霧の中で
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最悪だ。今日もまた血なまぐさい臭いの中で目覚めた。彼女と出会ってから日中はとても楽しかったが、次第にいつバレるのかという不安に襲われるようになった。バレる前に打ち明けようと思ったこともあったが、彼女に拒絶されるのが怖くて結局出来ないでいた。
机の上にメモが置いてある。どうせまた肉塊があって「送り出せ!」とか書いてあるんだろう。陰鬱な気分になりながら、メモを手に取るとそこには「彼女に見つかった」と書いてあった。
彼女に見つかった?彼女とは、もしかしてなまえのことか?なまえ以外にはいない。そうか、彼女に見つかったのか。なぜか、酷く冷静な気持ちだった。きっと彼女は私を拒絶するだろう。そんなことになったら何をしでかすか分からない。それなら、彼女が私に拒絶の言葉を投げかける前に全てを……
なんだか胸騒ぎがする。今まで感じたことの無い焦燥感。どうしてもジャックに会って話したい。特別話したいことがある訳ではなかったけど、顔を見たいと強く思った。幸い、今日は休みだ。いつもの場所へ行ってみよう。もしいなかったら家に行ってみようと思う。そうと決まったらすぐ行かなければ。私は素早く身支度を済ませ、家を出た。
いつもの川辺に来てみたが、ジャックがいない。強い不安に襲われた。家にいるのだろうか。そうだといいのだけど、と思ってそこからほど近いジャックの家へ駆け出した。
……玄関の鍵が開いている。ノックしようとした拍子に扉が薄く開いたのだ。几帳面で用心深い彼にしては珍しい。酷い胸騒ぎと焦燥感が相まって、たったこれだけのことでも強く不安になってしまう。
「こんにちは。ジャック、そこにいるの?」
返事はない。
「入らせてもらうわね。」
部屋の中へ足を進めると、窓辺に黒い影があった。
「ジャック、貴方でしょ?どうしたの?」
「なまえ……君は見てしまったんだろう?」
いつもの口調が崩れている。
「見るって何を?……もしかして昨日の夜の…?それなら気にしてないわ。誰にも言わないし……」
「無理しなくていいんだ。私は二重人格なんだ。もう一人は殺人鬼──世間で言う『切り裂き魔』なんだ。恐ろしくて当然だ。私に怯えない人なんていないさ。」
「それでもいいの。だって、私は、私は……貴方を……」
「本当はもっと早く終わりにすべきだったんだ。今までありがとう。とても幸せだったよ。なまえ……」
彼は窓枠を掴んでいた手を離した。彼の体は真下へ落下していく。
「ジャック……!!」
私は慌てて窓枠へ走り寄った。
「ジャック……!大好きよ……愛しているわ……」
嗚咽混じりに叫んだ。届かないと分かっていても、彼の方へ手を伸ばしてしまう。すると、彼も私の方へ手を伸ばしてきた。
「ああ……なまえ……私も君を──」
地面に叩きつけられる瞬間のジャックの姿を見たくなくて、私は目を離し、窓から離れた。そして、急いで部屋を出て下へ続く階段を駆け下りていった。
窓の真下へ来ても、彼の体は無かった。
不思議と涙は出なかった。あまりに悲しすぎたのか、彼の体が見つからず、夢か何かだと思ってしまっているのかは分からない。ただ、確かに、その日以来、彼の姿を見ることは無かった。
どのくらいかは数えていなかったが、とにかく長い月日が経った。私は家のポストに不思議な封筒を見つけ、開いてみた。
「エウリュディケ荘園……?」
そこには、エウリュディケ荘園に来れば愛する人と再会出来る、ということが書いてあった。私は迷うことなく荷物をまとめ、直ぐに荘園へと向かった。
机の上にメモが置いてある。どうせまた肉塊があって「送り出せ!」とか書いてあるんだろう。陰鬱な気分になりながら、メモを手に取るとそこには「彼女に見つかった」と書いてあった。
彼女に見つかった?彼女とは、もしかしてなまえのことか?なまえ以外にはいない。そうか、彼女に見つかったのか。なぜか、酷く冷静な気持ちだった。きっと彼女は私を拒絶するだろう。そんなことになったら何をしでかすか分からない。それなら、彼女が私に拒絶の言葉を投げかける前に全てを……
なんだか胸騒ぎがする。今まで感じたことの無い焦燥感。どうしてもジャックに会って話したい。特別話したいことがある訳ではなかったけど、顔を見たいと強く思った。幸い、今日は休みだ。いつもの場所へ行ってみよう。もしいなかったら家に行ってみようと思う。そうと決まったらすぐ行かなければ。私は素早く身支度を済ませ、家を出た。
いつもの川辺に来てみたが、ジャックがいない。強い不安に襲われた。家にいるのだろうか。そうだといいのだけど、と思ってそこからほど近いジャックの家へ駆け出した。
……玄関の鍵が開いている。ノックしようとした拍子に扉が薄く開いたのだ。几帳面で用心深い彼にしては珍しい。酷い胸騒ぎと焦燥感が相まって、たったこれだけのことでも強く不安になってしまう。
「こんにちは。ジャック、そこにいるの?」
返事はない。
「入らせてもらうわね。」
部屋の中へ足を進めると、窓辺に黒い影があった。
「ジャック、貴方でしょ?どうしたの?」
「なまえ……君は見てしまったんだろう?」
いつもの口調が崩れている。
「見るって何を?……もしかして昨日の夜の…?それなら気にしてないわ。誰にも言わないし……」
「無理しなくていいんだ。私は二重人格なんだ。もう一人は殺人鬼──世間で言う『切り裂き魔』なんだ。恐ろしくて当然だ。私に怯えない人なんていないさ。」
「それでもいいの。だって、私は、私は……貴方を……」
「本当はもっと早く終わりにすべきだったんだ。今までありがとう。とても幸せだったよ。なまえ……」
彼は窓枠を掴んでいた手を離した。彼の体は真下へ落下していく。
「ジャック……!!」
私は慌てて窓枠へ走り寄った。
「ジャック……!大好きよ……愛しているわ……」
嗚咽混じりに叫んだ。届かないと分かっていても、彼の方へ手を伸ばしてしまう。すると、彼も私の方へ手を伸ばしてきた。
「ああ……なまえ……私も君を──」
地面に叩きつけられる瞬間のジャックの姿を見たくなくて、私は目を離し、窓から離れた。そして、急いで部屋を出て下へ続く階段を駆け下りていった。
窓の真下へ来ても、彼の体は無かった。
不思議と涙は出なかった。あまりに悲しすぎたのか、彼の体が見つからず、夢か何かだと思ってしまっているのかは分からない。ただ、確かに、その日以来、彼の姿を見ることは無かった。
どのくらいかは数えていなかったが、とにかく長い月日が経った。私は家のポストに不思議な封筒を見つけ、開いてみた。
「エウリュディケ荘園……?」
そこには、エウリュディケ荘園に来れば愛する人と再会出来る、ということが書いてあった。私は迷うことなく荷物をまとめ、直ぐに荘園へと向かった。