最後の力

「はぁぁぁ~!!」

デスティニーはフリーダムに対し二本のブーメランを投げると、フリーダムはすかさず避けて二丁ライフルを一つに合わせデスティニーに反撃するように放つ。

ライフルをシールドで受け止め衝撃で離れたデスティニーをフリーダムが追撃するが、そこをレジェンドがドラグーンを展開しフリーダムとデスティニーの距離は離れさらにフリーダムは迫りくるドラグーンを回避していく。


「よせっ!レイ!!」


フリーダムに向かうレジェンドをクルサードがライフルを放ちフリーダムから引き離し、さらに目の前から現れアロンダイトを振り下ろすデスティニーにビームシールドで受け止め背中の翼からドラグーンを展開しクルサードから引き離す。


「「くっ……!」」


クルサードのせいで思うようにフリーダムやジャスティスに決定打を与えられずシンもレイも顔を歪める。

クリス達が戦っている中でもメサイアからはザクとグフが次々と現れて敵の狙いはオーブ艦隊に向けられている。

援護しようにもクリスやキラやアスランでもシン達を相手に前進するのが難しかった。

今は何とかミゲル達の乗るトゥルースやスティング達のおかげで耐えているがいつまで持つか分からない。



「仕掛けに乗せられたか!まずいぞキラ!!クリス!!このままではオーブが!!」


デスティニーにブーメランを投げデスティニーがそれをシールドで弾いた瞬間にジャスティスは体当たりを喰らわせる。

キラやクリスはアスランの言葉にモニターを見つつ確認するとクリスがキラより先に口を開く。


「AAは行って下さい!!アスランも」

「クリス…」

「クリス君!!」


クルサードはフリーダムとジャスティスに迫るデスティニーとレジェンドにドラグーンを展開し無理矢理離し二機に対しライフルを放つ。


「ジャスティスならシールドを突破できる!ここは俺達でなんとかするから!!」


再び迫るデスティニーにクルサードはドラグーンを展開しそれに翻弄されてデスティニーは撃たれてその衝撃でクルサードから離れた。


「それではエターナルが!!」


マリューの言う通りだった。

ここでAAが行ってしまうとエターナルが的になってしまう。

しかし一一一


『この艦よりもオーブです、オーブはプランに対する最後の砦です。失えば世界が飲み込まれる。絶対に守らねばなりません。私達はそのためにいるのです』


ラクスの言葉にクリスが微かに笑みを浮かべながら口を開いた。


「ラクスの言う通りです!!エターナルはまかせてください!!」


アスランやマリュー達の背中を押すようにクリスだけじゃなくミゲル達も後押しする。


「俺達が守ってやるから!!」

「オーブにはカガリさんがいます。アスラン!!」

「早く行け…アスラン!!」

「お前はレクイエムをなんとかしろアスラン!!」

「お姫様を守るんだろ?」


ミゲルがニコルがラスティがイザークがディアッカが背中を押す。

かつてクルーゼ隊として共に戦った仲間達。

掛け替えのない仲間達の言葉にアスランは真剣な表情で頷く。


「…分かった」


AAとジャスティスがレクイエムへと向かっていく。

すると一一一


「行かせるか!!ミネルバは何をやっている!!」


レジェンドがジャスティスを追おうとしたがフリーダムがドラグーンで立ち塞がった。


「レイ!!くそっ…フリーダム!!」


レジェンドを援護するようにデスティニーがライフルをフリーダムに放つが、


「シン!!」


クルサードが急接近してデスティニーとぶつかり二機に衝撃が走る。


「くそっ!邪魔をするなクリス!」


クリスとも戦うと決めたのにどうして俺はクリスに勝てないんだ!

このままじゃレクイエムも破壊される可能性があるのに。

シンが苛立った時だった、


「シン!!お前はミネルバと共にアスランとAAを追え!!」

「えっ……」

「フリーダムは………俺が撃つ!!」

「レイ…」

「お前はジャスティスを…!今度こそあいつを撃つんだ…!そして終わらせろ全てを!!クリスはナツメに任せればいい!」


過去からの悪夢から。

自分を惑わすアスラン・ザラとの因縁を今日こそ終わらせてみせる!


