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俺の知ってる世界は、暴力と人の叫ぶ声、笑う声、血と錆と、たまに化粧臭い女。
なのに、何だかいい匂いがした。
飯のうまそうな匂いとかじゃなくて…なんていうんだ?たまに誰かが洗濯物干してる時に嗅ぐような石鹸の匂いと、それと一緒に安心するような、なんだか泣きたくなるような、それってどんな匂いって言うんだろうな?学校行ったことのあるやつならみんなわかるんだろうな。
なんて言うのかわからないのに、不思議と昔から知っているような…そんな気持ちにさせる匂いだった。
そんな自分の考えを夢か現実かわからない世界で眺めた。
ふとほんの少しだけ眩しさを感じて、目を開いたら俺の世界は白だった。
真っ白な壁と、静かな朝日で満たされた部屋が眩しかった。
その中に金色の髪が見えて、すぐに誰かわかった。
そして俺が今いるのが、自分の部屋ではないということも。
飛び起きて辺りを見回した。すっげー広くて、何かカッコいい部屋だった。(こんな部屋初めてきたからなんて言っていいかわかんねぇ)
俺がいつも寝てる家とは全然違ぇ。
ボロボロのマットレス、その上に毛布が一枚。
机もねぇから飯は床かマットレスの上で食う。
あとは特に何もねぇ。
シャワーは水しか出ねえ。
電気もねぇけど夜は街の明かりが窓から入ってくるからそんなに困らねぇ。
こんな家でも子供の頃母親といたあの部屋よりよっぽど良かった。
そんな生活してる俺が、こんな綺麗な空間にいるとひどく自分が汚いものに思えた。
烏丸さんにヒーローと仲良くしてるなんてバレたらやばいと思ってベッドから出た。あと、ベッドを汚しちゃ悪いって気持ちもホントにあった。
なのにこのヒーロー、爆心地は俺に飯まで食ってけって言ってきた。
確かに腹は減ってるけど…俺たぶん頭だけじゃなくて舌も馬鹿だから、味とかよくわかんねぇ。何か、そういうのって申し訳ないんだよなってのは思ってる。
俺はいつからか、食べ物の味がよくわからなくなってきた。
たまに金を払ってまで抱かれにくる女が俺に手作りの料理なんかわざわざ持ってくる。知らないやつからもらう飯は怖いし、やっぱり美味いかよくわかんなかった。
美味かったってとりあえず嘘言ったらすげー嬉しそうにされて、何か…悪いことした気分になった。
たまに烏丸さんが俺なんか一生入れねぇような高そうな店に連れてってくれるけど、それも全然美味いと思ったことない。いつも何食ってんのかよくわかんねぇままとにかく口に放り込んで、噛んで、飲み込む。
まぁ烏丸さんの場合、ヘマした部下をその場で撃ち殺したりして、俺に料理を楽しませたいわけじゃなさそうだから別にいいけど。
俺への脅しだ。いい子にしてないとお前もこうなるぞっていう。
爆心地が冷蔵庫から鍋を取り出して、その中身をでかいスプーンみたいなので皿によそったのを見た。
多分スープかなんかかな。熱いだろうな。
俺、口の中切れてるから痛がっちまうかも。
余計味もわかんねぇしだろうし…。
コンビニで見る電子レンジってやつに皿を入れるかと思ったら、そのまま出された。
冷てぇならそのまま食えるかもと思って、爆心地の気分が悪くならねぇようにどういう反応したらいいかなとか思いながら一口食べた。
って、なんで俺こんなに気ぃ使ってるわけ?
普通に味わかんねぇって言えばいいじゃねぇか。
俺がコイツに気を使う理由なんかない。
それにコイツなら…それで怒ったりしないと思う…。
「ん?」
え?
味がする。
なんで?
あ、これ。
「んめぇー!!」
何だこれ?
何か麻薬でも入ってんの?
すっげぇ。
これもっと食べてぇ。
これが、美味いってことだよな?
