恋人編
名前変更
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「好きです」
夕食の最中に言うと、焦凍さんはいつもように変わらない表情で「そうか」と答えた。真面目に取り合っていない訳ではないと知っている。学生時代から私たちはずっと同じやりとりをしているからだ。
でも今日はなんだか物足りないように感じた。
「焦凍さんは、私といて幸せですか?」
目の前に座る焦凍さんは私の言葉に驚いてフリーズしてしまった。口に運びかけのご飯が箸からお茶碗の中へ落ちて戻った。
「わっ!?すみません!つい口からぽろっと…。本当にごめんなさい、忘れてください」
慌てて取り繕う。大丈夫です、ごめんなさい、と口走りながらごはんを口に運んだ。早く食べて早く寝てしまおう。早く早く…。
焦凍さんの顔が見れなかった。驚いて固まってしまって…なんて思ってるか、怖くて聞けない。さっきのように「そうか、わかった」って受け流して欲しい。そう願った。
かちゃん、と音がして焦凍さんの手元を見ると箸を置いたようだった。
「わりぃ、そういうの言葉にしねぇから…不安にさせたか?」
ぱっと顔を上げると焦凍さんは寂しそうな顔をしていた。違う、そんな顔をさせたいんじゃないです。
言葉が出てこず、首を横にぶんぶん振ってそうじゃないことを伝えた。
「ちゃんと幸せだからな」
胸が熱くなるのを感じて、なんて答えようかと思っていると焦凍さんは不安げに付け足した。
「…と思う」
せっかくいい感じだったのに台無し!
「またそうやって…!と思うって何ですか」
ムッとして言い返した。
「わりぃ、慣れねぇんだ。こういうのに…むず痒い」
「知ってますけど!分かってますけれども…!たまには断言してください」
「ごめん」
「何年も一緒にいるのでいい加減慣れましたから、今ので十分伝わってます。私は焦凍さんといると幸せなんです。だから、焦凍さんにも幸せだと思って頂きたいのです」
「そう思うなら、敬語をやめてくれ」
痛いところを突かれてしまった。
形勢逆転だ。
「こ、これは無理です…!」
「何年一緒にいると思ってただ」
「えーと何年ですかね…」
「少なくとも出会って10年だ。いい加減やめたっていいだろ」
「名前で呼んでるんだから良いじゃないですか」
「最近になってやっとだろ。…爆豪には普通に喋ってんのに」
「かっちゃんは幼なじみですもん」
「壁があるように感じる」
「む、無理です!こればっかりは…!」
「なんでだ…泉は俺のこと好きじゃないのか…?」
切ない表情をする焦凍さんに心臓がきゅんとした。
「んん゛っ…!」
顔を覆って萌えに耐えつつ、苦しみの声が漏れ出た。
「だいっ、すき、です」
ずるい。好きしか言わないこと知ってて言わせるのずるい!
「だったら」
「でも!これとそれとは話が別なので!…好きですよ、大好きです。敬語の私じゃその気持ちは伝わりませんか…?」
「…そんなことはない。泉の気持ちは伝わってる。…分かった、今はまだ良い」
焦凍さんはひとまず諦めてくれたようだ。諦めてくれたところで一生このままな気がするけれど。
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その通り、夢主はずーっと轟に敬語です。これは私の趣味。敬語で喋る夢主が可愛い。
2021.01.18