「…分かった」


レイはドラグーンでフリーダムとクルサードを引き止めた。


そうさ終わらせる……!

今度こそ全てを……!


『……クリス、私はここよ』

「……姉さん?」


クリスはこの戦場で何かを感じ取る。

まるでナツメに呼ばれたかのように辺りを見回す。

姉さんはここにはいない。

今度こそ決着をつけるために姉さんが呼んでいるんだ。


「行くしかないよな」

クリスは何かを決意したようにキラとミゲル達に通信を入れる。


「皆エターナルを頼む!!俺は決着をつけてくる」


クリスの言葉にキラがゆっくりと口を開いた。


「クリス、ナツメを頼んだよ。そして…必ず帰ってくるんだ。今度こそ二人で」

「…分かった」


本当なら僕自身が誰よりもナツメに会いたいと思っている。

でもナツメが呼んでいるのはクリスだ。

だから僕は友に託す。

クリス、必ずナツメを止めて上げて。


そしてキラに続くようにミゲル達もクリスに話し掛けた。


「絶対に帰ってこいよクリス!!」

「お前がいなきゃ、未来も明日も意味ないんだからな!!」


「僕達は信じていますよ!!」


ミゲルとラスティとニコルの言葉にクリスは頷いてフルスピードでナツメの所に向かう。

それを見ていたレイは小さく呟いた。


「クリス見せてもらうぞ。お前の覚悟を」





メサイア付近でフリーダムとレジェンドはドラグーンをお互いに展開しながら戦い合う。


「何故なんだ!!何故こんな!!」

「でぇぇーいっ!!」


キラは自分が戦う相手に違和感を感じて驚きを隠せなかった。

そんなはずはない。

あの人が生きているはずがない。

だってあの人は僕やクリスと戦い死んだはずだ。

あの人は世界の破滅を望んでいた。

だから僕達はあの人を死に物狂いで倒したというのに、何故あの機体からあのプレッシャーを感じるんだ!


「誰だ…誰なんだ…!キミはいったい!!」


キラは微かに感じていたその感覚の正体。

自分の予感している事にキラの心臓はバクバクと鳴っていた。


「わかるだろう、お前には。俺は…ラウ・ル・クルーゼだ…!!」

「…っ!!」


キラはレイの放った言葉に驚き声が出なかった。

またあの人が僕の前に現れた?

いや、そんなはずはない。


「人の夢人の未来その素晴らしき結果……キラ・ヤマト!!ならばお前も今度こそ消えなくてはならない……」


レイはドラグーンで容赦なくキラに攻撃していた。

キラはレイの放つ一言一言に動揺して防戦一方に追い込まれていく。

「俺達と共に…!!生まれ変わるこの世界のために!!」


そしてキラは先の大戦で戦った男が脳裏をよぎりレイはラウになった時の事を思い出していた。

ギルに言われて俺はレイ・ザ・バレルという名前だけじゃなくラウ・ル・クルーゼという名前も背負った。

決して変えられない運命。

人はその運命に従うしかないんだ!

だから俺は戦うと決めた。


「だから終わらせる…!全てを!!そして在るべき姿へと戻るんだ人は!!世界は!!」


ここで俺がキラ・ヤマトを倒す。

シンがアスラン・ザラを倒す。

ナツメがクリス・アルフィードを倒す。

それがギルの描いた未来で結果なんだ。

これで世界はあるべき状態になるんだ!

レジェンドのドラグーンを全て回避しフリーダムはライフルをレジェンドに対し構える。


「でも違う!!」

「…ッ!?」


フリーダムは迫りくるレジェンドのドラグーンをライフルで次々と破壊していき、


「それはキミの願いじゃない!!あの人やデュランダル議長の願いだ!!」


キラはレイにそう言いながらレジェンドのドラグーンを全て破壊していく。


「命は誰にだって一つだ!!」

「!!」

「だからその命は君だ!!彼じゃない!!」

「…あっ」


レジェンドの動きが完全に止まり、持てる兵器の全てをフリーダムはレジェンドに放つ。

それをまともに喰らいレジェンドは爆発していく。


「うわぁぁぁぁ!!」


レジェンドはそれにより殆どの機能を失い戦闘不能へとなるのだった。


「俺の……願い?」


俺の本当の願い?

