0.5話 Stories of happening.
それは青天の霹靂だったというべきか、それとも心のどこかで予想していたことなのか…。
「そうそう、お前の婚約者が決まったんだよ」
男性は帰宅し、娘の顔を見ると思い出したように言った。
男性はこの国の騎士団の制服を脱ぎながら今日の出来事とでも言わんばかりに特に気にした様子はない。
「………勝手に決めたんですか!?どこの馬の骨とも分からないやつと私は結婚しませんからね!!」
それに対して娘は一瞬唖然とした表情をするも、ものすごい嫌悪感を表情に出し、先程の言葉で反論する。
「大丈夫だネーヴェ、どこの馬の骨かはわかっている」
ニカッと満面の笑みで利き手の親指をぐっと立ててみせる父親。
「そういう問題ではっ・・・待ってください、どこの馬の骨か分かっているということは、私の知ってる方…ですか?」
「知っているさ、相手はブライアンだからな〜」
親指を立て、ニコニコしたまま男性は即座に答えた。
言われた娘は信じられないという顔で目を丸くする。
「・・・彼をどう丸め込んだんですか?遺産目当てですか、お父様。彼の遺産と地位目当てに頼み込んだんですか!?」
「おま…遺産と地位目当てって、うちだって皇家に仕える侯爵家だぞ?金と地位なら確かにブライアンには負けるが、うちだってあるわ!俺だって皇家直属騎士団の団長だぞ!?」
意味がわからないといった風に捲し立てる娘ーーネーヴェーー。
「勝手に決めるとはどういうことですか、お父様。ブライアンおじ様にこれ以上迷惑をかける真似はやめて下さい。金ですか⁉買収したんですか!?」
「お前も自分が迷惑かけてる、ブライアンからこの話があったわけじゃないって自覚はあるんだな…。」
ゴホンと咳ばらいを一つして、父は続ける。
「ま、まぁ・・・お前だって誰かに求婚されると絶対断ってるだろ?だったら、誰かに引き取ってもらったほうが言い寄られる事も無いから良いかと、父なりに娘を思いやったんだよ、ネーヴェ。」
「面倒だからブライアンおじ様に押し付けたようにしか聞こえませんが…」
「まぁそのとおりだが、別にいいだろ?結婚しても夫婦らしい事はしなくていいし、お前だってブライアンの事は【人として】好きだろう?この前も尊敬してるって言ってたし…別にいいじゃないか」
最後の方はゴニョゴニョと言いよどみながら自分の言い分を告げる。
「だからってー・・・」
「フィル!?ネーヴェの件、どうなったーーってあらその話?」
「・・・お母様も共犯なんですね?」
ネーヴェの言葉を遮るように男性ーーフィルに声をかける女性。
「あら共犯だなんて。貴方ももう16歳なんだからこれから求婚されることも増えると思うわ。特に騎士団寄宿学校に行くのだから。だったらさっさと公爵家にでも嫁に行くことが決まってれば、貴方だって片っ端から断らなくて良いじゃないの。いい事はあっても悪いことはないわ・・・多分。」
「多分…」
ネーヴェがオウム返しで最後の単語を繰り返す。
「それに婚約が決まったからってすぐに結婚しなきゃいいのよ〜。そのへんはブライアンとちゃ〜んと契約結びなさいな!」
「契約…」
「ァ…アイリス?そんな有り体に言わなくとも…」
「あら、分かりやすいほうがいいと思って〜」
ぽんっと手を叩き満面の笑顔の母に、嬉しそうな父。それを見つめる無表情の娘。
夕食はこの後、兄と弟が加わるかと思うと余計に微妙な表情になるネーヴェだった。
「そもそも・・・この話、私以外知ってるってことかしら?」
こめかみに青筋が出来そうな表情でネーヴェが質問する。すると母が口を開いた。
「・・・アレックスには言ってないわ。あの子に言ったらブライアンの事を暗殺しそうなくらいネーヴェのこと大好きだしねぇ〜」
「・・・あぁ」
小首を傾げる母ことアイリスに、ネーヴェは妙に納得していた。
