まだまだもやもや
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その頃、昇降口では…。
近くのベンチに芦戸が、入り口を見据えて座っていた。
硬い表情で外に出ていった泉と、泉を探していた彼女の想い人もとい轟が気になって、つい来てしまったのだ。
進展しそうでしていない2人がもどかしく、轟の煮え切らない態度に意地悪をしてやりたくなり、わざと泉の様子を言わなかった。
足音が聞こえて、振り返った。
「やっほ。光」
片手を上げて親しげに話しかけて来た芦戸を見て、すごく嫌そうに舌打ちをした。
「……気安く呼ぶんじゃねえよ」
苛立ちを隠そうともせず、離れたところに腰を下ろした。
「口が悪いってまた泉に怒られるよ〜」
「…………」
無視することを決めたのか、知らんぷりをして腕組みをしている。
距離を詰めることはしないが、光に話しかけ続けた。
「さっき泉を見かけたけど、告白されに行ったんでしょ?」
問われて、じろりと睨むように一瞥した。芦戸はそれを肯定と受け取ることにした。
「そのあと、轟に泉を見てないかって聞かれたんだよね」
「だろうね」
「なんだ、知ってたか。……泉が行った方だけ教えてあげたんだよねぇ」
今頃見つけてるとは思うけど…と芦戸が口を尖らせた。
「そうやって追いかけるくせに、まだ煮え切らない態度取ってんでしょ?泉は好きでいるだけでいいなんていうけど、私はさぁ、なんとかしたい!って思っちゃうんだよね」
「余計なことは」
再び、鋭く睨んだ。威圧感な声だった。
「わかってる!」
慌てて否定をするが、光は睨んだままだ。
「泉が望まないことをしたら、許さない」
「怖いなぁ…!しないってば!ほんっとーに、光は泉が好きだねぇ…」
「当たり前」
泉のことを思い浮かべているのか、楽しそうに口元を持ち上げた。
「光はどうなの。泉と轟のこと。やきもきしたりしないの」
「しない」
「しないって、もー!泉の親友でしょ!?応援してるんじゃないの?」
「してるわけないだろ」
「してないの!?泉から色々話聞くでしょ?!」
「そういう話はあたしにして来ない」
「えー……なにそれー。謎すぎ」
顔を顰めて口を尖らせる芦戸を無視して、光は静かな表情で出入口を見ていた。予鈴が鳴る時間に近づいて来たせいか、バタバタと戻ってくる人が増えた。
「あ!」
芦戸は突然大きな声を出したかと思うと、口元を押さえて、光の方へ滑り寄ってきた。
「きた…!あの人だよ…!」
玄関に入ってきた大柄の人物の方をちらちらと見ている。興奮しながらも小声で話す芦戸とは対照的に光は無表情のまま、ちらりと見ただけだった。
「知ってる」
「あぁ…でもかわいそうに…ふられちゃったんだ…」
「ふられる以外にねぇだろ」
「そーなんだけどさぁ!」
予鈴が鳴ってから、泉が戻ってきた。
「おかえり、泉」
泉の姿を見つけると、立ち上がって笑みを浮かべた。
「ただいま…。…三奈さんもこんにちは」
「やっほ」
「なんで告白された泉がそんなにしょげてんの?」
よしよし、と言いながら泉を抱きしめて頭を撫でてやる。
「予鈴鳴ったし、早く帰ろ」
「うん」
2024.05.22