短編集(オリジナルサバイバーあり)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
また同じ夢を見る。
私はぼんやりとそれが夢であることがわかっていて、この夢がどんな風に転がり落ちるかも嫌というほど知っていた。
声が出せない。
指一本動かせない。
ただただ見せつけられる光景にいつも私は、絶望する。
そのうちふっと体が楽になって、私は叫ぶ。
「ジャック…!」
ようやく呼べたその名前は届いたのか。
いや、きっと届いていない。
空を丁寧に切り取ったような窓枠から、彼は身を乗り出して落ちていく。私の手の届かないところへ、私から逃れるようにして。
手を伸ばす。
その姿が暁に夕闇に私のどこかにある仄暗い感情にぶつかって砕ける音がして、そのあとすぅっと消えてしまう。
助けないと。
いいや違う。私も後を追わないと。
「いかないで」
窓枠に駆け寄って、まだ間に合う、そんな訳の分からない希望を持って手を伸ばす。
辻褄の合わない、まるで粉々に砕いた硝子をもう一度元に戻そうとしたかのようなボロボロの悪夢。
私は今日も、悪夢を見る。
「っは、はぁっ、は、ぁ、、、」
手を伸ばしたままでいつも目を覚ます。
せめて指の先だけでも、そんな願いさえも叶えてくれない私の夢、
助けられなかった自分を責めるだけの悪夢。
だからこそ、落ちるときの彼の顔は見えない。
息が苦しい。
頭痛がひどい。夜風に当たった方がいいかもしれないと思い、ふらふらとした足取りで部屋を出る。そして眩暈を起こして倒れかけた体を誰かが支えた。
「なまえ?」
「スー…」
「酷い汗…どうしたの、こんな時間に」
*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴
喉の渇きを覚えて食堂に行こうと部屋を出ると、今にも倒れそうななまえがいた。おもわず体を支えて大丈夫かと問うと、泣きそうな顔のままガクンと倒れこんでしまった。
取り敢えず彼女の部屋に運び込み、ベッドに寝かせる。さて戻ろうかと立ち上がろうとして、服の裾をつかまれていることに気がつく。弱々しく掴まれたそれを見、視線を彼女の顔に移す。
その手を外し、代わりに自分の手を握らせる。
そっと髪をなでると、目じりから涙がこぼれ落ちた。
「助けられ、なくて、不安になって……ごめんなさい、ごめんなさい、わたし、ジャックを…」
囁きというには大きく、懺悔にしては小さい声で彼女は言った。
ここに来る前の話。
彼女はジャックという恋人を目の前で失い、その後友人である私は失踪した。2人共、なまえよりも早く招待状を受け取り、そしてその招待を受けてここに来ることとなったのだ。
2人のどちらも、何も言わずに彼女の前から消え失せた。
彼女がそれをどう思ったかなんて、想像にたやすいだろう。
「ごめんね。もう、消えないから。傍にいるよ、なまえ」
彼の分も含めて言って、私はゆっくりと目を閉じる。
願わくば、彼女が悪夢から解き放たれんことを。
私の友に、
彼の恋人に、
ただ安らかなる眠りがあらんことを。
私はぼんやりとそれが夢であることがわかっていて、この夢がどんな風に転がり落ちるかも嫌というほど知っていた。
声が出せない。
指一本動かせない。
ただただ見せつけられる光景にいつも私は、絶望する。
そのうちふっと体が楽になって、私は叫ぶ。
「ジャック…!」
ようやく呼べたその名前は届いたのか。
いや、きっと届いていない。
空を丁寧に切り取ったような窓枠から、彼は身を乗り出して落ちていく。私の手の届かないところへ、私から逃れるようにして。
手を伸ばす。
その姿が暁に夕闇に私のどこかにある仄暗い感情にぶつかって砕ける音がして、そのあとすぅっと消えてしまう。
助けないと。
いいや違う。私も後を追わないと。
「いかないで」
窓枠に駆け寄って、まだ間に合う、そんな訳の分からない希望を持って手を伸ばす。
辻褄の合わない、まるで粉々に砕いた硝子をもう一度元に戻そうとしたかのようなボロボロの悪夢。
私は今日も、悪夢を見る。
「っは、はぁっ、は、ぁ、、、」
手を伸ばしたままでいつも目を覚ます。
せめて指の先だけでも、そんな願いさえも叶えてくれない私の夢、
助けられなかった自分を責めるだけの悪夢。
だからこそ、落ちるときの彼の顔は見えない。
息が苦しい。
頭痛がひどい。夜風に当たった方がいいかもしれないと思い、ふらふらとした足取りで部屋を出る。そして眩暈を起こして倒れかけた体を誰かが支えた。
「なまえ?」
「スー…」
「酷い汗…どうしたの、こんな時間に」
*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴*∴
喉の渇きを覚えて食堂に行こうと部屋を出ると、今にも倒れそうななまえがいた。おもわず体を支えて大丈夫かと問うと、泣きそうな顔のままガクンと倒れこんでしまった。
取り敢えず彼女の部屋に運び込み、ベッドに寝かせる。さて戻ろうかと立ち上がろうとして、服の裾をつかまれていることに気がつく。弱々しく掴まれたそれを見、視線を彼女の顔に移す。
その手を外し、代わりに自分の手を握らせる。
そっと髪をなでると、目じりから涙がこぼれ落ちた。
「助けられ、なくて、不安になって……ごめんなさい、ごめんなさい、わたし、ジャックを…」
囁きというには大きく、懺悔にしては小さい声で彼女は言った。
ここに来る前の話。
彼女はジャックという恋人を目の前で失い、その後友人である私は失踪した。2人共、なまえよりも早く招待状を受け取り、そしてその招待を受けてここに来ることとなったのだ。
2人のどちらも、何も言わずに彼女の前から消え失せた。
彼女がそれをどう思ったかなんて、想像にたやすいだろう。
「ごめんね。もう、消えないから。傍にいるよ、なまえ」
彼の分も含めて言って、私はゆっくりと目を閉じる。
願わくば、彼女が悪夢から解き放たれんことを。
私の友に、
彼の恋人に、
ただ安らかなる眠りがあらんことを。