夢見た少女が願っていたこと
彼女――ミーア・キャンベルはハイネに抱かれAAの廊下を進む。
ラクスの代わりだった彼女。
ラクスとしてプラントを支えていた彼女。
そして最後は大好きだったラクスを庇って命を落とした彼女。
そんなミーア・キャンベルの姿をクルー達は悲しげに見送ることしか出来なかった。
暗い霊安室にミーアは静かに横たわっていた。
「ハイネ…」
クリスはミーアの亡骸を見つめながら微かに震えているハイネに話し掛ける。
「悪いクリス。 今は一人にしてくれ」
ミーアの頬に手を伸ばし冷たくなった彼女にハイネの瞳に再び涙が溜まりハイネは震える身体のまま霊安室から出ていった。
その場にクリスとラクスが残ると、ラクスがミーアの遺品となってしまったバックを開いて中を確認した。
そこには、
「これは――」
ラクスが見つけたのは一つのフロッピーだった。
フロッピーを起動させると幾つかのフォルダがあってクリスが手慣れた手つきでファイルを開いて見ると、
「これは……」
「ミーアの…」
「日記……ですか?」
コンピュータのディスプレイには沢山の文字列が映し出された。
これは彼女が記した日記。
ミーアがラクスとして生まれ変わった日からのもので日記には一人の少女が必死に頑張って夢を追い掛けてきたものが記されていた。
ラクスとして生きると決めた。
私には私をちゃんと見てくれる人がいる!
アスランと出会ってこの人って凄いんだなーって思ったけどハイネの方が私は凄いと思っちゃった。
皆平和を目指す為に頑張ってるんだ!
私も負けずに頑張らないと。
この日記には戦争を早く終わらせたいと願っていたミーアの思いが記されていた。
いつになったら戦いは終わるんだろう?
クリスってパイロットが死んじゃって議長が笑っていた気がする。
それに議長はアスランやハイネに対しても不審がっていた。
一体私の知らない所で何が起きようとしているのかしら?
ハイネ、大丈夫よね?
ミーアの日記を見ていたアスランは途中で部屋を出ていく。
「キラ…」
「うん」
アスランの後を追うようにしてクリスとキラも部屋を出ていった。
クリスとキラはアスランの姿を見つけるとアスランを間で挟むように左右に立つ。
「俺が最初に認めなきゃ良かったんだ。こんな事はダメだと…」
アスランの言葉をジッと聞いていたキラがゆっくり口を開いた。
「うん。でもやっばりすぐにはそんな風には言えないよ。後になんないと分かんないことも多くって、僕もラクスも狙われたりしなきゃ、デュランダル議長を信じていたと思う。クリスが信じていたように…」
「ギルは最初戦わなくてもいいって言ってた。もしかしたら俺の力が本当に必要な時が来るからって、そうなった時は一緒に戦おうとも」
俺はギルの言葉を信じて戦っていた。
あの時の俺にはそれしか信じるものがなかったから。
ミーアも俺と同じだったのかもしれない。
ミーアだけじゃなくアスランも。
だけどギルは不必要になったらこんな風に手を下す。
「でも…『ラクスはこうだから』って決められるのは嫌だな。『そうじゃないラクスはいらない』…とか」
「うん…」
「ああ…」
生きる道を決められたら自分を決められてしまったらその先には何がある?
そこに楽しさも嬉しさも悲しみも怒りも存在しない気がする。
「そんな世界は傲慢だよ…」
キラがハッキリとした口調でクリスやアスランに対して言うとクリスは確かになと小さく頷いて、
「だろうな…」
それに同意するようにアスランもしっかり答えた。
霊安室で安置されているミーアをラクスがジッと見つめていた。
彼女が自分になろうとして―一一
自分とは違う方法で頑張っていた一一一
ただのごく普通の少女だったのに一一一
ミーアが死ぬ理由は全くなかった――
私を庇ったから――?
