短編集(オリジナルサバイバーあり)
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「リッパーっ!どうしよう、どうしようなまえが!!」
「………え?」
余りにも、唐突だった。
*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*
夕暮れ、こっそり遊びに行った時の事。
窓から落ちていく、彼を見た。
手を伸ばしても届かない場所へ、堕ちていく。込み上げてくる涙を抑え込んで急いで階段を駆け降りる。
「ジャックっ!」
そこに彼がいるはずだ。早く医者を呼ばないと、きっとまだ息はある。いかないで、いかないで私の愛しい人、ジャック、お願い、生きていて!
思考はぐちゃぐちゃに乱されていて、何度も躓いて転びそうになりながら彼の居るであろう地面を目指す。
そして、息を飲んだ。
信じがたかった。
「え………?」
1輪の薔薇以外、紅い赤い薔薇以外、何も、ありやしなかった。
彼の身体も、血溜まりも、何も。
そっと、落ちていた薔薇を拾い上げる。
「貴方しか、いない…」
花言葉、1輪の薔薇の花言葉。
「なら、置いていかないでよ…私だって、私だって貴方しかいないのに…!」
抑え込んでいた涙がポロポロと零れて仕方がない。貴方しかいないのに。私には、本当に貴方しか…!
「すぐ、いくわ。」
さっきは急いで降りた階段を、一歩ずつ、ゆっくりと登った。
いつもと何も変わらない、彼の部屋。描きかけの油絵の匂いも、2人で育てたラベンダーもそのままに、ただ彼だけがいない部屋。
なんどもここで朝を迎えて、彼が微笑むのを見て、私も笑った。
スーも交えてお酒を飲んだり、仕事の話をしたり、逆に他愛もない話をした。
それももう、終わり。
思い出は覚えているから思い出なのだと、いつか誰かがそう言った。
忘れてしまえば、それは多分…ただの記憶だ。
そうなる前に。
忘れてしまう前に。
全てを抱えて、貴方を追うわ。
「あいしてる。」
怖くは、なかった。
反転。
暗転。
そこで私の記憶は途切れる。
*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*
「ジャックを…殺す?」
「ええ。」
月明かりの路地裏で、彼が言った言葉を反芻する。
「つまり、ジャックという人格を消して、貴方…リッパーだけが常に存在する、ってこと?」
「物分かりが速くて助かります。えぇ、そうです。いい加減1つの体に2つも人格が存在しているのが面倒になってきましてね」
「ふぅん…それ、なまえには言ったの?」
「言いません。言うつもりもありません。」
彼女には知らせずにジャックを殺した上で、彼になり変わるのだと彼は言った。
それはそれで二重人格と対して変わりは無いのではと思ったが、まぁ彼の出した結論がそうなのなら構わないだろう。
「どうやって殺すの?」
「窓から飛び降ります。その時に『ジャックの意識』を殺して…というか彼に『自分が死んだ』と誤認させます」
「あぁ成る程、ジャックが『自分は死んだ』と認識すれば、ジャックは死んだも同然か。『死んだ』んだから、もう表には出てこない。」
後には、『悪いこ』の彼だけが残る。
「そうです!」
ニコニコと笑いながら彼は言った。
こうして翌日、『ジャックは死んだ』。
そして、私は2人ほど友を失った。
1人は画家で、名前をジャックと言う。
もう1人は、
私の旧友、なまえ。
*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*
とある墓地の前に、2人の男女が立っていた。
墓の前に添えられた花はシザンサス。
跪いた男が、半ば叫ぶように言葉を紡ぐ。
「償える罪などありませんよ。貴方が私にしたことを考えたら…とても許す気になどなれません!どうして、どうしてあの日に限って私の部屋に、、、!あぁ、なまえ!」
その怒りが余りにも的はずれであるとわかっていても言葉は止まらない。
声が、急に弱々しくなる。
「だから貴方を許しません、許すつもりもありません。このままこれ以上ない程憎み続けて差し上げましょう…また会った際には………分かって、ますよね………?」
愛していたから、許さない。
この愛しさを、知ってしまった感情を、憎しみに変えてしまわなければ、喪失感に狂ってしまいそうだ。
………そんなことを思ってしまう時点で、もう手遅れなのかも知れない。
隣に立っていた女は、ただ静かに、目を閉じていた。
*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*
月日は流れ、2人は手紙を受け取った。
『求めよ、去らば与えられん。』
どこかで聞いたような言葉で締められたその手紙に導かれ、荘園を目指す。
1人は病的なまでに膨らんだ憎しみを胸に、
1人は、何処かに思いを馳せて。
「………え?」
余りにも、唐突だった。
*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*
夕暮れ、こっそり遊びに行った時の事。
窓から落ちていく、彼を見た。
手を伸ばしても届かない場所へ、堕ちていく。込み上げてくる涙を抑え込んで急いで階段を駆け降りる。
「ジャックっ!」
そこに彼がいるはずだ。早く医者を呼ばないと、きっとまだ息はある。いかないで、いかないで私の愛しい人、ジャック、お願い、生きていて!