俺はギルの為に戦っていたんだ。

それ以上でもそれ以下でもない。

だから一一一


『レイ!』

「………あっ」


レイが意識を失う前によぎった光景。

それは自分を呼ぶシンやルナマリア達の姿だった。

これが俺の願いだったんだな。

意識を失い宇宙空間をレジェンドが漂う中でレイは微かに笑みを浮かべていた。






キラとレイの決着がついた頃一一一

レクイエム破壊に向かっていたアスランとそれを追っていたシンが激闘を繰り広げていた。


「くっそぉぉ!!なんであんたが…!!あんたなんかに~!!」


シンの悲鳴に似た言葉が次々と吐き出された。

シンの悲しみや辛さがデスティニーの武器と共に放たれそれを受け止めるようにアスランはシンの攻撃を防いだ。


「シン!もうお前も過去に捕われたまま戦うのはやめろ!!」

「えっ…!!」


アスランの怒鳴ったその言葉にシンとルナマリアは目を見開く。


「そんな事をしても何も戻りはしない!!」

「なっ…何を!?」

「なのに未来まで殺す気か………お前はっ!!」


ジャスティスのサーベルを受け止めシンはアロンダイトでジャスティスを薙ぎ払うがシンの手は震えていた。

憎しみも一一一

恨みを全て込めて一一一


「わかってる…わかってるさ!!だから世界は変わらなきゃいけないんだ!!だから…オーブは討たなきゃならないんだ!!」


今が世界が変わる時なんだ!

アスランの言葉なんか綺麗事なだけだ!

議長やレイやナツメが目指す世界が正しき世界なんだー!

シンの言葉にアスランは目を見開く。


「ふざけるな!!そうして全てを壊し、未来も殺す――!!お前が欲しかったのは……本当にそんな世界か!!力か!!」


アスランの鋭く真っ直ぐとした言葉がシンの胸を貫いた。


俺が望む世界?

俺が求めた力?

それはなんだった?


『シーン!』

『お兄ちゃーん!』


俺はただステラやマユのような子が平和に暮らせる世界を望んでいただけなのに!


「……俺は」


じゃあ俺はどうすればよかったんだよ!

なぁ!アスラン!

教えてくれよクリス!


「だけど…だけど!!」


頭の中が混乱して瞳に涙が浮かんでいたシンはもう止まれなかった。

もう戦うしかないんだ!

俺の力が役に立つって言ってくれた議長やレイやナツメのためにも!


「シン!!もうやめて!!アスランも!!」


デスティニーはパルマフィオキーナでジャスティスを落そうとしたが、腕や脚の無いインパルスが盾になるようにジャスティスとデスティニーの間に割って入った。

そしてそのインパルスの姿にシンは悪夢を重ねてしまった。


「……っ!!やめろぉぉぉ!!」


シンは無意識のうちにインパルスにパルマフィオキーナを叩き込もうとしたが、その攻撃は間一髪でジャスティスが防ぎインパルスを守った。


「この―――バカヤロウ!」



アスランは怒鳴り声を上げてデスティニーの両腕を切り落とし脚を切断するように蹴りとばした。


「うわぁぁぁ!!」



デスティニーはそのまま倒れこむように月面に落下し戦闘不能になり、インパルスは墜ちていくデスティニーを追うようにジャスティスから離れていった。


「……くっ!」


アスランは微かに顔を歪めその場から離れると、エターナルを守って戦っていたガイアに乗るステラがシンの心の悲鳴を感じたのかエターナルから離れていく。


『ステラ!』

『バカ!どこに行く気だよ!』

『ステラ!シンに会いに行く!』


ガイアがエターナルから離れていく姿をカオスやアビスが気づきステラを一人で行かせる訳にも行かず、スティングとアウルもステラの後を追うようにエターナルから離れるのであった。
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