拝啓、あの日のカウントダウン
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放課後。
僕は急ぎ気味に図書室に向かう。なんせ今日から一週間も、放課後を彼女と一緒に過ごせるのだから。二か月に一度の図書当番、しかも昼休みとは違いほとんど人の来ない放課後ともなればもう急ぐしかないだろう。片思い中、しかも彼女とクラスが違う僕にとっては貴重な時間を無駄にするわけにはいかない。
はやる気持ちを抑えて、扉を開ける。本好きの彼女のことだからもう来ているだろうと思い貸出カウンターを見るもそこには荷物が置いてあるだけだった。前にも似たようなことがあり、その時からどこにいるのかはもうわかっているので天眼を使う必要はない。自分も荷物を置いて彼女のもとへと向かう。誰も来ない放課後の図書室の、入口から一番遠い本棚の裏。そこが彼女の定位置で、彼女が学校に密かに持ってきている本と椅子が置いてある。時に授業をサボってまでここにいる場合があると聞いた。やっぱりここにいた、そう声をかけようとして、いつもと彼女の様子が違うことに気が付く。
「…寝てる?」
いつもはここでずっと本を読んでいるのだけれど…彼女は今、その本を胸に抱いてすやすやと子供のように寝息を立てていた。そういえば昼にイソップ君が「授業中何されても起きなかったんですよ?凄くないですかあの人」と呆れたように言っていた。最初は教師が声をかけたらしいが起きる気配はなく、仕方なく席が隣のイソップ君含め数人が揺すったり呼び掛けたりしたらしいのだがそれでも起きない。「死人のように眠るってあの人のためにある言葉だと思いました」と若干皮肉を込めて言っていたのが少し面白くて「納棺してあげたら目も覚めるんじゃない?」と冗談交じりにいったら「…今度そうして差し上げましょうかね」と言ったので止めておいた。
というか、本当に起きないのだろうか。別にイソップ君を疑うわけでもないし、やけに彼女のクラスが午前中騒がしかったのも多分それだろう。でも、どうしても気になってしまう。
試しに軽く揺すってみたり、頬をつついてみたりするものの全然起きない。名前を読んでみたり、ギリギリまで顔を近づけてみたり。次第にエスカレートしているような気がしないでもないけど、普段はこんな事出来ないのだからと自分自身に言い訳をして、今度は耳元で名前を読んでみた。少しくすぐったそうに表情を変えたものの、起きない。
…それにしても。
「余りにも不用心すぎじゃないのかな、君は」
午前中はチャイムの音でやっと起きたらしいけど、今は放課後、チャイムは鳴らない。
なら、何が彼女を目覚めさせるのか?
在り来たりな御伽噺なら…
そう考えてまた顔を近づける。
そして、僅かな隙間しかなかった顔の間の距離をゼロにした。
軽く、本当に軽く唇が触れ合う。
「ん…」
その声に驚いて近づけていた顔を急いで離す。幸い彼女が起きる様子は無く、少しだけほっとして、息を吐いた。
「御伽噺なら目覚めるのに…君はそれでも眠るんだね」
その様子を見ていたら何だか笑えてきて、くすくすと笑い声を漏らしてしまう。
そうして彼女の髪を撫でると、何をしても起きなかった彼女が薄く目を開けた。びっくりして撫でていた手を引っ込めようとすると、そっと掴まれる。
「ん…、いらい、君…?」
確かめるように手をすりすりと撫でられ、自分の体温が上昇していくのが分かる。
と、急に正気に戻ったかのようにぴたりと動きを止め、自分の手が掴んでいる手とその持ち主の間で視線を往復させると、数秒後には彼女の顔が真っ赤になった。
「え、あ、あれ…わたし…ごっごめんねイライ君!!」
普段は飄々としている彼女がここまで取り乱すのは珍しい…昔からいくら褒めても「はいはいありがとね」と受け流す彼女がいま、物凄く照れている。今までに見たことのない表情だ…あの荘園でも。笑って大丈夫だよ、そう言ってもう一度だけ軽くキスをし、急いでカウンターへと戻る。だってそうしないと、どんな顔で彼女を見ればいいのか分からなかったから。不意打ちであの顔はマズい。キスで止められて良かった…と思いつつこれからの一週間が思いやられ、ちょっとだけため息をついた。
