苦笑する。

あの時誰かがいた気がするがハイネだったか。

まぁ、シンやルナマリアやレイじゃなくて良かったかな?


「聞くきはなかったんだ。悪かったな」


ハイネは頭を下げて謝罪すると、クリスはしばらく考えて口を開いた。


「別にいいよ、聞かれちゃいけない事じゃなかったから。それに…ハイネは信頼できるから、誰にも言わないだろ?」

「クリス…」


ハイネを信頼しているクリスは、今回の議長との件が聞かれていてもよかったのだった。

ハイネだからまだ助かった。


「クリス、お前はザフトをいつかは抜けるのか?」


ハイネの質問にクリスは紅茶を口にして視線を外の景色に向ける。

今のままザフトにいればいつかギルに切り捨てられる可能性もある。

ギルにとって都合が悪くなった戦士は必要なくなる。


「俺のやるべき事がザフトで出来なくなったら抜けるかもな」

「そうか……」


ハイネは苦笑しながら同じように紅茶を口にするとどこか寂しそうに笑う。

「お前が抜けないことを俺は願うぜ」

「……ハイネ」


クリスが苦笑しているとルナマリアとシンが話ながらこちらにやって来て、ルナマリアとシンはクリスとハイネに気付いて敬礼するとクリスとハイネは笑って軽く返した。


「お前たち、昨日のミネルバのヒョッコだろ?もう一人のフェイスの奴はどうした?」

「隊長はまだお部屋だと…」


ルナマリアがそう返すと同時にルナマリアの言葉を遮るように後ろから声が聞こえきて、四人がそちらに視線を向けるとアスランがミーアに引っ張られていた。



「成程ね。解った、解った。…お早うございます、ラクス様」


「あ~ら、おはようございます!!」


ミーアはアスランから離れるとハイネに近づいて挨拶するとアスランはミーアが離れてホッとしている。



「あれがもう一人のラクスか」


クリスはミーアを見て昨日の話を思い出していた。


彼女はラクスではない。

もし彼女がギルに不必要だと思われたら彼女は一一一









「昨日はゴタゴタしていてまともに挨拶出来なかったな。特務隊…ハイネ・ヴェステンフルスだ」


ハイネはそう言ってアスランに手を差し出すと、アスランも手を差し出し握手して自分の名前をハイネに伝える。

するとハイネは、『知ってるよ有名人』と言ってアスランにヤキンの時の話をした。


「それでお前ら四人と昨日の金髪を入れて全部で五人だろ?ミネルバのパイロットは」

「そうだけどなんで?」

「いや、それでよアスランとクリスと艦長がフェイスなんだよな?戦力としては良すぎる。なのに何でそんな艦に行けと言うかね……議長は」


「「「!!!」」」


ハイネの言葉にクリス以外の三人が驚いた。


「休暇明けから配属さ、フェイスが四人ってのもへんだけどよ。議長期待のミネルバだ、しっかりやっていこうぜ」


ハイネが敬礼すると四人も敬礼した。





そしてクリスはミネルバに戻るとレイを呼んだ。


「ここじゃ話しづらい。甲板に行こうか」


レイは一度首を傾げていたが大人しクリスについていくと甲板についた二人は手摺に手を置いていた。


「それで話とはなんだクリス?」

「レイってさ、この世にある命の事をどう思う?」


クリスの疑問にレイは少し考えて答えた。


「それは…成功体と失敗作の事を言ってるのか?」


「まぁ…それもあるけど、ちょっと違うかな」


クリスは真剣な表情でレイの肩を掴んで再び口を開いた。


「レイの願いってなに?」


「俺の願いは…キラ・ヤマトを殺すことだ」


違う。違うんだレイ。

それはお前の願いじゃない。


「それはデュランダル議長やあの人の願いだよ」


「違う俺は!!」


「レイはラウ・ル・クルーゼじゃないよ。レイ・ザ・バレルというこの世に一つしかない存在なんだよ」


クリスは優しく微笑んでレイに言った。


「レイだって操り人形になるなんて嫌いなはずだよ。自分の命も心もレイのものなんだ。だから生きてくれレイ」

「クリス…」


レイは少しだか悲しげな表情を浮かべていた。


「たとえ…寿命が短くても今を一生懸命生きるなら…未来は変わるんだよレイ。それにレイだって俺達と変らない人間なんだから…人生を楽しまなきゃ」

「クリス、なぜそんな話を」

