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『助けてください』
雄英に避難してきて3日が過ぎた。
お兄ちゃんが去ったヒーローアカデミアに、今は私がいる。なんていう皮肉だろう。お兄ちゃんのばか。
手持ち無沙汰な私は避難所生活で何か役に立ちたいとパタパタ走り回っていた。
お母さんは「子どもが役に立てることなんてないよ」と諌めたけど、そんなことは無いと思う。
こんなときだからこそ、みんなが暗い顔をしているから、少しでも笑顔を届けたい。
お兄ちゃんは「泉が笑顔でいると僕も元気が出るんだ」といつも言ってくれた。だから、お兄ちゃんの好きでいてくれた笑顔で私も誰かに元気になってほしい。
「暗い顔しちゃダメ。ヒーローになるんだから。辛い時こそ笑うんだ」
鏡の中の私に私はにっこりと笑いかけた。
「重そうだね、手伝うよ」
食事が入った重たい段ボールを運んでいると、後ろから声をかけられた。
振り返って驚いた。
「…麗日さん」
名前を呼ぶと、麗日さんは驚いて目を丸くした。
「えっと…ごめんね。私のこと知ってるってことは、誰かの知り合いかな?」
麗日さんは私の顔を見つめる。
「もしかして、デクくんの…?」
デク。そう呼んだことに驚いた。
頑張れって感じのデクって言ってもらったんだよ。お兄ちゃんはヒーローネームを決めたときにそう言っていた。
泣かないと決めたはずの涙がこぼれ落ちた。
「えっ⁉どうしたの⁉泣かないで…!」
あぁ、この人がお兄ちゃんに頑張れって感じのデクって言ってくれた人だ。
「ごめん…なさい…。泣かないって決めたのに…お兄ちゃんが好きって言ってくれた笑顔でいるって決めたのに…」
「泣いていいんだよ、我慢しないで」
麗日さんは段ボールを私から取って地面に置いて、手を握ってくれた。
「ごめんなさい…いきなり泣いてしまって」
麗日さんが手を離してもらって、ハンカチで涙を拭いた。
「大丈夫…じゃないよね」
麗日さんは心配そうに言ってから、足元の段ボールの存在を思い出した。
「あ!えーと、段ボール!急ぎだった⁉」
涙のせいでうまく言葉が出そうになかったので,返事の代わりに首を横に振った。
「良かった!じゃ、お話しよ。時間ある?」
私が頷いて肯定すると、麗日さんは個性で段ボールを軽くして小脇に抱えると、私の手を引っ張った。
私は鼻を啜りつつ時々出てくる涙を拭きつつ、麗日さんに手を引かれるままに歩いた。
着いたのは…。
「ここ、私らの寮だよ。せっかくやし、みんなに紹介させて」
学生寮だった。お兄ちゃんが半年間、クラスメイトたちと寝食を共にしていた場所だ。
麗日さんは楽しそうに笑って言った。いつの間にか涙は止まっていた。
「みんなー。お客さん連れてきたよー」
中に入るとすぐ麗日さんは中に呼びかけた。段ボールを玄関に置いて「解除っ!」と両手をあわせた。
「来て」
再び手を引かれるままに寮に足を踏み入れた。
「お客さんって?」
「じゃーん!誰でしょう!」
私の肩に手を置くと、共有スペースにいた先輩方に見えるように立たせた。
「….誰かに似てる」
瀬呂さんがぽつりと言った。
「勿体ぶってないで教えろよ~」
上鳴さんが口をとんがらせた。
「実は…!」
麗日さんは楽しそうに言うが、私たぶん…。
「あかん!名前聞くの忘れとった!」
麗日さんは頭を抱えて叫んだ。
「あははっ!」
笑い出した先輩たちに釣られて私も一緒に笑ってしまった。
「…はじめまして。緑谷泉です。緑谷出久の妹です。皆さんのことはお兄ちゃんから沢山聞いていて、名前も個性も覚えてます!」
精一杯の笑顔を作る。
先輩たちは少し寂しそうな顔をした。
「緑谷ちゃん、妹がいたのね。知らなかったわ」
蛙吹さんが場を明るくしようといち早く笑いかけてくれた。
「蛙の個性の蛙吹梅雨さんですね!蛙っぽいことは大体できるんですよね!舌が伸びたり、保護色とかピリッとする粘液とか…!冷静な判断力でミスらしいミスがないすごい人だってお兄ちゃんが言ってました!」