思考はぐちゃぐちゃに乱されていて、何度も躓いて転びそうになりながら彼の居るであろう地面を目指す。
そして、息を飲んだ。
信じがたかった。
「え………?」
1輪の薔薇以外、紅い赤い薔薇以外、何も、ありやしなかった。
彼の身体も、血溜まりも、何も。
そっと、落ちていた薔薇を拾い上げる。
「貴方しか、いない…」
花言葉、1輪の薔薇の花言葉。
「なら、置いていかないでよ…私だって、私だって貴方しかいないのに…!」
抑え込んでいた涙がポロポロと零れて仕方がない。貴方しかいないのに。私には、本当に貴方しか…!
「すぐ、いくわ。」
さっきは急いで降りた階段を、一歩ずつ、ゆっくりと登った。
いつもと何も変わらない、彼の部屋。描きかけの油絵の匂いも、2人で育てたラベンダーもそのままに、ただ彼だけがいない部屋。
なんどもここで朝を迎えて、彼が微笑むのを見て、私も笑った。
スーも交えてお酒を飲んだり、仕事の話をしたり、逆に他愛もない話をした。
それももう、終わり。
思い出は覚えているから思い出なのだと、いつか誰かがそう言った。
忘れてしまえば、それは多分…ただの記憶だ。
そうなる前に。
忘れてしまう前に。
全てを抱えて、貴方を追うわ。
「あいしてる。」
怖くは、なかった。
反転。
暗転。
そこで私の記憶は途切れる。
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「ジャックを…殺す?」
「ええ。」
月明かりの路地裏で、彼が言った言葉を反芻する。
「つまり、ジャックという人格を消して、貴方…リッパーだけが常に存在する、ってこと?」
「物分かりが速くて助かります。えぇ、そうです。いい加減1つの体に2つも人格が存在しているのが面倒になってきましてね」
「ふぅん…それ、なまえには言ったの?」
「言いません。言うつもりもありません。」
彼女には知らせずにジャックを殺した上で、彼になり変わるのだと彼は言った。
それはそれで二重人格と対して変わりは無いのではと思ったが、まぁ彼の出した結論がそうなのなら構わないだろう。
「どうやって殺すの?」
「窓から飛び降ります。その時に『ジャックの意識』を殺して…というか彼に『自分が死んだ』と誤認させます」
「あぁ成る程、ジャックが『自分は死んだ』と認識すれば、ジャックは死んだも同然か。『死んだ』んだから、もう表には出てこない。」
後には、『悪いこ』の彼だけが残る。
「そうです!」
ニコニコと笑いながら彼は言った。
こうして翌日、『ジャックは死んだ』。
そして、私は2人ほど友を失った。
1人は画家で、名前をジャックと言う。
もう1人は、
私の旧友、なまえ。
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とある墓地の前に、2人の男女が立っていた。
墓の前に添えられた花はシザンサス。
跪いた男が、半ば叫ぶように言葉を紡ぐ。
「償える罪などありませんよ。貴方が私にしたことを考えたら…とても許す気になどなれません!どうして、どうしてあの日に限って私の部屋に、、、!あぁ、なまえ!」
その怒りが余りにも的はずれであるとわかっていても言葉は止まらない。
声が、急に弱々しくなる。
「だから貴方を許しません、許すつもりもありません。このままこれ以上ない程憎み続けて差し上げましょう…また会った際には………分かって、ますよね………?」
愛していたから、許さない。
この愛しさを、知ってしまった感情を、憎しみに変えてしまわなければ、喪失感に狂ってしまいそうだ。
………そんなことを思ってしまう時点で、もう手遅れなのかも知れない。
隣に立っていた女は、ただ静かに、目を閉じていた。
*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*
月日は流れ、2人は手紙を受け取った。
『求めよ、去らば与えられん。』
どこかで聞いたような言葉で締められたその手紙に導かれ、荘園を目指す。
1人は病的なまでに膨らんだ憎しみを胸に、
1人は、何処かに思いを馳せて。