始まりの物語
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第五話 神隠し
「結論から言うと、わからない」
「わ、わからないの!?」
「神隠しじゃないか、というのはあくまで俺の予想だ」
「異世界に誘拐、というのもコストがかかりすぎますからね」
確かに、元の世界の創作物での異世界転移って言ったら何人もの術者の命を捧げて転移させて、世界の危機を救う救世主に仕立て上げるとかそういったイメージがある
「この世界で、魔王が復活して勇者を異世界から呼ばなきゃいけないとか、毒素的なものを浄化させるのに異世界の人間が必要とかそういうことはない?」
「…いえ、そういったことは特に全く」
「…平和そのものだ。…すごい想像力だな」
どうしよう、すごく引かれている気がする…
「ああー、いや、元いた世界ではそういった物語がよくあって!一応聞いてみようかなって!」
「なるほど…特にそういったことはないから安心しろ」
ないならないでちょっとがっかりしたのは内緒だ
「ちなみに神隠しっていうのは?」
「昔話とかで聞いたこととかあるだろ。人が突然いなくなったってやつ。あれは世界がお互いにぶつかってできる亀裂に人が巻き込まれたことで起こる現象だ」
「な、なるほど…」
かなりスケールの大きな話だ
世界がぶつかるなんて想像したこともない
「じゃあ、元の世界に戻る方法は?」
「それは…」
アリスが言葉に詰まる
ごまかすように、彼は紅茶のカップをあおった
「…帰れないってことね…」
「そうと決まったわけじゃない。ただ…覚悟は必要かもしれない」
マイルドに言われると余計苦しい。希望を捨てられなくなる
「そういう時はバッサリ言ってくれたほうが気持ちいいよ」
「思い切りよく人を傷つける言葉を吐くのは心が痛む」
「…アリスは優しいんだね」
その優しさが今は心に残酷に突き刺さるんだけどね
「…」
沈黙が場を支配する
こうなるとどう話題を変えればいいのかわからなくなってしまう
紅茶のカップを覗くともう紅茶は残っていなかった
「お代わり、お注ぎしてもいいですか?」
「あ…ありがとう」
ソフィーは静かに紅茶のお代わりを入れてくれた
「急に突飛な話をして、きっと心も身体もびっくりしていると思います。紅茶を飲んで一息つきましょう」
「…ありがとう」
彼女の優しさが身に染みてうれしかった
手に取ったカップが一つ、波打ったのは見なかったことにする
「今日は気が利くな」
「いつも気が利きます!」
「…悪いな」
「いいえ」
そういって、ソフィーはアリスのカップにもお代わりを注いだ
――――――
―――
「そういえば、宵さんは住むところがないのでは?」
「え?…あ、ほんとだ」
目の前の非現実的なことに思考を取られすぎてすっかり失念していた
今まで家族のもとで何不自由なく衣食住が与えられていた生活は異世界に来てしまったことでなくなってしまった
しかし、並の高校生に無一文からの住所不定無職はあまりにハードルが高すぎる
「ここに住んだらいいだろ」
「え?でも、そんな…」
「ここで追い出して野垂れ死なれても寝覚めが悪いしな」
言い方よ…
「今のはアリスさんなりのジョークです」
「おい」
「遠慮せず甘えてしまいましょ!」
「はぁ…ただし、店を手伝ってもらって宿飯代はそこから天引きする。で、いいか?」
「もちろん…っていうか願ってもないっていうか…私にとって都合よすぎない?」
「こいつの持論に『手を尽くせるだけ尽くさなければ、やらなかったとき、その後悔をずっと引きずる』っていうのがあってな。まあ、お節介を焼くための言い訳でもあるんだが。それに従っただけだ」
「アリスさんだってその言い訳に今使ってるじゃないですか」
「都合がよかったんでな」
最初は不愛想で無口で話しにくそうな人かと思ったけど、アリスは存外お人好しな性格らしい
そして、慣れてくると口をきいてくれる
ソフィーは口調こそ固いけれど、明るくて気配り上手なようだ
この二人と今後、仕事、生活を共にしていく
元の世界への帰り方もわからない、なんなら帰れないかもしれない
でも、異世界という言葉には年相応に心躍ってしまったりもして
今までと違った新しい生活に不安と期待を胸に抱きながら
私は、これからを生きていこうと、心に決めた
「元の世界に帰ることをあきらめたりはしない。でも、いつまでも後ろばかり向いていたら、せっかくの楽しいことを見落としちゃうかもしれない。だから、どっちも手に掴むつもりで前を向くことにする。不慣れで迷惑かけるかもしれないけど、お世話になります。よろしくお願いします!」
「よろしく」
「よろしくお願いします!」
二人から左右の手を出されたので両手で二人と握手かわした