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※途中まで書き直したもの
弓を引く姿、的を見つめる表情、矢を放った時の綺麗な音。矢を放った瞬間、私はその人の全てに心を奪われてしまった。
それは、限りなく一目惚れに近いものだった。胸の高鳴りが周囲に聞こえてしまうんじゃないかと思ったくらいだった。
「弓道部の友達が試合に出るって言うんだけど、一緒に観に行かない?受験勉強の息抜きも兼ねてさ」
部活を引退して受験勉強に本腰を入れ始めた頃、お兄ちゃんにデートに誘われた。デートだと思っているのは私だけかもしれないけど。
「行く!」
即答する以外なかった。
お兄ちゃんは私の志望校、文武両道の超名門校・雄英高校の1年生。本当のことをいうと高校はわりとどこでも良くて、お兄ちゃんと同じところに行ければそれでいい。
まあ努力しなきゃ名門校に合格することすら叶わないけど。お兄ちゃんは勉強がとても出来る。偏差値の高い雄英に一般入試で合格してるんだから、当たり前なんだけどね。よく私に勉強を教えてくれる。とっても優しい。
雄英はお兄ちゃんの憧れ・元プロ野球八木選手の出身校。八木選手はオールマイティに何でもこなせることから、「オールマイト」と親しみを込めて呼ばれていた。オールマイトは現在、雄英で野球部の監督をしている。
お兄ちゃんは憧れのオールマイトの指導の元、高校から始めた野球をものにすべく日々練習に励んでいる。
最近は筋力もついてきて、抱きしめると硬い。がっちりしてて、かっこいいんだ。抱きしめるたびにきゅんきゅんする。
そんな大好きなお兄ちゃんの通う雄英に、私はスポーツ推薦で入りたかったんだけど……。頑張っていたんだけど、残念ながら推薦は貰えなかった。悔しい…!
しかし!こんなことで凹んでいる場合ではない!今度は何としてでも一般入試で合格しなければならない!お兄ちゃんと一緒に通えなくなってしまう!
「誘っておいて言うのもおかしいけど、引退したのにみるとやりたくならない?大丈夫?」
試合会場に向かう道すがら、お兄ちゃんは心配そうに聞いてきた。
私が弓を引きたくなって、受験勉強に身が入らなくなってしまわないか心配してくれているのね…!なんて優しいお兄ちゃんなの…!
「大丈夫だよ?今だって自主練は毎日してるわけだし…。確かに時々本物が恋しくなることもあるよ。でも、お兄ちゃんと同じ高校に行けない方が困るもん」
そう言うと、お兄ちゃんは照れて頭をかいた。私はお兄ちゃんの右腕に自分の腕を絡ませてくっついた。
「今日は大好きなお兄ちゃんと久しぶりのデートだから、正直泉は弓道のことを忘れてたくらいなのです」
あははっと笑うと、お兄ちゃんはぽかんと口を開けた。それから呆れたように笑った。
「…全く泉は…」
「ねぇ、それでお兄ちゃんの友だちはなんていう名前?どんな人?弓道は?上手なの?やっぱり1年から試合に出るから上手な人なんだよね?」
中学では「友だちなんていないよ」と言っていたお兄ちゃんが「友だちの試合を見に行く」なんて言うから、私はとても嬉しい気持ちでいた。質問責めにするとお兄ちゃんは笑った。
「ちょっとちょっと…。一気には答えられないよ」
「嘘ばっかり!お兄ちゃんは私の質問に全部答えられるよ」
「えー?」
「ねえねえ、早く教えてっ!」
「えーと…轟くんっていうんだけど、静かで優しい人だよ。弓道は上手なんだと思う。幼い頃からずっとやってるって言ってたし、スポーツ推薦で雄英に来たんだよ。スポーツ推薦だけど僕より成績が上なんだ!すごいよね」
「ほらね!私の言ったこと全部答えられてる。さすがお兄ちゃん」
くすくす笑うと、お兄ちゃんはまた照れて頰をかいた。
「すごい人なんだね。…お兄ちゃんに友だちかあ…。友だちいないって言ってたお兄ちゃんが、友だちって言うだけで泉は嬉しい」
「言い方がお母さんみたいなんだけど…」
「失礼しちゃう!泉はお兄ちゃんの妹ですぅー!友だちいないって言って泉を困らせたのはお兄ちゃんですー!」
頰を膨らませて文句を言う。ハムスターみたい、とお兄ちゃんは笑った。
「嬉しさ半分、寂しさ半分。時々でも良いから泉のことも構ってね…?」
怒られないかな…と思いながら言うと、お兄ちゃんは眉を寄せて怪訝そうな顔をしていた。
「お兄ちゃん…?」
「ごめんごめん。言われなくても可愛い妹を蔑ろにしないよ」
「ん〜もう!お兄ちゃん大好き!」
「うん、知ってるよ」
弓道の試合会場は、風の音や人の動く小さな音が聞こえるくらい静かだ。
裏では仲間同士で喋っていても、一歩道場に入れば、口をつぐみ、みんなが弓と矢に集中する。観客にも喋る人はいない。私はこの静けさが好きだった。
「2番手が…と、友達の轟くんだよ」
お兄ちゃんはちょっと照れながら、教えてくれた。見つけてすぐに、あっと思い出した。
「お兄ちゃん、私あの人知ってる」
隣に座るお兄ちゃんにそっと話しかけたが、聞き取れなかったらしく首を傾げた。
試合が始まるアナウンスが放送されたので、私は何でもないと首を振り、試合を見るように会場を指し示した。
.
