姉が渡したもの

あの日スエズ攻略以来シンがアスランを睨むようになっていた。


「……シン」


クリスは呆れながらシンを見ていると、クリスの後ろの方からヴィーノとヨウランの会話が聞こえてきた。


その会話の内容はラクス・クラインの事だった。


しかしそのラクスはミーア・キャンベルという少女。

偽りの姿と声の少女。


プラントのために今はいないラクスのために代わりをやっている少女。


「…偽りの姿と声か」

ラクスは今プラントにいない。

だがプラントの市民はラクスを必要としている。

だからこそギルが用意したんだろうな。

それによりプラントは救われている。

だけど俺は一一一


「………ラクス」


ラクスはラクスで。

ミーアはミーアでしかないのにな。










クリスが甲板に着くとそこにはシンとアスランがいた。

二人は真剣な話をしていたらしくクリスには気付いていないようで、クリスは二人に気付かれないように手すりに体をあずけていた。








そして…話が終わったようでアスランが歩き出すとアスランはクリスに気付いて声を掛けてきた。


「クリス、シンは俺の言った事を分かってくれるかな」

「何を話したかは知らないけど、シンは分かってくれれるさ」


アスランは「そうか」と言って##NAME1##と一緒に甲板から出ていった。






△▼△▼△▼

そして…ミネルバのローエングリーンの破壊の作戦が始まろうとしていた。


「アスラン、話があるんだけど」


作戦前になってパイロットスーツに着替えていないクリスに疑問を思いつうもアスランは聞いた。


「今回の作戦で俺をはずしてくれないか」

「はっ?」


クリスの言葉にアスランは間抜けな声を出してしまった。


「なっ…なぜだ!?」


「残念な事に俺の機体が修理を終えてないからな。それにやらなきゃいけない事もある…」


クリスの言葉にアスランは反論した。


「今回の作戦はお前がいないとギリギリの状況なんだぞ!!」

「本当にすまない。だが今の俺が戦場に出ると邪魔にしかならない。だから頼んだ」


クリスはアスランにそう言って自室に戻っていくと、アスランは壁を殴ってクリスの後ろ姿を見ていた。






自室に戻ったクリスはパソコンを起動させていた。


「…姉さんが送ってくれたデータをどうしても確認したかったんだ。悪いなアスラン」


誰にも聞こえない呟きでクリスはパソコンを見ていた。









『このデータをクリスが見ているということは、私は生きているって言うことになるのかしらね』


映し出された画面には日記が書かれていた。


『私はあの時、ラウに撃たれて死んだと思っていた。でもそうじゃなかった。私は本当は生きていた。そして私は運よくコックピットだけが残っていたらしく、地球軍の人達に助けられていた』


「生きていた…でもコックピットなんて」


書かれていた事実にクリスは驚きつつもナツメの日記を再び確認していく。


『その後は、いろんな人達に出会った。ロゴスのジブリールやファントムペインのクルーにギルバート・デュランダル』


見覚えのある名前を目にしクリスは飲んでいたジュースを吹き出してしまった。



「ギルと会っている?じゃあ機体が似ていたのもギルが手伝ったからか」

何のつもりだギル。

何故俺に姉さんの事を話さなかった?

一体何を考えているんだ?


その後の日記には訓練の事やナツメの日常の事が書かれていた。


そして…文章の最後にこう書いてあった。


『…最後になったけど、私はクリスの幸せを願っていた。でも…やっぱり私は自分の事しか考えられなかった。もし戦場でクリスと出会ったら私はクリスを撃ってしまう。だからクリス、私と貴方は戦場に会わないことを祈るわ』


「…姉さん」


日記を閉じようとした時だった、


「あれ…?」


画面が変わり一つの文が映し出された。


『会いたいと願っても…どうしても会えない。私と貴方の思いはすれ違ってしまった。





でもこれだけは本当だから……キラ……貴方に会いたい』



その画面にはキラへのメッセージが書かれていた。


「姉さん…やっぱり今でもキラが好きだったんだな」


そしてキラもまた姉さんを愛していた。

ヤキンの時姉さんやフレイという少女がラウに撃たれた時キラの悲しみの叫びが聞こえた。

キラはその後俺と一緒にラウと戦って最後は俺がこの手でラウを撃った。

キラもまたヤキンの時にかなり傷を負ったがキラは多分姉さんは生きていると心のどこかで思っている。


「成功したみたいだね」


艦の様子が明るい事に気付いたクリスは笑っていた。


「姉さんは止めてみせる…絶対に」


クリスは決意した。


姉を闇から救うために。







自分の命を犠牲にしてまでも…
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