ある朝。ふと違和感を感じて目を開けてみると、なまえの顔が目の前にあった。

吐息がかかりそうなほど近いその距離に、何事かと焦ったが、おかしなことはそれだけでは無い。彼女のサイズ感がおかしいのだ。

彼女が普段よりずっと大きい。とりあえず私は私を抱きしめている彼女の腕の拘束から逃げようともぞもぞと身体を動かした。

するとその衝撃で彼女も目覚めたようで、眠そうな目をぱちぱちとさせながら私に話しかけた。

「……ミニリッパー？今日は早いのね。おはよう。」

私は軽く絶望した。ミニリッパーだと？彼女のペットのか？道理でいつもより彼女が大きい訳だ。

彼女にどうにかその事を伝えようとしたが、この身体では喋ることが出来ず、仕方なくこのままでいることにした。

「どうしたの？何か起こすようなことしてたらごめんなさい。」

彼女は私が見たこともないほど優しい笑顔でミニリッパー……いや、私の頭を撫でた。

そして、次の瞬間彼女は私のおでこにキスをしたのだ。

こいつ、普段からこんなにいい思いをしているのか？私にはあまり自分からキスなどしてくれないのに……！

「身支度を済ませたらジャックに声をかけてこようかしら。」

そういえば私がミニリッパーになっているならあいつは私になっているのか？

何をやらかすか分からない……強い不安を覚えるも、どうすることもできなかった。

私が物思いに耽っている間に彼女は身支度を済ませたようで、部屋を出ようとしていた。

「すぐ戻ってくるわ。行ってきます。」

扉の前にいたなまえだったが、わざわざベッドにいる私の所まで来て今度は頬にキスをしてきた。

ずるい……ずるすぎる。

彼女を組み伏せてしまいたい衝動に駆られるも、この小さい身体ではどうすることもできず私は彼女の帰りを大人しく待った。


「ただいま。」

彼女が帰ってくる音がしたので駆け寄ってその脚に抱きついた。

「相変わらず甘えん坊なのね。」

彼女は楽しそうにくすくすと笑って私を抱き寄せた後、また──実に3回目だ──キスした。

いくらなんでもキスしすぎではないか……？

「そういえばジャックったらまだ寝てたわ。珍しいこともあるものね。私がキスしても起きなかったのよ。」

は……？

「せっかく勇気を出してみたのに。」

よりによって……なぜ……

「まあ仕方ないわね。朝ごはんを食べに行ってくるからバイバイ。」

彼女は私に柔らかく微笑んで、またキスをして部屋から出ていった。

こうして私は悶々とした一日を過ごす羽目になったのである。