Sognarsi Ⅰ:白銀の赤い月
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明るい、とまぶたに感じて目がうっすらと開いた
視界に入ったのは金色の丸い、羽の生えた…鳥…?
ふわふわと私の周りを飛び回るそれはじゃれ付くように私の頬に擦り寄ってきた
体温を感じなかったが、やわらかい感触がする
雪に頬ずりしていた時と感覚が少し似ていた気がした
「目が覚めたか」
暖炉のそばで椅子に腰掛けていたらしい男が立ち上がって私の傍らに立った
右顔に仮面をつけた男の表情は読めなくて、高い背を見上げて目を細める
すると、男は私の目の高さまでしゃがんだ
私が寝ていたらしいベッドの脇
奇抜なコートに帽子、口にはタバコをくわえて紫煙を漏らす
苦い香りが鼻をくすぐった
「お前、どうしてあんなところにいた」
唐突な質問に頭をかしげる
あんなところ、とは私がいたあの場所のことだろうか
雪に包まれた白一色の世界
少しだけ暖かく、辛辣に冷たいあの空間になぜいたのかと問われると、私にはわからなかった
覚えていない
思い出そうとしても、ぽっかりと穴が開いたようにそれ以前の記憶は黒に沈んでいた
手を伸ばしても届かない、深い深い黒に
途端に、怖くなった
あの白以外の記憶のない私は限りなく空虚な存在で、やっと持った白というそれを必死に抱きとめているに過ぎない
これさえも無くしてしまうような気がして、ひたすらに恐怖した
花を作った雫が、今度は感情におぼれて溢れ出した
もう、笑顔にすらならず、恐怖に戦慄し、涙を流した
それをただ男の人は見つめていた
どんな心持で眺めていたのかは知る由もない
でも、蔑むわけでも、哀れむわけでもなく、男は私を言葉にならない感情に任せて見つめていた
そして、そっと私の頭に手をのせた
暖かく、大きな手は安心感がある
ゆっくりと髪をかき混ぜられる感覚が心地よくて、雫は少しずつ消えていった
彼の顔を見ると、慈しむように、愛おしく思うように、優しげな目と視線がぶつかった
守られているような暖かく包まれた感覚
すっと涙をぬぐうと、もう雫は流れてはこなかった
「…お前も神に選ばれた使途のようだな」
唐突な彼の言葉に目が点になった
聞き覚えのない言葉に首を傾げるが、彼はかまわず言葉を続ける
「エクソシストにならないか?」
その言葉を理解していたわけでも知っていたわけでもない
なのに私は、すんなりとうなずいていた
それがまるで運命であるように、使命であるように
無知な心に、その言葉はストンとはまった
視界に入ったのは金色の丸い、羽の生えた…鳥…?
ふわふわと私の周りを飛び回るそれはじゃれ付くように私の頬に擦り寄ってきた
体温を感じなかったが、やわらかい感触がする
雪に頬ずりしていた時と感覚が少し似ていた気がした
「目が覚めたか」
暖炉のそばで椅子に腰掛けていたらしい男が立ち上がって私の傍らに立った
右顔に仮面をつけた男の表情は読めなくて、高い背を見上げて目を細める
すると、男は私の目の高さまでしゃがんだ
私が寝ていたらしいベッドの脇
奇抜なコートに帽子、口にはタバコをくわえて紫煙を漏らす
苦い香りが鼻をくすぐった
「お前、どうしてあんなところにいた」
唐突な質問に頭をかしげる
あんなところ、とは私がいたあの場所のことだろうか
雪に包まれた白一色の世界
少しだけ暖かく、辛辣に冷たいあの空間になぜいたのかと問われると、私にはわからなかった
覚えていない
思い出そうとしても、ぽっかりと穴が開いたようにそれ以前の記憶は黒に沈んでいた
手を伸ばしても届かない、深い深い黒に
途端に、怖くなった
あの白以外の記憶のない私は限りなく空虚な存在で、やっと持った白というそれを必死に抱きとめているに過ぎない
これさえも無くしてしまうような気がして、ひたすらに恐怖した
花を作った雫が、今度は感情におぼれて溢れ出した
もう、笑顔にすらならず、恐怖に戦慄し、涙を流した
それをただ男の人は見つめていた
どんな心持で眺めていたのかは知る由もない
でも、蔑むわけでも、哀れむわけでもなく、男は私を言葉にならない感情に任せて見つめていた
そして、そっと私の頭に手をのせた
暖かく、大きな手は安心感がある
ゆっくりと髪をかき混ぜられる感覚が心地よくて、雫は少しずつ消えていった
彼の顔を見ると、慈しむように、愛おしく思うように、優しげな目と視線がぶつかった
守られているような暖かく包まれた感覚
すっと涙をぬぐうと、もう雫は流れてはこなかった
「…お前も神に選ばれた使途のようだな」
唐突な彼の言葉に目が点になった
聞き覚えのない言葉に首を傾げるが、彼はかまわず言葉を続ける
「エクソシストにならないか?」
その言葉を理解していたわけでも知っていたわけでもない
なのに私は、すんなりとうなずいていた
それがまるで運命であるように、使命であるように
無知な心に、その言葉はストンとはまった