3.妹と、かっちゃん
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日曜日の朝8時。早朝ランニングへ行き、シャワーを浴びた後、薄ピンクのリボンブラウスとワインレッドのハイウエストスカート、灰色のタイツというお出かけ着に着替えた。
お兄ちゃんと買い物兼デートに行くからだ。おしゃれに気合が入る。
髪はハーフアップにし、一昨年の誕生日にお兄ちゃんからもらったブサネコの髪ゴムで結ぶ。
「あんまり趣味じゃないんだけどな」
お兄ちゃんが一所懸命選んでくれたのがよくわかる、ちょっとブサイクなネコちゃんのヘアゴム。もらったときには、ちょっとなとも思ったけど、お兄ちゃんの期待の眼差しが可愛すぎて、すぐに好きになった。
お兄ちゃんと出かけるときには、いつもこれを着けている。そうするとお兄ちゃんが嬉しそうにしてくれるから。
お気に入りのショルダーバッグと、お兄ちゃんのトレードマークの赤い靴と同じ色の赤いパンプス。ヒールが4cmというところが私のお気に入りポイント。
「行ってきまーす!」
共有スペースで寛いでいた同級生たちに声をかけ、寮を出た。
お兄ちゃんを迎えに2Aの寮まで行く。お兄ちゃん今日はどんなシャツだろう?お兄ちゃんのダサTシャツは随分見慣れた。ダサいけど、くせになるあの感じ。ぷぷっと声に出して笑った。
『着いたよ』とメールをするとすぐに扉が開いた。
びっくりした……。
慌てた様子のお兄ちゃんが入って!と手招きする。
「お邪魔しまーす…!」
「泉!ごめん!急遽インターン先に行くことになっちゃって……!本当ごめん。かっちゃんならまだ部屋にいると思うから…」
よく見ると制服姿のお兄ちゃんが、リュックを背負った。
「え⁉かっちゃんとお買い物行けっていうの?お兄ちゃんと行きたかったのに⁉」
「だって、買い物行きたいんでしょ?それにかっちゃんとだって、君は…」
「君だなんて!私の名前は泉よ、お兄ちゃん。可愛い妹の名前くらいちゃんと呼んでほしいな!」
お兄ちゃんに君と呼ばれたことが嫌で、思わず叫ぶように言った。
「はいはい…泉はかっちゃんとだって、めちゃくちゃ楽しんで帰ってくるじゃないか」
「まあその通りなんだけどね…!お兄ちゃんと行きたかったのになー…」
ちらりと横目でお兄ちゃんを見ながら、繰り返して文句を言ったけど、別に怒ってるわけじゃない。ちょっと我儘を言ってみたかっただけ。
最高のヒーローを目指すお兄ちゃんの日常が、それに向かって動いているなら最高に嬉しい。
だけど、お兄ちゃんと出掛けられないのは、やっぱりちょっぴり寂しい。
「ごめんね…?」
「怒ってないもん。ただの我儘だよ?頑張ってるお兄ちゃん大好きだから!頑張れお兄ちゃん!」
大慌てで出掛けて行くお兄ちゃんにいってらっしゃい!と抱き着いた。
お兄ちゃんははにかんだ笑顔で、いってきますと出掛けていった。
「さて」
1階には珍しく誰もいない。困ったな。
もうお兄ちゃんたら、かっちゃんの部屋まで連れて行ってくれても良かったのに。
誰か降りてきてくれないかな…。
ひとまず共有スペースのソファに座り込んで、バッグの中から携帯を出した。
「とりあえず…」
かっちゃんの番号にダイヤルしてみる。うーん出ない!悔しいので、続けて何回かかけてみる。
もしやこれは無視を決め込んでる…?
