恋人編
名前変更
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次の日、午前10時に光は本当にやってきた。丁度手を離せなかった私に代わり、焦凍さんが出てくれた。
「泉、爆豪の妹だ」
「はーい」
玄関からの呼びかけに、何が起きるのかとどきどきしながら平静を保って向かった。
「えっ⁉」
玄関に立つ光はパリッとしたパンツスーツを着ていた。焦凍さんは「こいつはどうしたんだ?」と言いたげだった。
「どうしたの⁉」
焦凍さんを通り過ぎて光の前まで行った。私が目をぱちくりさせていると、光は平然として驚きの言葉を口にした。
「好きなやつを奪いにきたんだ、みっともない格好はできないよ」
びっくりしすぎて言葉が出てこなかった。光はポケットから指輪を取り出すと、私の左中指にはめた。胸ポケットから折り畳んだ紙を出して広げる。…婚姻届…!?
爆豪 光と書かれた欄は全て記入済みだ。
「あたしと結婚してよ、泉。これ同性でも結婚出来るやつだから」
それから、合図を送るようにウィンクをした。
昨日言っていた光の言葉を思い出した。
「あたしが何か言ったら、泉は笑顔でイエスって言えよ」
はっとして急いで笑顔を作る。いつもなら大得意だけど、今は上手くできなかった。少しひきつってしまった。焦凍さんから顔が見えなくて良かった。
「光…!うれしい、もちろんだよ」
私は光に抱き着いた。
「なっ!?」
後ろで轟さんが驚いた声をあげた。光が耳元で「靴履いて。…振り向くなよ」と呟いた。私はその言葉に従い、靴を履いた。轟さんがどんな表情をしているのかとても気になったけど、ぐっと堪えて後ろを振り返らなかった。
「あたしは泉の言葉を全部大事にする」
光の言い放った言葉は宣戦布告だ。靴を履いた私の左手を引いて家を出た。
「…急にあんなことするからびっくりしちゃった。ちゃんと言って欲しかったな」
マンションの駐車場に降りてきて、光の車に乗り込むと、私は頬を膨らませて怒った。光は笑って頬を突いてきた。
「泉が頬を膨らませても可愛いだけだよ。」
「もう!ふざけないでよ」
「泉の演技力はクソだから、何も言えなかったんだよ」
「酷くない⁉」
「ちゃんと言って欲しいって言うくせに、何も言わずに付いてくるなんて良い度胸してるじゃん」
「だって光だもん!」
その言葉に光は嬉しそうに笑った。代わりに私はため息をついて、光を問いかける。
「…それで、いったい何考えてるの?」
光は私の方を向いて、頭を下げた。
「とりあえず最初に謝る。プロポーズの件、兄ちゃんたちに話した。勝手に言ってごめん」
「話しちゃったの⁉」
「兄ちゃんもいずくんも、泉がプロポーズしても相手にされないのすごく怒ってる。もちろん、あたしもだけど」
「だよね…」
お兄ちゃんたちに話したら間違いなく怒るのは分かってた。
光は私の手をぎゅっと掴んだ。
「本当は舐めプから泉を奪い取って未来永劫会わせたくない。…だけど、それじゃ泉は泣いてしまう。あたしは泉には笑ってて欲しいんだ。それは兄ちゃんもいずくんも同じ意見だよ」
「光…お兄ちゃん…かっちゃん…」
「そう言うわけで兄ちゃんたちと協力して、あたしらの結婚式をあげることにした。あ、真似事な。ただし本気の。式場は昨日兄ちゃんが探してくれた。轟にプロポーズをさせるための計画だ」
「わかった」
「プロポーズさせるって言っても、あいつ次第になっちまうけどな」
「昨日好きですって言ったら、そうかっていつもみたいに答えたの。いつもみたいって言っても、嬉しそうに言うんだけどね。…それでまた言ってみたら、やっぱり逸らされちゃった」
「あいつ…!」
「もうそれを最後って決めてたんだ。でも…でもじゃないか…。光やお兄ちゃんたちが私たちのために計画を立ててくれたのなら、最後にもう一回懸けてみるね」
そう言うと光は運転席から体を伸ばして、私を抱きしめた。
「2人のためじゃない。泉のため。それは間違えないで」
私は頷いた。
「あ!私何も持ってきてないよ?」
「大丈夫、後でいずくんが取りに行ってくることになってる。必要なものがあればいずくんに連絡して」
そう言って光は自分のスマホを寄越して、車のエンジンをかけた。
光のスマホのロックを解除して、ふと疑問に思う。
「どこ行くの?」
「ブライダルエステ。そのあとネイルと美容室と…ウェディングドレスは明日決めることになってて…時間ないんだよ」
「えっ…式はいつなの?」
「3日後」
「3日後⁉ずいぶん急だね?」
「こういうのは勢いが大事だから」
「分かった、よし!張り切って可愛くなるぞー!」
張り切って宣言をした。それから運転している光の左手にも指輪があることに気がついた。
「あ、指輪」
「ん?…あぁ、これね」
光はちらりと中指の指輪に視線を送った。
「光もつけてるんだね」
「婚約指輪だから無くても良かったんだけど、せっかくだからお揃いの方がいいじゃん?」
「素敵だよね。どうしたの?」
改めて指輪をまじまじと見る。羽根の模様に赤い石が1つ。光の瞳の色で、光らしいデザインだ。
「クリエティに頼んだ」
驚いた。光の口から百さんの名前が出てくるとは…。
「百さんに?」
「昨日帰りに指輪探してたんだよ。そしたら偶々会ってさ。あ、これ作ってもらったら早いじゃんって」
「そうなんだ…ちゃんとお礼しなきゃ」
「だな」
「…指輪、中指にしてくれたんだね」
「薬指にはめても良いんだけど、そこは取っておきたいだろ?」
「…うん、ありがと」
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