ミーア 夢見た少女へ

クリスとアスランが全ての襲撃者を撃退するとようやくアカツキがその場にやってきて、コックピットが開いて一人の人物が顔を出しヘルメットを外す。


「またせたな」


その人物は辺りを見ながら口を開くとクリスは苦笑しながらアカツキを見上げる。

アカツキに乗っていたのはネオ・ロアノークではない。

アカツキに乗っていたのは、


「遅いよ……ハイネ」


ミーア・キャンベルにとって誰よりも大切な存在。

ハイネ・ヴェステンフルスだったのだ。


「ラクス、ミーアをこっちへ」


クリスの言葉を聞いた二人は物陰から出てきて、ミーアはハイネの姿を確認すると驚きながら歩いていた。



「ハイネ!!よかった!アナタ生きていたのね!」

「すまなかったなミーア。心配かけちまって」


アカツキを見上げるミーアとミーアの姿に嬉しそうに笑みを浮かべるハイネ。

クリスはラクスとミーアをとりあえずAAにとそう思って手を差し出してミーアはクリスの手を躊躇しながらも取ろうとした時だった、ラクスの向こう側で傷だらけになった女が銃口をラクスに真っ直ぐに狙っているのに気づいた。




「危ないっ――――!!」


反射的にミーアの身体が動きラクスへ飛び付いた瞬間、大きな銃声と共にミーアの目が見開かれてミーアの身体がクルリと舞いそのまま崩れるように落ちていった。



「ミーアさんっ!!」



ラクスは撃たれたミーアに駆け寄り支えるように抱き起こし、女の存在に気づいたクリスとアスランはすぐに撃ち返して女はそのまま意識を失った。



ラクスを庇い目を閉じていたミーアはラクスの声に気づいて目をゆっくりと開けた。


「あたしの…うた…いのちを…わすれっ…」


小さな声でミーアはラクスに伝えながらバックから一枚の写真をラクスに渡した。


それはミーアが『ラクス』になる前の本当の姿。

ミーア・キャンベルの姿だった。


「ミーア!!」


ハイネがアカツキのコックピットから飛び降りてミーアの傍に駆け寄った。


「ハイネ…あなたとは…もっと早く…会いたかった…」


「何言ってんだ…!だったら生きろよ!!」


ハイネは瞳から涙を流しミーアの手を優しく握りながらまるで血を吐くように口を開く。


「私…貴方の事がずっと…好きだった……」


「ミーア…俺もお前が…好きだった…!だから…死なないでくれよ」


ハイネの悲痛な声にミーアは手をゆっくりあげてハイネの頬に触れる。



「ハイネ…ごめんね…」


「駄目だ!!ミーア!!駄目だ!!」


ごめんなさいハイネ。

私がもっと早くミーア・キャンベルに戻ってたらアナタを悲しませなかったのに。

もっとアナタといたかった。

アナタと未来を生きていたかったな。


ハイネが叫ぶようにミーアの名を呼ぶかもうミーアには微かにしか聞こえていなかった。


「ハイネ…貴方に…会えて…」

「…ミーア!!」



それは最後に一一一

ミーアの瞳が開く事は二度となかった。

目の前で自分を守ってくれたミーアにラクスは瞳から涙が流れ、


「くそぉぉぉぉっ!」


愛する人を救えず失ったハイネは悔しさに拳を握り締めて大粒の涙を流し、そのハイネと同じようにメイリンとアスランもまた涙を流し、クリスとキラもまた彼女を救えなかった事を後悔しながら悲しげな表情で拳を握り締めていた。
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