家族編
名前変更
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髪をポニーテールにしばり、薄く化粧をして身なりをきっちり整えた泉は、夫の部屋にまだ1歳の息子ほむらを抱いて入った。寝ている轟のすぐ隣の布団に息子を寝かせて、肌がけを乗せた。それから轟の側に座って肩を叩いた。
「おはようございます、焦凍さん」
「……はよ……」
ややあってから、轟は目を開けずに返事をした。
「昨日も遅かったのに起こしてしまってすみません」
昨夜遅番だった轟が帰宅したのは22時だった。妻の部屋を開けると、翌日早番である泉は息子と共にもう夢の中にいた。食卓には夕飯と泉の『お疲れ様です』と書かれたメモが置いてあった。轟が夕飯を少し食べてお風呂に入って布団に潜り込んだのは0時を過ぎていた。
早朝の5時に声をかけて起こしてしまうのを、泉はとても申し訳なく思った。
「いや、かまわねぇ…けど…」
ねむい、と言おうとしたのだろうか。口だけ動いて言葉は聞こえなかった。
「早出なのでもう行きますね。ほおくんをよろしくお願いします」
何をよろしく頼まれたのだろう、と轟はまだ寝ている頭で考えた。今日も仕事があるのに、と思ったところで、妻が早くに家を出るなら、息子を保育園に預けなければ自分が仕事に行けないことに思い至った。
「…あぁ、そうだったな…」
腕を顔に当てて、2時間後には起きる必要があるなと考えた。
キリッとしていた泉は突然、恥ずかしそうにもじもじしだした。動く気配のない泉に、轟は腕を退けて不思議そうに尋ねた。
「どうした?」
「いってきます、のキスを…しても良いでしょうか…」
だんだん声が小さくなって最後は聞き取るのが難しいくらいだった。
一緒にいてかなり経つし、子どもだっているのだ。することはしているのに、こういうことに泉はいつまで経っても慣れてくれない。しかし、轟は不満に思ったことはなかった。自分を好きでたまらないのだと表現しているようで、愛おしさすら感じるのだ。
妻の様子に寝ぼけていながらも、轟は可笑しそうに笑った。
「わらっ……!?」
轟の笑いに驚いたのか、笑われた恥ずかしさか、泉は顔を赤くして口を開閉させた。これもそうだ。ちょっとのことで顔を赤くする。表情をころころ変える泉は見ていて面白い。轟は少しからかってやろうと思った。
「ダメだって言ったら?」
ゆっくり瞬きをして、再び目を開くと泉はショックを受けて今にも泣きそうな顔をしていた。
「冗談だ」
轟は身体を起こして、右手を泉の頬に添えるとそっと口付けをした。
「気をつけてな」
「はい」
照れて少し顔を赤くした泉は頷いた。顔を赤くしながらも轟の目をしっかりと見ていた。
「…好きです」
「そうか」
好きだと思った時に言う。それは妻がまだ学生の頃、初めて会った頃からいつもしていることだ。
満足したように微笑むと、すぐ仕事用のヒーローらしい顔付きになった。
「では、行ってきます」
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子育てはもちろん2人でしてます。時にはお母さん達、冬美さんにも助けてもらいながら。
『第一子妊娠の話』で書きましたが、夫婦の寝室は別々。子どもが生まれてからも2人は勤務の都合上(お互いにゆっくり寝てほしいので)、別々の部屋で寝てます。息子は基本的には母親と寝ていますが、父親のみや親子3人もありますよ。
子育て編もちょっと書いてみたいな…。
2021.06.07