彼女のミーアの人生は終えてしまった?
「…ッ!!」
込み上げてくる熱さに耐えきれずラクスの瞳から涙がポロポロと溢れだす。
ミーアの想いが痛いほど日記から伝わった。
もし自分がラクス・クラインとして表に戻っていたら?
ミーアがラクスとして利用される事はなかったかもしれない。
ミーアはミーアのまま生きていけたかもしれない。
ならミーアが死んだのは誰のせい?
それは彼女が代役をしなければならない状況を作った自分の一一一!?
「!?」
ラクス自身の心が悲鳴を上げて今にも泣き叫ぼうとした時だった、ラクスの肩に手が置かれてゆっくりと振り返ると、
「クリス……」
クリスは何も言わずただ優しく澄んだ瞳でラクスを見つめていると、
「っ!!」
ラクスはそんなクリスを見て耐えきれなかったのか、クリスの胸へと顔を埋めて抱きついた。
哀しみも――
苦しみも――
辛さも――
クリスが全てを受け止めていた。
ただ真っ直ぐにラクスの想いを受け止めるクリスにラクスは涙を流しながら、
「忘れないわミーアさん!私は…けっして…!!」
ラクスは全てを決意してミーアを見送った。
その運ばれていくミーアを皆が敬礼しながら見送り、ハイネは最後までミーアの傍についていく。
そしてついにギルバート・デュランダルは全世界に向けて『デスティニープラン』の導入実行を宣言した。
AAのブリッジではこれからの道をどうするかと皆が集まって話をしている。
この戦うしかない状況一一一
そうしていつも彼らは戦っている。
そして今は戦うしかないのだ。
「全ての命は、未来を得るために戦うものです。戦ってもよいものです」
ラクスの言葉一つ一つがブリッジ内に響く。
「今を生きる命として―私達を滅ぼそうとするもの―議長の示す死の世界と」
そう戦わなければならない。
議長が実行しようとしている『デスティニープラン』を止めなければならない。
「クリス、そして皆さん。私達は戦わねばならないのです」
ラクスの真剣な表情と言葉にクリスは深く頷いた。
「分かってるよ。ラクス」
たとえナツメやラウが自分の敵だとしても。
そして連合の残っていた戦力を全て奪うために、ザフトは以前連合が使用していた『レクイエム』を使ってなんとアルザッヘルを撃ったのだった。
「艦長!!」
「マリューさん!!」
「クリス君!!キラ君!!」
クリスとキラがブリッジに駆け込むとそこは緊迫したムードを漂わせていた。
それもそのはず一一一
画面いっぱいにアルザッヘルが撃たれた後の映像がそこには映し出されていたのだ。
「…これは」
「確か連合が使っていたはずじゃ…」
「デュランダルの野郎直していたのか」
ニコルやラスティやミゲルも驚くしかなかった。
それはクリス達も同じである。
「これで残っていた連合の戦力もほぼ壊滅してしまった…」
「あれの破壊力もジェネシスに劣らない。中継点の配置次第で地球の何処でも自在に狙える」
クリスとアスランの言葉にクルー達は顔を曇らせてしまう。
つまりあれはどこでも狙える事になる。
ならデュランダル議長はどこを狙う?
今ザフト以外で戦力が残っているとすれば?
