1話 Story of beggining.
コンコン、と扉を叩くと中から、入れと短く声がした。
扉を開けつつ、ネーヴェは挨拶をする。
「ネーヴェ・イシュメリアでございます」
「あぁ、来たか。少しそこでかけて待っていてくれ。これが終わったら少々話がある」
オルガは顔書類に向けたまま言い放つ。いつもよりは疲れているのか、声に覇気がないような気がする、とネーヴェは思った。
「私がいなくなって、仕事が増えたようですね」
「当たり前だろう、優秀な秘書が一人消えたんだ。その分の仕事がこっちに回ってくる。そう思っただけで疲れるよ」
「今日は1日屋敷を空けても平気なように仕事を片付けてきましたので、後で仕事を手伝いますよ。まぁ、もともと私の仕事でしょうけども。」
苦笑しながら気遣うネーヴェに、少し微妙な顔をして仕事を続けるオルガ。
暫くして、ひと段落ついたのか、オルガが顔を上げ、やっとネーヴェを見る。そして、少しだけ驚いたのか、目を開いた。
「なんだ、喪服できたのか」
「人をなんだと思ってるんですか。新婚早々未亡人になったんです。まだ喪も明けてませんよ。それより、何かあったのですか?陛下から直々に殿下にあってやれなんて言われましたが。」
「・・・イシュメリア卿の殺害の件だが、皇帝陛下から隣国がかかわっているかもしれない、お前の力が狙われているかもしれないという話は聞いたか?」
「えぇ、先ほど。私の力で不死に近づくかもしれないなんて、馬鹿なこと考える輩もいたものだとは思いますが・・・」
「なら話は早い。その話、相当現実味を帯びている。イシュメリア卿殺害の数週間前から、隣の国の人間が、イシュメリア領に相当出入りしていたらしい事が分かった。念入りに計画して、犯行に及んだんだろう。そして、卿は薬を盛られたようだ。死には至らないが、意識が混濁するような少々が出るという毒が遺体から検出された。ただ、この国にはなくー・・・」
「隣の国で容易に手に入る毒・・・なんですね」
「・・・そうだ」
オルガとネーヴェは同時にため息を吐いた。
「国内の人間が国内で何かした場合はどうとでもできるが、そこに隣国がかかわってくると、どうしても話がややこしくなる。外交問題だからだ。法律一つとっても、犯人の引き渡しができるかどうか、両国で話をしなければならない。
我が国は、2つの国に隣接しているから、どちらの国がかかわっているのか、もしくはどちらの国もかかわっているのか・・・そこからだ」
「まぁ・・・この短時間でそれだけわかれば良い方でしょう。相手の出方をうかがいながら、こちらからも何かしかけないといけないですね。
・・・私、理由つけて隣国行きましょうか?」
「馬鹿を言うな。お前を送り込んだら、何をするかわからないじゃないか。兄上だってお前の家族だって反対するだろう。そもそも、お前を送り込んだら、『隣国の王様暗殺しました♡』って言って首持ってきそうじゃないか!」
「犯人でもない人の首なんて取ってきませんよ」
「そこじゃない、そこじゃ!とにかく、お前は国を出るな。頼むから。いいな?」
「・・・殿下の仰せのままにぃ」
不服間満載の表情でネーヴェは返事をすると、手元にあったお茶を一口口にする。
「それより、最近はどうなんだ?公爵家当主の仕事は何とか代理でできているのか?お前の話も聞かせろ。あと、仕事手伝え」
「そうですね、家の仕事は――・・・」
そう返事をしながら座っていた応接用ソファから立ち上がり、オルガの執務机からいくつか書類を取ると、ソファに戻り仕事を始めるネーヴェ。
雑談をしながら二人は仕事を進めていく。
久しぶりのやり取りに、二人は懐かしさすら覚え仕事をこなしていった。
扉を開けつつ、ネーヴェは挨拶をする。
「ネーヴェ・イシュメリアでございます」
「あぁ、来たか。少しそこでかけて待っていてくれ。これが終わったら少々話がある」
オルガは顔書類に向けたまま言い放つ。いつもよりは疲れているのか、声に覇気がないような気がする、とネーヴェは思った。
「私がいなくなって、仕事が増えたようですね」
「当たり前だろう、優秀な秘書が一人消えたんだ。その分の仕事がこっちに回ってくる。そう思っただけで疲れるよ」
「今日は1日屋敷を空けても平気なように仕事を片付けてきましたので、後で仕事を手伝いますよ。まぁ、もともと私の仕事でしょうけども。」
苦笑しながら気遣うネーヴェに、少し微妙な顔をして仕事を続けるオルガ。
暫くして、ひと段落ついたのか、オルガが顔を上げ、やっとネーヴェを見る。そして、少しだけ驚いたのか、目を開いた。
「なんだ、喪服できたのか」
「人をなんだと思ってるんですか。新婚早々未亡人になったんです。まだ喪も明けてませんよ。それより、何かあったのですか?陛下から直々に殿下にあってやれなんて言われましたが。」
「・・・イシュメリア卿の殺害の件だが、皇帝陛下から隣国がかかわっているかもしれない、お前の力が狙われているかもしれないという話は聞いたか?」
「えぇ、先ほど。私の力で不死に近づくかもしれないなんて、馬鹿なこと考える輩もいたものだとは思いますが・・・」
「なら話は早い。その話、相当現実味を帯びている。イシュメリア卿殺害の数週間前から、隣の国の人間が、イシュメリア領に相当出入りしていたらしい事が分かった。念入りに計画して、犯行に及んだんだろう。そして、卿は薬を盛られたようだ。死には至らないが、意識が混濁するような少々が出るという毒が遺体から検出された。ただ、この国にはなくー・・・」
「隣の国で容易に手に入る毒・・・なんですね」
「・・・そうだ」
オルガとネーヴェは同時にため息を吐いた。
「国内の人間が国内で何かした場合はどうとでもできるが、そこに隣国がかかわってくると、どうしても話がややこしくなる。外交問題だからだ。法律一つとっても、犯人の引き渡しができるかどうか、両国で話をしなければならない。
我が国は、2つの国に隣接しているから、どちらの国がかかわっているのか、もしくはどちらの国もかかわっているのか・・・そこからだ」
「まぁ・・・この短時間でそれだけわかれば良い方でしょう。相手の出方をうかがいながら、こちらからも何かしかけないといけないですね。
・・・私、理由つけて隣国行きましょうか?」
「馬鹿を言うな。お前を送り込んだら、何をするかわからないじゃないか。兄上だってお前の家族だって反対するだろう。そもそも、お前を送り込んだら、『隣国の王様暗殺しました♡』って言って首持ってきそうじゃないか!」
「犯人でもない人の首なんて取ってきませんよ」
「そこじゃない、そこじゃ!とにかく、お前は国を出るな。頼むから。いいな?」
「・・・殿下の仰せのままにぃ」
不服間満載の表情でネーヴェは返事をすると、手元にあったお茶を一口口にする。
「それより、最近はどうなんだ?公爵家当主の仕事は何とか代理でできているのか?お前の話も聞かせろ。あと、仕事手伝え」
「そうですね、家の仕事は――・・・」
そう返事をしながら座っていた応接用ソファから立ち上がり、オルガの執務机からいくつか書類を取ると、ソファに戻り仕事を始めるネーヴェ。
雑談をしながら二人は仕事を進めていく。
久しぶりのやり取りに、二人は懐かしさすら覚え仕事をこなしていった。