「んじゃ俺は?さぞかし優秀な…」
「んな訳あるかい!」
「もぎもぎの個性の峰田実さんですよね!頭のもぎもぎが取れて、くっつくんですよね。USJのときには蛙吹さんと協力して敵をやっつけたんですよね。お兄ちゃんからはあんまり近づいちゃダメだよ!って言われました!」
私も、俺も、と何人かが手をあげるので、私はお兄ちゃんから聞いたことを沢山喋った。
「イヤホンジャックの耳郎響香さん!文化祭の歌すごくかっこよかったです。何回も映像見ましたよ!楽器の練習も上鳴さん、常闇さんのためにノートまで書いてて…お兄ちゃんがすごいよねって言ってました」
「うちらの個人情報筒抜けかよ…」
「お兄ちゃん、いつも楽しそうに皆さんの話をしてくれました。雄英に来て、仲間と一緒に切磋琢磨して…いつも話を聞いて羨ましかったです。私も早く雄英に行きたくてたまりませんでした」
「泉ちゃん…」
「私もヒーローになりたいんです。いつかお兄ちゃんと肩を並べてかっこいいヒーローになるんだって思ってたのに…お兄ちゃん、どこかへ行っちゃいました。1人で全部を抱えて…」
涙がぽろぽろ溢れてきた。
「私の個性は強いです。今すぐにでもお兄ちゃんの元へ行きたいです」
「それは…」
「無理ですよね、わかってます。そのへんはちゃんと弁えてますから。強い個性があっても、ヒーローの勉強を何もしてないただの子どもで、お兄ちゃんの力になることは出来ません。…だから!お願いします。お兄ちゃんを…緑谷出久を…助けてください…!」
頭を下げてお願いをする。
麗日さんが背中をさすってくれた。
「頭を上げて、泉ちゃん」
言われた通り頭を上げると、先輩たちは決意に満ちた顔をしていた。
「任せとけ」
切島さんが胸を張って言った。
「今まで一緒に学んできた仲間を見捨てたりしない」
障子さんが言った。
「あの馬鹿野郎、一発殴ってやんねーとな」
峰田さんがため息をつきながら言った。
「そうですわね、1人で全て抱え込んでしまうんですもの。酷いですわ」
八百万さんが言った。
「間違った道へ進もうとした俺を正してくれた友を、今度は俺が正す」
飯田さんが言った。
「みんな、デクくんを連れ戻す気でいるよ」
麗日さんが泣きそうに笑いながら言った。
「ありがとう…、ございます…!」
---
「それにもう爆豪くんと轟くんが向かってるよ」
っていう展開でも良いし、仮免取った泉が駆けつける展開もいいと思う。
↓後者の展開
「くっ…」
「よけろ!!デク!」
聞き覚えのある声に呼ばれて、咄嗟にデクは身を捩った。そのときデクの横を黄色い炎が一直線に伸びていった。
「ショートくん⁉」
緑谷が振り返ると、ショートと知らないヒーローの姿。ゴーグルをつけ、口から煙が漏れ出ていた。その口元がにっこりと笑みを浮かべた。
見覚えがある…いや見覚えがあるどころじゃなくて、何度も見ていた。いつも隣で。
彼女は両手でゴーグルを少しあげた。
「なんで…君が…」
「はじめまして!ファイアリーだよ!」
口元は笑っていたが、顔は今にも泣きだしてしまいそうに歪んでいた。
「はは…」
緑谷は思わず乾いた笑いが出た。なんだよ、笑えてないじゃないか。
「…はじめましてってなんだよ」
そう言いながら泣きそうになった。
「感動の再会は後でもっかいやるからね!!」
ファイアリーはゴーグルをはめ直すと、試し撃ちするかのように口から炎を噴いた。
「うん。行こう、ファイアリー」
デクは涙を拭いて振り返った。
----------
話を書くことによってなんとか自我を保って、日常生活を過ごしています。
こうだったら良いのになっていう妄想。
1人で抱え込んでしまったであろうお兄ちゃんを、自分は何も出来ないから助けて欲しいと心からの叫び。
お兄ちゃんが心配で心配でしょうがない。
原作の世界線で行くと、うちの子が轟くんを好きなことを忘れてしまいそうだ。
それだけ彼女の世界の中心はお兄ちゃんなのです。お兄ちゃんが彼女の世界の全てなんです。
