再会と約束

その頃地球軍から宣戦布告されたプラントはある動きを始めた。


それは………武力行使によるものだった。


あくまで積極的自衛権と言うデュランダル議長に対しクリスはこの事態を不振に思っていた。


さらに行政府ではカガリと市長達との対立が続いていた。


さらにミネルバの中でも大声を出して騒いでいる男がいた。


「しかしですね艦長!!もう開戦しているんですよ!!」


その騒いでいる人物はミネルバ副長アーサーだったがアーサーと違いタリアは随分落ち着いていた。


「…焦る気持は分かるけどだからといって今私達が慌てて何がどうなるっていうの?」


タリアとアーサーが話ながら食堂に入ると食堂にはルナマリア・メイリン・シンがいて、三人はタリア達に気付いて椅子から立ち上がり敬礼をした。


「返ってバランスが微妙な時期でもあるのよアーサー」


二人も敬礼をして椅子に座る。


「あのとんでもない第一波の核攻撃をかわせて地球軍も慌てているでしょう?カーペンタリアへの攻撃部隊も包囲したまま動かないみたいじゃない…」


「いやっ…だからこそですね…!」


アーサーの言葉にタリアは溜め息まじりで返した。


「今本艦が下手に動いたら減んな刺激になりかねないのよ。火種になりたいの………あなた?」


「いっいえ!!そんな…」


「情勢が不安定ならなおの事よ。艦の状態には万全をきすべきだわ。幸いオーブはまだ地球軍陣営じゃないんだしもう少し事態の推移を見てからでも遅くはないでしょう?出航は軍本部からは何も言ってきてないんだし」


タリアは呆れたような表情でアーサーに返す。


「はぁ…まだですかね?」


アーサーも不安そうな表情で肩を落とした。


「それにクリスの様子も少しおかしいじゃない」


「確に…最近のクリスは上の空でしたが」


二人の言う通りである。

最近クリスの様子がどことなく上の空だった。


「慰霊碑に行ってからじゃなかったかしら?」


タリアは目線をシン達に変えながら言うと、


「艦長のおっしゃる通りです。慰霊碑にいたときからクリスの様子が少し違いました」


シンは慰霊碑での出来事をタリアに話した。


「もしかして…」


タリアはなんとなくだがクリスが慰霊碑で会った人物が戦友だと感づいた。


「今はゆっくり休めましょう。クリスだって辛いのかもしれないのよ」


『はっ!』

皆は敬礼していたがルナマリアは内心クリスの事を考えていた。

あの慰霊碑に行った日からクリスは私を抱きしめた事を謝った。

最初は気にしなくていいと返したがあの日からクリスは微かに変わった気がする。

上の空と言うより何かをやり遂げようと決意したように私には見えていた。

気になるわね一一一一


ルナマリアは慰霊碑の出来事を詳しくシンに聞き出そうとしていた。







△▼△▼△▼

甲板にいたクリスはただ海を眺めていた。


だがその表情はアーサーの言う上の空と言うよりただラクスの事を考えているようにも見える。


「大丈夫だろうか…」


約束したとはいえやはり一度離れると心が冷えていた。


「ミネルバの動きが気になるしブリッジにでも行くかな」

クリスは小さく呟きながらブリッジに向かって歩き出した。








「匿名の情報など、正規軍が信じるはずがないでしょう…あなた誰?その目的は?」


タリアが通信の相手にそう聞き返すが、クリスは通信から聞こえてきた声に呆れてしまった。


「バルトフェルドさん…」


『んー?アンドリュー・バルトフェルドって奴を知ってるかね?これは、そいつからの伝言だ』


「砂漠の虎…」

タリアは驚いてそう呟いた。

「えっ!!」


アーサーもその言葉に驚く。


「伝言って本人じゃん…」


クリスは誰にも聞こえないように呟いた。


『ともかく、警告はした。降下作戦が始まれば、大西洋連邦との同盟の締結は押し切られるだろう。アスハ代表は頑張ってはいるがな。とどまる事を選ぶなら…それもいいだろう。後は君の判断だ艦長。幸運を祈る』


そこで通信は切れた。


「艦長…」


ブリッジにいたクリスに気付いたタリアは振り返った。


「クリス、アナタは砂漠の虎を知っているわね?」


「…はい」


「…さっきの言葉は信じていいと思う?」


クリスはタリアの真剣な瞳に一度だけ目を閉じたがすぐに真剣な表情に変わりその問い掛けにハッキリ答えた。


「信じる価値はあると思います」


「そう。なら私達も動かないといけないわね。それでアナタは身体の調子はよくなったの?」


タリアが心配そうに問い掛けるとクリスは苦笑しながら答える。


「俺はザフトに戻った時からこうなると決めていました。俺が戻ることで平和を築けるなら直ぐに割りきると。だから俺はもう………迷いません」

もう一度ラクスと会うためにも。

ラクスと一緒にいる未来を作るためにも。

俺は戦う。


「その表情なら大丈夫ね。だったらその覚悟を戦闘で見せてちょうだい」


「はいっ!!」


クリスは一度敬礼してブリッジから出ていった。







「クリスは本当に大丈夫なんでしょうか?」


アーサーの不安そうな顔にタリアは苦笑した。


「アナタ、クリスの言葉を信じないの?」


「いえっ…!ですがクリスの表情が今までと違っていたので」

「それでもクリスは戦うでしょうね…」


「あれが前大戦の生き残った者の力なんですね」


「…ええ」


自分達よりも先を見ているかのようなクリス。

私達大人がしっかりしないといけないのに。

私達はどこかでクリスに任せきっているかもしれない。


「クリス…」


メイリンはそんな二人を目にしたせいかどこか不安気な表情でクリスの去った方向を見つめていた。
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