霧の中で
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暇になったので中庭に行ってみることにした。中庭へ続く扉を開けるとそこにはエマとリッパーがいて、話をしていた。
「あ、エミリー!こんにちはなの!」
「こんにちは」
「こんにちは、リッパーにエマ。なにしてたの?」
「リッパーさんに荘園に来る前の話をしてもらってたなの。ところで、リッパーさんは恋人とかいたなの?」
「恋人、ですか……そうですねぇ……」
リッパーは考えるように顎に指を置き、ぽつぽつと話し始めた。
「もうお話したと思いますが、ここに来る前私は絵を描いていました。気分転換に外で絵を描いていた時、ある女性を見かけたんです」
リッパーは懐かしそうに話す。
「彼女は美しかった。気が付けば私は彼女の姿を描いていました」
「リッパーさんの絵、見てみたいわ」
「生憎その絵は彼女にプレゼントしてしまって……」
「そうなの。ちょっと残念だわ」
ごめんなさい、遮ったわね、と私は続きを促す。
「次の日、また彼女の姿を見ることが出来ないかと思って同じ場所で絵を描いていたんです。すると、また彼女が通り過ぎて行きました。彼女は仕事へ行く時にその道を通っていたんですね。しばらくは遠くから見つめる日が続きました」
エマは聞き入っているようで真剣な表情をしていた。
「そうしたら、彼女が私に話しかけてきたんです」
「え、どんな風に?」
エマが気になって仕方ないというように聞いた。
「彼女の友人が本を出版するのでその挿絵を描いて欲しい、という依頼だったんです」
「その女の人もリッパーさんのことを見ていたのね」
「だとしたらとても嬉しいのですが……それから仕事という口実で彼女と会って話をする日々が続きました」
彼の話は恋人というより片思いのことばかりなのが気になった。
「そうするうちに、私は彼女に惹かれていったのです。いえ、最初に見た時にはもう惹かれていたのかもしれませんね」
「一目惚れなの!」
そう言ったエマにリッパーはさあ、どうでしょうか、と返す。
「彼女はとても美しかった」
リッパーは繰り返した。
「手入れのされた綺麗な黒い髪と澄んだ瞳を持っていて……彼女の笑顔を見ると幸せな気持ちになりました。そして、彼女はとても心優しくて、聡明で、でも何処か抜けているようなところがまた可愛らしくて……彼女の魅力は語りきれません」
リッパーは遠くを見つめるように顔を上に向けた。
「私は彼女を愛していました。そして、彼女も私を愛していると言ってくれました」
「両思いなの!」
エマは嬉しそうに言った。
「そうです。私と彼女は愛し合っていたんです。けれど……」
「けれど……?」
エマと声が重なった。
「この話はおしまいにしましょうか。面白い話でもないですし」
リッパーは悲しみを含んだ声でそう言って、足早に中庭を去っていった。
「あ、エミリー!こんにちはなの!」
「こんにちは」
「こんにちは、リッパーにエマ。なにしてたの?」
「リッパーさんに荘園に来る前の話をしてもらってたなの。ところで、リッパーさんは恋人とかいたなの?」
「恋人、ですか……そうですねぇ……」
リッパーは考えるように顎に指を置き、ぽつぽつと話し始めた。
「もうお話したと思いますが、ここに来る前私は絵を描いていました。気分転換に外で絵を描いていた時、ある女性を見かけたんです」
リッパーは懐かしそうに話す。
「彼女は美しかった。気が付けば私は彼女の姿を描いていました」
「リッパーさんの絵、見てみたいわ」
「生憎その絵は彼女にプレゼントしてしまって……」
「そうなの。ちょっと残念だわ」
ごめんなさい、遮ったわね、と私は続きを促す。
「次の日、また彼女の姿を見ることが出来ないかと思って同じ場所で絵を描いていたんです。すると、また彼女が通り過ぎて行きました。彼女は仕事へ行く時にその道を通っていたんですね。しばらくは遠くから見つめる日が続きました」
エマは聞き入っているようで真剣な表情をしていた。
「そうしたら、彼女が私に話しかけてきたんです」
「え、どんな風に?」
エマが気になって仕方ないというように聞いた。
「彼女の友人が本を出版するのでその挿絵を描いて欲しい、という依頼だったんです」
「その女の人もリッパーさんのことを見ていたのね」
「だとしたらとても嬉しいのですが……それから仕事という口実で彼女と会って話をする日々が続きました」
彼の話は恋人というより片思いのことばかりなのが気になった。
「そうするうちに、私は彼女に惹かれていったのです。いえ、最初に見た時にはもう惹かれていたのかもしれませんね」
「一目惚れなの!」
そう言ったエマにリッパーはさあ、どうでしょうか、と返す。
「彼女はとても美しかった」
リッパーは繰り返した。
「手入れのされた綺麗な黒い髪と澄んだ瞳を持っていて……彼女の笑顔を見ると幸せな気持ちになりました。そして、彼女はとても心優しくて、聡明で、でも何処か抜けているようなところがまた可愛らしくて……彼女の魅力は語りきれません」
リッパーは遠くを見つめるように顔を上に向けた。
「私は彼女を愛していました。そして、彼女も私を愛していると言ってくれました」
「両思いなの!」
エマは嬉しそうに言った。
「そうです。私と彼女は愛し合っていたんです。けれど……」
「けれど……?」
エマと声が重なった。
「この話はおしまいにしましょうか。面白い話でもないですし」
リッパーは悲しみを含んだ声でそう言って、足早に中庭を去っていった。