自由と正義と聖戦

アスランとキラが発進した同時刻、クリスは補給に戻っていたデスティニーが再び現れた事に顔を歪めていたが状況は先程と変わっていた。

何故なら一一一


「三機相手はさすがに…」


クリスは一人でデスティニーだけじゃなくさらに増援で現れた新型MS二機、つまり三機を相手に戦っていたのだ。


「こいつ!何で墜ちないんだよ…!?」

「レイ!!私の援護をお願い!!」


デスティニーはライフルでを放ちナツメの機体は接近しながらレイの機体は二人の援護をするようにクルサードを追い詰めていく。


「シン!!俺とナツメで奴に一瞬だけ隙をつくる。それを狙え!!」

シンは頷いて一度離れるとレイとナツメはクルサードを連係プレーで追い込んでいく。


「まずい…!!このままだと」


クリスがライフルで応戦するが二機の連係に苦戦していき、ついにレジェンドのビームをシールドで防いでいたクルサードはナツメの機体に蹴り飛ばされてしまう。


「今よシン君!!」


ナツメの声と同時にシンがクルサードに高エネルギー砲を向けた。

本当に撃っていいのか?

相手はクリスなんだよな?

俺は俺はクリスをこの手で一一一


「……これで!」


高エネルギー砲を放とうとしたデスティニーだったがシンは一瞬だけ躊躇ってしまったその瞬間、


「やめろぉぉぉ!!」



デスティニーのコックピットにとある声が響き渡り声と同時にブーメランがデスティニーに飛んでくると、デスティニーはブーメランを防いだがその後にジャスティスに体当たりされたのだ。


「アスラン!?」


さらにフリーダムも現れてフリーダムはナツメの機体とレイの機体に対しクルサードから離れるようにライフルを放つ。


「……キラ!」


どうやら二人は間に合ったようでクリスは一度息を吐くと視線をジャスティスとデスティニーに向けていた。


「やめるんだ…シン!!」


突然現れた機体と聞こえてくる声にシンは驚いた。


「アスラン…だって…そんな…」


シンは驚くしかない。

アスランの乗るグフは自分がデスティニーで破壊したはずだ。

なのにどうしてここにいるんだ?

生きていたのかアスラン!


「もうやめろ!!」


「!!」

「自分が今何を討とうとしているのか、お前本当に分かっているのか!!」


アスランの言葉をクリスやナツメ達は真剣に聞いていた。


「戦争をなくす…!ロゴスを討つ…!だからオーブを討つ!!それが本当にお前が望んだことか!!」


アスランの言葉の一言一言にシンは戸惑っていた。

俺が望んだこと?

俺はただ戦争のない世界を創りたかっただけ。

俺のように家族を理不尽に失う人を増やさないように。

ステラのような女の子を戦場へと出さないため。

だから俺は戦っているんだ。

それなのに一一一


「思い出せシン!!お前は本当は……何が欲しかったんだ!?」


シンの胸に突き刺さるアスランの必死の言葉。

自分が欲しかったもの?

それは大切な人達を守る力や世界を守る力。

だからそれを奪う者一一一

ロゴスを討たなければならない。

じゃあ………オーブは?

家族と幸せに暮らしていたこの地は?

自分が討つという事。

本当にそれでいいのか?

本当に一一一?


「ッ!死にぞこないの裏切り者が何をノコノコと!惑わされるなシン!!」


シンはレイの言葉にハッと我に返るとレイはジャスティスに接近してビームを浴びせるがキラがそれに気づいてレジェンドにライフルを放つ。


「レイ!!」


レジェンドにフリーダムが攻撃しているのを見たシンはそちらに向かったが、


「シン!!」


その間にジャスティスが入り込んでシンを止めた。


「オーブを討ってはダメだ!!お前が!!その怒りの本当の理由を知らないまま、ただ戦ってはダメだ!!」


アスランが必死にシンを説得している時二人の邪魔をさせないようにクリスはナツメとキラはレイと戦っていた。


「なにを…なにを言ってるんだ…アンタは!!」


シンはブーメランを手にしジャスティスに振り下ろすが、ジャスティスはその攻撃シールドでガードしていく。


「何も分かってないくせに!!裏切り者のくせに――!!」


デスティニーはジャスティスから離れて二本のブーメランを投げるがジャスティスはそれを全て脚のサーベルで弾いていく。

デスティニーの力がアスランに通用しない。

相手は怪我をしているというのに。

何で!何でなんだ!

