分かたれし道
クリスがミネルバに向かっている頃ミネルバではプラント本国からAAとフリーダムの排除命令がミネルバに通達されていた。
その命令にアスランは抗議してミネルバの艦長でもあるタリアも、司令部に何回も確認と抗議をしたが受け入れてもらえずミネルバはAAとフリーダム撃破に向かう。
シンやレイはやる気満々ですでに戦闘モードに入っており、ルナマリアはそんな二人を見ながら困惑。
ハイネは目を閉じて何かを考えているようで、その場にアスランガイアの来るとシンはさっさとインパルスの元に向かい、ハイネはアスランの方に視線を向けると、
「……クソっ!」
アスランはただ壁を殴ることしか出来なかった。
どうしてなんです議長!
キラもAAも敵じゃないのに。
ベルリンでは彼らも協力してくれたのにどうして?
俺はザフトに戻ったのに何もできないのか!
そしてミネルバがAAの元に向かっているとき、
「艦長!!こちらに接近する熱源あり…」
「確認できる?」
「これは戦闘機です!しかしザフトのものではありません」
「地球軍ってこと?」
「いえっ、それが地球軍でもないようです。それに…」
「何?」
「その戦闘機から、信号が発信されています。死神が戻ってきたと…」
「死神ですって………まさか!!クリス!」
「「「!!」」」
「えっ…ですが彼は…」
タリアの言葉にブリッジにいたクルーやアーサーは驚いている。
クリス・アルフィード一一一
どうしてこのタイミングで!
ブリッジが困惑した空気に包まれたままシンがインパルスで発進したと同時にすれ違いでクリスの乗った戦闘機がミネルバの格納庫に飛び込んでいった。
(…あれは一体?)
シンは一度気にはしていたが今はフリーダムを倒すことに頭を働かせた。
クリスが格納庫に着くと兵士が周りに集まっていた。
「誰が乗ってるんだ?」
ヨウランが戦闘機に向かって呟いていると、コックピットが開いて一人の青年が出てきた。
「えっ………!!」
格納庫が一瞬にして静まり返った。
何故ならコックピットから出てきた者は銀色のパイロットスーツを着ていた男、クリス・アルフィードだったからだ。
「久しぶりだな」
クリスが微かに笑みを浮かべて口を開くが兵士達は全員困惑していた。
それもそのはず。
クリス・アルフィードはダーダネルスで殉職したはず。
それなのに今自分達の目の前に現れたのだ。
本当に本物なのか?
困惑したせいで格納庫が静寂に包まれているが、クリスは気にした様子もなく口を開いた。
「艦長に会いたい。行かせてくれないか?」
クリスの言葉に兵士は咄嗟に銃を構えた。
「悪いがそれは出来ない…」
「なぜ…?」
「ミネルバはいまからAAと戦闘だ。ブリッジにいる艦長に会わせる事は出来ない」
クリスは兵士の言葉に驚いたように目を丸くする。
ギル一一一
ラクスだけじゃなくキラやAAも始末するつもりか。
ならさっき出て行ってたインパルスはフリーダムを破壊するためか。
キラなら大丈夫だと思うが、相手はシンだ。
シンには俺やキラやアスランと同じだけの力がある。
不安だが今はキラを信じるしかないか。
「ならヨウランとヴィーノ、俺についてきてくれない?」
「「えっ!!」」
二人は驚いて目を見開きながらクリスを見ている
「俺の荷物は全部回収してあるんだろ?だけど少し部屋に用がある。問題ないよな?」
おそらく俺が隠した物はそのままのはずだ。
あれを回収したらさっさとミネルバから去るか。
クリスはヴィーノとヨウランを引き連れたまま格納庫から去っていき、銃を持った兵士達は何も出来ないまま見送るしか出来なかった。
△▼△▼△▼
「それにしてもよく生きてたなクリス」
通路を歩きながらヨウランが不意に話し掛けてきた。
「自分でも驚いているよ。あの一撃をくらって生きてたんだから…」
クリスが苦笑しながら答えると、
「今までどこにいたんだよ?」
ヴィーノが首を傾げながら尋ねるとクリスは苦情したままその問い掛けに答えた。
「プラントだよ。知り合いに治療してもらってたんだ。わけあって今はこのパイロットスーツを着ているがな」
「じゃあ!クリスはミネルバに戻ってきたってことでいいんだよな!」
「だな!」
ヨウランとヴィーノが嬉しそうにクリスを見ていたが、クリスはどこか複雑そうに視線をそらしていた。
どうする?今ここで戻らないと答えるか?
