目覚めと混迷

その頃…ミネルバでは一騒動が起きていた。

シンが先日捕獲したMSガイアのパイロットであるステラをレイと協力して、逃がした事が騒ぎになっていたのだ。


「シンがそんな事をしたなんて…」

「俺も理由が分からねぇ。まさかシンの奴があの娘をあんなに想っていたなんてな…」

「シンを追える機体は一機もありませんし」

「…そうだな」


アスランと頭に包帯を巻いているハイネは深い溜め息を吐いた。

もしここにアイツがいたらどうしただろうな?

シンを止めるだろうか?

いや、もしかしたら協力してガイアのパイロットを逃がす方を選ぶだろうな。

アイツはそんな奴だ。





そして…シンが戻ってきたのを確認したアスランとハイネはシンとレイが連れて行かれたと独房へと向かった。





独房の中でシンはアスランとハイネに言った。

『自分は間違っていない』…とはっきり。


「でもよ…シン。お前のとった行動は、周りに迷惑かけている。それぐらい分かってるよな?」


ハイネの言葉にシンは苛ついていたがあくまでも冷静に答えた。

「そうかもしれませんね。でも俺は正しいと思ったからやったんです。それに嫌だと思っただけです。ステラだって被害者なのに皆、そのことを忘れて、ただ連合のエクステンデットだって死んでもしょうがないみたいに」


シンの言葉を聞いて、アスランとハイネは顔を曇らせた。


「だかそれも…事実ではある」


「確にな…」


「!!」


アスランとハイネの言葉にシンは目を見開いた。


「彼女が連合のパイロットであり、彼女に撃たれたザフト兵がたくさんいるということも事実だ。君はそれを…」

「それは…!!でもステラはクリスを助けてくれたじゃないですか!!」

「だが結果としてクリスは死んだ。スピリットは機体を貫かれて………死んだんだぞ!」

「……アスラン」


まるで血を吐くように顔を歪めて返すアスランにハイネは悲しげな表情を浮かべアスランを落ち着かせるように肩に手を置く。


「……ッ!だけどステラは望んであぁなったわけじゃない!!分かってて軍に入った俺達とは違います!!」


そう言ってシンはアスランを見上げた。


「でもよシン、そうだとしたら彼女は返さないほうがよかったんじゃないのか?」

「…!!」


シンは自分のやったことを否定したハイネに驚いて目を見開いてた。


「自分の意志で戦場を去ることができない。だとしたら下手をすれば彼女は再び戦場へ……」


ハイネの言葉にシンは怒りが膨れ上がり唇を噛み締める。

あんな状態のステラを見たハイネやアスランが平然と言える事が信じられなかったからだ。


「じゃあ…あのまま死なせれば良かったって言うんですか!?」

「そうじゃない!!だが…これでは何の解決にも…!」

「あんなに苦しんで、怖がってたステラを…」


シンはアスランとハイネに対し自分のやった事は間違いじゃないと言い返す。

あんなに弱っていくステラをそのままに出来るわけない。

俺は間違っちゃないんだ!


「それにあの人は約束してくれた!!ステラをちゃんと、戦争とは遠い…優しい世界に帰すって!!」


今のシンはネオと交した約束を信じるしかなかった。


ステラを戦いのない一一一

暖かくて優しい世界に一一一

あの約束を信じるしかなかったのだ。


「だから自分のやったことは間違っていないと言う気か…お前は!?」

「俺だって……っ!!」


「シン…もうやめろ。アスランとハイネも…」


レイの突然の言葉にシンとアスランとハイネは言葉を止めた。


「今さら、そんなことを話してもなんにもならない。終わったことは終わったことだ。先のことはわからない。結果がなんであれ、俺達はただ祈って明日を待つだけです(そうだろうクリス…?)」