「誰?」
電話をかけていて、気がつかなかった。後ろから鋭い声で呼びかけられた。
びっくりして勢いよく振り返った。
「響香さん!百さん!」
部屋着姿の2人が後ろに立っていた。
私と分かると胸を撫で下ろしたようだった。
「なんだ泉か。いつもと違うから分かんなかったよ。随分可愛いじゃん。轟にも見せてやれば?」
ニヤニヤ笑う響香さん。そんなに楽しそうにしなくても、と思う。
普段の私は髪はきっちりポニーテールで、ジャージにTシャツ。動きやすい服装だ。
確かにいつもよりうんとおしゃれをしているけど…。轟さんにこの姿で会ったらと考えて、恥かしくなって首を思い切り振った。
「そんなっ…そんな…!恥ずかしくて死んじゃいますっ…!」
「だよね」
やっぱり響香さんは楽しそうに笑う。
「緑谷さんは?1人でどうされたんですの?」
「お兄ちゃんならインターン先へ行きました。私はお兄ちゃんとお出かけするつもりだったんですけど…」
かっちゃんは電話に出ないし、男子部屋に1人で行くのを迷っているということを話した。
「そういう訳なので、かっちゃんの部屋まで一緒に行って貰えないでしょうか!」
「いいよ。爆豪のとこまで連れていってあげる」
「みんなで行けば、安心ですものね!」
響香さん、百さんとエレベーターに乗り、かっちゃんの部屋に向かう。
「ここだね。それでどうするの?」
「こうします」
コンコンと部屋の扉を叩いて、ドアノブを回した。
「かっちゃんー!泉だよー!」
「すご…普通に開けたよ…」
「幼なじみってすごいですわね……!」
「泉!勝手に開けんてんじゃねえ!!」
「かっちゃんが電話に出ないのがいけないのよー!それに、鍵かかってなかったもん!」
中からかっちゃんの怒声が聞こえてきたので、負けじと叫び返した。
「響香さん、百さん、ありがとうございました!」
「あ、うん…」
驚いた様子の2人に頭を下げ、中にいるかっちゃんに言いながら、部屋の戸を閉めた。
「妹じゃないの。今更何見ても驚かないよ?」
「年頃の娘が男の部屋にずかずか入り込むな。ちっとは警戒しろ」
「かっちゃん、お母さんみたいなこと言ってる」
「そこは兄だろ!」
部屋着のかっちゃんは、怒りながら私の姿を見て筋トレをしていた手を止める。上から下まで眺めてから怪訝そうな顔をした。
それだけで全部分かっている気がするのは気のせいじゃないような気がする。
「なんだそれ」
「お買い物行きたいの。付き合って?」
「デクは」
「お兄ちゃんなら、インターン先に行くって」
かっちゃんは大きなため息をついてから、考える。
「…午前だけなら、行ってやる」
「やった!さすがかっちゃん!泉のお兄ちゃん!」
「妹じゃねぇだろ」
「泉は今、妹とは言ってないよ?」
「うるせぇ!黙れ!」
かっちゃんはバッグの中に必要なものを入れていく。
「着替える」
「うん、わかった!」
「…部屋から出てけっつてんだよ!」
「なんで?大丈夫よ、かっちゃんの着替えくらい。泉、気にしない!」
ガッツポーズで答えると、首根っこを掴まれて、部屋の外に追い出される。
「5分待っとけ」
「…はあ~い」
壁に体重を預けて、携帯をいじって時間を潰す。
ヒーローニュースでも見ようかな。
「緑谷の妹か?おはよう」
しばらくして部屋から出てきた障子さんに声をかけられた。
「おはようございます、障子さん!」
「いつもと違うな?何処かへ行くのか?」
「お兄ちゃんと買い物行く予定がお兄ちゃんが行けなくなったので、かっちゃんとお出かけしてくるのです!」
ガッツポーズで鼻を鳴らして答える。
「おい行くぞ」
タイミング良く部屋から出てきたかっちゃんは、気にせずにさっさと歩き出す。
「あ、待ってよ!」
かっちゃんを追いかけながら、振り返って障子さんに頭を下げて挨拶をした。
「気を付けてな」
複製腕の口で言いながら、手を振って見送ってくれた。
「はいっ!行ってきます!」
.