もしそれを伝えて二人が誰かに話すと俺は裏切りのレッテルのついた状態でミネルバ内で追われる事になる。
それはそれで面倒だが、
「とりあえず急ぐか」
「「クリス?」」
二人の言葉に答えなかったクリスに二人は首を傾げていたがとりあえず部屋を目指すことにして、クリスは自室に着くと二人に見張りをさせて中に入った。
「…きっとこれは回収されてないよな」
クリスは何も無い部屋にあるベッドの裏に手を当てると、目当てのものを見つけたのかそれをベッドから剥がしてパイロットスーツの中に入れる。
さらに机の引き出しの仕掛けを解除してそこから銃を出して見えないようにしまう。
「ここともさよならか」
俺はなんの為にザフトに戻ったんだろうな。
ギルに助けてもらってギルの為に戦っていた。
そうすれば平和になると信じていたから。
けどギルの目指す平和と俺が望んだ平和は違ったのかもしれない。
姉さんの事もラクスの事もギルは話してくれなかった。
だから俺は一一一
「おまたせっ……ってあれ?」
部屋から出て二人に声を掛けようとしたが、二人はいつのまにかいなくなっていてクリスは首を傾げたが、とりあえず格納庫に向かうかと歩いていると通路の向こう側から誰かがこちらに歩いてきたのに気付いた。
「アスラン!!」
アスランの姿にクリスは慌てて隠れようとしたが、
「なっ!?クリス!?」
アスランには気づかれたようで、アスランは信じられないものを見るような表情をしながらクリスに駆け寄ってきたのである。
「よぉ、アスラン。元気そうだな」
クリスは苦笑しつつもアスランに腕を掴まれて誰も通らないであろう通路に連れて行かれるのである。
「そうか、運よく生きてたのか」
「すまない。お前にも心配かけてしまったな」
クリスはとりあえずアスランに事情を話した。
ミゲル達の事はあえて話していない。
俺もだったがアスランもその目で確認するまで信じられないだろうし。
「なぁクリス、AAとキラは生きてると思うか?」
アスランはクリスに先程の事を話す。
シンの乗るインパルスがフリーダムを撃破したこと。
ミネルバのタンホイザーによりAAの沈んだ場所で爆発が起きたこと。
そして自分は怒りの感情を抑えきれずシンを皆の前で殴り飛ばしたこと。
どうしても抑えきれなかった。
キラを倒したシンの言動や表情が。
確かにアイツは戦場に乱入して戦場をかき乱した。
だけど俺はキラにやられても敵として見れなかったのだ。
落ち込むアスランにクリスは一度息を吐くと、
「当たり前だろ。キラもAAも沈むはずない。それにAAにはアイツらもいるしな」
まぁ、ミゲル達が出撃したとは思えないが。
あのキラがそう簡単にやられるとはどうしても思えないしな。
「クリスはこれからどうする気だ?」
「わかってるだろ?俺はAAに帰るさ」
「……ッ!!」
クリスの言葉にアスランは驚いて目を見開く。
「どうしてだ!お前はもうザフトにミネルバには戻らないつもりか!?」
「ギルがやってきた事がどうしても俺には許せない。今回の件もだがラクスが狙われた事もギルが無関係とはどうしても思えない」
「……どうしてラクスの事を!」
「ダーダネルスでキラと戦った時に聞いた。そしてディオキアでのギルの言葉。俺にはギルがラクスを始末しようとしか思えなかったんだ」
「………クリス」
クリスの決意は固い。
確かにラクスが狙われたとしたら許せないよな。
俺だってカガリが同じような目に合ったら関係者まとめて排除するぐらい考えるしな。
「アスラン、俺と一緒にAAに帰らないか?」
「なっ!!」
クリスの言葉にアスランは目を見開いた。
「まぁ、そりゃ驚くか…」
「当たり前だ。俺はザフトに自分から復隊したんだからな」
「本当に今の状況でギルを信じるのか?もしかしたらお前も消される可能性だってあるんだぞ」
「だとしてもだ。今はまだ議長に話を聞くまで俺はザフトを抜けるつもりはない。議長が何故キラやAAを排除しようとしたのか本人に聞きたいんだ」
アスランにはアスランの考えがある。
それを強制してまで連れては行けないか。
だがギルがそんな話をするアスランをそのままにするだろうか?
