宇宙へ

そして宇宙に上がったジブリールは巨大な兵器を使ってプラントを攻撃したのだ。

その光景はまるでヤキンの時のジェネシスの時と似ていた。

そしてAAのブリッジには主要のクルー達が集まっている。


「同じだジェネシスの時と」


「でも…プラントも勿論だけどこんなの皆が嫌だ」


アスランとキラの言葉に周りが沈黙していると、クリスの隣にいたラクスが口を開いた。


「撃たれて撃ち返し、また撃ち返されるというこの闘いの連鎖は今の私達にそれを終わらせる術はありません……」


ラクスの言う通りだった。

自分達が行ったところでそれを終わらせる保証はどこにもありはしない。


「誰もが幸福に暮らしたい…なりたい。その為には戦うしかないのだと私達は戦ってしまうのです。議長は恐らくそんな世界にまったく新しい答えを示すつもりなのでしょう。議長の言う戦いのない世界、人々がもう決して争う事のない生まれながらにその人のすべてを遺伝子によって決めてしまう世界です」


メンデルから得た情報一一一

ノートに記された真実一一一


「そう生まれついて遺伝子によって人の役割を決めてそぐわない者は………淘汰調整し管理する世界だ。それがギルの目指す世界だったんだ」


皆はクリスの言葉を静かに聞いていた。


「そんな世界なら誰もが本当の自分自身や未来の不安から解放され、悩み苦しむ事なく生きられるかもしれない」


不安からの解放。

それは誰もが望む事。

だけど一一一


「そこには恐らく戦いはありません。戦っても無駄だと貴方の定めが無駄だと………皆が知って生きるのです」


クリスとラクスから伝えられた。

『デスティニープラン』の内容。

その内容に皆は驚くしかなかった。


「そんな世界でデュランダル議長はどんな立ち位置なんだよ?」


ミゲルの言葉にニコルとラスティが答えた。


「神じゃないんでしょうか?」


「いや…王だろ」


二人の言葉にハイネが首を横に振って口を開いた。


「運命が王なんだ遺伝子がな。だとすれば議長は………神官だよ」


それを聞いたアスランは口を開いた。


「無駄か…」


「本当に無駄なのかな…?」


弱気になっているキラ達を見ていたネオが言った。


「無駄な事はしないのか?」


「俺はそんなに諦めがよくない」


皆同じ気持ちだ。

そんなに簡単に受け入れる訳がない。

足掻けるなら足掻く。

諦めることなんて出来ない。


「でもあの人はこの計画を実現する為に人々の信頼を得てきた。しかも強力な味方もいる」


クリスの言う通りだった。

デュランダルはこの計画の為に人々の信頼を得てきた。

人々はそんなに簡単にはあの人を疑わない。


「それでも行くのか?」


「僕は………それでもいくよ」


クリスの言葉にキラは真剣な表情で答えた。


「だったらこの事実も話していいかな?」


クリスはラクスを見るとラクスは小さく頷いて託すようにクリスを見つめる。


「キラ、いや皆も真剣に聞いてほしい。ダーダネルスの戦闘の時に俺が戦ったMSを覚えてるか?」


クリスの言葉にキラは頷いた。

誰もが忘れる事の出来ない戦い。

あの戦いでいろんな人が傷ついたのだから。


「あのMSのパイロットはキラなら分かるはずだ。いやキラだけじゃない先の大戦で共に戦った皆も知ってるはず。俺と同じようなMSに乗る人物は一人しかいない」


クリスの言葉を聞いた皆は暫く考えていたがキラは微かに感じる嫌な予感が脳裏によぎっていた。

僕は彼女が生きていると願っていた。

だけど今僕の心が悲鳴を上げている。

そんなはずがないと。

否定したいのに声が出ない。

じゃあこの嫌な予感は当たっているのだろうか?


「あのMSに乗っていたのは…ナツメ姉さんだ」


「「「「!!!!」」」」


「………ナツメ」

クリスの言葉を聞いた瞬間ブリッジは一瞬で凍りついて、キラは複雑な感情に襲われてしまう。


「クリス君、本当なの?」


重苦しい空気の中マリューが口を開いた。


「ええ事実です。そして今姉さんはギルの傍かミネルバにいると思います(さっき戦ったMSが姉さんだとしたら)」


クリスから言われた事実に皆は驚くしかなかった。

かつて仲間として戦った人が今は敵としてザフトにいる。

頼りになる仲間が今では厄介な敵に。


「キラはそれでも戦えるのか?」


クリスの言葉にキラは一度目を閉じて直ぐに開けた。



「僕はナツメを助けたい。だから戦う!!僕はナツメを愛してるから」


一度は擦れ違って一一一


二度目は愛し合って一一一


三度目は約束を交した。


「もうこれ以上ナツメを傷付けたくない。だから彼女を助ける」


キラの決意した言葉にクリスは微笑えんで口を開いた。


「じゃあ迷いはないね…」


「うん!!」


そして皆も迷いはないと言った。


「宇宙へ上がろう!!アスラン!!クリス!!僕達も!!」

「キラ…」


キラの言葉にアスランはキラを見てクリスもキラを見た。


「議長を止めなきゃ…!未来を作るのは運命じゃないよ!!」

「あぁ…人は未来を選ぶ事ができるんだ」


クリスとキラは軽く拳をぶつけると、


「ああ!!」


アスランも続くように拳をぶつけた。

決意を胸に皆が動き出す。


「それで俺はミゲル達を連れて先に宇宙へ上がろうと思う」

「「!!」」

「確かめたい事がある。それに情報も得たいからな」


クリスの言葉に二人は真剣な表情になった。


「分かった……」


「気をつけて」


そして…クリスとミゲル達は宇宙に上がる準備をした。






クリスはパイロットスーツに着替えるとラクスに話し掛ける。


「ラクス、先に行ってるから」


「はい。後で私も行きますわ。ステラさん達の事はカガリさんにまかせてあります」


ステラ達が宇宙に上がるかどうかはステラ達次第だがおそらく来るだろうな。

アウルやスティングは戦う気満々だったし、ステラは皆の力になりたいと言ってたしシンには会いたいとも言ってたしな。


「もしもの時は任せる。一応機体も調整していたからな」


クリスの言葉にラクスは頷く。

先に宇宙へ上がるクリス。

少しだけ離れるからかラクスはどこか淋しげな表情を浮かべると、クリスの頬にそっと触れてクリスを見つめていた。


「……クリス」

「大丈夫だよ、ラクス。無茶はしないしすぐに会えるから」


優しく微笑むクリスにラクスはそっと頬に口付けるとクリスも同じようにラクスの頬に口づけた。


「クリス、気をつけてください」

「……あぁ」


クリスはミゲル達がコックピットに乗り込んで、宇宙へ上がる為の輸送機に乗り込んだのを確認すると、同じようにクルサードのコックピットに乗りその輸送機を掴む。


『輸送機発進します!!』


こうしてクルサードが掴みミゲル達が乗り込んだ輸送機はマスドライバーを通過して宇宙へ上がっていく。


ここから世界の全てを決める戦いが始まろうとした。
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