苛立ちのあまり顔が苦痛に歪みシン。


「くそっ…くそっ…」

「シン!!」


戦うしかないんだ。

あの時と同じように一一一

アスランを討つんだ。

それが自分の使命でレイやナツメや議長のためになるんだから。


「くっそぉおおっ…!!」


デスティニーの翼が光って手に持った長刀をジャスティスに振り下ろしたがジャスティスはすれ違いざまにサーベルを振り上げたてデスティニーの腕を切り裂いたのだ。

先程のクルサード同様に腕を切り裂かれた事でシンはもう唖然とするしかなかった。

俺はクリスにもアスランにも勝てないのか!






その頃ザフト軍のMSと戦っていたミゲル達がなにかに気づいた。


「あれはシャトルか?」

「まさかジブリールなんじゃ!」

「だったら宇宙に上げるわけにはいかねぇ!!」


ミゲルとニコルとラスティはスラスターを全開にして宇宙に上がるシャトルを追いかけ、トゥルースの後方からはムラサメやインパルスがシャトルを追っていた。

トゥルースはライフルを構えて撃とうとしたがシャトルにはなかなか当たらなかった。


「くそっ…あたりゃしねぇ!!」


すると…トゥルースのスラスターが限界に近づいて減速をはじめた。


「ミゲル!!もう限界です!!」

「分かってる!!もう追うな!!ここまでだよ」



そして…シャトルは宇宙に上がってしまった。

ジブリールが宇宙に上がったことからザフト軍が撤退していきオーブ軍もまた撤退していく。

ザフト軍が撤退していく状況で睨み合いをしていたクリス達だったが去っていく光景をただジッと見つめていた。

ジブリールのいないオーブでの戦闘は意味がない。

そして…体の限界以上に戦ったアスランは意識をなくしてジャスティスがゆっくりと落ちていきキラはすぐにジャスティスに駆け寄って捕まえクリスもそれに気づいてAAに戻っていった。





クリスが機体から降りるとアスランをキラが運んでおりキラがアスランからヘルメットを取ると傷が開いて再び血が流れていた。


「キ…ラ…?」


アスランは体に激痛が走りながらもかろうじて声を出した。


「ストレッチャーを!!医療班を早く!!」


キラは焦りながら叫んで皆が動いている。


「アスラン…」


クリスはアスランが運ばれるのを見届けると急いで格納庫を後にしてクリスはアスランがいる医務室に向かっているとラクスに会って一緒に行くことにした。


「クリス、お疲れでしょう?」


ラクスの言葉にクリスは首を横に振った。

「大丈夫だよ。アスランよりは無茶しなかったから」

「いいえ、心の方ですわ。相手はかつてアナタがいたミネルバ。やはり戦いづらかったのでしょ?」

「安心してくれ。俺はもう心をおらないと決めたから」


クリスの言葉にラクスは優しく微笑む。


「それなら安心できましたわ」


二人が話しているといつのまにか医務室に着いて二人が医務室に入ると、


「ミゲル~!!」

「じょっ…冗談だって!!そんなに怒んなよアスラン!!」

「そうだよアスラン!!ミゲルさんの言ったことは事実なんだから」



アスランが拳を震わせながらミゲルを怒鳴りミゲルは冷汗をかきながらアスランに言ってキラがアスランを止めていた。


「賑かですわね」

「そうだね」


ラクスとクリスに気づいたキラ達は目線をそちらに向けた。


「遅いぞクリス!!」

「待ってたんですよ。お二人とも」

「そうそう!!」


ミゲル達はクリスに詰め寄るとニヤリと笑った。

何をニヤニヤしている?

何か嫌な予感もするし。

「なぁクリス。お前ラクス・クラインとは結局どんな関係なんだ?」


ミゲルの言葉にクリスはラクスに視線を向けると、

「どんなって」


俺とラクスの関係?

