L&H 学生編(本編)
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「あ、緑谷くん」
「こんにちは、花さん」
「良かったわ。ちょうど会いたいなって思ってたところだったの」
「僕に?」
「そうよ」
「………もしかしなくても…あれだよね?妹の…」
「まあ…!よく分かったわね。轟くんと一緒じゃない時になかなか会えなくて」
「…最近みんな僕に言うんだよ」
「あらそうなの?私までごめんなさいね。…でも、聞きたいでしょう?」
「聞きたいです」
そうよね。気になるものね。私だってずっと泉ちゃんのこと応援してるんだもの。
…11月の半ばぐらいだったかしら。少し寒い日で、でも天気はとても良かったの。陽射しも暖かくて。お昼休みだったかしら…。どこの廊下だったか忘れちゃったんだけど、あまり人気のない廊下で、窓に寄り掛かるようにして泉ちゃんと轟くんがおしゃべりをしていたのよ。とっても仲良さそうでね。前にね…あ、前って言っても去年の春とか夏とかの話だけど、2人でお話ししてるところを見たことあるのね。そのときは泉ちゃんが顔を赤くしながら一生懸命話してて、轟くんは泉ちゃんが可愛いのか柔らかい表情で話していたのね。
一昨日もだいたい同じ感じで…。いつものように泉ちゃんが一方的に…じゃ言い方が悪いわよね…なんて言うのかしら…え、一方的なんて言い方でいいの?…まあ、そうね…いつもそんな感じだけれど…。
それでね、いつものように泉ちゃんがおしゃべりして、轟くんが優しい表情で聞いているんだけど、なんていうか今まで以上に柔らかい…優しい…こう…泉ちゃんを…愛おしいって言うのかしらねぇ…そんな顔で見つめてて…。泉ちゃんがね、時々顔を上げて話すのをやめちゃうの。轟くんに見惚れて、って感じじゃなくて、なんでそんな顔してるんだろうって不思議そうな顔かしらね。それでね、たぶんだけど、轟くんがどうした?って聞いたみたいなのね。そしたら、泉ちゃん、慌ててまた話し出してた。そんな感じのやりとりを何回もしていたわ。
2人ってその…付き合い始めた、っていうわけじゃないわよね…?…だってね、付き合ってる男女の距離感じゃないのよ。…あのね、たぶんね、轟くん…泉ちゃんのこと好きになったんじゃないのかな?それで、泉ちゃんは轟くんの気持ちをなんとなく気がついてるような気がするわ…。だから、時々不思議そうに轟くんの表情を見ていたんだと思うの。
「他の人も同じようなこと言ってたけど…。まさか泉が気づいてるとは…」
「それは、私の勘よ。間違ってるかもしれないわ…。でも、そっかぁ…緑谷くんは2人のことまだ何も知らないのね」
「うん、泉がまだ何も話してくれてなくてね。聞いてない」
「…待つ、のよね?」
「まあ、それはね。いくら仲のいい兄妹でも、好きな人とどうなの?なんて聞けないよ」
「あれ、花木さん」
「あら、心操くん」
「珍しい組み合わせだな……ナンパ?」
「ナ!?ンパ……!?」
「あらあら」
「何言ってるんだよ!違うよ!」
「ナンパって言うなら、私がしたかもしれないわ」
「や、やめてよ…!花さんとは妹の繋がりで…。心操くんこそなんで花さんと…」
「1年とき同じクラスだし」
「そう。普通科の期待の星、心操くんと」
「やめてよ。そんなんじゃないよ」
「ってあれ、さっき花木さんって言った?」
「花木さんだからな」
「泉ちゃんから聞いてなかった?」
「聞いてない」
「では、あらためまして。花木野草です。花って呼ばれるのが好きなの。それなのに、心操くんったら、ちっとも呼んでくれないのよ。酷いわ」
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久々登場のモブ子さん。前回登場時は、花さんという名前で呼んでいましたが、実は苗字だっと言う……。このお話を書いてる最中にふっと浮かんだので命名しました。