あれから長い時間が経った。私は招待状に書かれていた荘園に到着し、そこにいた人達と挨拶を済ませた。どうやら彼らはサバイバーと言うようで、ハンターから逃げるゲームをしているらしい。正直ルールを完全に理解できなかったが、エマに習うより慣れろなの！と言われて試しにやってみることになった。

メンバーは私、エマ、エミリー、ピアソンさんだ。

「なまえは解読は得意だけどチェイスがちょっと苦手みたいだから気を付けるといいなの。」

そういうエマに、エミリーが最初は安全そうな場所で解読するといいのよ、と付け加える。

気が付くとゲームが始まったようで、中央に教会が見える場所にいた。壁が沢山あるので安全そうだと思って手近な暗号機に近寄り、解読を始めた。

しばらく解読をしていると急に心臓の音がうるさくなってきた。ハンターが近くにいるようだ。急いで離れようとしたが、ちょうど調整が来てしまい、失敗したせいで逃げるのが遅くなってしまった。その間にハンターは随分近くまで来たようで、私のすぐ側に赤い光が落ちていた。これはまずい。心の中で仲間に謝りながら恐る恐るハンターのいる場所を見上げた。

「なまえ……」

それは、酷く聞き覚えのある声だった。

「ジャック……！」

どちらともなく近付いて抱き合った。仮面はしているが、それは確かにジャックだった。

「ああ、なまえ……会いたかった……」

「私もよ、ジャック。貴方のいない日々はとても辛かったの……だって貴方を……その……えっと……あの、その……あ、あ、愛しているから……」

「えっ？よく聞こえませんでした。もう一度言って頂けますか？」

ジャックはいたずらっぽい笑みを浮かべている。どうやらからかわれているようだ。

「ジャックのいじわる。もう言わないから！」

私は少し拗ねてしまった。

「嬉しかっただけです。……私もですよ、なまえ。」

ジャックはそう言って私を抱く腕に力を込めた。私の顔は真っ赤だったに違いない。

「それで、私はこの暗号機を解読すればいいのよね？」

照れた自分を誤魔化すようにそう言いながら手を離した。

「そうですね。5つ解読すればゲートを開けるようになりますから。今回は見逃しますけど次回からは容赦しませんよ。」

ええ、と微笑んでジャックが見守る中解読を続けた。

「おや、貴女は解読向きなんですね。恐らくチェイスは苦手なんでしょうし解読が早いのはハンターにとって厄介だ。最初に狙われてもおかしくない。気を付けてくださいね。」

そう言うとジャックは仮面越しに私の額に口付けた。それに驚いて私は調整に失敗してしまった。

「集中しないと駄目ですよ。では、私は他の人の様子も見てくるのでまた後でお会いしましょう。」

からかうようにくつくつと笑い、優雅な動きでジャックは去って行った。

熱の集まる額に意識を向けないようにしながら必死に解読をして、私はなんとか脱出した。(四逃げしたとは言ってない)