「まさか…デュランダルの狙いはオーブか」
「その通りだよ」
ミゲルの言葉にクリスはハッキリとした口調で答えた。
「艦長、オーブにカガリに連絡して下さい。それとエターナルと合流しましょう。すぐに発進準備を始めて下さい」
「ええ!!」
クリスの言葉にマリューは小さく頷いた。
クリスは次に視線をラクスに向けると、
「ラクス」
「従わねば死。どちらにしてもこのままでは世界は終りです。私達に逃げ場はありません」
ラクスの言葉にキラやアスランやクリスは目の前にいる歌姫を真剣な表情で見つめる。
これが最後の戦い。
全てを終わらせるために最終決戦の場に。
ラクスの代わりだった彼女。
ラクスとしてプラントを支えていた彼女。
そして最後は大好きだったラクスを庇って命を落とした彼女。
そんなミーア・キャンベルの姿をクルー達は悲しげに見送ることしか出来なかった。
暗い霊安室にミーアは静かに横たわっていた。
「ハイネ…」
クリスはミーアの亡骸を見つめながら微かに震えているハイネに話し掛ける。
「悪いクリス。 今は一人にしてくれ」
ミーアの頬に手を伸ばし冷たくなった彼女にハイネの瞳に再び涙が溜まりハイネは震える身体のまま霊安室から出ていった。
その場にクリスとラクスが残ると、ラクスがミーアの遺品となってしまったバックを開いて中を確認した。
そこには、
「これは――」
ラクスが見つけたのは一つのフロッピーだった。
フロッピーを起動させると幾つかのフォルダがあってクリスが手慣れた手つきでファイルを開いて見ると、
「これは……」
「ミーアの…」
「日記……ですか?」
コンピュータのディスプレイには沢山の文字列が映し出された。
これは彼女が記した日記。
ミーアがラクスとして生まれ変わった日からのもので日記には一人の少女が必死に頑張って夢を追い掛けてきたものが記されていた。
ラクスとして生きると決めた。
私には私をちゃんと見てくれる人がいる!
アスランと出会ってこの人って凄いんだなーって思ったけどハイネの方が私は凄いと思っちゃった。
皆平和を目指す為に頑張ってるんだ!
私も負けずに頑張らないと。
この日記には戦争を早く終わらせたいと願っていたミーアの思いが記されていた。
いつになったら戦いは終わるんだろう?
クリスってパイロットが死んじゃって議長が笑っていた気がする。
それに議長はアスランやハイネに対しても不審がっていた。
一体私の知らない所で何が起きようとしているのかしら?
ハイネ、大丈夫よね?
ミーアの日記を見ていたアスランは途中で部屋を出ていく。
「キラ…」
「うん」
アスランの後を追うようにしてクリスとキラも部屋を出ていった。
クリスとキラはアスランの姿を見つけるとアスランを間で挟むように左右に立つ。
「俺が最初に認めなきゃ良かったんだ。こんな事はダメだと…」
アスランの言葉をジッと聞いていたキラがゆっくり口を開いた。
「うん。でもやっばりすぐにはそんな風には言えないよ。後になんないと分かんないことも多くって、僕もラクスも狙われたりしなきゃ、デュランダル議長を信じていたと思う。クリスが信じていたように…」
「ギルは最初戦わなくてもいいって言ってた。もしかしたら俺の力が本当に必要な時が来るからって、そうなった時は一緒に戦おうとも」
俺はギルの言葉を信じて戦っていた。
あの時の俺にはそれしか信じるものがなかったから。
ミーアも俺と同じだったのかもしれない。
ミーアだけじゃなくアスランも。
だけどギルは不必要になったらこんな風に手を下す。
「でも…『ラクスはこうだから』って決められるのは嫌だな。『そうじゃないラクスはいらない』…とか」
「うん…」
「ああ…」
生きる道を決められたら自分を決められてしまったらその先には何がある?
そこに楽しさも嬉しさも悲しみも怒りも存在しない気がする。
「そんな世界は傲慢だよ…」
キラがハッキリとした口調でクリスやアスランに対して言うとクリスは確かになと小さく頷いて、
「だろうな…」
それに同意するようにアスランもしっかり答えた。
霊安室で安置されているミーアをラクスがジッと見つめていた。
彼女が自分になろうとして―一一
自分とは違う方法で頑張っていた一一一
ただのごく普通の少女だったのに一一一
ミーアが死ぬ理由は全くなかった――
私を庇ったから――?
彼女のミーアの人生は終えてしまった?
