恋人編
名前変更
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その日、私はとっても疲れていた。
ヴィランは出るし、酔っ払いの喧嘩の仲裁したり、報告書書いたり、ヒーローしてるなって思うけど、とにかく忙しい!激務!!
明日は休みだ、久しぶりに心ゆくまで寝たい…。そう思いながら家に帰ると、どっと疲れが押し寄せてきて急な眠気に襲われた。靴を脱いで……ベッドまで頑張っ……
………
翌朝、温もりで目が覚めた。ぱっと目を開けると広い胸板があったので、私は何の疑いもなく、その胸に頬擦りをした。
「ふふ、お兄ちゃんだ~」
「ん…」
寝言を聞いて我に返った。お兄ちゃんじゃない!!?ゆっくり寝ていたせいかボーっとする頭を急いで起こして考えた。
違う、ここは実家じゃない。私は最近大好きな人と一緒に暮らし始めたんだ。
……ってことは……。恐る恐る顔を見上げると、轟さんが気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「…………!?」
言葉にならない叫びを上げる。頭がパニックを起こしてる。起きあがろうとして、がっちり抱きしめられてることに気がついた。すり抜けることすら出来ない。身を捩ると更にキツく抱きしめられた。
さあ困った。幸い手は顔の前と言うか、あろうことか轟さんの胸にぴったりとくっついていたので、なんとか動かせた。腕を少し上げて、綺麗な寝顔を軽く叩いた。
「轟さん!起きてください。私、起き上がれません」
轟さんは顔をしかめるだけで目は開けない。
「もうっ!轟さんてば…」
「……え」
呻くような声が聞こえた。
「なんですか?!」
思わずキツめに聞き返す。
「…なまえ」
「名前?」
「いい加減…名前呼べよ」
お付き合いを始めて、一緒に暮らすようになって、それなりに長い時間を一緒に過ごしているけど、私は一度も名前を呼べていない。こうなったら…一か八か…。
「…ショートさん」
「ヒーロネームだろそれ…」
ヒーロネームで呼んでみるが、すぐにバレてしまった。やっぱりダメか…!
「なんで分かるんですか!」
「そっちはよく呼ばれるから……で?」
轟さんは相変わらず目を瞑ったままだ。
顔が火照る。熱い。気を抜いたら思わず口から火が出そうだった。
「呼ばなきゃダメですか?」
「………」
轟さんは何も言わずに薄目を開けて私を見た。うぅ…これは無言の圧力だ…。
意を決して口を開いた。
「…しょ…」
最初の文字だけなんとか口に出すと、轟さんは楽しんでいるように笑った。
「言えないなら仕方ない。ずっとこうされてろ」
轟さんは私を抱く腕に力を込めた。うわーん無理無理!一日中抱きしめられたら心臓が破裂してしまう!
「…焦凍さん!離してください!」
勢いに任せたら言えた…!
キツく抱きしめていた轟さんの腕がふっと緩んだ。
「ん」
見上げると轟さんは満足そうに笑っていた。そのなんと綺麗なご尊顔よ…。
「うぅ…」
思わず呻き声をあげ、手で顔を覆った。
「どうした?」
「轟さんの顔が良すぎて攻撃を食らいました」
「名前また戻ってる」
「一回ちゃんと呼べたからいいじゃないですかぁ…」
「名前で呼ばれる方が好きだ」
きゅーんと胸が締め付けられる。
「もう!そんなこと言われたら名前呼ばなきゃじゃないですか!」
「…お前も轟になったら、嫌でも呼べるな?」
プロポーズに近い言葉に私は驚く。
「どっ…!?どんな意味で…⁉」
轟さんは笑うばかりだ。出会った頃では考えられないくらい笑うとど…焦凍さんを愛おしく思った。
「焦凍さん」
「ん?」
「好きです」
「そうか、俺もだ。…名前、もう一回呼んでほしい」
「…焦凍さん」
名前を呼ぶと、焦凍さんは満足気に笑った。私はまたその笑顔に攻撃を食らうこととなった。
「ところで、私は自分でベッドまで来たのでしょうか」
「いや、帰ってきたらお前が玄関で行き倒れてたから、ベッドまで運んだ」
「そうだったんですね、ありがとうございます。おかげで風邪引かないですみそうです…!」
2020.12.24