2021.03.24
雄英に避難してきて3日が過ぎた。
お兄ちゃんが去ったヒーローアカデミアに、今は私がいる。なんていう皮肉だろう。お兄ちゃんのばか。
手持ち無沙汰な私は避難所生活で何か役に立ちたいとパタパタ走り回っていた。
お母さんは「子どもが役に立てることなんてないよ」と諌めたけど、そんなことは無いと思う。
こんなときだからこそ、みんなが暗い顔をしているから、少しでも笑顔を届けたい。
お兄ちゃんは「泉が笑顔でいると僕も元気が出るんだ」といつも言ってくれた。だから、お兄ちゃんの好きでいてくれた笑顔で私も誰かに元気になってほしい。
「暗い顔しちゃダメ。ヒーローになるんだから。辛い時こそ笑うんだ」
鏡の中の私に私はにっこりと笑いかけた。
「重そうだね、手伝うよ」
食事が入った重たい段ボールを運んでいると、後ろから声をかけられた。
振り返って驚いた。
「…麗日さん」
名前を呼ぶと、麗日さんは驚いて目を丸くした。
「えっと…ごめんね。私のこと知ってるってことは、誰かの知り合いかな?」
麗日さんは私の顔を見つめる。
「もしかして、デクくんの…?」
デク。そう呼んだことに驚いた。
頑張れって感じのデクって言ってもらったんだよ。お兄ちゃんはヒーローネームを決めたときにそう言っていた。
泣かないと決めたはずの涙がこぼれ落ちた。
「えっ⁉どうしたの⁉泣かないで…!」
あぁ、この人がお兄ちゃんに頑張れって感じのデクって言ってくれた人だ。
「ごめん…なさい…。泣かないって決めたのに…お兄ちゃんが好きって言ってくれた笑顔でいるって決めたのに…」
「泣いていいんだよ、我慢しないで」
麗日さんは段ボールを私から取って地面に置いて、手を握ってくれた。
「ごめんなさい…いきなり泣いてしまって」
麗日さんが手を離してもらって、ハンカチで涙を拭いた。
「大丈夫…じゃないよね」
麗日さんは心配そうに言ってから、足元の段ボールの存在を思い出した。
「あ!えーと、段ボール!急ぎだった⁉」
涙のせいでうまく言葉が出そうになかったので,返事の代わりに首を横に振った。
「良かった!じゃ、お話しよ。時間ある?」
私が頷いて肯定すると、麗日さんは個性で段ボールを軽くして小脇に抱えると、私の手を引っ張った。
私は鼻を啜りつつ時々出てくる涙を拭きつつ、麗日さんに手を引かれるままに歩いた。
着いたのは…。
「ここ、私らの寮だよ。せっかくやし、みんなに紹介させて」
学生寮だった。お兄ちゃんが半年間、クラスメイトたちと寝食を共にしていた場所だ。
麗日さんは楽しそうに笑って言った。いつの間にか涙は止まっていた。
「みんなー。お客さん連れてきたよー」
中に入るとすぐ麗日さんは中に呼びかけた。段ボールを玄関に置いて「解除っ!」と両手をあわせた。
「来て」
再び手を引かれるままに寮に足を踏み入れた。
「お客さんって?」
「じゃーん!誰でしょう!」
私の肩に手を置くと、共有スペースにいた先輩方に見えるように立たせた。
「….誰かに似てる」
瀬呂さんがぽつりと言った。
「勿体ぶってないで教えろよ~」
上鳴さんが口をとんがらせた。
「実は…!」
麗日さんは楽しそうに言うが、私たぶん…。
「あかん!名前聞くの忘れとった!」
麗日さんは頭を抱えて叫んだ。
「あははっ!」
笑い出した先輩たちに釣られて私も一緒に笑ってしまった。
「…はじめまして。緑谷泉です。緑谷出久の妹です。皆さんのことはお兄ちゃんから沢山聞いていて、名前も個性も覚えてます!」
精一杯の笑顔を作る。
先輩たちは少し寂しそうな顔をした。
「緑谷ちゃん、妹がいたのね。知らなかったわ」
蛙吹さんが場を明るくしようといち早く笑いかけてくれた。
「蛙の個性の蛙吹梅雨さんですね!蛙っぽいことは大体できるんですよね!舌が伸びたり、保護色とかピリッとする粘液とか…!冷静な判断力でミスらしいミスがないすごい人だってお兄ちゃんが言ってました!」
「んじゃ俺は?さぞかし優秀な…」
「んな訳あるかい!」
