夫婦編
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早朝ランニングを終えて、息を潜めて自宅に入りながら、変なのと呟いてしまった。大好きな旦那さんに心ゆくまで寝ていて欲しいという心遣いからなんだけど、自分の家なのにちいちゃな声でただいまなんてと思ってくすくす笑ってしまった。
シャワーを浴びる前に忍足でリビングまで行く。夫はまだ起きていないらしく、しんとしていた。
リビングから繋がる自分の部屋に着替えを取りに行き、ついでに隣の夫の部屋の引き戸をそっと開けて中を覗いた。私が寝ていた場所に腕を投げ出して、静かに眠っていた。
焦凍さんはいつも同じだけ眠る人だ。私は大体同じ時間に起きてしまう。だから休みの日は昼寝をして睡眠時間を調整することにしている。
シャワーを浴びてリビングに戻ってきても、焦凍さんはまだ起きていなかった。
そうだ、一緒に少し眠ろう。そう考えてから、ばさばさと適当にタオルで髪の毛の水気を拭き取った。濡れたタオルを洗濯機に放り込んで、洗濯機を回した。ドライヤーはうるさいからやめておくことにしておく。焦凍さん起こしたら悪いし。
「…ふふ」
夫の部屋にそっと忍び込んで、私が寝ていた場所に投げ出されていた腕の下に丸まって横になった。小さな私がさらに丸くなって焦凍さんの隙間にぴったりとはまる。
綺麗な寝顔。
右耳を焦凍さんの心臓がある位置にぴったりとくとつけた。とくん、とくんと焦凍さんの心臓が動く音が聞こえた。あくびが出た。朝早くに起きてしまうが、日々のヒーロー活動で身体は疲れている。
前はドキドキししてしまって眠れないくらいだったのに、今では焦凍さんの隣はとても安心できる。すぐに瞼が重たくなった。
次に目が覚めたとき、私は焦凍さんに抱き抱えられていた。顔を動かして焦凍さんを見ると、起きていた。
「はよ」
寝起きでいつもより低くなっている声にきゅんとした。
「おはようございます」
「二度寝か?髪が濡れてる」
焦凍さんは私を抱きしめていた右手で、私の濡れた髪に触れた。
「二度寝です。焦凍さんがあんまりにリラックスして寝てるので、一緒に寝たくなっちゃいました」
そうかと返して、不思議そうな顔をする。
「ランニングに行ってシャワー浴びたんです。外は風が気持ち良かったですよ」
「後で行くか」
疑問とも取れる言い方に私はくすりと笑った。一緒に?尋ねなかったが、焦凍さんは私が付いていかないとは思いもしないだろう。
「今何時ですかね」
時計を確認しようと焦凍さんが体を捩った。離れるのが寂しくなって、動きに合わせてぴったりと体を寄せた。焦凍さんの匂いがする。同じ洗剤を使ってるはずなのに、違う匂い。
「何嗅いでるんだ」
「えっ、あっ…」
指摘されて急に恥ずかしくなり、顔がかーっと赤くなった。横を向いていたのに、気がついたら仰向けにされていた。焦凍さんが覆い被さっていた。眼前に焦凍さんの顔があって、キスされるのだと思った。その続きも。
私たちは結婚して6年が経つ。未だに恥ずかしくて慣れない行為に、きゅっと目を瞑った。
唇が重なった瞬間、全身が幸福で満たされるのが分かった。私は私の全部で焦凍さんを欲している。たぶん、焦凍さんも同じだと私は思っている。
「好きです」
キスの合間に肩で息を吸いながら愛を告げると、同じように息を弾ませていた夫は嬉しそうにそうかと言った。愛おしい。私はたまらず両腕を伸ばして、焦凍さんを力いっぱい抱きしめた。
「好きです」
いつもみたいに言う「そうか」も好きだけど、嬉しそうに言われるのはもっと好き。私は焦凍さんの全てが大好きだ。
下着だけ身につけてから、床に投げ捨てられた自分のTシャツと夫のTシャツを並べて見比べてみる。どちらを着よう。
自分のを着ればいいと思うけど、焦凍さんの匂いのするTシャツを着てみたいとも思う。実際に触れているのは緊張してしまうけど、いつまでも焦凍さんに包まれていたいと思う私は天邪鬼みたいだ。意を決して焦凍さんのシャツを手に取り、頭から被った。
「どこ行くんだ」
立ち上がった私の腕を焦凍さんが掴んだ。シャワーです、と振り返って答えた。
焦凍さんは上体を起こしていたので、鍛え上げられた逞しい肉体が目に入った。先ほどまでの行為を思い出して顔が熱くなった。視線を斜め上に泳がせ、見ないように努めた。焦凍さんはすぐに気が付いて、可笑しそうに笑った。
「さっきまで散々見てただろ」
恥ずかしがる必要なんてない、と言いたげな口ぶりだった。
「だって…!」
だってまだ慣れないんです。強く言い返すと、焦凍さんが微かに笑った気がした。気を抜いたら、恥ずかしさと幸福とで溺れてしまいそうになる。
「いい加減慣れろ」
それでもずいぶん良くなりましたよ、と反論する。最初の頃は触れられただけで気絶しかけたほどだ。布団の上で鼻血まで出した。それはあまり思い出したくないけど。
ぐっと力強く引っ張られ、焦凍さんの足の間に座り込んだ。後ろから抱きしめられてしまった。右肩に焦凍さんが顎を乗せた。全神経が肩に集中する。
「焦凍さん…?」
焦凍さんが何も言わないので、ドキドキしていた。
「着心地はどうだ?」
かぁーっと顔に熱が集まって行く。揶揄われているのだと分かっているのに、私はシャツを脱ぎたくなった。
「ぬ、脱ぎます…!」
「泉」
優しい声で呼びかけられ、全身がとろけそうになった。左手の結婚指輪を焦凍さんが触った。
「好きだ」
誰かに聞かれては困るのか、そおっと静かに声をひそめて言うので、私は面白くなって笑ってしまった。
焦凍さんは赤くなると思った私が笑ってるものだから、驚いていた。見なくてもわかる。身を捩って振り向いて、焦凍さんと視線を交わらせた。
「好きですよ」
私はいつものように笑ってみせた。
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2人の休日が被ることは実はあまりないので、休日が被る前日は一緒に寝ると決めています。家事も出来る人がやる、としていますが、掃除だけは「私がやります!」と基本的に夢主の担当になっています。不器用な子で料理は苦手ですが、掃除が大好きなのです。
もうなんか、いまよく読んでいる作家さんから影響を受けまくっているのが、モロバレな書き方になっちゃいました。書きながら恥ずかしくってしょうがない。
2021.06.27