「分かった。なら俺はもう行くぞ」
「……クリス」
「……んっ?」
「死ぬなよ」
「お前もな。俺もお前もまだ死ねない。必ず生きて会うんだからなアスラン」
クリスはそう言いながら歩き出すと、何かを思い出したのかアスランにとある言葉を告げる。
「アスラン」
「………」
「『私はいつでもお前の事を待ってるからな』…だとよ」
「…えっ」
それだけ告げてさっさといなくなるクリスだったがアスランは今の言葉に本気で驚いていた。
まるで誰かからの伝言のようなもの。
そんな伝言をクリスに託す人物は一人しかいない。
「…カガリ」
その命令にアスランは抗議してミネルバの艦長でもあるタリアも、司令部に何回も確認と抗議をしたが受け入れてもらえずミネルバはAAとフリーダム撃破に向かう。
シンやレイはやる気満々ですでに戦闘モードに入っており、ルナマリアはそんな二人を見ながら困惑。
ハイネは目を閉じて何かを考えているようで、その場にアスランガイアの来るとシンはさっさとインパルスの元に向かい、ハイネはアスランの方に視線を向けると、
「……クソっ!」
アスランはただ壁を殴ることしか出来なかった。
どうしてなんです議長!
キラもAAも敵じゃないのに。
ベルリンでは彼らも協力してくれたのにどうして?
俺はザフトに戻ったのに何もできないのか!
そしてミネルバがAAの元に向かっているとき、
「艦長!!こちらに接近する熱源あり…」
「確認できる?」
「これは戦闘機です!しかしザフトのものではありません」
「地球軍ってこと?」
「いえっ、それが地球軍でもないようです。それに…」
「何?」
「その戦闘機から、信号が発信されています。死神が戻ってきたと…」
「死神ですって………まさか!!クリス!」
「「「!!」」」
「えっ…ですが彼は…」
タリアの言葉にブリッジにいたクルーやアーサーは驚いている。
クリス・アルフィード一一一
どうしてこのタイミングで!
ブリッジが困惑した空気に包まれたままシンがインパルスで発進したと同時にすれ違いでクリスの乗った戦闘機がミネルバの格納庫に飛び込んでいった。
(…あれは一体?)
シンは一度気にはしていたが今はフリーダムを倒すことに頭を働かせた。
クリスが格納庫に着くと兵士が周りに集まっていた。
「誰が乗ってるんだ?」
ヨウランが戦闘機に向かって呟いていると、コックピットが開いて一人の青年が出てきた。
「えっ………!!」
格納庫が一瞬にして静まり返った。
何故ならコックピットから出てきた者は銀色のパイロットスーツを着ていた男、クリス・アルフィードだったからだ。
「久しぶりだな」
クリスが微かに笑みを浮かべて口を開くが兵士達は全員困惑していた。
それもそのはず。
クリス・アルフィードはダーダネルスで殉職したはず。
それなのに今自分達の目の前に現れたのだ。
本当に本物なのか?
困惑したせいで格納庫が静寂に包まれているが、クリスは気にした様子もなく口を開いた。
「艦長に会いたい。行かせてくれないか?」
クリスの言葉に兵士は咄嗟に銃を構えた。
「悪いがそれは出来ない…」
「なぜ…?」
「ミネルバはいまからAAと戦闘だ。ブリッジにいる艦長に会わせる事は出来ない」
クリスは兵士の言葉に驚いたように目を丸くする。
ギル一一一
ラクスだけじゃなくキラやAAも始末するつもりか。
ならさっき出て行ってたインパルスはフリーダムを破壊するためか。
キラなら大丈夫だと思うが、相手はシンだ。
シンには俺やキラやアスランと同じだけの力がある。
不安だが今はキラを信じるしかないか。
「ならヨウランとヴィーノ、俺についてきてくれない?」
「「えっ!!」」
二人は驚いて目を見開きながらクリスを見ている
「俺の荷物は全部回収してあるんだろ?だけど少し部屋に用がある。問題ないよな?」
おそらく俺が隠した物はそのままのはずだ。
あれを回収したらさっさとミネルバから去るか。
クリスはヴィーノとヨウランを引き連れたまま格納庫から去っていき、銃を持った兵士達は何も出来ないまま見送るしか出来なかった。
△▼△▼△▼
「それにしてもよく生きてたなクリス」
通路を歩きながらヨウランが不意に話し掛けてきた。
「自分でも驚いているよ。あの一撃をくらって生きてたんだから…」
クリスが苦笑しながら答えると、
「今までどこにいたんだよ?」
ヴィーノが首を傾げながら尋ねるとクリスは苦情したままその問い掛けに答えた。
「プラントだよ。知り合いに治療してもらってたんだ。わけあって今はこのパイロットスーツを着ているがな」
「じゃあ!クリスはミネルバに戻ってきたってことでいいんだよな!」
「だな!」
ヨウランとヴィーノが嬉しそうにクリスを見ていたが、クリスはどこか複雑そうに視線をそらしていた。
どうする?今ここで戻らないと答えるか?