レイの言ってる事は正しかった。

今さら話しても意味がない。


約束を守っても。


破っても。


それはもうどうしようもないことだから。

自分達にとって最善の未来を掴むしかないのだから。







△▼△▼△▼


「「「「完成!!」」」」


クリス達は自分の機体のコックピットから降りて口を揃えて言った。


「時間がかかったけど、全員完成したな」


クリスは自分達が作り上げた機体を見上げながら太ある事に気づく。


「それにしても…この四機似てないか?」


ミゲルの言う通り作り上げた四機のMSは似ていた。


「まぁ…いいじゃないですか!仲が良いって証拠ですよ」


ニコルはク微かに笑みを浮かべてミゲルとクリスに答えると、


「おいっ!!ニュースだニュース!!」


いつのまにかいなくなっていたラスティが慌てて三人の所にやって来た。


「どうしたのラスティ?」


「いいからこいって!!」


呼ばれた三人は首を傾げてラスティの後を追った。









「モニターに注目!!」


ラスティがパネルを操作してモニターにとある映像が映りだす。


「なっ…」


「これは!」


「酷いですね…」


そこに映し出された映像は巨大なMAが街や住民達を焼き払っていたり、ザフト軍のMSを破壊している映像だったのだ。


「場所は………ベルリンか」


クリスはポツリと呟いて決意した表情でミゲル達に視線を向ける。

俺の怪我はもう完全に治った。

今なら自由に戦える。


「………行こう」


クリスの言葉に三人は頷くとすぐに出撃準備を始める。


「あのMAの火力は半端ないな」


ミゲルは長い間実戦から離れていたので少しだが不安になっていた。

いやミゲルだけじゃない。


ニコルもラスティもそうである。


「三人とも不安なら戦わない方が…」


クリスの言葉に三人を代表してミゲルが笑って答えた。


「不安じゃねぇよ!!ただ懐かしくてな。こうしてお前達と戦えんのがよ」


ミゲルの様子が戻った事に安心したクリスは苦笑する。


「それにしても皆のパイロットスーツの色って…」


クリスの言った通り三人のパイロットスーツは正規軍のではなかった。


「ミゲルがオレンジでラスティがミドリでニコルがクロか…」


三人のパイロットスーツは機体の色と同じだった。


「ニコルの黒は…腹黒のクロって意味だけどな」


ラスティがボソッと呟いたのをニコルは聞き逃さなかったようで、



ドスッ!!


「ガハッ…!」


ニコルはラスティに近づいてとても素晴らしい笑顔で腹をおもいっきり殴った。


「…とりあえず軍人じゃないから、俺達は色を自由にしたんだよ」


ニコルに踏まれているラスティが苦しそうに答える。


たまに一一一


『ニコル…やめっ…!アバラが…!』


ラスティの悲鳴が聞こえるが無視しておこう。


「時間がない…行こう皆!!」


クリスの言葉に皆は機体に乗り込んでいく。


「この機体の名前はクリスが決めてくれよ」


ミゲルがすぐに通信を入れてクリスに託すように伝える。

俺はもうザフトでは死んだ身。

ミゲルもラスティもニコルも同じだ。

なら今の俺達は軍人じゃなく戦いを止めたい戦士のようなもの。

この戦いの果てに何があるか分からないがそれでも俺達は戦う。

だから一一一


「トゥルースってのはどう?」

「僕はいいですよそれで」

「俺も反対しないぜ」


ニコルとラスティは賛成してミゲルも賛成した。











「ミゲル・アイマン、トゥルース行くぜ!!」

「ニコル・アマルフィ、トゥルース行きます!!

「ラスティ・マッケンジー、トゥルース出る!!」


三機は勢いよく発進すると、クリスは一度だけ目を閉じてゆっくり息を吐く。

俺はまだ生きている。

だからこの命つきるまで戦う。

そしてラクスともう一度会うんだ。


「クリス・アルフィード、トゥルース行きます!!」


言葉と同時に銀色に輝くMSが飛び出した。

かつての戦友と共に一一一

街を焼き払う敵を止めるために一一一
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