弓を引く姿、的を見つめる表情、矢を放った時の綺麗な音。矢を放った瞬間、私はその人の全てに心を奪われてしまった。
それは、限りなく一目惚れに近いものだった。胸の高鳴りが周囲に聞こえてしまうんじゃないかと思ったくらいだった。
「弓道部の友達が試合に出るって言うんだけど、一緒に観に行かない?受験勉強の息抜きも兼ねてさ」
部活を引退して受験勉強に本腰を入れ始めた頃、お兄ちゃんにデートに誘われた。デートだと思っているのは私だけかもしれないけど。
「行く!」
即答する以外なかった。
お兄ちゃんは私の志望校、文武両道の超名門校・雄英高校の1年生。本当のことをいうと高校はわりとどこでも良くて、お兄ちゃんと同じところに行ければそれでいい。
まあ努力しなきゃ名門校に合格することすら叶わないけど。お兄ちゃんは勉強がとても出来る。偏差値の高い雄英に一般入試で合格してるんだから、当たり前なんだけどね。よく私に勉強を教えてくれる。とっても優しい。
雄英はお兄ちゃんの憧れ・元プロ野球八木選手の出身校。八木選手はオールマイティに何でもこなせることから、「オールマイト」と親しみを込めて呼ばれていた。オールマイトは現在、雄英で野球部の監督をしている。
お兄ちゃんは憧れのオールマイトの指導の元、高校から始めた野球をものにすべく日々練習に励んでいる。
最近は筋力もついてきて、抱きしめると硬い。がっちりしてて、かっこいいんだ。抱きしめるたびにきゅんきゅんする。
そんな大好きなお兄ちゃんの通う雄英に、私はスポーツ推薦で入りたかったんだけど……。頑張っていたんだけど、残念ながら推薦は貰えなかった。悔しい…!
しかし!こんなことで凹んでいる場合ではない!今度は何としてでも一般入試で合格しなければならない!お兄ちゃんと一緒に通えなくなってしまう!
「誘っておいて言うのもおかしいけど、引退したのにみるとやりたくならない?大丈夫?」
試合会場に向かう道すがら、お兄ちゃんは心配そうに聞いてきた。
私が弓を引きたくなって、受験勉強に身が入らなくなってしまわないか心配してくれているのね…!なんて優しいお兄ちゃんなの…!
「大丈夫だよ?今だって自主練は毎日してるわけだし…。確かに時々本物が恋しくなることもあるよ。でも、お兄ちゃんと同じ高校に行けない方が困るもん」
そう言うと、お兄ちゃんは照れて頭をかいた。私はお兄ちゃんの右腕に自分の腕を絡ませてくっついた。
「今日は大好きなお兄ちゃんと久しぶりのデートだから、正直泉は弓道のことを忘れてたくらいなのです」
あははっと笑うと、お兄ちゃんはぽかんと口を開けた。それから呆れたように笑った。
「…全く泉は…」
「ねぇ、それでお兄ちゃんの友だちはなんていう名前?どんな人?弓道は?上手なの?やっぱり1年から試合に出るから上手な人なんだよね?」
中学では「友だちなんていないよ」と言っていたお兄ちゃんが「友だちの試合を見に行く」なんて言うから、私はとても嬉しい気持ちでいた。質問責めにするとお兄ちゃんは笑った。
「ちょっとちょっと…。一気には答えられないよ」
「嘘ばっかり!お兄ちゃんは私の質問に全部答えられるよ」
「えー?」
「ねえねえ、早く教えてっ!」
「えーと…轟くんっていうんだけど、静かで優しい人だよ。弓道は上手なんだと思う。幼い頃からずっとやってるって言ってたし、スポーツ推薦で雄英に来たんだよ。スポーツ推薦だけど僕より成績が上なんだ!すごいよね」
「ほらね!私の言ったこと全部答えられてる。さすがお兄ちゃん」
くすくす笑うと、お兄ちゃんはまた照れて頰をかいた。
「すごい人なんだね。…お兄ちゃんに友だちかあ…。友だちいないって言ってたお兄ちゃんが、友だちって言うだけで泉は嬉しい」
「言い方がお母さんみたいなんだけど…」
「失礼しちゃう!泉はお兄ちゃんの妹ですぅー!友だちいないって言って泉を困らせたのはお兄ちゃんですー!」
頰を膨らませて文句を言う。ハムスターみたい、とお兄ちゃんは笑った。
「嬉しさ半分、寂しさ半分。時々でも良いから泉のことも構ってね…?」
怒られないかな…と思いながら言うと、お兄ちゃんは眉を寄せて怪訝そうな顔をしていた。
「お兄ちゃん…?」
「ごめんごめん。言われなくても可愛い妹を蔑ろにしないよ」
「ん〜もう!お兄ちゃん大好き!」
「うん、知ってるよ」
弓道の試合会場は、風の音や人の動く小さな音が聞こえるくらい静かだ。
裏では仲間同士で喋っていても、一歩道場に入れば、口をつぐみ、みんなが弓と矢に集中する。観客にも喋る人はいない。私はこの静けさが好きだった。
「2番手が…と、友達の轟くんだよ」
お兄ちゃんはちょっと照れながら、教えてくれた。見つけてすぐに、あっと思い出した。
「お兄ちゃん、私あの人知ってる」
隣に座るお兄ちゃんにそっと話しかけたが、聞き取れなかったらしく首を傾げた。
試合が始まるアナウンスが放送されたので、私は何でもないと首を振り、試合を見るように会場を指し示した。
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