「…ッ!!」
込み上げてくる熱さに耐えきれずラクスの瞳から涙がポロポロと溢れだす。
ミーアの想いが痛いほど日記から伝わった。
もし自分がラクス・クラインとして表に戻っていたら?
ミーアがラクスとして利用される事はなかったかもしれない。
ミーアはミーアのまま生きていけたかもしれない。
ならミーアが死んだのは誰のせい?
それは彼女が代役をしなければならない状況を作った自分の一一一!?
「!?」
ラクス自身の心が悲鳴を上げて今にも泣き叫ぼうとした時だった、ラクスの肩に手が置かれてゆっくりと振り返ると、
「クリス……」
クリスは何も言わずただ優しく澄んだ瞳でラクスを見つめていると、
「っ!!」
ラクスはそんなクリスを見て耐えきれなかったのか、クリスの胸へと顔を埋めて抱きついた。
哀しみも――
苦しみも――
辛さも――
クリスが全てを受け止めていた。
ただ真っ直ぐにラクスの想いを受け止めるクリスにラクスは涙を流しながら、
「忘れないわミーアさん!私は…けっして…!!」
ラクスは全てを決意してミーアを見送った。
その運ばれていくミーアを皆が敬礼しながら見送り、ハイネは最後までミーアの傍についていく。
そしてついにギルバート・デュランダルは全世界に向けて『デスティニープラン』の導入実行を宣言した。
AAのブリッジではこれからの道をどうするかと皆が集まって話をしている。
この戦うしかない状況一一一
そうしていつも彼らは戦っている。
そして今は戦うしかないのだ。
「全ての命は、未来を得るために戦うものです。戦ってもよいものです」
ラクスの言葉一つ一つがブリッジ内に響く。
「今を生きる命として―私達を滅ぼそうとするもの―議長の示す死の世界と」
そう戦わなければならない。
議長が実行しようとしている『デスティニープラン』を止めなければならない。
「クリス、そして皆さん。私達は戦わねばならないのです」
ラクスの真剣な表情と言葉にクリスは深く頷いた。
「分かってるよ。ラクス」
たとえナツメやラウが自分の敵だとしても。
そして連合の残っていた戦力を全て奪うために、ザフトは以前連合が使用していた『レクイエム』を使ってなんとアルザッヘルを撃ったのだった。
「艦長!!」
「マリューさん!!」
「クリス君!!キラ君!!」
クリスとキラがブリッジに駆け込むとそこは緊迫したムードを漂わせていた。
それもそのはず一一一
画面いっぱいにアルザッヘルが撃たれた後の映像がそこには映し出されていたのだ。
「…これは」
「確か連合が使っていたはずじゃ…」
「デュランダルの野郎直していたのか」
ニコルやラスティやミゲルも驚くしかなかった。
それはクリス達も同じである。
「これで残っていた連合の戦力もほぼ壊滅してしまった…」
「あれの破壊力もジェネシスに劣らない。中継点の配置次第で地球の何処でも自在に狙える」
クリスとアスランの言葉にクルー達は顔を曇らせてしまう。
つまりあれはどこでも狙える事になる。
ならデュランダル議長はどこを狙う?
今ザフト以外で戦力が残っているとすれば?
「まさか…デュランダルの狙いはオーブか」
「その通りだよ」
ミゲルの言葉にクリスはハッキリとした口調で答えた。
「艦長、オーブにカガリに連絡して下さい。それとエターナルと合流しましょう。すぐに発進準備を始めて下さい」
「ええ!!」
クリスの言葉にマリューは小さく頷いた。
クリスは次に視線をラクスに向けると、
「ラクス」
「従わねば死。どちらにしてもこのままでは世界は終りです。私達に逃げ場はありません」
ラクスの言葉にキラやアスランやクリスは目の前にいる歌姫を真剣な表情で見つめる。
これが最後の戦い。
全てを終わらせるために最終決戦の場に。