今日のゲームで色々あって落ち込んだ私は夜の食堂でひっそりと1人でお酒を飲んでいた。

すると、食堂に誰かが入ってきた。

「おや、なまえさん。こんな夜に一人で何してるんですか？」

入ってきたのは謝必安さんだった。

「ちょっと色々あって気を紛らわせようと思って……」

「大丈夫ですか？愚痴なら聞きますよ」

「いいんですか？」

謝必安さんの提案に甘えることにして私はぽつぽつと話し始めた。

「今日の試合、ヘレナとトレイシーとウィラと一緒だったんです。それで、ハンターはジャックで最初にウィラがチェイスを引いたんですけどあっという間にダウンして……」

謝必安さんは頷きながら聞いてくれてとても話しやすかった。

「ずっと風船状態のままでおかしいなと思って様子を見に近寄ったら優鬼だったんです」

「つまりリッパーはウィラさんをお姫様抱っこしていた、と？」

「そうです。だから私は抱いてくれるようにジャックに頼んだんですけど無視されて……でも、ヘレナやトレイシーのお願いは聞いていて、ショックで、ショックで……」

思い出すとまた辛くなってきて遂には涙が出てきた。

「なんて酷いんだ。私だったら可愛らしい貴女にそんなことはしないのに」

そっとハンカチを差し出してくれる謝必安さんの優しさで益々涙が止まらなくなってきた。

「身勝手な嫉妬かもしれないけど……ジャックは私の事をもう好きじゃないのかなって思ってしまって……私ばっかりが好きなんじゃと思うと……」

しばらくそのまま泣いていた私だったが、嗚咽を漏らし始めた私の背中を何も言わず頷きながらそっと撫でてくれる謝必安さんのお陰でかなり落ち着いてきた。

するとそこへまた誰かが入ってくる気配がした。

見上げて確認してみると、それはジャックのシルエットだった。

彼には今は会いたい気分じゃないのに。

「なまえ。ここに居たんですね。探しましたよ」

「ばか」

そう言った私に驚く様子を見せながらもジャックは隣に座ってきた。

「あっちいけ」

「……今日のゲームの事ですよね。すみません。最初に謝ります。……貴女の嫉妬した姿を見てみたかったんです」

「……え？」

「嫉妬した貴女はとても可愛らしかった───ではなくて。貴女の色々な表情が見たくなってしまったのです。身勝手な私を許してください」

「うぅ……私の気持ちも知らないくせに……」

私がそう言うとジャックは手を取ってきた。

「ごめんなさい。私の愛しい人、どうすれば私の愛を分かっていただけるのでしょうか」

「……いっぱい甘やかしてほしい」

そう言った私に彼は微笑んだ。

「では、彼女たちには絶対に出来ないことをして差し上げましょう」

恥ずかしくなって私は顔を背ける。

「ふふ、冗談ですよ。それはお酒を飲んでない時にでも。立てますか？」

「うん」

ジャックは私が酔っ払ってる時には絶対に手を出してこない。そういう所も紳士的で好きだなと改めて思う。

「ありがとうございました、謝必安さん」

「いえ、寧ろ何も出来なくてすいません」

ジャックに差し出された手を取って私は食堂を出た。


「貴女ばかりが好きだなんてこと、絶対にありませんから」

顔を背けながらそう言ったジャックに愛しさを感じる。

「ありがとう。愛してるわ、ジャック」

「私も愛してます、なまえ」