妹とモブ子さん
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おはようございます。
只今夏真っ盛りの8月です。私は、雄英高校普通科2年の生徒。作者曰くモブ子だそうです。花という仮の名前は付けて頂きました。
今日はヒーロー科1年の元気な女の子の話をします。
「おはようございまーす!花さーん!」
朝、花壇に咲く植物たちに水をあげていると、私を呼ぶ元気な声がしました。振り返ると可愛らしいあの子が手を振りながらやってきました。
「おはよう、泉ちゃん。今日も元気ね」
「いいお天気ですから、気持ちがいいんです!」
にこにこ笑う様子はまるで花のようでとても愛らしいです。
彼女は、ヒーロー科1年の緑谷泉ちゃん。
寮の庭に花壇を作っていたところに、ジョギング中に通りかかり、話しかけられて仲良くなりました。毎朝花壇に水やりをしていると、泉ちゃんはジョギングしていた足を止め、少しの間お喋りをするのが日課となりました。
雨の日も泉ちゃんは、毎朝必ず走っています。当然雨の日は、花に水やりをしなくてもいいのだけど、玄関まで行って手を振ってあげます。そうすると泉ちゃんは、あの花のような笑顔で手を振り返してくれるのです。
ちなみに一度だけ滑って転んだことがありますが、綺麗に受け身を取って、慌てて駆け寄った私に「見てました⁉綺麗な受け身が取れました!」と笑っていました。
泉ちゃんはとってもお話好きで、ヒーロー科の授業のことや大好きなお兄さんや幼馴染、好きな人のことなど、色んなことを教えてくれました。
「花さんが植えるお花は、どれも素敵ですね。いつ見ても綺麗に咲いてるんですね」
「長持ちさせるためにこっそり個性使ってるのよ、秘密ね」
私の個性は、植物の成長を操ることができます。こう聞くと、ヒーローになれるんじゃないかと思われますが、個性が使えるのは、せいぜい草花くらいで、樹木には効かないのです。つまり、ヒーローになれるほど強い個性ではないということです。ヒーローに憧れたことがないわけではありませんが、それよりも花壇と向き合っている方が性に合っていました。
ふふふと笑うと、素敵な個性です!と泉ちゃんは褒めてくれました。
「あ!そうだ。今度1-Aの庭にもお花植えてください!」
「そんな難しいことじゃないから、泉ちゃんでも簡単に出来るわよ?」
「私めちゃくちゃ不器用なんです」
深刻そうな顔つきで言う泉ちゃんに、ふと疑問が湧く。
「あら?でも、泉ちゃん、好きな人のためにそば打ち特訓したんでしょう?それなら、出来るんじゃないかしら」
「…そば打ちに関しては、めちゃくちゃ練習しましたから…!1年くらいそば打ち特訓しました」
すごい根性だと思います。好きな人の胃袋を掴むために、そば打ちを特訓するなんて。しかも、それだけでなく雄英のヒーロー科に入るなんて、並大抵の努力では叶わないものだと思います。
「本当に好きなのね。そんなに想われてるなんて羨ましいわ」
「いえいえ、そんな…。本当に好きなだけですから」
校内で時折、泉ちゃんと泉ちゃんの好きな人が話しているのを見かけます。泉ちゃんの好きな人は、ヒーロー科に推薦入学した轟くんで、No. 1ヒーロー・エンデヴァーの息子さんです。
去年の体育祭で、泉ちゃんのお兄さんと対戦したのをよく覚えています。
泉ちゃんは、このあと轟くんに恋をしたそうです。初めて聞いたときにあの怖そうな人を好きになるなんて、ちょっと…いえ、かなり変わってるなと思ったものです。
だから、校内で2人を見かけたときには少し驚きました。体育祭で見た轟くんと全く雰囲気が違っていたからです。泉ちゃんは顔を赤くしながら、轟くんと一生懸命話していました。轟くんもそんな泉ちゃんの様子が可愛らしいのか、口元に笑みを浮かべながら答えていたのです。いつもあんな顔をしていたらとてもモテるだろうな、と思ってしまいました。
…それより、泉ちゃんが可愛くて、轟くんに嫉妬してしてしまいました。あんなに可愛らしい顔、私は向けられたことはありません…。
「あ!だったら!私の誕生日、8/31なんです。誕生日プレゼントってことで花壇作ってもらえませんか?」
「あらそうなの?それじゃあ、頑張らなくっちゃね。何か植物のリクエストはある?」