そんなもの決まっている。

俺とラクスは一一一


「まさか……」


ラスティが嫌な予感を感じて口を開いた瞬間、


「こういう関係」


そう言ってクリスはラクスを自分の方に引き寄せて頬に優しく触れるだけの口づけをかわした。


「「なんですとぉぉぉ~!!」」


ミゲルとラスティは声をハモらせる程驚いてしまった。


「ほら、言った通りじゃないですか」


ニコルはニコニコしながらミゲル達に言った。


「クリス…」

口づけを交わした後にラクスが不意にクリスを呼びクリスはラクスをジッと見つめると、


「お返しですわ」

ラクスはニッコリ笑ってクリスの頬にキスした。

その光景にミゲルとラスティは角砂糖を摂取したような顔になりニコルはただ優しく笑っていた。

クリスはとりあえず放心状態の二人はほっといてラクスと一緒にアスランに近づく。


「アスラン無茶したな」

「お前まで言うか。本当に俺は大丈夫だ」


アスランはムッとした表情で言葉を返すと、そんなアスランの様子にキラとクリスは笑みを浮かべる。

「でも本当によかった」

「?」


キラの言葉にアスランは首を傾げながら話を聞く。


「また、こうしてアスランとクリスが揃って話せる事になって」


ようやく三人揃った事にキラは喜んでいた。

本当ならそこにナツメもいて欲しかったけど。

そう口にしないもののキラは柔らかな笑みを浮かべ再び口を開く。


「平和な時は当たり前ですぐ忘れちゃうけどそういうの本当はとても幸せな事だって」


キラの言う通りだった。

平和な時は当たり前になって気付かなかった。

でもそれは本当に幸せな事。

今だからこそ実感できたのかもしれない。


「テレビ付けてもいい?カガリが声明を出すんだ」


キラはモニターを付けるとモニターにはカガリが映る。



「とりあえず意志を示す。あとはそれからだってさ」


そして…カガリの声明が始まった。



『オーブ連合首長国代表…カガリ・ユラ・アスハです。今日私は全世界のメディアを通じ、先日のロード・ジブリール氏の身柄引き渡し要求と共に、我が国に侵攻したプラント最高評議会議長…ギルバート・デュランダル氏にメッセージを送りたいと思います』



カガリのこの声明はザフトにも流れている。

当然デュランダル議長にも流れていた。

デュランダル議長はこのカガリの声明を落ち着いた様子で聞いていた。



『過日、様々な情勢と共に我々に送られた、デュランダル議長のメッセージは確かに衝撃的なものでした。『ロゴスを討つ、そして戦争のない世界に』という議長の言葉は今、この混迷の世界で政治に携わる者としても確かに魅力を感じます…ですが…』


その時だった、モニターにノイズが走って画面が切り替わり画面にはラクスの代役……ミーア・キャンベルの姿が映し出された。


「「!!」」


ミーアの姿に医務室にいたメンバーは全員が驚いていると、急に医務室の扉が開いて、


「ミ……ミーア!!」


「ハイネ!?」


クリスが振り向くと、そこには息を荒くしながら立っていたハイネがいた。


「ハイネ…知ってたのか…彼女の正体」

「あぁ…知ってる。アイツはミーアは…俺の…!」


そう言ってハイネは倒れて意識を失ってしまう。

彼女、ミーアはハイネにとって大切な人なんだな。

意識を失ってまで伝えようとしてくれたのかハイネ。



「ミゲル、ハイネを頼む」


クリスはそう言ってラクスに視線を向けると、ラクスはそれに気づいて頷いてゆっくり口を開いた。


「でわクリス。私達も参りましょうか」


「ラクス?」


ラクスの言葉にアスランは首を傾げた。


「大丈夫ですわアスラン。私にも迷いはありません」


ラクスの目は強く決意されクリスとラクスは部屋を出ていった。




「ああ~!!羨ましすぎるぞ……クリス!!」



放心状態だったラスティが叫ぶと、


「うるさいですよ…ラスティ」


ニコルがラスティを気絶させて黙らせた。













行政府についたクリスとラクスは機体から降りると二人はカガリのいる部屋に向かい、部屋に入るとカガリをはじめとしたスタッフ全員がラクスを見て頷いた。



「それでわ、皆さん…始めましょう」


その言葉を合図にスタッフ達が機材の電源を入れた。


ラクスはカガリの横に立つと微笑んでカメラに顔を向けた。









「その方の姿に惑わされないで下さい」



再び映像が変わってミーアからラクスに変わった。

その出来事に誰もが驚いている。







「私は…ラクス・クラインです」





「バッ…バカな…何故彼女がオーブに!!」



そして誰よりも驚いたのは一一一

ギルバート・デュランダルだった。
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