霧の中で
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「こんにちは、ジャック。」
家の近くの川辺で絵を描いていると、突然声をかけられた。この声には聞き覚えがあ
る。
「おや、なまえさん、こんにちは。お元気ですか?」
そう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んで言った。瞳が太陽の光を反射して煌めいている。
「ええ、おかげさまで。あなたは?」
「まあまあですね。」
彼女とは、しばらく前──もう半年は経つだろうか──に丁度この場所で出会った。彼女の同僚が出版するという本に、挿絵を描いて欲しいという依頼がきっかけだった。それから、彼女と毎日のようにここで会い、他愛ない会話を交わすようになったのだ。
何度か会って話すうちに仲良くなり、ある時私から近くのカフェに誘ったことがあった。甘いものが好きだという彼女は、目を輝かせていたのを思い出す。
「あ、そういえば美味しいクッキーと紅茶が手に入ったんです。我が家で一緒にどうですか?」
と彼女に問うてみると、彼女は一瞬驚いたようにこちらへ目を向けた。
「え…?私なんかがあなたの家に言ってもいいの?」
「貴女だからいいんですよ。」
そうなの、なら行こうかしら、と彼女は頬を赤く染めた。
「そうと決まれば早速行きましょう。」
私は手早く画材を片付け、彼女を案内した。
天気が良く川が太陽の光を反射していて、まるで宝石のようだと思った。爽やかな風が吹く川辺をしばらく歩くと家に着いた。
「お邪魔します…」
「今から紅茶を入れてくるのでそこに腰をかけておいてください。」
ええ、と彼女はどこか上の空で答えた。飾ってある絵に夢中なようだ。私が紅茶とクッキーを持っていくとその香りに意識が向けられたようで、こちらを向き直った。
「これ、とてもいい香りなのね!色も綺麗だわ。」
そう言って彼女は紅茶を一口飲んでからクッキーを食べた。
「このクッキーもとても美味しい!紅茶によく合ってる。」
「お口にあって良かったです。こういうのが好みだと思っていましたよ。」
彼女は柔らかく微笑んだ。
楽しい時間は早く過ぎるようで、あっという間に日が落ちてきた。空がオレンジ色に染まっている。暗くなる前に早く彼女を返さなければ。
「暗くなったら危ないのでそろそろ解散としましょうか。」
「ええ、そうね…」
彼女はどこか名残惜しそうにこちらを見つめた後、立ち上がった。
「さようなら、また明日……」
その寂しそうな表情に気持ちが高ぶってしまう。考えるより先に体が動いてしまったようだ。
気が付けば、彼女が私の腕の中にいた。驚いたのだろう、彼女は身を硬くしていた。しまった、と思った。これでは信頼されなくなってしまうかもしれない。
しかし、しかしだ。彼女は私の背におずおずと手を回してきたのだ。嬉しくて、この温もりを手放したくなくて、私はより一層強く抱きしめた。
「近くまで送りますよ。」
暗くなる前に帰れば大丈夫だろう。耳を赤くして彼女は頷いた。
家の近くの川辺で絵を描いていると、突然声をかけられた。この声には聞き覚えがあ
る。
「おや、なまえさん、こんにちは。お元気ですか?」
そう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んで言った。瞳が太陽の光を反射して煌めいている。
「ええ、おかげさまで。あなたは?」
「まあまあですね。」
彼女とは、しばらく前──もう半年は経つだろうか──に丁度この場所で出会った。彼女の同僚が出版するという本に、挿絵を描いて欲しいという依頼がきっかけだった。それから、彼女と毎日のようにここで会い、他愛ない会話を交わすようになったのだ。
何度か会って話すうちに仲良くなり、ある時私から近くのカフェに誘ったことがあった。甘いものが好きだという彼女は、目を輝かせていたのを思い出す。
「あ、そういえば美味しいクッキーと紅茶が手に入ったんです。我が家で一緒にどうですか?」
と彼女に問うてみると、彼女は一瞬驚いたようにこちらへ目を向けた。
「え…?私なんかがあなたの家に言ってもいいの?」
「貴女だからいいんですよ。」
そうなの、なら行こうかしら、と彼女は頬を赤く染めた。
「そうと決まれば早速行きましょう。」
私は手早く画材を片付け、彼女を案内した。
天気が良く川が太陽の光を反射していて、まるで宝石のようだと思った。爽やかな風が吹く川辺をしばらく歩くと家に着いた。
「お邪魔します…」
「今から紅茶を入れてくるのでそこに腰をかけておいてください。」
ええ、と彼女はどこか上の空で答えた。飾ってある絵に夢中なようだ。私が紅茶とクッキーを持っていくとその香りに意識が向けられたようで、こちらを向き直った。
「これ、とてもいい香りなのね!色も綺麗だわ。」
そう言って彼女は紅茶を一口飲んでからクッキーを食べた。
「このクッキーもとても美味しい!紅茶によく合ってる。」
「お口にあって良かったです。こういうのが好みだと思っていましたよ。」
彼女は柔らかく微笑んだ。
楽しい時間は早く過ぎるようで、あっという間に日が落ちてきた。空がオレンジ色に染まっている。暗くなる前に早く彼女を返さなければ。
「暗くなったら危ないのでそろそろ解散としましょうか。」
「ええ、そうね…」
彼女はどこか名残惜しそうにこちらを見つめた後、立ち上がった。
「さようなら、また明日……」
その寂しそうな表情に気持ちが高ぶってしまう。考えるより先に体が動いてしまったようだ。
気が付けば、彼女が私の腕の中にいた。驚いたのだろう、彼女は身を硬くしていた。しまった、と思った。これでは信頼されなくなってしまうかもしれない。
しかし、しかしだ。彼女は私の背におずおずと手を回してきたのだ。嬉しくて、この温もりを手放したくなくて、私はより一層強く抱きしめた。
「近くまで送りますよ。」
暗くなる前に帰れば大丈夫だろう。耳を赤くして彼女は頷いた。