1.妹が入学する話
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「かっちゃーーん!!」
かっちゃんにも飛びつくと、お兄ちゃんと同じようにしっかりと受け止めてくれた。
「おまっ…!」
んん??手を動かして、かっちゃんの背中と腰周りを触る。
「触ってんじゃねぇ!」
「まぁまぁ爆豪。落ち着けよ」
一緒にいた赤髪の切島さんがかっちゃんがなだめようとする。目があったので、にこっと笑う。
「硬化の切島さんですよね!」
「お、おう」
「それから、テープの瀬呂さんと帯電の上鳴さん!」
切島さんの後ろを歩いてきた瀬呂さんと上鳴さんにも笑いかける。呆気に取られたようで、目を瞬いた。誰?って顔してる。
「かっちゃんまた筋肉ついた!すごい!ガッチガチ!かっこいい!」
「たりめーだ。毎日鍛えてんだ。…ってそうじゃねぇだろ、泉。離れろ」
私はかっちゃんから離れて笑った。
「可愛い妹が会いに来たよ!」
「制服に着られてんじゃねぇか、ちんちくりん」
鼻で笑われたので、ムッとしてほおを膨らませた。
「…実際身長は確かに伸びてないから…ちんちくりんは許すけどね!でも…!制服は似合ってるもん!」
ほっぺを膨らませたまま、かっちゃんに抗議する。
「爆豪の…⁉」
「…妹⁉」
上鳴さんと切島さんが驚いていた。瀬呂さんは首を傾げた。
「ん?見たことあるような…。どっかで会った事ある?」
「ナンパみたいです!」
「違うわ…」
私が笑って言うと、瀬呂さんは苦笑いする。
改めてお兄ちゃんから話を聞いていた人たちが目の前にいることにワクワクしてきた。私、本当に雄英に来たんだ…!
「紹介がまだでしたね!はじめまして、妹の泉です!」
「全っ然似てねぇ」
上鳴さんが力を込めて言うので笑ってしまった。
「だって血の繋がりないですもん」
「え⁉訳あり⁉」
「かっちゃん。勝手に自分の妹にしないでよ。僕の妹なんだから、ちゃんと訂正してよね」
お兄ちゃんが怒ったように言いながら間に入ってきた。
「妹みてーなもんだ」
と、かっちゃんは舌打ちをした。
「おにーちゃん!冗談だよー。泉はお兄ちゃんの妹がいいもん!」
お兄ちゃんの腕にぎゅっと抱きついて言うと、嬉しそうに照れて顔を赤くした。
「改めまして!かっちゃんのただの幼なじみ、緑谷泉です!いつもお兄ちゃんがお世話になってます」
ぺこっと頭を下げて、笑う。
「クリソツじゃん!」
上鳴さんは腹を抱えて笑っていた。そうそう!そうなんです!私とお兄ちゃんはよく似てるんですよ!そばかすはないし天パじゃないけど、私たちはよく似てる。ザ兄妹って感じ!
「やっぱ緑谷の妹だったか。通りで見たことあるような顔してたわけだな」
瀬呂さんは合点がいったようで、あごに手を当てて私たちを見比べていた。
「かっちゃんはですね~強くて格好良い幼なじみなんですけど…。お兄ちゃんいじめるとこは大嫌いなんですね~。それに私好きな人いるんです…!」
照れて熱くなる頬を抑える。
「おい、聞いてねぇぞ」
「え、好きな人のこと?かっちゃんには言わないよ?絶対邪魔するもん」
「言え」
「言わない!」
べっと舌を出す。
「このやろっ…!てめーが言わねぇなら考えがある」
かっちゃんはにやりと笑うと、お兄ちゃんに視線を向けた。あ。
「おい、デク。泉の好きなヤツってのは誰だ」
あぁ⁉
「お兄ちゃんに聞くなんて、反則なんだけど!」
「しっ、知らないよ⁉」
お兄ちゃんがかっちゃんに誰とは教えないことなんて分かりきってる。でも、お兄ちゃんすぐ顔に出ちゃうから…!
「泉がテメーに話さないわけねぇだろ。誰だ、俺の知ってるやつか?」
「えーっと…」
お兄ちゃんが目を泳がせたので、私は慌ててお兄ちゃんの顔を両手で隠した。
「俺らしいぞ」
お兄ちゃんの顔から思わず手を離してしまった。驚きすぎて会いた口が塞がらない。かっちゃんは轟さんを睨んでいた。
「オメーがなんだよ」
「だから、そいつの好きなヤツっての。さっき言われた。そうだよな?」
轟さんは私の方を向くと首を傾げた。なんで確認するんですか…!