レイの言葉にクリスは空を見上げた。


「…もしかすると、こんな話が二度と出来なくなるかもしれないから」

クリスはレイに笑顔で返したが、どこか無理をしているようにレイには映っていた。

クリス一一一

俺はギルの為に戦うと誓って今まで戦っていた。

お前がキラ・ヤマトと一緒にラウと最後に戦ったのも知っている。

でも俺はお前を恨まなかった。

なぜだかわかるか?

ラウはお前に撃たれれば本望だったからだ。

だがキラ・ヤマトは許さない。

アイツの存在だけは認めるつもりはない。

だけどミネルバにいる今俺は微かに幸せを感じている気がしていた。

シンがいてルナマリアがいて仲間達がいる今の環境を守りたいとも微かに思い始めている。

俺は願っていいのだろうか?


「クリス……」


クリスはただ笑みを浮かべて甲板から出ていくと甲板に残ったレイは自分の胸に手を置いて目を閉じていた。






一通りの仕事を終えたクリスは自室で休んでいたが、ブリッジから呼び出されてそちらに向かった。


「どうした?」


「クリスさん、実はSOS反応がありましたので」


「こんな休暇中にSOSするなんてどこのどいつだ?」


「シン・アスカです」


「…なにやってんだか」


クリスは頭を抱えて溜め息をおもいっきり吐く。

本当にシンには驚かされてばかりだ。


「どうしますか?」


「俺とアスランで迎えに行ってくるよ」


そう言ってクリスはブリッジから出ていった。






「休暇中にSOSとはやるときは本当にやってくれるな君は」


シンのいる場所についたアスランは呆れながら口を開くと、クリスはシンの後ろにいる少女がどこかで見たことのある少女だと気づいた。


「シン…その子は?」


アスランがシンに尋ねると、


「あっ!!この子は…」


シンが名前をアスランに教えようとした時だった。


「クリス!!」


「やっぱりステラか!!」


服が少し濡れているにも関係なしにステラがクリスに抱きついてくるとステラの行動に二人が驚いた。


「クリス、その子を知っているのか?」


「うん…まぁ友達かな?」


クリスは言葉を濁して答えた。

言えるわけないよな。

彼女がガイアのパイロットでエクステンデッドだなんてな。


「ステラ、あの二人はどうした?」


「スティングとアウルはお家」


クリスはとりあえずステラとシンを船に乗せて船を出した。





ステラが落下した場所に向かうと崖の方から誰かの声がした。


ステラはそちらを振り向いて声を出した。


「スティング!!アウル!!」



陸についたクリス達はジープに乗ってスティングとアウルを捜した。


「ステラ、寒くないか?」


「大丈夫…!クリスがギュッてしてるから」


クリスは微かに震えていたステラを抱き締めていた。


ジープは乗って道を走っていると前方から見覚えのある人物が通り過ぎた。


「あれだ!!」


「止めろ!!」


アスランの言葉にジープは止まった。


こちらが止まると同時にあちらも車を止めた。







「スティング!!」


「ステラ!!」



車から降りたステラは嬉しそうにそちらに向かった。

何故かクリスの手を握りながら。

シンもつられて着いていきスティングに事情を説明した。


「ザフトの方々には、いつもお世話になってすいません」


スティングは嫌味を言いながら笑っていた。


シンはそのままジープに乗り込んだがクリスは三人と話していた。


「次の戦闘では、できるだけ会いたくないな」


「世の中そんなに甘くないぞクリス」


クリスの言葉にスティングは苦笑して答えた。


「アウル、睨むなって」


アウルがアスランやシンを睨んでいるのに気づいクリスがアウルに苦笑しながら伝える。



「まぁ元気でな」


「お互いな」


そう言ってクリスはジープに乗り込むとスティング達も車に乗り込み発車させてシンは車が見えなくなるまでずっと後ろを見ていた。



そしてクリスはそっと誰にも聞こえないように呟いた。


「あいつらも…レイも…たっつ一つの命なんだ。だからその命は守ってあげるしかない」

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