血に染まる海

明朝一一一

青空の中ミネルバは出航していた。


「前進微速…!ミネルバ発進する」


タリアの号令によってミネルバが海へと発進した。


クリスはパイロットスーツに着替えてスピリットのコックピットで待機しながら離れていくオーブの事やラクスとの約束の事を思い出していた。


『クリス、帰ってきてください。今度こそ必ず私の元に』


思い浮かぶ人物は自分の命よりも大切な存在で愛おしい人。

ラクスともう一度会うためにも。

あの笑顔をもう悲しませる訳にはいかない。


「大丈夫。大丈夫だ」


クリスはそう呟いて拳を握り締めた。











『コンディションレッド発令!!パイロットは搭乗機にて、待機せよ』


「レッドって何で?」


シンがルナマリアに通信を入れて聞いてきた。


「知らないわよ、何で私に聞くの?」


ルナマリアが返すと、クリスが冷静な表情で二人に告げた。


「外に地球軍がいるからだろ」


「「!!」」


「俺の予想では地球軍が最初から待ち伏せていたんだと思うけどな」


「…えっ!だってオーブは正式に調印してないんじゃ!」


ルナマリアの問いにクリスは頷いた。


「つまりミネルバはオーブから地球軍へのプレゼントってとこかな?ことによったらオーブ艦もいるかもしれない」


「…そんな」


クリスの言葉にシンが信じられない表情をして顔を伏せてしまった。


そして刻いっ刻と時だけが過ぎていく中で、ミネルバ内にも緊張が走る。

そんな状況でタリアはモニターを見つつメイリンに指示を出していく。


「クリスとシンには発進後あまり艦から離れるなと伝えて。レイとルナマリアは甲板から上空のMSを狙撃」


タリアはメイリンにそう伝えるとメイリンはパイロット達にそのまま告げる。


「ミネルバはやらせない。クリス・アルフィード、スピリット行きます!!」


戦場に出るとクリスの目の前には大量のMSが見えていた。


「…これはある意味凄い光景だな」


スピリットはソードを抜いて接近戦にもちこんでMSを切り裂いていく。


「今の俺は手加減できないぜ」


二刀流の構えをしてスピリットは大群のMSに突っ込んでは次々と切り裂いていくと、クリスの乗るスピリットの脅威に気付いた地球軍はスピリットを落とそうと大量のMSを向かわせた。


「次から次に!もう何か呆れてしまうなこれは…」


スピリットは接近戦から中距離・遠距離戦の戦い方に変えた。


「甘いな。その程度で俺は殺れないんだよ」


クリスは小さく呟くとスピリットの翼を広げてアムフォルタスを発射させていく。


そして戦闘が激化しているその時前方から巨大なMAが出現した。


「MA!?」


「あんなのに取り付かれたら終りよ!!アーサー…タンホイザー機動!!あれと共に左前方の艦隊をなぎ払う!!」


「ええ!?」


タリアの言葉にアーサーは思わず声を上げて驚いた。


「沈みたいの!!」


タリアは大声で叫び巨大なMAがタンホイザーの射程内に入り込むとミネルバからタンホイザーは勢いよく放たれた。

これでMAを破壊したと思っていたのだが、あのMAはなんとタンホイザーをはね返して無傷だったのだ。


「なっ!?」


クリスはタンホイザーをはね返したMAに驚きながらもスピリットの周りにいたMSを全て破壊して、あのMAが脅威に感じてスピリットでMAに向かおうとした瞬間だった、


「んっ?」


突然スピリットの動きが止まった。


「なっ!?スピリット…」


クリスは必死にレバーを動かしていたがスピリットは動かないまま。


「一体何が起こってる?」


『クリス!!』


その時メイリンから通信が入った。


『どうしたのクリス!?』


「何故か突然スピリットが動かなくなって…」


クリスがメイリンに事情を話している時シンの乗るインパルスがMAに捕まり海に投げられていた。


「くそっ…!このままじゃシンが」


しかしインパルスは海に落下せず再び空に舞い上がっりエネルギーを補充すると、インパルスはそのままMAに向かってコックピットにビームサーベルを刺して上空に浮かんだ。


さらにFインパルスからSインパルスに換装すると敵の母艦を切っていた。


「………この力は」


クリスはシンを止めるため通信を入れたが、シンにはクリスの声が聞こえていなかった。


その間にもシンは次々と地球軍の母艦を破壊していた。


「これが前にギルが話していたシンの可能性………か」


俺やキラやアスランを倒せるほどの可能性がシンにはあるとギルが話していた事がある。

だからシンにインパルスを託したのか。







△▼△▼△▼


こうしてシンの活躍により無事にミネルバはオーブから脱出していた。


スピリットから降りたクリスは一度深呼吸をしてシンに視線を向ける。

シンはクルー達に称賛され最初は戸惑っていたが、次第に顔に笑みが浮かび自分の手で仲間を守れたのかと嬉しそうしていた。


「あっ!クリス!!どうだった俺の戦い?」


シンは笑みを浮かべたままクリスに嬉しそうに先程の戦いの事を聞いていたが、


「シン…」


シンはクリスの言葉を目を輝かせながら待っていた。


「ミネルバが無事に脱出できたのはシンの力だ。本当によくやった。やっぱりお前は凄いな」

「クリス!」


ポンッとシンの頭を撫でるとクリスはその場から離れていく。

クリスに褒められて喜ぶシンや再び称賛するクルー達を一度だけ視線を向けたが、クリスがその輪に入ることはなくどこか複雑そうな表情を浮かべていた。


ギルは俺に言った。

シンならいずれ誰よりも強くなるだろうと。

あの言い方一一一

まるで俺やキラやアスランと戦うことになるかもしれないと言わんばかりの。

ギル一一一

俺は信じていいのか?


「………クリス」


格納庫を去るクリスの後ろ姿をレイはどこか観察するように見つめていた。


そして運命の歯車がまた回り始める。


ユックリと確実に一一一一

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