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no.309
泉は静かに話を聞いていた。
お母さんがお兄ちゃんと抱き合っているのも静かに見ていた。
泉はそこにいないもののつもりで、じっと座っていた。拳を堅く握りしめ、血が滲むほど唇を噛み締めて。
「…泉…」
泉が静かにいることをお兄ちゃんが気が付かないはずがないんだ。いつだってお兄ちゃんは泉を見ていてくれて、泉の手を取ってくれた。
お兄ちゃんの手が泉の頬に触れた。
「泣かないで」
泉は泣いていないのに、お兄ちゃんは困った顔をしていた。口を開いて「泣いてないよ」と言おうとすると、声が出なかった。
ぽた、とズボンに雫が落ちた。
今何かを言ってしまえば、泉は我が儘を言いそうでどうにかしてしまいそうだった。
「怒ってるよね」
怒ってる。当たり前じゃない。
お兄ちゃんは私の知ってるお兄ちゃんじゃなかった。
「でも、しょうがないんだ。もう誰にも傷ついてほしくない。それは君もだよ。君やお母さんのことも守りたいんだ」
そんなこと分かってる。
だってお兄ちゃんはヒーローだもん。
「分かってたって悲しいよ。泉、お兄ちゃんのことよくわかってるもん…」
ぽたぽた涙が次から次へと流れる。
「でも、理解と感情は別だもん!お兄ちゃんのばか!ばか!大馬鹿野郎!なんでそうなんだよ!なんで…っ、なんで…」
誰も、の中に自分が入ってないんだよ!!
それだけはお母さんの前で言いたくなくてぐっと飲み込んだ。だけど、お兄ちゃんには私が言いたかったことが分かったらしい。困ったように笑った。
「行かないでよ…!泉を置いていかないでよ…一緒にいてよ…泉をひとりぼっちにしないでよ」
泣いて喚いてまるで5歳の子供のように駄々をこねた。わがままを言ってもお兄ちゃんに何一つ届きやしないなんて分かってるんだ。
「泉…」
「泉は15歳で、これからヒーローを目指す子どもなの!何にも知らないの!ワンフォーオールも、死柄木も、オールフォーワンも…!泉には何一つ理解できない!大人の揉め事に16歳のお兄ちゃんを巻き込まないで!」
「大人の事情なんて分かってたまるか!わがままを言って何が悪いの!お母さんの分も泉がわがままを言うの!泉は子どもだから!!お兄ちゃんだって16歳なんだからまだ子どもでいてよ!泉を置いて勝手に大人にならないでよ!」
「一緒にヒーローになろうって言ったじゃないか!お兄ちゃんを大切に想う私の気持ちを蔑ろにするな!」
一息に捲し立てたので、息切れしてしまった。ぜーぜーと肩で息をする。
「泉、おいで」
お兄ちゃんが優しく笑って手を広げた。お兄ちゃんは私のことなんてお見通しなんだ。
「やだ!!」
認めたくなくて強く拒否の言葉を口にする。
「じゃあ、こうする」
お兄ちゃんは私の腕を掴むと、ぐっと強い力で引っ張った。あっという間に私はお兄ちゃんの腕に抱かれていた。
「ごめんね」
お兄ちゃんが頭を撫でながら言った。私はわんわん泣いた。
「本当は分かってるの。いくら泉が泣いても喚いても、お兄ちゃんはヒーローであろうとするんだって」
「うん、さすが僕の妹だ」
「本当は笑っていってらっしゃいって言いたいのに、言えないんだよぅ…。お兄ちゃんの枷になりたくないのに」
「うん」
「でも、泉はもう絶対に諦めないって決めてるから。お兄ちゃんはちゃんと帰ってくるって信じて待ってるの」
お兄ちゃんは私の頬を両手で包むと、おでこを合わせた。涙でお兄ちゃんの顔が見えなかった。
「お兄ちゃん…大好き」
「僕も好きだよ」
「本当?」
「当たり前じゃないか」
「泉も諦めないから、お兄ちゃんも諦めないでちゃんと帰ってきてね」
「うん」
「あのね、本当はね、今のお兄ちゃん超かっこいいって思ってるよ」
「…ありがとう」
「泉のお守り、お兄ちゃんに貸してあげるね」
「ありがとう…大好きだよ泉。…可愛い僕の妹だよ」
あまりのラブラブっぷりに驚いているオールマイトに母が声をかけた。
「すみません。あれがあの子たちの普通なんです」
「恋人のそれかとおもっちゃった…」
---------
1週間経っても思い出してはぼろぼろに泣く。つらすぎる。
とりあえず一個だけ良かったのはちゃんとお母さんに行ってきますって言っていたこと。これは本当に安心しました。内容はあまりにも安心できませんけどね。