もしそれを伝えて二人が誰かに話すと俺は裏切りのレッテルのついた状態でミネルバ内で追われる事になる。
それはそれで面倒だが、
「とりあえず急ぐか」
「「クリス?」」
二人の言葉に答えなかったクリスに二人は首を傾げていたがとりあえず部屋を目指すことにして、クリスは自室に着くと二人に見張りをさせて中に入った。
「…きっとこれは回収されてないよな」
クリスは何も無い部屋にあるベッドの裏に手を当てると、目当てのものを見つけたのかそれをベッドから剥がしてパイロットスーツの中に入れる。
さらに机の引き出しの仕掛けを解除してそこから銃を出して見えないようにしまう。
「ここともさよならか」
俺はなんの為にザフトに戻ったんだろうな。
ギルに助けてもらってギルの為に戦っていた。
そうすれば平和になると信じていたから。
けどギルの目指す平和と俺が望んだ平和は違ったのかもしれない。
姉さんの事もラクスの事もギルは話してくれなかった。
だから俺は一一一
「おまたせっ……ってあれ?」
部屋から出て二人に声を掛けようとしたが、二人はいつのまにかいなくなっていてクリスは首を傾げたが、とりあえず格納庫に向かうかと歩いていると通路の向こう側から誰かがこちらに歩いてきたのに気付いた。
「アスラン!!」
アスランの姿にクリスは慌てて隠れようとしたが、
「なっ!?クリス!?」
アスランには気づかれたようで、アスランは信じられないものを見るような表情をしながらクリスに駆け寄ってきたのである。
「よぉ、アスラン。元気そうだな」
クリスは苦笑しつつもアスランに腕を掴まれて誰も通らないであろう通路に連れて行かれるのである。
「そうか、運よく生きてたのか」
「すまない。お前にも心配かけてしまったな」
クリスはとりあえずアスランに事情を話した。
ミゲル達の事はあえて話していない。
俺もだったがアスランもその目で確認するまで信じられないだろうし。
「なぁクリス、AAとキラは生きてると思うか?」
アスランはクリスに先程の事を話す。
シンの乗るインパルスがフリーダムを撃破したこと。
ミネルバのタンホイザーによりAAの沈んだ場所で爆発が起きたこと。
そして自分は怒りの感情を抑えきれずシンを皆の前で殴り飛ばしたこと。
どうしても抑えきれなかった。
キラを倒したシンの言動や表情が。
確かにアイツは戦場に乱入して戦場をかき乱した。
だけど俺はキラにやられても敵として見れなかったのだ。
落ち込むアスランにクリスは一度息を吐くと、
「当たり前だろ。キラもAAも沈むはずない。それにAAにはアイツらもいるしな」
まぁ、ミゲル達が出撃したとは思えないが。
あのキラがそう簡単にやられるとはどうしても思えないしな。
「クリスはこれからどうする気だ?」
「わかってるだろ?俺はAAに帰るさ」
「……ッ!!」
クリスの言葉にアスランは驚いて目を見開く。
「どうしてだ!お前はもうザフトにミネルバには戻らないつもりか!?」
「ギルがやってきた事がどうしても俺には許せない。今回の件もだがラクスが狙われた事もギルが無関係とはどうしても思えない」
「……どうしてラクスの事を!」
「ダーダネルスでキラと戦った時に聞いた。そしてディオキアでのギルの言葉。俺にはギルがラクスを始末しようとしか思えなかったんだ」
「………クリス」
クリスの決意は固い。
確かにラクスが狙われたとしたら許せないよな。
俺だってカガリが同じような目に合ったら関係者まとめて排除するぐらい考えるしな。
「アスラン、俺と一緒にAAに帰らないか?」
「なっ!!」
クリスの言葉にアスランは目を見開いた。
「まぁ、そりゃ驚くか…」
「当たり前だ。俺はザフトに自分から復隊したんだからな」
「本当に今の状況でギルを信じるのか?もしかしたらお前も消される可能性だってあるんだぞ」
「だとしてもだ。今はまだ議長に話を聞くまで俺はザフトを抜けるつもりはない。議長が何故キラやAAを排除しようとしたのか本人に聞きたいんだ」
アスランにはアスランの考えがある。
それを強制してまで連れては行けないか。
だがギルがそんな話をするアスランをそのままにするだろうか?
「分かった。なら俺はもう行くぞ」
「……クリス」
「……んっ?」
「死ぬなよ」
「お前もな。俺もお前もまだ死ねない。必ず生きて会うんだからなアスラン」
クリスはそう言いながら歩き出すと、何かを思い出したのかアスランにとある言葉を告げる。
「アスラン」
「………」
「『私はいつでもお前の事を待ってるからな』…だとよ」
「…えっ」
それだけ告げてさっさといなくなるクリスだったがアスランは今の言葉に本気で驚いていた。
まるで誰かからの伝言のようなもの。
そんな伝言をクリスに託す人物は一人しかいない。
「…カガリ」