言葉にはならず、コクコクと首を何度も縦に振って答える。
「は?」
かっちゃんが呆気に取られたまま固まった。
「…舐めプのどこが良いんだ」
「舐めプだなんて必要でしょ!素敵な人だよ!」
舌打ちをすると、轟さんを睨みつけて教室へ行ってしまった。
「爆豪はどうしたんだ?」
「複雑なんじゃないかな…」
お兄ちゃんは苦笑いする。体育祭の感じからすれば邪魔されるかなーなんて思ってたんだけど…。
「随分賑やかね。どうしたの?」
「曲がり角の方まで聞こえてきたよー」
「蛙吹さん!麗日さん!」
「梅雨ちゃん、麗日。はよ」
切島さんたちが挨拶をするのを目の前でみて私は感動した。
「うわぁ…!蛙の蛙吹さんと無重力の麗日さんだ…!」
目の前にお兄ちゃんのクラスメイトがいる…!すごい!私が目をキラキラさせていると、2人が私に気がついて首を傾げた。
「ん?どちら様?」
「この子、もしかして…」
「緑谷の妹なんだってよ~」
「超そっくりっしょ!」
上鳴さんが笑って言うと、麗日さんが私とお兄ちゃんを見比べる。
「本当だ…似てる!妹がいるなんて知らなかったよ!」
「そうじゃないかと思ったの」
「あんまりそう言う話題になったことなかったからね…」
「はじめまして!ヒーロー科に入学した、緑谷泉です。いつもお兄ちゃんがお世話になってます!」
笑顔で挨拶をすると蛙吹さんがケロケロと笑った。笑い方可愛い…!
「性格の方はそんなに似てないのかしら」
「そうなんです!お兄ちゃんは根っからのヒーローで超超かっこいいんです!いっぱい努力してるし、とっても優しいんです!それに…」
「も、ちょっと…やめて…恥ずかしいから…」
お兄ちゃんは顔を真っ赤にして、腕で覆い隠していた。
「本当のことなんだからいいじゃない」
「泉ちゃんはお兄ちゃんがすっごく好きなんだね」
「はい!大好きです!自慢のおにーちゃんです!」
「ありがと…泉も僕には勿体無いくらい、自慢の妹だよ」
私を撫でてくれるお兄ちゃんとえへへ、と2人して照れて笑う。
「兄妹愛は深めなの感じね…」
「あ、泉!そろそろ帰らないと。予鈴鳴る時間じゃない⁉」
「本当だ!…ねぇ、お兄ちゃん」
「どうしたの?」
「また会いにきても良い?」
「もちろん!いつでも待ってるよ」
「ふふっ…やったぁ…。ありがとうお兄ちゃん」
ちょっと後ろに下がって、お兄ちゃんのクラスメイトの顔を見渡す。
「みなさんお騒がせしてすみません。また今度ゆっくりお話しさせてください!…轟さんも…!またお話しさせてください」
顔が一気に熱くなった。
「あぁ」
返事をしてくれたことが嬉しくて口元が緩んでしまう。
「やった…!」
小声で言って小さくガッツポーズをした。
「それでは!また遊びにきまーす!」
元気よく言って駆け出した。
「じゃーな。妹ちゃん!」
「今度爆豪の話も聞かせてくれよー!」
「楽しみにしてるねー!」
「はーい!」
返事をして自分の教室へと早足で進んだ。初めて好きな人と喋れただけで、今日一日なんだってできるという気がしていた。
「緑谷ちゃん1つ聞いてもいいかしら?」
切島、上鳴、瀬呂、轟が教室へと歩き出し、緑谷もそれに倣おうとすると、後ろから蛙吹に呼びかけられた。
「うん?」
「泉ちゃんは…」
蛙吹は歩いて行ってしまった轟に視線を移す。緑谷もつられて振り返った。
「恋する乙女なのね」
ほんの少し声をひそめて言うと、麗日も頷いた。
「轟くんと話して顔赤くしてたよね」
「そうみたい」
さっきの態度を見ればわかるよね、と付け加える。
「可愛いわね」
そう言ってケロケロと楽しそうに笑う蛙吹と麗日は、嬉しそうに自分の教室へ戻って行った女の子の後ろ姿を見送った。
2021.03.13 加筆修正