泉は静かに話を聞いていた。
お母さんがお兄ちゃんと抱き合っているのも静かに見ていた。
泉はそこにいないもののつもりで、じっと座っていた。拳を堅く握りしめ、血が滲むほど唇を噛み締めて。
「…泉…」
泉が静かにいることをお兄ちゃんが気が付かないはずがないんだ。いつだってお兄ちゃんは泉を見ていてくれて、泉の手を取ってくれた。
お兄ちゃんの手が泉の頬に触れた。
「泣かないで」
泉は泣いていないのに、お兄ちゃんは困った顔をしていた。口を開いて「泣いてないよ」と言おうとすると、声が出なかった。
ぽた、とズボンに雫が落ちた。
今何かを言ってしまえば、泉は我が儘を言いそうでどうにかしてしまいそうだった。
「怒ってるよね」
怒ってる。当たり前じゃない。
お兄ちゃんは私の知ってるお兄ちゃんじゃなかった。
「でも、しょうがないんだ。もう誰にも傷ついてほしくない。それは君もだよ。君やお母さんのことも守りたいんだ」
そんなこと分かってる。
だってお兄ちゃんはヒーローだもん。
「分かってたって悲しいよ。泉、お兄ちゃんのことよくわかってるもん…」
ぽたぽた涙が次から次へと流れる。
「でも、理解と感情は別だもん!お兄ちゃんのばか!ばか!大馬鹿野郎!なんでそうなんだよ!なんで…っ、なんで…」
誰も、の中に自分が入ってないんだよ!!
それだけはお母さんの前で言いたくなくてぐっと飲み込んだ。だけど、お兄ちゃんには私が言いたかったことが分かったらしい。困ったように笑った。
「行かないでよ…!泉を置いていかないでよ…一緒にいてよ…泉をひとりぼっちにしないでよ」
泣いて喚いてまるで5歳の子供のように駄々をこねた。わがままを言ってもお兄ちゃんに何一つ届きやしないなんて分かってるんだ。
「泉…」
「泉は15歳で、これからヒーローを目指す子どもなの!何にも知らないの!ワンフォーオールも、死柄木も、オールフォーワンも…!泉には何一つ理解できない!大人の揉め事に16歳のお兄ちゃんを巻き込まないで!」
「大人の事情なんて分かってたまるか!わがままを言って何が悪いの!お母さんの分も泉がわがままを言うの!泉は子どもだから!!お兄ちゃんだって16歳なんだからまだ子どもでいてよ!泉を置いて勝手に大人にならないでよ!」
「一緒にヒーローになろうって言ったじゃないか!お兄ちゃんを大切に想う私の気持ちを蔑ろにするな!」
一息に捲し立てたので、息切れしてしまった。ぜーぜーと肩で息をする。
「泉、おいで」
お兄ちゃんが優しく笑って手を広げた。お兄ちゃんは私のことなんてお見通しなんだ。
「やだ!!」
認めたくなくて強く拒否の言葉を口にする。
「じゃあ、こうする」
お兄ちゃんは私の腕を掴むと、ぐっと強い力で引っ張った。あっという間に私はお兄ちゃんの腕に抱かれていた。
「ごめんね」
お兄ちゃんが頭を撫でながら言った。私はわんわん泣いた。
「本当は分かってるの。いくら泉が泣いても喚いても、お兄ちゃんはヒーローであろうとするんだって」
「うん、さすが僕の妹だ」
「本当は笑っていってらっしゃいって言いたいのに、言えないんだよぅ…。お兄ちゃんの枷になりたくないのに」
「うん」
「でも、泉はもう絶対に諦めないって決めてるから。お兄ちゃんはちゃんと帰ってくるって信じて待ってるの」
お兄ちゃんは私の頬を両手で包むと、おでこを合わせた。涙でお兄ちゃんの顔が見えなかった。
「お兄ちゃん…大好き」
「僕も好きだよ」
「本当?」
「当たり前じゃないか」
「泉も諦めないから、お兄ちゃんも諦めないでちゃんと帰ってきてね」
「うん」
「あのね、本当はね、今のお兄ちゃん超かっこいいって思ってるよ」
「…ありがとう」
「泉のお守り、お兄ちゃんに貸してあげるね」
「ありがとう…大好きだよ泉。…可愛い僕の妹だよ」
あまりのラブラブっぷりに驚いているオールマイトに母が声をかけた。
「すみません。あれがあの子たちの普通なんです」
「恋人のそれかとおもっちゃった…」
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1週間経っても思い出してはぼろぼろに泣く。つらすぎる。
とりあえず一個だけ良かったのはちゃんとお母さんに行ってきますって言っていたこと。これは本当に安心しました。内容はあまりにも安心できませんけどね。