Sognarsi Ⅱ:静かな夜
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シャナはできる限りそっと少年の顔に濡れた布を当てた
真っ白な髪の間から覗く左眼は黒く塗りつぶされ、まるで人間など視界には入っていないように生気がない
血をふき取る最中も少年はピクリとも動くことはなく、されるがままにその場に座り込んでいた
どうして、彼はこんなにも憔悴しきっているのだろうか
当然の疑問が頭をかける
しかも、異様なのは年に似合わぬ白髪と奇怪な左目だけではない
肩口から左腕全体がうっ血し、赤く腫れあがり血管を浮き上がらせている
状況の異様さにすぐさまクロス元帥に問いただしたかったが、あまりにも少年がかわいそうに思えてしまいそのまま手を止めることはできなかった
何も知らない、誰ともわからない、名前も知らない少年にこんな感情を抱くのはやはり一年前のあの日の自分に少年を重ねてしまったからだと、シャナは思った
訳も分からぬまま彼の体を拭き終え、左目の傷口に手当をするとクロス元帥が傍らに膝をついていた
「こいつはエクソシストだ。お前の弟弟子になる」
「…師匠」
「なんだ」
「この子は…誰なんですか…?」
クロス元帥の顔を見ることなく、かすかに震えた声でシャナは聞いた
「お前の心配するようなことはない。こいつに父はいた。義父だがな」
「…そう…ですか…」
なぜだろうか。無性に泣きたくなってほろりと彼のズボンに涙が落ちた
シャナは慌ててそれをぬぐい、一緒に少年の涙もまたぬぐった
彼の涙はまだ止まらない
少年はいつまでたっても自発的に動くことはなかった
シャナがずるずると引きずっても、クロス元帥が抱き上げてベッドに運んでも、何度涙をぬぐっても、一言も発することなく食事もとらずその場にただただとどまり続けた
人間味のないその姿は、まるで作り立ての像のように曖昧で頼りない
見ているだけでどうにも悲しくなってしまい、シャナは幾度と涙を流してクロス元帥に泣くなと顔を荒くこすられた
「師匠、それで彼は誰なんですか?」
「誰でもいいだろう」
「よくはないでしょう!?」
言いたくないというよりは説明がめんどくさいといった態度のクロス元帥は煙草をふかしながら暖炉の炎に目をそらした
「教えてください」
引き下がらず口答えるがクロス元帥が口を割る気配はない
こうなったクロス元帥は何を言っても無駄だ
むしろ、実力行使(金槌)にさえ出かねないとシャナは悟り、少年のことを問いただすことはしばらく諦めることとなった
そして、部屋の明かりは消え、クロス元帥も部屋から出て行った夜更け
シャナはすんなりと少年にベッドを明け渡してしまったため、仕方なしに毛布にくるまって部屋の隅に体を縮こませた
寒いし、冷たいし、寂しいが毛布があるだけ幾分ましな気がする
嫌いな暖炉の火もすっかり消えてしまっているため、隙間から吹く風が辛辣に小さな体を刺激する
足をこすり合わせほうっと息を吐き、何とか寒さをしのいでシャナにようやく睡魔が襲い掛かってきた時
うっすらとした視界にあの白い髪がちらりと映った気がした
真っ白な髪の間から覗く左眼は黒く塗りつぶされ、まるで人間など視界には入っていないように生気がない
血をふき取る最中も少年はピクリとも動くことはなく、されるがままにその場に座り込んでいた
どうして、彼はこんなにも憔悴しきっているのだろうか
当然の疑問が頭をかける
しかも、異様なのは年に似合わぬ白髪と奇怪な左目だけではない
肩口から左腕全体がうっ血し、赤く腫れあがり血管を浮き上がらせている
状況の異様さにすぐさまクロス元帥に問いただしたかったが、あまりにも少年がかわいそうに思えてしまいそのまま手を止めることはできなかった
何も知らない、誰ともわからない、名前も知らない少年にこんな感情を抱くのはやはり一年前のあの日の自分に少年を重ねてしまったからだと、シャナは思った
訳も分からぬまま彼の体を拭き終え、左目の傷口に手当をするとクロス元帥が傍らに膝をついていた
「こいつはエクソシストだ。お前の弟弟子になる」
「…師匠」
「なんだ」
「この子は…誰なんですか…?」
クロス元帥の顔を見ることなく、かすかに震えた声でシャナは聞いた
「お前の心配するようなことはない。こいつに父はいた。義父だがな」
「…そう…ですか…」
なぜだろうか。無性に泣きたくなってほろりと彼のズボンに涙が落ちた
シャナは慌ててそれをぬぐい、一緒に少年の涙もまたぬぐった
彼の涙はまだ止まらない
少年はいつまでたっても自発的に動くことはなかった
シャナがずるずると引きずっても、クロス元帥が抱き上げてベッドに運んでも、何度涙をぬぐっても、一言も発することなく食事もとらずその場にただただとどまり続けた
人間味のないその姿は、まるで作り立ての像のように曖昧で頼りない
見ているだけでどうにも悲しくなってしまい、シャナは幾度と涙を流してクロス元帥に泣くなと顔を荒くこすられた
「師匠、それで彼は誰なんですか?」
「誰でもいいだろう」
「よくはないでしょう!?」
言いたくないというよりは説明がめんどくさいといった態度のクロス元帥は煙草をふかしながら暖炉の炎に目をそらした
「教えてください」
引き下がらず口答えるがクロス元帥が口を割る気配はない
こうなったクロス元帥は何を言っても無駄だ
むしろ、実力行使(金槌)にさえ出かねないとシャナは悟り、少年のことを問いただすことはしばらく諦めることとなった
そして、部屋の明かりは消え、クロス元帥も部屋から出て行った夜更け
シャナはすんなりと少年にベッドを明け渡してしまったため、仕方なしに毛布にくるまって部屋の隅に体を縮こませた
寒いし、冷たいし、寂しいが毛布があるだけ幾分ましな気がする
嫌いな暖炉の火もすっかり消えてしまっているため、隙間から吹く風が辛辣に小さな体を刺激する
足をこすり合わせほうっと息を吐き、何とか寒さをしのいでシャナにようやく睡魔が襲い掛かってきた時
うっすらとした視界にあの白い髪がちらりと映った気がした