後で彼女が顔を赤くしたまま一言も喋ってくれなかったのは…うんまあ、仕方ないよね…。
僕は急ぎ気味に図書室に向かう。なんせ今日から一週間も、放課後を彼女と一緒に過ごせるのだから。二か月に一度の図書当番、しかも昼休みとは違いほとんど人の来ない放課後ともなればもう急ぐしかないだろう。片思い中、しかも彼女とクラスが違う僕にとっては貴重な時間を無駄にするわけにはいかない。
はやる気持ちを抑えて、扉を開ける。本好きの彼女のことだからもう来ているだろうと思い貸出カウンターを見るもそこには荷物が置いてあるだけだった。前にも似たようなことがあり、その時からどこにいるのかはもうわかっているので天眼を使う必要はない。自分も荷物を置いて彼女のもとへと向かう。誰も来ない放課後の図書室の、入口から一番遠い本棚の裏。そこが彼女の定位置で、彼女が学校に密かに持ってきている本と椅子が置いてある。時に授業をサボってまでここにいる場合があると聞いた。やっぱりここにいた、そう声をかけようとして、いつもと彼女の様子が違うことに気が付く。
「…寝てる?」
いつもはここでずっと本を読んでいるのだけれど…彼女は今、その本を胸に抱いてすやすやと子供のように寝息を立てていた。そういえば昼にイソップ君が「授業中何されても起きなかったんですよ?凄くないですかあの人」と呆れたように言っていた。最初は教師が声をかけたらしいが起きる気配はなく、仕方なく席が隣のイソップ君含め数人が揺すったり呼び掛けたりしたらしいのだがそれでも起きない。「死人のように眠るってあの人のためにある言葉だと思いました」と若干皮肉を込めて言っていたのが少し面白くて「納棺してあげたら目も覚めるんじゃない?」と冗談交じりにいったら「…今度そうして差し上げましょうかね」と言ったので止めておいた。
というか、本当に起きないのだろうか。別にイソップ君を疑うわけでもないし、やけに彼女のクラスが午前中騒がしかったのも多分それだろう。でも、どうしても気になってしまう。
試しに軽く揺すってみたり、頬をつついてみたりするものの全然起きない。名前を読んでみたり、ギリギリまで顔を近づけてみたり。次第にエスカレートしているような気がしないでもないけど、普段はこんな事出来ないのだからと自分自身に言い訳をして、今度は耳元で名前を読んでみた。少しくすぐったそうに表情を変えたものの、起きない。
…それにしても。
「余りにも不用心すぎじゃないのかな、君は」
午前中はチャイムの音でやっと起きたらしいけど、今は放課後、チャイムは鳴らない。
なら、何が彼女を目覚めさせるのか?
在り来たりな御伽噺なら…
そう考えてまた顔を近づける。
そして、僅かな隙間しかなかった顔の間の距離をゼロにした。
軽く、本当に軽く唇が触れ合う。
「ん…」
その声に驚いて近づけていた顔を急いで離す。幸い彼女が起きる様子は無く、少しだけほっとして、息を吐いた。
「御伽噺なら目覚めるのに…君はそれでも眠るんだね」
その様子を見ていたら何だか笑えてきて、くすくすと笑い声を漏らしてしまう。
そうして彼女の髪を撫でると、何をしても起きなかった彼女が薄く目を開けた。びっくりして撫でていた手を引っ込めようとすると、そっと掴まれる。
「ん…、いらい、君…?」
確かめるように手をすりすりと撫でられ、自分の体温が上昇していくのが分かる。
と、急に正気に戻ったかのようにぴたりと動きを止め、自分の手が掴んでいる手とその持ち主の間で視線を往復させると、数秒後には彼女の顔が真っ赤になった。
「え、あ、あれ…わたし…ごっごめんねイライ君!!」
普段は飄々としている彼女がここまで取り乱すのは珍しい…昔からいくら褒めても「はいはいありがとね」と受け流す彼女がいま、物凄く照れている。今までに見たことのない表情だ…あの荘園でも。笑って大丈夫だよ、そう言ってもう一度だけ軽くキスをし、急いでカウンターへと戻る。だってそうしないと、どんな顔で彼女を見ればいいのか分からなかったから。不意打ちであの顔はマズい。キスで止められて良かった…と思いつつこれからの一週間が思いやられ、ちょっとだけため息をついた。
後で彼女が顔を赤くしたまま一言も喋ってくれなかったのは…うんまあ、仕方ないよね…。