「ひまわりがいいです!」
「ひまわり?泉ちゃんにぴったりね?」
「そうですか?」
「泉ちゃんみたいな花でしょう?泉ちゃんが笑うと、ぱあっと周りが輝くのよ。大きなひまわりの花は泉ちゃんの笑顔みたいにね」
そう言うと泉ちゃんは照れて顔を赤くしました。
「花さんは本当に人を褒めるのが上手なんですから…!」
「本当のことよ?泉ちゃんは可愛いもの」
「…ありがとうございます…。…あ!今週末は空いてます!?午前中はお兄ちゃんのとこに行くので…午後はどうですか⁉」
「ええ、空いてるわ。でも午後は暑いわ。そうね…、そんなに時間取らないから1時間くらい時間作れないかしら。朝食後とかに」
「大丈夫です!じゃあ、朝ごはん食べてすぐに取り掛かりましょう!7時半に迎えに来ます!」
「わかったわ」
「お願いします!では、今日はこの辺で失礼しますね。それでは!」
こうして、次の日曜日の朝、迎えに来てれた泉ちゃんと一緒に1-Aの前に花壇を作ることになりました。泉ちゃんはあらかじめ、花壇を作っていてくれました。
「土掘って、周りを囲っただけなんですけど…。」
「凄いじゃない!これだけ出来てれば、すぐに終わるわ」
一体いつ花壇を作ったのでしょうか?土に触れると柔らかく、今朝か昨晩に掘り起こしたばかりの様でした。さすがヒーロー科。体力があります。
土に肥料を混ぜ、種を植えていきます。種に土を被せたら、水を撒いて準備が完了しました!
「さて頑張っちゃおうかしら…!」
花壇の前にしゃがみこみました。
「花さんが個性を使うところ初めて見ます!楽しみです!」
期待に胸を膨らませた泉ちゃんが目を輝かせて花壇を見つめます。張り切っていきましょう!
「さあ皆さん。種の中から芽を出してちょうだい。お日さまとお水はたっぷりあるわ。元気に芽を出して」
ぽんっ。という音が花壇から次々と聞こえてきました。泉ちゃんを見ると目を輝かせたまま、じっと芽を見つめていました。
「ぐんぐん伸びて」
私が言うと芽たちが答えるように大きく太く伸びていきました。最終的に向日葵の蕾が出来ました。ふう、とため息をつき地面を食い入るように見ていた泉ちゃんに声をかけました。
「泉ちゃんここまでよ。あとは咲くのを楽しみにしててね」
「すっ……」
「す?」
泉ちゃんは目をキラキラさせたまま早口に喋り出しました。
「すっごいです!あっという間に伸びました!声が個性なんですか⁉成長を促すんですよね⁉種に戻すことは出来ますか?」
ふと泉ちゃんは考えるように右手を顎の下に置き、閉じた右手の人差し指で一定のリズムで叩き始めました。
一体これは何でしょうか。
「あれ?でも前に花を綺麗にするために個性使ってるって言ってたから、成長だけでなく巻き戻しも出来るってことだよね?ここまで成長させられるんだったら、個性伸ばせば捕縛とかに使えるんじゃ…?種の状態からの個性の発動は出来るわけだから、条件があるのかな?土、水、光は必要条件?ないと発動できない…?」
わぁすごい…泉ちゃんが真剣な顔しています。思わずまじまじと見つめてしまいますが、泉ちゃんは一向に気が付きません。
「泉ちゃん?」
………
「泉ちゃんっ!」
大きめな声で呼びかけると、
「はいっ⁉」
驚いた様子で私を見ました。
「ちょっとびっくりしちゃったわ。考え事をするときにはいつもそうなの?」
「すみませんっ…!お兄ちゃんがぶつぶつ考える癖があって、いつも見てたから私も似たような癖がついてしまって……」
「真剣な泉ちゃんの顔も新鮮だったわ」
泉ちゃんはきょとんとした顔をしました。
「私好きよ、泉ちゃんの真剣な表情。素敵だわ」
「そ、そうですか…?」
照れて頬をかく泉ちゃんに「そうよ!」と力強く言うと、ありがとうございますとはにかみました。
そして後日ー…。
「花さん!ひまわり咲きました!しかも今朝です!何か細工でもしたんですかっ⁉」
8月31日の朝、花壇に水やりをしていると泉ちゃんが息を切らしてやってきました。
「本当に誕生日プレゼントになったわね、良かったわ。お誕生日おめでとう泉ちゃん」
「ありがとうございます!ってそうなんですけど!」
「何もしてないわよ」
と笑って言うと、泉ちゃんは嬉しそうでした。
2019.07.09
→おまけ