口の中は少し痛んだが、それよりこんなに美味いもん初めてだった。
俺はあっという間にそのじゃがいものスープとやらをたいらげた。
「あ」
何も言わずに黙々と食べていたことに気づいて爆心地の方を見た。
どうせがっつきやがってガキだなとか、呆れてんじゃねぇかなと思って顔を見た。でも、
「ほら、食えんならもっと食えよ」
ニカッて効果音がつきそうなくらい眩しい笑顔だった。
太陽みたいだなって思った。
目の奥が痛んで、俺には眩しすぎた。
「…ん!もっとくれ」
俺は皿に視線をあえて移して、爆心地から目を逸らした。
よくわからない気持ちだった。
泣きたくなるようで。
でも、すごく…
結局風呂も貸してくれて、傷の消毒もして手当してくれた。
俺はその間もずっと変な気持ちだった。
嬉しい…のかな?普通の人に、こんな普通の人間扱いされたの初めてだ。
でも…。
ここにいると、自分が自分でなくなっちまうようで…、あの地下闘技場に戻るのが嫌になっちまうんじゃないかって…少し怖かった。
「サンキュー爆心地。何も返してはやれねぇけど、今度あんたが俺に賭けてくれたらちゃんと勝って儲けさせてやるよ」
俺はこのままコイツに寄りかかりたくなってしまうのが怖かった。
そんなこと…叶わないし、現実と夢の差の大きさに絶望したくなかった。
だからわざとヒーローに言うべきではないようなそんな冗談を、もう二度と会うつもりはないって気持ちを込めて捨て台詞みたいに言った。
そしてもう帰ろうと思って玄関に向かおうと立ち上がった。
「…お前、なんで」
「…?なんか言った?」
爆心地が独り言みたいになんか呟いた。
静かに俺の方を見て、再度口を開いた。
「なんで、あの場所にそうまでして戻ろうとしやがんだ」
「は…」
…なんでって、だって、しょうがねぇだろ。
俺は逃げられない。逃げようなんてしたらすぐ殺される。
俺の価値はあそこで闘えるから、烏丸さんの思い通りに動ける人形だから生かされてるんだ。
それに逃げたからって、あんたと同じ世界じゃ…俺は生きられない。
「言っただろ。普通の社会で俺なんかが生きてけるわけねぇ…」
「助けろって、お前が一言言えば…」
「やめろよ!!」
俺は言いたいことがいっぱいあったけど、何を言いたいのかわからなくてそのまま玄関から外に飛び出した。
誰に?
誰に助けを求めんだ?
誰も助けられねぇよ。
俺はもう二度と爆心地には会わないと決心した。
アイツといると…俺は魚のくせに地上で生きたいと思うような馬鹿な奴になっちまう。
なのに、何だかいい匂いがした。
飯のうまそうな匂いとかじゃなくて…なんていうんだ?たまに誰かが洗濯物干してる時に嗅ぐような石鹸の匂いと、それと一緒に安心するような、なんだか泣きたくなるような、それってどんな匂いって言うんだろうな?学校行ったことのあるやつならみんなわかるんだろうな。
なんて言うのかわからないのに、不思議と昔から知っているような…そんな気持ちにさせる匂いだった。
そんな自分の考えを夢か現実かわからない世界で眺めた。
ふとほんの少しだけ眩しさを感じて、目を開いたら俺の世界は白だった。
真っ白な壁と、静かな朝日で満たされた部屋が眩しかった。
その中に金色の髪が見えて、すぐに誰かわかった。
そして俺が今いるのが、自分の部屋ではないということも。
飛び起きて辺りを見回した。すっげー広くて、何かカッコいい部屋だった。(こんな部屋初めてきたからなんて言っていいかわかんねぇ)
俺がいつも寝てる家とは全然違ぇ。
ボロボロのマットレス、その上に毛布が一枚。
机もねぇから飯は床かマットレスの上で食う。
あとは特に何もねぇ。
シャワーは水しか出ねえ。
電気もねぇけど夜は街の明かりが窓から入ってくるからそんなに困らねぇ。
こんな家でも子供の頃母親といたあの部屋よりよっぽど良かった。
そんな生活してる俺が、こんな綺麗な空間にいるとひどく自分が汚いものに思えた。
烏丸さんにヒーローと仲良くしてるなんてバレたらやばいと思ってベッドから出た。あと、ベッドを汚しちゃ悪いって気持ちもホントにあった。
なのにこのヒーロー、爆心地は俺に飯まで食ってけって言ってきた。
確かに腹は減ってるけど…俺たぶん頭だけじゃなくて舌も馬鹿だから、味とかよくわかんねぇ。何か、そういうのって申し訳ないんだよなってのは思ってる。
俺はいつからか、食べ物の味がよくわからなくなってきた。
たまに金を払ってまで抱かれにくる女が俺に手作りの料理なんかわざわざ持ってくる。知らないやつからもらう飯は怖いし、やっぱり美味いかよくわかんなかった。
美味かったってとりあえず嘘言ったらすげー嬉しそうにされて、何か…悪いことした気分になった。
たまに烏丸さんが俺なんか一生入れねぇような高そうな店に連れてってくれるけど、それも全然美味いと思ったことない。いつも何食ってんのかよくわかんねぇままとにかく口に放り込んで、噛んで、飲み込む。
まぁ烏丸さんの場合、ヘマした部下をその場で撃ち殺したりして、俺に料理を楽しませたいわけじゃなさそうだから別にいいけど。
俺への脅しだ。いい子にしてないとお前もこうなるぞっていう。
爆心地が冷蔵庫から鍋を取り出して、その中身をでかいスプーンみたいなので皿によそったのを見た。
多分スープかなんかかな。熱いだろうな。
俺、口の中切れてるから痛がっちまうかも。
余計味もわかんねぇしだろうし…。
コンビニで見る電子レンジってやつに皿を入れるかと思ったら、そのまま出された。
冷てぇならそのまま食えるかもと思って、爆心地の気分が悪くならねぇようにどういう反応したらいいかなとか思いながら一口食べた。
って、なんで俺こんなに気ぃ使ってるわけ?