「もぎもぎの個性の峰田実さんですよね!頭のもぎもぎが取れて、くっつくんですよね。USJのときには蛙吹さんと協力して敵をやっつけたんですよね。お兄ちゃんからはあんまり近づいちゃダメだよ!って言われました!」
私も、俺も、と何人かが手をあげるので、私はお兄ちゃんから聞いたことを沢山喋った。
「イヤホンジャックの耳郎響香さん!文化祭の歌すごくかっこよかったです。何回も映像見ましたよ!楽器の練習も上鳴さん、常闇さんのためにノートまで書いてて…お兄ちゃんがすごいよねって言ってました」
「うちらの個人情報筒抜けかよ…」
「お兄ちゃん、いつも楽しそうに皆さんの話をしてくれました。雄英に来て、仲間と一緒に切磋琢磨して…いつも話を聞いて羨ましかったです。私も早く雄英に行きたくてたまりませんでした」
「泉ちゃん…」
「私もヒーローになりたいんです。いつかお兄ちゃんと肩を並べてかっこいいヒーローになるんだって思ってたのに…お兄ちゃん、どこかへ行っちゃいました。1人で全部を抱えて…」
涙がぽろぽろ溢れてきた。
「私の個性は強いです。今すぐにでもお兄ちゃんの元へ行きたいです」
「それは…」
「無理ですよね、わかってます。そのへんはちゃんと弁えてますから。強い個性があっても、ヒーローの勉強を何もしてないただの子どもで、お兄ちゃんの力になることは出来ません。…だから!お願いします。お兄ちゃんを…緑谷出久を…助けてください…!」
頭を下げてお願いをする。
麗日さんが背中をさすってくれた。
「頭を上げて、泉ちゃん」
言われた通り頭を上げると、先輩たちは決意に満ちた顔をしていた。
「任せとけ」
切島さんが胸を張って言った。
「今まで一緒に学んできた仲間を見捨てたりしない」
障子さんが言った。
「あの馬鹿野郎、一発殴ってやんねーとな」
峰田さんがため息をつきながら言った。
「そうですわね、1人で全て抱え込んでしまうんですもの。酷いですわ」
八百万さんが言った。
「間違った道へ進もうとした俺を正してくれた友を、今度は俺が正す」
飯田さんが言った。
「みんな、デクくんを連れ戻す気でいるよ」
麗日さんが泣きそうに笑いながら言った。
「ありがとう…、ございます…!」
---
「それにもう爆豪くんと轟くんが向かってるよ」
っていう展開でも良いし、仮免取った泉が駆けつける展開もいいと思う。
↓後者の展開
「くっ…」
「よけろ!!デク!」
聞き覚えのある声に呼ばれて、咄嗟にデクは身を捩った。そのときデクの横を黄色い炎が一直線に伸びていった。
「ショートくん⁉」
緑谷が振り返ると、ショートと知らないヒーローの姿。ゴーグルをつけ、口から煙が漏れ出ていた。その口元がにっこりと笑みを浮かべた。
見覚えがある…いや見覚えがあるどころじゃなくて、何度も見ていた。いつも隣で。
彼女は両手でゴーグルを少しあげた。
「なんで…君が…」
「はじめまして!ファイアリーだよ!」
口元は笑っていたが、顔は今にも泣きだしてしまいそうに歪んでいた。
「はは…」
緑谷は思わず乾いた笑いが出た。なんだよ、笑えてないじゃないか。
「…はじめましてってなんだよ」
そう言いながら泣きそうになった。
「感動の再会は後でもっかいやるからね!!」
ファイアリーはゴーグルをはめ直すと、試し撃ちするかのように口から炎を噴いた。
「うん。行こう、ファイアリー」
デクは涙を拭いて振り返った。
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話を書くことによってなんとか自我を保って、日常生活を過ごしています。
こうだったら良いのになっていう妄想。
1人で抱え込んでしまったであろうお兄ちゃんを、自分は何も出来ないから助けて欲しいと心からの叫び。
お兄ちゃんが心配で心配でしょうがない。
原作の世界線で行くと、うちの子が轟くんを好きなことを忘れてしまいそうだ。
それだけ彼女の世界の中心はお兄ちゃんなのです。お兄ちゃんが彼女の世界の全てなんです。
2021.03.24