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Sognarsi Ⅰ:白銀の赤い月

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シャナよ、アクマの存在を知っているか?」


 再び知らない言葉にふと顔を上げて横に振ってみせる
 やはり、とでも言いたげに男は小さくため息を吐き、タバコを口に含み一服

 そして、彼は低く澄んだ声で聖書を語るが如く虚空を見つめながら話し始めた


「アクマとは「機械」と「魂」、「悲劇」を材料に造られる悪性兵器…
 人は誰しも心に闇がある
 その闇が「悲劇」によってより深くなった者の所に〈製造者〉が現れアクマを造む

 そのアクマを破壊するのが黒の聖職者、

     〈エクソシスト〉だ

 …エクソシストになれ、シャナ


 私は胸いっぱいに部屋の空気を吸い込んで、顔を引き締め「うん!」とうなずいた
 それに再び男は、今度は呆れたようにため息をついた


「返事は「はい」だ。それから、俺の名は「クロス・マリアン」。 師匠と呼べ」

「はい!」


 今度は間違えなくそううなずくと満足げに師匠は煙を吐いた

 苦くて、甘いにおいだなとそのときの私は思った


 これが彼女「シャナラトクリフ」と「クロス・マリアン」神父の出会いであり、物語の始まりである

 誰よりも過酷で、それに無知である彼女にこれから何が起こるかはまた先の話
 彼の言葉を無邪気に信じたシャナに必要な心の強さと、逆境を撥ね退ける力

 哀れな少女は純白の翼を背負った赤い月
 染められる赤は、赤であり赤でない

 数奇な運命の行方は、ただ途方もなく切なく、暖かく、残酷である
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