お兄ちゃんと買い物兼デートに行くからだ。おしゃれに気合が入る。
髪はハーフアップにし、一昨年の誕生日にお兄ちゃんからもらったブサネコの髪ゴムで結ぶ。
「あんまり趣味じゃないんだけどな」
お兄ちゃんが一所懸命選んでくれたのがよくわかる、ちょっとブサイクなネコちゃんのヘアゴム。もらったときには、ちょっとなとも思ったけど、お兄ちゃんの期待の眼差しが可愛すぎて、すぐに好きになった。
お兄ちゃんと出かけるときには、いつもこれを着けている。そうするとお兄ちゃんが嬉しそうにしてくれるから。
お気に入りのショルダーバッグと、お兄ちゃんのトレードマークの赤い靴と同じ色の赤いパンプス。ヒールが4cmというところが私のお気に入りポイント。
「行ってきまーす!」
共有スペースで寛いでいた同級生たちに声をかけ、寮を出た。
お兄ちゃんを迎えに2Aの寮まで行く。お兄ちゃん今日はどんなシャツだろう?お兄ちゃんのダサTシャツは随分見慣れた。ダサいけど、くせになるあの感じ。ぷぷっと声に出して笑った。
『着いたよ』とメールをするとすぐに扉が開いた。
びっくりした……。
慌てた様子のお兄ちゃんが入って!と手招きする。
「お邪魔しまーす…!」
「泉!ごめん!急遽インターン先に行くことになっちゃって……!本当ごめん。かっちゃんならまだ部屋にいると思うから…」
よく見ると制服姿のお兄ちゃんが、リュックを背負った。
「え⁉かっちゃんとお買い物行けっていうの?お兄ちゃんと行きたかったのに⁉」
「だって、買い物行きたいんでしょ?それにかっちゃんとだって、君は…」
「君だなんて!私の名前は泉よ、お兄ちゃん。可愛い妹の名前くらいちゃんと呼んでほしいな!」
お兄ちゃんに君と呼ばれたことが嫌で、思わず叫ぶように言った。
「はいはい…泉はかっちゃんとだって、めちゃくちゃ楽しんで帰ってくるじゃないか」
「まあその通りなんだけどね…!お兄ちゃんと行きたかったのになー…」
ちらりと横目でお兄ちゃんを見ながら、繰り返して文句を言ったけど、別に怒ってるわけじゃない。ちょっと我儘を言ってみたかっただけ。
最高のヒーローを目指すお兄ちゃんの日常が、それに向かって動いているなら最高に嬉しい。
だけど、お兄ちゃんと出掛けられないのは、やっぱりちょっぴり寂しい。
「ごめんね…?」
「怒ってないもん。ただの我儘だよ?頑張ってるお兄ちゃん大好きだから!頑張れお兄ちゃん!」
大慌てで出掛けて行くお兄ちゃんにいってらっしゃい!と抱き着いた。
お兄ちゃんははにかんだ笑顔で、いってきますと出掛けていった。
「さて」
1階には珍しく誰もいない。困ったな。
もうお兄ちゃんたら、かっちゃんの部屋まで連れて行ってくれても良かったのに。
誰か降りてきてくれないかな…。
ひとまず共有スペースのソファに座り込んで、バッグの中から携帯を出した。
「とりあえず…」
かっちゃんの番号にダイヤルしてみる。うーん出ない!悔しいので、続けて何回かかけてみる。
もしやこれは無視を決め込んでる…?