普通に味わかんねぇって言えばいいじゃねぇか。
俺がコイツに気を使う理由なんかない。
それにコイツなら…それで怒ったりしないと思う…。
「ん?」
え?
味がする。
なんで?
あ、これ。
「んめぇー!!」
何だこれ?
何か麻薬でも入ってんの?
すっげぇ。
これもっと食べてぇ。
これが、美味いってことだよな?
口の中は少し痛んだが、それよりこんなに美味いもん初めてだった。
俺はあっという間にそのじゃがいものスープとやらをたいらげた。
「あ」
何も言わずに黙々と食べていたことに気づいて爆心地の方を見た。
どうせがっつきやがってガキだなとか、呆れてんじゃねぇかなと思って顔を見た。でも、
「ほら、食えんならもっと食えよ」
ニカッて効果音がつきそうなくらい眩しい笑顔だった。
太陽みたいだなって思った。
目の奥が痛んで、俺には眩しすぎた。
「…ん!もっとくれ」
俺は皿に視線をあえて移して、爆心地から目を逸らした。
よくわからない気持ちだった。
泣きたくなるようで。
でも、すごく…
結局風呂も貸してくれて、傷の消毒もして手当してくれた。
俺はその間もずっと変な気持ちだった。
嬉しい…のかな?普通の人に、こんな普通の人間扱いされたの初めてだ。
でも…。
ここにいると、自分が自分でなくなっちまうようで…、あの地下闘技場に戻るのが嫌になっちまうんじゃないかって…少し怖かった。
「サンキュー爆心地。何も返してはやれねぇけど、今度あんたが俺に賭けてくれたらちゃんと勝って儲けさせてやるよ」
俺はこのままコイツに寄りかかりたくなってしまうのが怖かった。
そんなこと…叶わないし、現実と夢の差の大きさに絶望したくなかった。
だからわざとヒーローに言うべきではないようなそんな冗談を、もう二度と会うつもりはないって気持ちを込めて捨て台詞みたいに言った。
そしてもう帰ろうと思って玄関に向かおうと立ち上がった。
「…お前、なんで」
「…?なんか言った?」
爆心地が独り言みたいになんか呟いた。
静かに俺の方を見て、再度口を開いた。
「なんで、あの場所にそうまでして戻ろうとしやがんだ」
「は…」
…なんでって、だって、しょうがねぇだろ。
俺は逃げられない。逃げようなんてしたらすぐ殺される。
俺の価値はあそこで闘えるから、烏丸さんの思い通りに動ける人形だから生かされてるんだ。
それに逃げたからって、あんたと同じ世界じゃ…俺は生きられない。
「言っただろ。普通の社会で俺なんかが生きてけるわけねぇ…」
「助けろって、お前が一言言えば…」
「やめろよ!!」
俺は言いたいことがいっぱいあったけど、何を言いたいのかわからなくてそのまま玄関から外に飛び出した。
誰に?
誰に助けを求めんだ?
誰も助けられねぇよ。
俺はもう二度と爆心地には会わないと決心した。
アイツといると…俺は魚のくせに地上で生きたいと思うような馬鹿な奴になっちまう。