「そうそう、お前の婚約者が決まったんだよ」
男性は帰宅し、娘の顔を見ると思い出したように言った。
男性はこの国の騎士団の制服を脱ぎながら今日の出来事とでも言わんばかりに特に気にした様子はない。
「………勝手に決めたんですか!?どこの馬の骨とも分からないやつと私は結婚しませんからね!!」
それに対して娘は一瞬唖然とした表情をするも、ものすごい嫌悪感を表情に出し、先程の言葉で反論する。
「大丈夫だネーヴェ、どこの馬の骨かはわかっている」
ニカッと満面の笑みで利き手の親指をぐっと立ててみせる父親。
「そういう問題ではっ・・・待ってください、どこの馬の骨か分かっているということは、私の知ってる方…ですか?」
「知っているさ、相手はブライアンだからな〜」
親指を立て、ニコニコしたまま男性は即座に答えた。
言われた娘は信じられないという顔で目を丸くする。
「・・・彼をどう丸め込んだんですか?遺産目当てですか、お父様。彼の遺産と地位目当てに頼み込んだんですか!?」
「おま…遺産と地位目当てって、うちだって皇家に仕える侯爵家だぞ?金と地位なら確かにブライアンには負けるが、うちだってあるわ!俺だって皇家直属騎士団の団長だぞ!?」
意味がわからないといった風に捲し立てる娘ーーネーヴェーー。
「勝手に決めるとはどういうことですか、お父様。ブライアンおじ様にこれ以上迷惑をかける真似はやめて下さい。金ですか⁉買収したんですか!?」
「お前も自分が迷惑かけてる、ブライアンからこの話があったわけじゃないって自覚はあるんだな…。」
ゴホンと咳ばらいを一つして、父は続ける。
「ま、まぁ・・・お前だって誰かに求婚されると絶対断ってるだろ?だったら、誰かに引き取ってもらったほうが言い寄られる事も無いから良いかと、父なりに娘を思いやったんだよ、ネーヴェ。」
「面倒だからブライアンおじ様に押し付けたようにしか聞こえませんが…」
「まぁそのとおりだが、別にいいだろ?結婚しても夫婦らしい事はしなくていいし、お前だってブライアンの事は【人として】好きだろう?この前も尊敬してるって言ってたし…別にいいじゃないか」
最後の方はゴニョゴニョと言いよどみながら自分の言い分を告げる。
「だからってー・・・」
「フィル!?ネーヴェの件、どうなったーーってあらその話?」
「・・・お母様も共犯なんですね?」
ネーヴェの言葉を遮るように男性ーーフィルに声をかける女性。
「あら共犯だなんて。貴方ももう16歳なんだからこれから求婚されることも増えると思うわ。特に騎士団寄宿学校に行くのだから。だったらさっさと公爵家にでも嫁に行くことが決まってれば、貴方だって片っ端から断らなくて良いじゃないの。いい事はあっても悪いことはないわ・・・多分。」
「多分…」
ネーヴェがオウム返しで最後の単語を繰り返す。
「それに婚約が決まったからってすぐに結婚しなきゃいいのよ〜。そのへんはブライアンとちゃ〜んと契約結びなさいな!」
「契約…」
「ァ…アイリス?そんな有り体に言わなくとも…」
「あら、分かりやすいほうがいいと思って〜」
ぽんっと手を叩き満面の笑顔の母に、嬉しそうな父。それを見つめる無表情の娘。
夕食はこの後、兄と弟が加わるかと思うと余計に微妙な表情になるネーヴェだった。
「そもそも・・・この話、私以外知ってるってことかしら?」
こめかみに青筋が出来そうな表情でネーヴェが質問する。すると母が口を開いた。
「・・・アレックスには言ってないわ。あの子に言ったらブライアンの事を暗殺しそうなくらいネーヴェのこと大好きだしねぇ〜」
「・・・あぁ」
小首を傾げる母ことアイリスに、ネーヴェは妙に納得していた。
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