「誰?」
電話をかけていて、気がつかなかった。後ろから鋭い声で呼びかけられた。
びっくりして勢いよく振り返った。
「響香さん!百さん!」
部屋着姿の2人が後ろに立っていた。
私と分かると胸を撫で下ろしたようだった。
「なんだ泉か。いつもと違うから分かんなかったよ。随分可愛いじゃん。轟にも見せてやれば?」
ニヤニヤ笑う響香さん。そんなに楽しそうにしなくても、と思う。
普段の私は髪はきっちりポニーテールで、ジャージにTシャツ。動きやすい服装だ。
確かにいつもよりうんとおしゃれをしているけど…。轟さんにこの姿で会ったらと考えて、恥かしくなって首を思い切り振った。
「そんなっ…そんな…!恥ずかしくて死んじゃいますっ…!」
「だよね」
やっぱり響香さんは楽しそうに笑う。
「緑谷さんは?1人でどうされたんですの?」
「お兄ちゃんならインターン先へ行きました。私はお兄ちゃんとお出かけするつもりだったんですけど…」
かっちゃんは電話に出ないし、男子部屋に1人で行くのを迷っているということを話した。
「そういう訳なので、かっちゃんの部屋まで一緒に行って貰えないでしょうか!」
「いいよ。爆豪のとこまで連れていってあげる」
「みんなで行けば、安心ですものね!」
響香さん、百さんとエレベーターに乗り、かっちゃんの部屋に向かう。
「ここだね。それでどうするの?」
「こうします」
コンコンと部屋の扉を叩いて、ドアノブを回した。
「かっちゃんー!泉だよー!」
「すご…普通に開けたよ…」
「幼なじみってすごいですわね……!」
「泉!勝手に開けんてんじゃねえ!!」
「かっちゃんが電話に出ないのがいけないのよー!それに、鍵かかってなかったもん!」
中からかっちゃんの怒声が聞こえてきたので、負けじと叫び返した。
「響香さん、百さん、ありがとうございました!」
「あ、うん…」
驚いた様子の2人に頭を下げ、中にいるかっちゃんに言いながら、部屋の戸を閉めた。
「妹じゃないの。今更何見ても驚かないよ?」
「年頃の娘が男の部屋にずかずか入り込むな。ちっとは警戒しろ」
「かっちゃん、お母さんみたいなこと言ってる」
「そこは兄だろ!」
部屋着のかっちゃんは、怒りながら私の姿を見て筋トレをしていた手を止める。上から下まで眺めてから怪訝そうな顔をした。
それだけで全部分かっている気がするのは気のせいじゃないような気がする。
「なんだそれ」
「お買い物行きたいの。付き合って?」
「デクは」
「お兄ちゃんなら、インターン先に行くって」
かっちゃんは大きなため息をついてから、考える。
「…午前だけなら、行ってやる」
「やった!さすがかっちゃん!泉のお兄ちゃん!」
「妹じゃねぇだろ」
「泉は今、妹とは言ってないよ?」
「うるせぇ!黙れ!」
かっちゃんはバッグの中に必要なものを入れていく。
「着替える」
「うん、わかった!」
「…部屋から出てけっつてんだよ!」
「なんで?大丈夫よ、かっちゃんの着替えくらい。泉、気にしない!」
ガッツポーズで答えると、首根っこを掴まれて、部屋の外に追い出される。
「5分待っとけ」
「…はあ~い」
壁に体重を預けて、携帯をいじって時間を潰す。
ヒーローニュースでも見ようかな。
「緑谷の妹か?おはよう」
しばらくして部屋から出てきた障子さんに声をかけられた。
「おはようございます、障子さん!」
「いつもと違うな?何処かへ行くのか?」
「お兄ちゃんと買い物行く予定がお兄ちゃんが行けなくなったので、かっちゃんとお出かけしてくるのです!」
ガッツポーズで鼻を鳴らして答える。
「おい行くぞ」
タイミング良く部屋から出てきたかっちゃんは、気にせずにさっさと歩き出す。
「あ、待ってよ!」
かっちゃんを追いかけながら、振り返って障子さんに頭を下げて挨拶をした。
「気を付けてな」
複製腕の口で言いながら、手を振って見送ってくれた。
「はいっ!行ってきます!」
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