L&H 学生編(本編)
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「ねぇ、お兄ちゃん」
「んー?」
ノートに走らせていたペンを止めて、向かいに座っているお兄ちゃんに声をかけた。
「大好き」
言いたいときに言うのが、私のポリシーだ。お兄ちゃんにしてもいつものことだからか、顔も上げずに僕も好きだよ、と返事が返ってきた。
「お兄ちゃん、聞いてる?」
今日はちょっと適当な気がして、ムッとしてしまう。こっちをみて言ってもらいたいのに。
「聞いてなかったら、返事しないってば」
一定のリズムで走るシャーペンは、気持ちのいい音を立てている。
「泉が僕を好きって話しでしょ。分かってるよ」
「お兄ちゃん、泉がそれしか言わないって思ってない?」
「思ってないよ。…疲れたからって僕にちょっかいかけてないで、ちゃんと課題やりな」
「だって疲れちゃったんだもん。泉、お兄ちゃんにくっついて休憩する」
立ち上がって、お兄ちゃんの後ろに回る。お兄ちゃんに対して、横向きに座って寄りかかった。
「重い?」
「あったかくて気持ちいいよ」
お兄ちゃんはずーっとノートから目を離さない。ちょっと寂しい。
「疲れたなら、少し寝る?」
「寝なーい!お兄ちゃんにくっついてれば、元気になるもん」
「そう」
お兄ちゃんのそばにいると、すっごく安心する。目を瞑って耳を澄ませると、お兄ちゃんの心臓の音が聞こえてきた。ドクン、ドクン、と力強く鳴っている。気持ちがほぐれるというか、ここにいれば何の心配ないという安心感がある。
それから、お兄ちゃんがノートにシャーペンを走らせる音、時々かちかちと芯を出す音が聞こえた。考え込んで左手で髪をくしゃっとしたのか、体が倒れた。お兄ちゃんは泉が後ろにいるのを忘れてるのか、しばらくそのままでいた。
少ししてから、体勢を立て直すと、左手を動かす感じがあった。頭の上でお兄ちゃんの手が動いている気配がした。お兄ちゃんの指が私の頭に触れて、お兄ちゃんはそのまま指先だけで頭を軽く撫でた。
「んふふ…。なにー?」
思わず笑いがこぼれてしまう。
「寝ちゃったのかと」
「起きてるもん」
後ろからぎゅーをすると、お兄ちゃんの左手が腕を優しく撫でた。私、あやされてる。
「お兄ちゃん大好き」
「はいはい、よく知ってるよ」
元気でた!と言って、お兄ちゃんの前に座り直した。お兄ちゃんはさっきから変わらない体勢で勉強を続けている。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
お兄ちゃんはまた返事だけして、顔を上げない。
「泉のこと、好き?」
どうせ適当な返事が返ってくるはずだ、と思っていたら、お兄ちゃんが顔を上げた。
「好きだよ、泉が思っているよりもずっとね」
困ったように眉を下げていた。
「思ってるよりずっと?」
「そう。思ってるよりもずっと」
「泉の方がお兄ちゃんのこと好きだと思うよ?」
首を傾げると、お兄ちゃんは笑っていた。
「何でそんなこと聞いたの」
「今日は返事がちょっと適当だったから、本当かなぁって」
「課題やってる最中なんだから…。ほら、泉も集中して課題終わらせちゃいな」
「なんかさー、もう誰もツッコまねぇんだよなぁ…」
上鳴さんの大きめな呟きに、我に返る。ここ、お兄ちゃんの寮の共有スペースだった…!
「もうあれは緑谷兄妹の普通だからねー。慣れちゃった!」
お兄ちゃんも我に返ったようで、顔を見合わせた。
「ね。またやってるなーぐらいになってきた」
続け様に透さんと尾白さんがそう言って笑っていた。
「ごめん、みんな…。泉といると、気が緩みがちで…」
2023.02.27
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